2023年8月25日金曜日

漢字「秘」の成立ちに込められた秘密:漢字「秘」の神髄は「必」にあった?


漢字「秘」の出生の秘密に迫る。ノギ偏に「必」に隠された意味は??





漢字「秘」の今

漢字「秘」をばらしてみたら?「秘」の解体新書


漢字「秘」の楷書で、常用漢字です。
 必は戈矛の柄部の形。「必」の字の本義は兵器の「柄」です。史書によれば、「必」は工芸を表し、作りは十分に複雑な作りで、 後に麻の糸の糸巻きが用いられた。こうして作られたものは柔軟で強度が非常に高く、兵器の柄の持ち手に用いられした。
 言葉の意味を明確にするためにのちに「木」が加えられ、「秘」と書いて、兵器の柄の部分を指すようになった。
秘・楷書



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 漢字「必」は戈矛の柄の象形である。この柄を部族の守りの象徴として、神に祀り、大切に守り育ててきた。その儀式が部族の存続と共に定着し、やがて「祕」という言葉を産んだ。この儀式はおそらく部族の守りとして、他の部族には見せることのない神聖な部族の象徴になったであろう。その中で従来の「必」と「祕」との間に分化が起こり、必は「これを掲げたからには、必ず」という決意を折らわす副詞的に用いられるようになったのではないだろうか。 
必・武器の柄を示すものであたが、武運を願う秘密の儀式を示すようにもなった
祕・武運を願う秘密の儀式を示す漢字「祕」が生まれて以降は、「必」は専ら副詞に用いられるようになった

秘・「示」偏が「禾」編になったのは古人のうっかりミス。つまり禾編である理由が見つからない


 


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「秘」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   ヒ
  • 訓読み   ひ

意味
  • 人に知られないようにする、隠す
  •  
  • 奥深くて、人間では知る事ができない
  •  
  • ひそかに
  •  

同じ部首を持つ漢字     泌、祕、秘、泌
漢字「秘」を持つ熟語    秘、秘密、秘宝、秘め事



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説文

 祕、[兵媚切 ]、神也。从示必聲。






漢字「秘」の字統の解釈:必は戈矛の形。おそらく必を用いる呪儀が秘密とされたのであろう。但しノギ偏は古代人のミス

 必は戈矛の秘部の形。おそらく必を用いる呪儀があり、 その呪儀が殊に神秘にして、秘密とされたのであろう。

 〔説文〕 に「神なり」とし、神秘の意。[弊伝]に「必 の言たる、閉なり」とは、閉門の義があるとするものである。宮は媒神を祀るところで、 子を求める神、いわゆる郊禖。その幽暗なる宮で秘儀が行なわれたのであろう。それより祕奥・祕蘊 ひけつ 祕義・祕薬・祕訣・祕法など、容易に人に対して開示しないものの意となる。



漢字「秘」の漢字源P1151の解釈:棒に添え木を当てて絞めつける様を描いたもの

 解字会意兼形声。必は、匕(棒)を両側からしめるさまを描いた象形文字で、両側からそえ木を当ててしめつけるゆだめ(秘)のこと。秘は「示(かみ)+音符必」で、入り口をしめつけて内容がわからないようにした神秘なこと。秘が本字、秘はそのへんが禾に変じた字。泌(しめつけて汁をしぼり出す)・密(入り口をしめてかくす)などと同系。




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漢字「秘」の変遷の史観

文字学上の解釈

 
  
必・武器の柄を示すものであたが、武運を願う秘密の儀式を示すようにもなった
祕・武運を願う秘密の儀式を示す漢字「祕」が生まれて以降は、「必」は専ら副詞に用いられるようになった
秘・「示」偏が「禾」編になったのは古人のうっかりミス。つまり禾編である理由が見つからない
密・密は廟中において必に火を加えている形。それが密儀の方法であり、その密儀を秘という。
  
  





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まとめ

 以上漢字「必」を基にしたいくつかの漢字を見たが、必の字義である戈矛の柄の部の意味を失うことなく、神の前で神格化し、大切に「必」に込められた精神を守り続けてきた。

 そしてさらにその字義の概念をひき継ぎ、新しい概念「密」「泌」等などを発展させている。
 この文化の発展は、漢字を基礎としているからこそなしえた技であると思う。この発展の過程を漢字を通して跡付けることは、漢字考古学の研究の冥利に尽きると考えている。

 

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2023年8月22日火曜日

漢字「必」の起源は刀の柄にあり? 元々は何を意味していた?太古の人々が何に誓ったのか?


