漢字・龍は中原の地域で、農業生産の急速に発展を背景に、強力な統一国家的な仕組みを作り上げていく過程を象徴する漢字となった
それでは、字が生まれた時代的背景について少し掘り下げてみよう。
龍は中華民族の精神的な主柱を成す架空の存在である。
天をも支配するとされた神の化身である「龍」は、頭に辛字形の冠飾をつけた蛇身の獣の形。
その古代的な信仰は、殷周以後にも巫女によって伝えられた。
この文字が生まれた時期は、華夏民族が中原の地域で、統一国家的な仕組みを作り上げていく段階であった。
その原型は、かつて内モンゴルと中国東北部の草原に生息していたといわれる鱗状のヘビ、または今も生息する長江ウナギのいずれかであったと考えられている。
そして、この字は金文から小篆、大篆へと発展するにつれ、次第に皇帝の権力を象徴する存在へと変化を遂げていく。かくして、龍は代々の王朝に引き継がれ、中華民族の象徴になったのである。
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「漢字「龍」の起源の由来:皇帝の権力を象徴する、力強く気勢のある調和の取れた美観を体現
導入
前書き
目次
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漢字「龍」は今、我々の生活の中でどう生きているか
「龍」は、常用漢字表において、「竜」の字が正字とされていて、「龍」の字は参考として示されている。
そのため、一般的には「竜」の字を使うことになる。
ただし、「龍」の字は人名用漢字としては使えるので、決して使ってはいけない漢字ではない。
- 異体字としては、竜、龙などがある。
- 龍を含む漢字には、寵、瀧、籠、聾などが比較的よくつかわれている。
- 漢字・龍は一般の用語としては、使われず専ら地名、人名などの固有名詞に使われている
漢字「龍」の分析
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「龍」楷書 実に堂々とした 美しい字体だ |
小篆の「龍」の字が甲骨文字、金文と比べ、体裁が整えられ、誰が書いても同じ形になるという記号としての役割を担うに足るものになっていることに気が付く。甲骨文字、金文と小篆の間には少なくとも600年程度の期間があり、しかも小篆は始皇帝が李斯に銘じて文字を統一したこともあり、他の二つと比べ文字としての機能には格段の開きがある。 | |||
龍・甲骨文字 |
龍・金文 |
龍・小篆 |
「龍」の漢字データ
- 音読み リュウ
- 訓読み たつ
意味
- 天変地異を引き起こす力を持つといわれる巨大な蛇に似た中国の伝説の生き物
- 人の力を遥かにしのぐものを表す例え。
同じ部首を持つ漢字 籠、襲、
漢字「龍」を持つ熟語 龍、龍骨、龍神
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漢字「龍」成立ちと由来
引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)中国人・唐漢氏の民俗的解釈
典型的な甲骨文字は、中央にある蛇の舌、文字はヘビの大きな口、口の中の毒牙がはっきりと見え、ヘビの体は下に曲がっている。 しかし、中国人はそこまで現実的になることを嫌う傾向があり、龍は中国人の想像力の大きな部分を占めている。
青銅碑文の「龍」の文字は、美的法則の影響を受けやすくなっている。 別の線画の「龍」は口が大きく、体が丸まり、頭の「舌文字」が「辛」の形に進化する。 古代、「辛」は捕虜を捕らえる戦争用の拷問器具であったため、東周や西周の時代の「龍」という言葉は、一種の怒りを示し、龍の神秘性をより反映している。
風と雨を呼び出すことができ、雲と霧を動かし、自然界の竜巻のより多くの特徴を具体化する。 見方を変えれば、この時代は自然に頼った農業生産法が急速に発展した時代であり、また、中華民族の諸属国が過酷な戦争を通じて統一された時代でもあったことが証明される。 「龙」の字の大篆から小篆へと発展していく様子は、雄大な勢いと調和の美しさの体現でもあります。 この「龍」のキャラクターは、貴族的であり、民間的ではなく、徐々に帝国権力と皇帝の特別な象徴へと進化しました。このように龍という字は中国の社会の中で長く使われたため、社会の反映をより跡付けることができるものとなっている。
漢字「龍」の文字学の側面からの白川博士の解釈
象形 頭に辛字形の冠飾をつけた蛇身の獣の形。
字は蛇身の獣の象形で、頭上に辛字形の 冠飾をつけている。この種の冠飾は鳳・虎の文形 にもみられるもので、霊獣たることを示すものであ り、四霊の観念がこれらの字形の成立した当時において、すでに胚胎するものであることが知られる。
龍の観念は、その呪霊を駆使する古代のシャーマニズム的な信仰に起原している。 その古代的な信仰は、殷周以後にも巫史によって伝えられた。
漢字「龍」の漢字源の解釈
象形:もと頭に冠をかぶり、胴をくねらせた大蛇の形を描いたもの。それに色々の模様を添えて、龍の字となった。
漢字「龍」の変遷の史観
文字学上の解釈
金文の「龍」 当時の生産方式の変化は漢民族の 意識の変化を生み、その変化は「龍」 という漢字を生んだ? |
この文字が生まれた時期は、穀物の栽培の農業生産方式が急速に発展する段階である。また華夏民族の諸侯国は残忍な戦争を通じて、統一していく段階に入っていた。ゆえに人間を超越したした力を持つ龍、天候を操ることができる龍神信仰が生まれたのではないだろうか。
そして、この字は金文から発展するにつれ、次第に皇帝の権力を象徴する存在へと変化を遂げていく。
龍の字の大篆から小篆の発展は力強く気勢のある調和の取れた美観を体現している。この種の龍の字の右半分の躯体はさらに長く変わり、湾曲する必要にいたるまでになっている。左半分の形態もさらに奇異な形状になって、字形は対象になり、一種の落ち着きとしっかりした感じさえ出ている。庶民性は少なくなり、次第に皇帝の権力、帝王の専用のシンボルに変化していった。
龍の字は原始民の間に恐れおののく意識の中で、古代民衆の現実生活の中で作り出されたものである。龍が一種の偶像になった時、それは自然界の動物の複合体と異なるものを持っていた。
牛の耳、トラの手、鷹のつめ、蛇の体、魚の鱗。龍の形の龍の字は同じで、完全に一種の仮想で、しかしながらそれは非凡にして突出して、空に掛かる人間界を超越した気勢、奇異にして言葉では言い尽くせない、奥深く計りしれない威力、漢民族に対して語り告げる、子々孫々までの無限の吸引力をもち、為にこのような龍は中華民族の象徴になりえたのである。
まとめ
龍の字は、長い間使われ風雪に耐えただけに、その文字の変遷は歴史の後付けとして実に興味深い。東晋から西晋、春秋戦国時代は統一までの間、国家は乱れ、蛮族などが中国社会を蹂躙した。しかし、この間思想的には、最も華々しい発展を遂げたと言っていい。漢字にしてもしかり、ほぼ中国の漢字の原型はこの時期に固まったと言える。漢字考古学はここに益々重要性を増すと考える。
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