2019年2月22日金曜日

漢字「疾」:太平洋戦争中の陸軍の戦闘機「疾風」余聞


漢字「疾」にまつわる話
 「疾」といえば、老齢の方は「疾風(はやて)」という飛行機を思い出すだろう。一つの言葉でも、年代により全く思い起こす言葉が異なる。疾とは太古の昔は、外傷のことを言った。そして、戦前では戦闘機の名前(注1)でもある。
注1
 「疾風」とは、第二次世界大戦時の大日本帝国陸軍の戦闘機の愛称。呼称・略称は四式戦、大東亜決戦機、決戦機など。連合軍のコードネームはFrank。

 かの有名なゼロ戦は、日本海軍の艦上戦闘機のことである。
「疾」の字の成り立ち」
 この疾という字は甲骨文字の時代(今から約4000年前)にすでに生まれているが、人を表す「大」と思える記号の腋の下に矢印が記されている。この示す意味は人が矢で負傷した様を表現した字である。つまり「疾」とは外傷を負ったことを表す記号であった。



「疾風」の生まれについて
 この戦闘機「疾風」を設計したのは、小山悌という人で、中島飛行機という会社で製造され、約3,500機が製造されている。

「疾風」を生み出した「中島飛行機」という会社
 さてこの「疾風」という戦闘機は、日本最初の民間の飛行機製造会社の「中島飛行機」という会社で生産されています。中島知久平という人が飛行機研究所を創設し、1918年中島飛行機製作所と改称し、後に株式会社とした。その後戦争拡大国策に乗って急成長し、三菱重工業と共に日本の軍用機製造の中軸を担った。代表的な機種は一式戦闘機の『隼』などがある。
 戦後富士産業と改称した。1946年占領軍の財閥解体方針により解体されたが、富士重工業(スバル),富士精密工業(プリンス自動車工業に改称、1966年には日産自動車と合併)などに引き継がれた。


参考記事:「病」と「疾」はどう違う?」

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2019年2月21日木曜日

「疾風ロンド」に使われた漢字の「疾」の由来は?


漢字「疾」の起源と由来
 2016年製作された映画で「疾風ロンド」というのがある。これは阿部寛主演で人気作家・東野圭吾の同名サスペンス小説を映画化したもので、大学の研究所から盗まれた違法な生物兵器「K-55」を秘密裏に探す物語であるが、駆け抜けるイメージから「疾風」と名付けられたものだろう。

 ところがそもそも疾風というのは日本でも、中国でも病気のことを「疾病」という。しかし、古代は「疾」は外傷のことを「疾」といった。それは疒に矢と書くことからも窺い知ることが出来る。


引用:「汉字密码」(P444、唐汉著,学林出版社)
「疾」の字の成り立ち」
"疾"、これは象形文字です。甲骨文字と金文は、人に腋の下の中に矢の形をしています。 小篆の「疾」という言葉は、人の「大」という記号が「床を表す記号と」とその上の一の字形に変わり、これが「疒と矢の音声」との形声にこれは実際には文字の方向偏と旁の分類の結果です。 楷書は小篆を継承して「疾」と書く。

古人は「疾」をどのように考えたか
 昔は弓矢は血族の遠くに飛ばせる殺戮手段として使われてきた。発射場所を隠蔽することができることから人々に危険の状況下にあることを自覚させなく出来る「矢」にすることを可能にしました。 しかし、技術的な条件に限られて、古代の弓は、ほとんどの場合、人の中で矢のすぐ後に矢を使うと、すぐに死ぬことになる。だから「疾」の元来の意味は矢の受傷を意味します。

「疾」と「病」の混用
 だけれども説文は「疾」は病なりとしている。 「実質的に、「疾」と「病」は意味が異なります。「疾」とは外傷を指し、「病」とは体内の病変を指します。 古来からの文籍のなかで、両方の文字が混用されて再び分けることが出来なくなっている。「疾患、积劳成疾、关心疾苦」といった言葉の中の「疾」という言葉も病気として解釈することができ、すでに内病、外傷の区別は出来なくなっている。

関連記事:    漢字「疾」:太平洋戦争中の陸軍の戦闘機「疾風」余聞

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2019年2月20日水曜日

漢字の成り立ちから探ると「病」と「疾」の違いは明確になる


漢字の成り立ちを見れば、「病」と「疾」はどう違うのか明らかだ
 つい先日、オリンピックのメダリストの池江璃花子さんが白血病に罹患していることを公表し、また堀ちえみさんが「舌がん」公表し、世間を驚かせました。お二人の一日も早い回復を祈るばかりですが、人間の歴史でも病気との闘いは、有史以来長く続けられてきています。そのことは漢字の世界でもはっきりと記録に残っています。

 今日私たちは病気のことを疾病と呼びますが、漢字の「疾」と「病」はどう違うのでしょう。漢字の成り立ちを見れば、この疾と病の違いが極めてはっきりと見えてきます。

 「疒」の中の「丙」と「矢」の違いはどこから来たのか。漢字が分かれば世界が分かる。

引用:「汉字密码」(P444、唐汉著,学林出版社)
「病」の字の成り立ち」
 「病」、これは会意文字です。甲骨文字の「病」という言葉は、ベッドの象形のデッサンで、右側は発汗して横になっている人です。漢字の縦と横の幅の特性に合わせるために、甲骨文字の形状は縦になっています。 小篆の「病」という言葉は、右側の「人間」の形を簡略にして一とし、構成組字の「疒」の右上に水平線が入り、もう一つは声符「丙」が追加されています、そしてそれは「疒と丙」で形声文字になります。 

「病」と「疾」のはざ間で
 説文では「病」とは、「病気、疾を加えるなり」と解釈されます。つまり、この意味は、重いのは「病」であり、軽度のは「疾」です。事実、古代において、「病」は人々が寝たきりで起き上がれないことを示し、全身汗を出し、内科の病気であったといいます。一方「疾」は、人体が刀剣などの外傷を受けることを表し、そして外科的な病気であることを意味するとしています。
 例えば、3000年以上前の甲骨辞中では、「女性はよく病にかかる、みんな病気に罹っている」などという表現で「病」の字はよく見られます。 「病気」という言葉は、ある種の「内なる病気」を持つという意味でしばしば使われていたようです。後に、「疾病」という2文字の言葉が通用し、どちらも病気を意味するようになりました。一方、「病気」は深刻な病気を指し、「疾」は小病・軽い病気を意味していたようです。

現代中国語での「病」の使い方
 例えば、 "論語"では: "子疾病 , 子路使门人 为臣。"これは:孔子の病が重くなった後、子路は門人達を臣下とした。
 現代中国語では、「病」は広く「病気」を指します。病気になる、心臓病、心臓病」などの病気を指します。 人体の不快感や不健康さを表現することに加えて、「病」は病気の意味から拡張して、事物の弊害、錯誤などを表します。「悪弊、語弊」などのように。


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