漢字「必」は元々は何を意味していた?太古の人々が何に誓ったのか?

漢字・必は今では必ず・必然という意味に使う。しかし漢字が意味していたものは驚くなかれ・・

  我々の祖先は最初から抽象的に物事を考えたわけではない。その謎を解くカギは、象形文字にある。

 甲骨文字では武器の柄の部分を表す。木に添え木をして補強し、縄や紐で周りをぐるぐる巻きにしたもので、木の棒単体より強度が増し、戈や斧などの柄に用いられた。

 この様にして両側から締め付けられた木は動く余地ががなくなることから、ずれる余地がなく、そうならざるを得ないという意味が引き出されたという。

 武器を手にしたら、必ず・・ という意味が含まれているのだろうか? 深読みのし過ぎ??




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漢字「必」の今

漢字「必」の楷書で、常用漢字です。
 兵器の柲部の形戈や矛・鉞等の頭部を柄に装着する部分を主とする形である。

 「秘」は「必」を初字として作られ。「必」は専ら副詞として用いられる
必・楷書


漢字「必」の解体新書


必・甲骨文字
戈と矛・斧、鉞などの兵器の柄の部分のデッサンです
必・金文
両側に点が加えられ、糸縄の巻き取りと漆の塗装を示します
必・小篆
両辺の点が長く引っ張られ、隷書化の後楷書の「必」の字になりました。


「必」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   ヒツ
  • 訓読み   かなら(ず)

意味
     
  • かならず、絶対に      ・・必然、必死
  •  
  • きっと行う、絶対やり遂げる ・・必読
  •  
  • 欠くことができない     ・・、必須事項

同じ部首を持つ漢字     必、柲、泌、秘
漢字「必」を持つ熟語    必要、秘密、必需、必然



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漢字「必」成立ちと由来

引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)

唐漢氏の解釈

 甲骨文字の「必」の字は戈と矛・斧、鉞などの兵器の柄の部分のデッサンです。金文は両側に点が加えられ、糸縄の巻き取りと漆の塗装を示します。この時期の武器の精巧な職人技を説明しています。小篆の「必」の字は、両辺の点が長く引っ張られ、隷書化の後楷書の「必」の字になりました。「必」の字の本義は兵器の「柄」です。

 史書によれば、「必」は工芸を表し、作りは十分に複雑な作りで、中は非常にいい、外は5から七辺の細長い竹の皮の包みで、後に麻の糸の糸巻きに用いられた。こうして作られたものは柔軟で強度が非常に高く、兵器の柄の持ち手に用いられた。

 

漢字「必」の字統の解釈

 象形文字。 兵器の柲部の形。戈や矛・鉞等の頭部を柄に装着する部分を主とする形である。
    必の初義には後に、柲という漢字が作られ、「必」はもっぱら副詞に用いられるようになった。



漢字「必」の漢字源の解釈

  象形文字 棒切れを伸ばすため両側から締め付けて当て木をして締め付けた様を描いたもの。 両側から締め付けると動く余地がなくなることからずれる余地がなく、そうならざるを得ない意を含む。柲(弓だめのあて木)の原字。弓だめとは:弓矯め/×檠 弓の弾力を強くするために、弓幹(ゆがら)を曲げてそらせること。また、曲がっている弓の材を、真っすぐに改めること。



漢字「必」の変遷の史観

文字学上の解釈

 漢字「必」の3款を示す。この字が戈や剣の柄の部分を意味していたとは、驚きである。金文の字が創作されてからもいう塚の変遷を経ながらも、文字としての利便性を整えながらも、美しさを供えて仕上げられている様は、ある種の感動すら覚える。



