2018年9月29日土曜日

漢字「不」の起源と成り立ち:花のガクの象形という見方と月経を表現したという見方・・いずれが正しい??


漢字「不」の起源と由来

引用:「汉字密码」(P489、唐汉著,学林出版社)

「不」の字の成り立ち」
 甲骨文字の中で「不」の字の、上部は逆三角形で、まるで女性の陰卓の形状である。このことから女性の生殖器を表わすようになった。実際上、世界の多くの民族は両性の符号を陰卓部位の陰毛の形状で表わしている。 たとえばインド教では。等辺三角形は性の表示を示し、上向きにとがったものは男性、即ち男陰部、下向きに尖っているのは女性、即ち女陰部を示す。
 このことから「不」の上部の▽は女陰の象形のデッサンである。下部の縦線の流れのような線は女性の月経を表している。だから「不」の本義は女性の月経であり、この短い一時期は性交を拒絶することを示している。


なぜこのような解釈が可能になったのか
 原始社会の末期、上古先民は既に月経期の性交が不衛生であることを認識していた。さらに鮮血の忌み嫌う文化により、心理的に定着し、月経時期の性交は絶対禁止と見られるようになった。「不」は女性の拒絶を表示し、女性が嫌だといえることを表示し、この権利の拡張である。以来「不」は一般的に否定の意味に用いられるようになった。

現代の「不」の用例
 [不刊之论、不可救药、不一而足]の成語中不の字は全て否定の意味である。不の字を動詞の前面に用いた時、ある種の願望的否定で、たとえば「我不子、我不去」等。

白川博士の解釈
 「不」はもとは象形で、花のガクの形であるが、この字が本義で用いられることはない。しかし、現実は仮借である、否定の意味に用いられていると説いている。

後書き
 「不」の字を見て、花のガクと見るか、女性の陰部と見るかにより、その後の展開は当然大きく異なる。
唐漢氏の解釈は、これは本当かなと思う台詞である。あまりにもうがった見方ではないだろうかと思ってしまう部分はある。少し露骨過ぎて品がないように思う。学問の世界に品などというものを持ち込むことは許されないかもしれないがこの部分は少し腰が引けるところでもある。翻って見ると、古今東西、逆三角形は、器とみなされ、女性の象徴のように捉えられ、逆に三角形は男性の象徴のように見られてきたのは事実である。


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2018年9月28日金曜日

漢字「也」の起源と成り立ち:太古の生殖崇拝の現れ


漢字「也」の起源と由来

引用:「汉字密码」(P493 、唐汉著,学林出版社)

「也」の字の成り立ち」

「也」説文では、「也は女陰なり、象形文字」と解釈している。秦刻石の”也”の字である。これがいうには、女性の生殖器の象形であるとし、小篆で




と書く。昔からいろいろの解釈があり、反対者もはなはだ多かった。


甲骨文字では育の字は左のように描く。嬰児の出生の一般的状況下で頭が先に出てくる。このため倒置すると、女陰を示す甲骨文字の也という字から嬰児が出てくる模様を完全に表現したものと考えられる。

也の本義は既に消失しているが、今日では多く使われ、漢語の虚詞を作る。
 又漢語の多くの構成要件にもなっている。「地」が生殖の土とで、地は土と也からなる。池は水中で万物が繁殖するところで、水と也からなる。
 也の仮借は虚詞も作り、主要には判断の語気の言葉に用いられる。也の字は又副詞にも用いられる。

 これに対し白川静博士は、説文にあげるのは秦漢の時の字形で、也の初形ではないとしており、也の匜という水器の形だと主張する。


古人は如何に考えたか
 古人にとっては、子孫の反映のため、今以上にセックスは重要なことであった。そのため生殖崇拝が広く信仰され、世界のいたるところで、男根、女真を奉ることが行われていた。今でこそ、ある意味卑猥なこととして見られているが、古人にとってはそれは切実なことだったと考えられる。
 そのことからしても、漢字の中にこういったシンボルが使われていたと考えるのは、ごく自然のことだと判断される。


漢字源の解説
 漢字源では、「也」は平らに伸びたサソリを描いたものという。ここでサソリが出てこようとは思わなかった。
 

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2018年9月26日水曜日

漢字「妥」の起源と成立ち:手と女からなり、慰撫するという意味から発展し、安定を表わす。今日では適当という意味に使うことが多い


漢字「妥」の由来
 手と女からなり、慰撫するという意味から発展し、安定を表わす。漢字の成り立ちからいうと、男尊女卑の概念を色濃く残した漢字です。女の頭をナデナデすることを表現している。しかし、最近では、女の頭を撫ぜてうまくいくことは殆どない。むしろ、男の頭を撫ぜて、その後ろに控える奥さんに納得してもらうことで旨くいくようなことが多いようである。

引用:「汉字密码」(P502、唐汉著,学林出版社)
「妥」の字の成り立ち」
「妥」は会意文字である。甲骨文字の「妥」の字の左辺は手(爪)で右辺は背筋を伸ばして膝まづいている女の人の形である。金文形体は基本的に甲骨文字と同じである。小篆の妥は手が女の人の頭の上に置かれている。
 これは構造が合理的であるばかりではなく、さらに文字の表意・・意味するところを顕示するものとなっている――手を用いて女性を慰めたり抑えたりすることを示している。それは安定を表わしている。
  「妥」の字の構造は女子を安撫させ、それを安定させる。妥の字は安定する。このため妥の字は安穏・安定の常用を示す。稳妥、妥帖(穏当であるや妥当)であるのごとく、「妥」は制限する、抑えつけるの意味がある。
 解釈としては、「字統」(白川静著、平凡社)にもほぼ同様の解釈をしている。

古人は「妥」を如何に用いたか
 杜甫の《故司徒李光粥》 にあるように「兵を抑え、河やぬかるみを抑えて、千里が始めて穏当になる。ここの妥帖は武力が安定するの意味である。また拡張され、適当、適合を指し、人々が常に口にするように、「不妥」(不適当である)もまた適切でないという意味である。「妥善、妥为安排、欠妥」の中の「妥」の字は全て、適当、適合の意味である。

 話し合いで対立していた双方が、適当なところで折り合いを付けることを妥協、妥結といい、適当であることを妥当という。  

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