まとめ

  『沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。』は平家物語の冒頭の部分の下りです。今のプーチンを見ているとこの一句が思い浮かばれます。ロシア国民の心の中には、かつてのロシア帝国のノスタルジーが残っているのでしょうか。それにしても罪なノスタルジーです。今の日本にも、このようなノスタルジーが亡霊のように湧き出して、気味が悪い世の中になりつつあるようです。
  


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2023年8月20日日曜日

漢字・囚の成立ち:字の中にそのまま表現されている。囲いの中に閉じ込められた人


漢字・囚の成立ちと起源は甲骨文字にある。象形文字というより、状態を表す


導入

前書き

 いま世界を揺るがしている中東や民族宗教問題の起源は古く「バビロン捕囚」に遡るといっても過言ではないだろう。
 中東はヨーロッパとアジア、アフリカの交差する地点に位置し昔から多くの民族が入り乱れて覇を争ってきた。この事件が起こったのも、中国でいえば春秋戦国時代のころである。

 「バビロン捕囚」とは、ヴィキペディアによると概ね下記のように説明されている。

新バビロニアの王ネブカドネザル2世により、ユダ王国のユダヤ人たちがバビロンを初めとしたバビロニア地方へ捕虜として連行され、移住させられた事件を指す。 バビロン幽囚、バビロンの幽囚ともいう。
ユダ王国: c.930 BC-586 BC
イスラエル王国: c.1020 BC-722 BC

アッシリア捕囚: c.740 BC-538 BC
バビロン捕囚: 586 BC-538 BC

目次




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漢字「囚」の今

漢字「囚」の楷書で、常用漢字です。
 囲いの中に人がいる様
□は囲いであったり、地中の穴であったりする。
囚・楷書


漢字「囚」の解体新書


  
囚・甲骨文字
囲いの中に人がいる様
□は囲いであったり、地中の穴であったりする。
囚・金文
甲骨の文字の構造を一貫して受け継いでいる
囚・小篆
甲骨の文字の構造を一貫して受け継いでいるが
文字として洗練はされている


 

「囚」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   シュウ
  • 訓読み   とらわれ

意味
  • とらえて、収容所などに入れること(罪人などをとらえて牢などに入れる   例:囚人
  •  
  • 束縛する 
    縛りとらえる、囲いや檻に入れる
    制限を加えて行動の自由を奪うこと
  • 囚われる・・ 何かに拘泥し、抜け出せない状態
  • 捕獲した野獣、生け捕りにした敵(捕虜)

同じ部首を持つ漢字     囲・・原字は圍であり、同じ□でも囚のものとは成り立ちが異なる
漢字「囚」を持つ熟語    囚人、幽囚、虜囚、捕囚、囚禁

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漢字「囚」成立ちと由来

唐漢氏の解釈


 「囚」字は十分形象である。甲骨文「囚」じは構造からみて、これは人を地の中に押し込めたデッサンである。 金文と小篆の囚の字は甲骨文と一致しており、楷書はこの縁を引き継いでいる。

 




漢字「囚」の字統の解釈

 ▢(イ)と人に従う。人が□の中にある形で、拘囚の人をいう。説文に繫ぐなりとあり、虜囚の意。卜文の字形に、井中に人を記すものがあって、字形は囚に近いが、その文例から考えると、棺中に死者のある形で死の初文と思われる字である。死体のまま棺中に収めるものが囚の形で、即ちのちの死の初文である。

漢字「囚」の漢字源の解釈


会意文字:「□+人」で、枠の中に人を閉じ込めること。

まとめ

 象形文字であるが、特に説明の必要性は感じない。ありのままである。身体が実際に拘束されていることを表すが、精神的に拘泥され、抜け出せない状態を示すのにも使う。

  


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漢字・ 文は人の胸部に施した入墨の象形:人は何故自分の体に入れ墨をするのか


漢字の成り立ちと由来:漢字・文の由来は? 昔は入墨のことを「文」といっていたというのは本当なの?

 漢字「文」はそもそも入墨のことだった!人は何故自分の体に入れ墨をするのかの謎に迫る


 漢字「字」の由来
 

「文」と「字」
 古代中国では、子供が生まれたときに、家廟に出生を報告する儀式を行うが、その時「字」(あざな)を付ける。このとき、聖化のために額に字を描く。これを字乳という。この儀式により家族の一員としての資格が認められる。この字乳のことを「字」という。また成人したときの成人式の加入儀礼として、額に文身の文彩を施すことがある。この象形文様の文彩を「文」という。

文・楷書







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漢字「文」の今

漢字「文」の解体新書


 世界最古のタトゥーの証拠は、ヨーロッパで最も有名な凍結ミイラ「アイスマン」の体に彫りこまれているといわれています。
 翻って中国に目を移すと、中国南部の百越の国に入れ墨を施す風習を持つ民族がいたことが、魏志倭人伝などの文献から知られています。その魏志倭人伝には古代中国王朝の「第6代帝の夏后少康の子が紀元前20世紀あたりに、会稽に封じられ断髪文身(髪を短く切って、体に入れ墨を入れる)、もって咬竜の害を避く」と記されています。

やがて、この夏の国は殷の国に滅ぼされ、百越の辺りにいた民族も放逐され、中国の各地に飛散することになります。その一部がリー族として海南島に逃れ、文身の風習を引き継いで現在に至ったといわれています。
文・甲骨文字
文の甲骨文字には何款かが認められ
文・金文
甲骨文字を引き継いでいるが、胸の部分に「心」の象形文様が加えられている
文・小篆
甲骨、金文を受け継ぎ、よりシンプルに進化している
  このリー族は女性だけが、入れ墨をまとう。顔、首、胸、手足におよび、図案は地域や氏族ごとで異なっている。リー族は、独自の文字を持たないため、入れ墨の図案が民族文化を表現する方法になったといわれている。

 


 

「文」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み  1.ブン  2.モン   
  • 訓読み  1.ふみ  2.あや 3.かざ-る

意味  文章、雰囲気、飾り、入墨

成り立ち   両手で引き上げる状態と、建物と物を組み合わせた状態の絵が組み合わさって生まれた漢字。

 使い方
  • あや  文様:さまざまな形や模様
  • ぶん  例:文章 文書、文面
  • ふみ  書物
     「手紙」(例:恋文)
     「学問。芸術。ぶん。」(例:文武両立、文化)
     「漢詩(中国の詩)」
  • 飾り 外見を美しく飾る事 例:文飾  
  • 彩り
  • 入墨・入墨をする

文を要素に使った字   吝 汶 蚊 紋

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漢字「文」成立ちと由来

引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)

唐漢氏の解釈

  漢字「文」は会意文字とする。氏の解釈は、「文」は母畜の発情期を表す漢字で、これを知ることが古代では、家畜の繁殖を促進するうえで、非常に重要なことであったと主張する。

 その重要性は認めるが、氏の見解は少し荒唐無稽に思えて仕方がない。興味のある方は、原典を参照されたい。


漢字「文」の字統の解釈

  「文」は象形文字です。甲骨文の学の字は文身(入墨)の形。 卜文・金文の字形は 人の正面形の胸部に文様を加えた形 聖化のために朱などで加える文身をいう。

  《説文》に 錯われる画なり。 交文に象る。 その全体を交錯する線と解するが 字の全体は、人の正面型であり大にくらべて胸郭の部分を広くしている。 金文の字形はそこにX印や心字形の文様を加える。

 金文の文に文様として心字形が加えられているため後の伝承者が誤ってその「文」を「寧」と解釈し、ついに語義不明の「全寧人」「寧王」となったもので、元の「文」の字である。

 文は祭事に文祖・文考・文母のようなように先人に冠していう語で、文は 死者のいわば聖記号である。 死葬の時朱を以て胸にその絵身を加えて死体を聖化し祭る時は文を冠してよんだ。


漢字「文」の漢字源P682の解釈

 象形文字。元土器につけた縄文の模様の一コマを描いたものでこまごまと飾り立てた模様のこと。のち模様式に描いた文字や生活の飾りである文化などの意となる


漢字「文」の変遷の史観

文字学上の解釈

古代中国 入れ墨(ChatGPTより)
 古代中国における入れ墨について、いくつかの歴史的な事実をご紹介します。古代中国では、入れ墨は特定の時代や地域によって異なる目的で使用されましたが、一般的には貴族や武人、囚人などが身体に刺青を施すことが行われていました。

  1. 身分や地位の表示: 古代中国では、入れ墨は身分や地位の表示として用いられることがありました。特に武人や軍人は、部族や部隊を示す刺青を身体に入れることで所属を表しました。また、官職や地位に応じて刺青が行われることもありました。

  2. 刑罰としての入れ墨: 古代中国の刑罰制度では、一部の犯罪者に対して入れ墨が刑罰として用いられることがありました。特に重い犯罪者や反乱者に対して、罪状や処罰内容を示すための入れ墨が施されることがありました。これは社会的な汚名としての意味合いも持っていました。

  3. 儀式や宗教的な目的: 一部の部族や宗教団体では、入れ墨が儀式や宗教的な儀礼に関連して使用されることがありました。これは信仰や宗教的なアイデンティティの一環として行われたもので、神聖な意味合いを持っていました。

  4. 美的要素: 一部の場合において、入れ墨は美的な要素としても使用されました。特に芸術家や詩人など、文化的な人々が身体に詩や絵を入れることで、個人の創造性や独自性を表現する場合がありました。

  5.  しかし、これらの実践は時代や地域によって異なり、古代中国全体で広く行われたわけではありません。また、時が経つにつれて入れ墨が社会的に受け入れられなくなることもあり、後の時代ではあまり一般的ではなくなりました。  以上のように、古代中国において入れ墨は様々な目的で使用されていましたが、文化や時代によって異なる意味を持っていたことがわかります。

まとめ

 我々にとって、今やDNAにもなっているのではないかと感じさせる、「文」と「字」の由来と成り立ちを見たが、全く思わぬ由来を持っていたことに驚かされる。これだから「漢字の由来と成り立ち」を探求する旅は止められない。
  


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2023年8月19日土曜日

漢字「字」の由来:子供が生まれた時に家の廟に出生の報告をし、つけた「字」(あざな)に由来する


漢字「字」の由来:子供が生まれた時に家の廟に出生の報告をし、名を子供に与える風習から生まれた字:人々が子供を如何に慈しんで来たかが分かる





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漢字「字」の今

 「字」の楷書で、常用漢字です。
 私たちが日常的に使っている最もポピュラーな漢字「字」です。今まで気にもかけずに使ってきたこの漢字の生まれ・由来について、考えた方は数少ないのではないでしょうか。そうです、あまりに身近すぎる字ですから。

 見て直感的に分かる「ウ-カンムリ」と子供を表す記号から成り立っています。




漢字「字」の解体新書


  
字・金文
屋根+子供で子供が生まれたことを表現している。
字・小篆
基本的に金文を受け継いでいるが、書きやすいように簡略化されている
「字」は子供の養育をも表しており、成人したときに付ける字名(あざな)のことを表すようになった
字・楷書
小篆からさらに隷書化の過程で簡単化され、且つ字として整理された
字・甲骨文字
字・金文
字・小篆




 

「字」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   ジ
  • 訓読み   あざ

意味  子供の出生から、養育をも表す

成り立ち   宀と子に従う。宀は家を表し、子は子供を表す。両形の会意で、家で子供を育てるという意。

使い方
  • 「言葉を表す記号(文字)」・・漢字、文字
  • 「アザ」        ・・源九郎義経
  • 「音を表す 表音」   ・・特朗普



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漢字「字」成立ちと由来

引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)

唐漢氏の解釈

 漢字「字」は会意文字です。金文の「字」は上部は屋舎のデッサンで、その中は嬰児の素描です。両形の会意文字で、家の中に子供を追加して俗にいう「男の子が生まれ、口が増える」。小篆と楷書は、金文を継承し、脈絡は十分明らかです。「字」は説文では「乳」なりとしている。「すなわち子供を産み育てることをいう。」
 現代では「字」は3つの意味を持っているといわれており、その一つは文字で漢字、常用字などです。その二は字音です(音を表現する「字」)。第三には「字」(あざ)です。人名の中の字義に基づいて別名をとります、「諸葛亮」字「孔明」のようなものです。




漢字「字」の字統の解釈

  会意兼。宀と子に従う。宀は家廟。に子の出生を報告する儀礼で、これによって養育・字養のことが定まり、またその時「字」(あざな)を付ける。これを字乳という。




漢字「字」の漢字源の解釈

 会意兼形声:屋根+子で、屋根の下で大切に子供を育てることを表す



漢字「字」の変遷の史観

文字学上の解釈

 漢字の「字」の3つ目の意味に字(あざ)あります。
 ただしこのあざなは子供が生まれた時に家の廟に出生の報告をし、同時に字名を子供に与えるという習慣が本来あったもののようです。
 従って漢字「字」は氏姓制度の確立と共に生み出されたといえましょう。しかし、時代が下り、特に成人した後、親がつけた名前だけでなく、自分自身で名乗るようにもなった。
 このようなしきたりが横行した背景は、中国では名前が一字の場合は多く混乱を招くことがあったことと、世の中は複雑になり、氏姓制度のみでは成り立たなくなったこともあるようです。

まとめ

 漢字「字」には、古代人が子供の出生を喜び、子供を大切に育ててきたかが込められている。
  


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2023年8月13日日曜日

漢字「人」は、人間のどの様な状態をから生まれたのか? 少しひざを曲げた側身を表したもの


漢字「人」は、人間のどの様な状態から生まれたのか? 少しひざを曲げた側身を表したもの


導入

前書き

 人という字は、お互いに助け合うから二本の線が寄りかかったような形をしているのだという説がある。これは文字学者から言えばとんでもない誤解だということである。

 この「人」という字は象形文字であって、足で立ち上がった様子を側面から眺めたものだということが定説のようである。

   ここでは、なぜ側面からの立像なのかの理由も追及してみたい。

目次




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漢字「人」の今

  確かに甲骨文字を見ると二本足で立ったかのような様子が伺える。

しかしもう少し詳細にこの文字を眺めてみるとまっすぐ直立しているのではなく前屈しており、手を前に垂らしているかのような様子に見る。
 この文字から歩いているとか、まっすぐ直立不動で立っているという様ではない。なぜだろう。  確かに、我々が他人を見るとき、直立不動で立っているとか、あるいはまっすぐ立っている様子というのはあまり見られるものではない。
 人々は絶えず動いており何らかの連鎖的な動作の中の1ステップにあるとすれば、立ち上がりかけの状態とかあるいは少し構えて次の行動に移ろうとする状態が多いのではなかろうか。

 古人が人間を観察した場合にこの漢字のような状態を見てしまっていうのはある意味自然なことではなかろうかと考えられ、改めて古人の観察力と表現力に感心する次第である。

楷書「人」:甲骨文字「人」:
少し前屈な姿勢はなぜ?

漢字「人」の解体新書

漢字「人」の楷書で、常用漢字です。
 
人・楷書


  
人・甲骨文字:前かがみで、腰が少し引け、膝をを曲げ、次の行動に移りやすい姿勢をとっている
人・金文
真ん中から左斜め下に突き出した線が足であるとは言い難いのだが
人・小篆
図形を文字化する際の一様性が出ているのか


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「人」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   じん・にん
  • 訓読み   ひと

意味
  • ひと
  •  
  • 数量詞
  •  
  • 人種を表す集合名刺 

同じ部首を持つ漢字     作、儀、供、伴、侶、備
漢字「人」を持つ熟語    人類、人間、人類、殺人


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漢字「人」成立ちと由来

引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)

唐漢氏の解釈

 「人」之は典型的な象形文字である。図に示すように典型的な象形文字です。 図に示されているように、「人」という字のイメージは、横向きの人の立像で、甲骨、金文、小篆および楷書体で、全て簡潔で明快な線状の組み合わせです。

 「説文」はこのことを述べています。 これはまさに人体の突出した四肢と明確に使い分けられた手と足を示しており、人の特質を示しています。また側立の形を用いて、人と動物の典型的な特徴を示してる。

 「人」の字は単純で、振りかけるのは1つだけですが、古代人の物事の観察の綿密な精度と精度を反映しており、古代人が自分自身を理解する能力を示しています。人と他の動物の主な違いは、手足、人と動物の違いは直立して歩くことであり、人間は両手を解放して道具を使用することが可能になった。

漢字「人」の字統P479の解釈

 象形字 人の側身の形。説文に「天地の性、もっとも貴きものなりとする。」卜文、金文ははみな側身形、匈、包、身などみなその形に従う。夷の卜文、金文の字形もこれに近く、いくらか膝を屈する形に作る。

漢字「人」の漢字源の解釈

 象形。人のたった姿を描いたもので、もと身近な同族や 隣人仲間を意味した。 孔子は、その範囲を「四海同胞」というところまで拡大広く隣人愛の心を仁(ヒューマニズム)と名づけた。

【単語家族 二(二つくっついて並ぶ) 爾(そばにくっついている相手、なんじ)・尼(相並び親しむ人)・仁と同系。


漢字「人」の変遷の史観

文字学上の解釈

第1図
「人」・甲骨文字
第2図
人偏・甲骨文字

「人」の甲骨文字は、字統には、左の第1図のごとく、人の側身の形。説文に「天地の性、もっとも貴きものなりとする。」卜文、金文はみな側身形、匈、包、身などみなその形に従うとある。

 以下「人」という漢字はこれが基本形となっている。さらに人偏の甲骨文字は、左の第2図の通りである。人偏は、まずは対象を明示し、部首や旁と共に、漢字における人間の属性を示す。
 さらに部首の中に入って、文字の在り方を示す。(例:囚、閃)




まとめ

 古代人の観察の細かさ、表現の豊かさには本当に感心する。
   漢字「人」は基本的な漢字として、実に多くの概念を派生しながら生き続けてきた。漢字の「人」の旁や偏を通して漢字が如何に構成されているかを見たが、非常に構造的に、機能的に構成されており、実に論理的な思考がなされているか感嘆する。これが文化だ!
 これらは分化する前の中華民族の優秀さをいまさらながら誇示しているように思う。


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2023年8月12日土曜日

漢字 学の成立ち:「宀+ 攴+手」からなる。漢字・学から先人たちの知恵を学ぶ


漢字の成り立の意味するもの:漢字 学は「宀と爻、子、臼」からなる。千木(チギ)のある建屋の若者(子)の教育の場を表す


漢字の成り立の意味するもの:漢字「学」は「宀と爻、子、臼」からなる。千木(チギ)のある建屋の若者(子)の教育の場を表す




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漢字「学」の今

漢字「学」の楷書で、常用漢字です。
漢字の成り立ちと由来:漢字「学」から学ぶ古代から続く学びの大切さ。

 漢字「学」の旧字体です。この漢字を構成する要素は、「宀、爻、子、臼」の4つの要素から成り立っています。それとは逆に、女は成長すると、家を持つことができ、男たちは女の下に通っていたようです。
 この要素の内、「宀と爻」は屋根に千木(チギ)のある建屋を表しています。

 この当時の部落では、若い男たちは家を持たされず、集団で生活をしていました。
 この建屋は、メンズハウス的な役割を果たしていて、若者の教育、訓練などが行われていたようです
学・楷書学・旧字体


漢字「学」の解体新書


  
学・甲骨文字
屋根の上に千木(チギ)のある建屋を表している
学・甲骨文字
甲骨文字「学」の異体字で、両手を示す「臼」で、中に滞在する子弟のケアに当たっていたことを示している。
学・金文
金文には建屋だけではなく、中で教育を受ける子弟を明示的に表す「子」が建屋の中に表示されている。




 

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「学」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   ガク
  • 訓読み   まな(ぶ)・

意味  教えを受ける。経験によって知る。先人を模倣して、会得する

成り立ち   両手で引き上げる状態と、建物と物を組み合わせた状態の絵が組み合わさって生まれた漢字。

使い方
  • 「まなぶ・がく」 
  • 「教えを受ける」・・学校で学ぶ) 
  • 「経験することによって知る」・・生き方を学ぶ 
  • 「悟る(理解する)」・・仏教の教義を学んだ 
  • 「習う・・教わったことを繰り返し練習して身につける
  • 「見習う・・人のする事を見て覚えたり・見て真似をしたりする。
  • 「学ぶ事」・・学問  「学ぶ人」・・先学
  • 「学ぶ所」・・学校

熟語   学校 学問 学派 先学 地学 共学

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漢字「学」成立ちと由来

引用:「汉字密码」(Page、唐漢著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「学」は会意文字です。甲骨文の学の字はと臼と宀からなる。宀は屋室の象形で、爻は  両手の形は手で演算を示している。3形の会意で、部屋の中で人に演算を教えている。金文の学の字は部屋の下に「子」を追加して、明確にこれは子供を教育する場所であることを示している。小篆と楷書は金文を受け継ぎ、一脈通じている。漢字は簡体化の後『学』となった。

 《孟子》は「夏は曰く校、殷は曰く序、周は曰く庫と、学は即ち三代とも之なり。《左传·襄公十一年》で、陆德明は《释文》で、いわく、郑の人はいわゆる学を校という。説文に、校の字に対して「校」を解釈して「木囚」なりとしている。校の本義は柵欄である。個人はいわゆる学校を固定的な場所で子供に強制的に読書を教えたところとした。垣根や柵で自由を制限したようです。この為に読書の場所は「校」と称しました。また学とも言えます。


漢字「学」の字統の解釈

 旧字は學、爻,臼,宀,子の4字からなる会意文字。元はメンズハウスを意味する建物の形が学の初文で、両手を示す「臼」、「子」はそこに入る子弟をしめす。


漢字「学」の漢字源の解釈

 会意兼形声。は交差する様を示す。先生が知恵を授け弟子がそれを受け取って習うところに伝授の交流が行われる。宀は屋根のある家を示す。學は「両手+宀+子+音符爻」でもと伝授の行われる所つまり学校のこと。

漢字「学」の変遷の史観

文字学上の解釈

   甲骨文字の時代は、男子は、集落の中の寄宿舎で、集団で生活していた。彼らは集団生活の中で、ありとあらゆることを教え込まれ、一人前の成人になる素養を身に着けていった。そして成人になると、一家を構えた女性の家に入り、家庭を持つことを許された。この学という字は、寄宿舎の中で手厚く教育されることを示している。



金文の時代になると、社会の発展に伴い、規模も大きくなり、寄宿制度のシステムは高度なものとなっていった。そして教育も厳しさを増し、それまでの養育だけではなく、こん棒で叩き込まれるようになっていった。そして、彼らは団体の中で指導的な地位を占めるようになる。


  小篆の学の字は、金文を踏襲している。この時代はそれまでの社会と大きな変革が起こった。つまり母系制社会から、父系制社会となり、国家も統一され、秦朝のような強大な統一国家が成立する。この時代では、生産力は大きくなり、貧富の差が生じ、階級が出現する。




 秦の時代から、封建社会に入り、隋、唐・・・と社会は発展していくが、文字は楷書(繁体字)が長く使われる。簡体字が出現するのは、実に20世紀に入ってからで、中国革命がおこり、新しい社会の時代的要求に応える必要に迫られたからである。





まとめ

 漢字ができた当初、学校ができたとは思われないが、氏族共同体の中心的役割を担っていたことが漢字「学」から分かる。
 「学」は会意文字で、屋根のある場所で、教師の指導を受けながら、子供が学ぶ様子を表している。 
 男の若者は共同で村の防衛にあたり、共同で狩りなど作業し、共同で生活をする中で、様々な教育が施されていったのだろう。
  


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