2022年11月14日月曜日

漢字「貞」:神にお伺いをたてるということから、ある種の神聖な響きを持ち「貞淑」と使われる


漢字「貞」の成立ちと由来:神にお伺いをたてること
 「貞」と聞けば、「貞淑、不貞、貞操」などの言葉がすぐ頭に浮かぶ。道徳的な意味合いによく使われることが多いようだ。
 国語辞典によると女の操を守ることを「貞」としている。女が美しさを保つためには、毅然とした姿勢を保つべしというところからきているのかも知れない。貞が使われている言葉の多くは女性に関するものだ。「貞」が付く言葉で男に係るものは、童貞ぐらいなものだ。これも封建遺制ともいえるが、「種の保存」という別の見方からすれば、至極当然なのかもしれない。動物の世界でも摂理である。

 それがはるか昔に「力」という一点だけから自然の摂理に反し、「男尊女卑」になったのが、
 人間の不幸の初まりなのかも知れない。
 誤解を覚悟していうと、女は子孫を残す原点で、男は「生むという」ことに決定的ではない。
 力を有する「男」が「女」を隷属させるためには、物理的な力以外の何かが必要である。それが、神であり、神の声をを聞くための『お伺いや占』が必要であった。
  少し話がずれたが、「貞」という言葉は、占いから生まれた言葉だ。鼎にかけて卜するというのが本来の意味であるというのが定説であるらしい。
貞・楷書


 
  
「貞」・甲骨文字
「鼎」
鼎の象形文字
「貞」・金文
「鼎」+「卜」
から構成される会意文字です
「貞」・楷書
金文を継承している


************************************************

「貞」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   テイ
  • 訓読み   さだ、ただ

意味
  • ただしい。
  • 心が正しい。
  • みさおを守る。

同じ部首を持つ漢字     偵、媜、遉、楨、碵
漢字「貞」を持つ熟語    貞操、貞淑、不貞




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「貞」は会意文字です。甲骨文の「貞」の文字は、上下が結びついた構造で、上が卜で、鼈甲や牛の骨で占うことを意味する、下が鼎の象形のデッサンです。これが祭器の鼎の意味であり、重さであり、実在であり、このことの確実性を表す。 『金文』の第一款の「貞」は甲骨文を継承し、第二款の「貞」は下部の「鼎」の形を変えて「貝」に簡潔にしている。小篆や楷書は間違いを重ねて「真」と書きますが、漢字が簡体字の時にと「貞」に簡略化された。

漢字「貞」の字統の解釈
 正しい字は鼎に作り、鼎と卜とに従う。鼎をもって卜するもので、探湯盟誓のような方法であるのか、湯神楽 のような方法であるのかあるいは鼎中の犠牲の様子によるものであるのか何とも明らかにしがたいが、ともかく鼎を用いる卜問 の方法であることには疑いはない。


まとめ
 「貞」とは本来、鼎を用いる卜問を表していたが、男性社会の中にあって、女性に対し「貞節を守る」という意味にもっぱら用いるようになった。貞節を守ることはいいことであるが、なぜ女性だけに要求されるのか?



「漢字の起源と成り立ち 『甲骨文字の秘密』」のホームページに戻ります。

漢字「卯」:2024年の干支は「卯」うさぎ年ならば、身の安全はウサギの保身術を見習ったら

2023年の干支は「卯」我が唐漢氏は『古代人は、天体の規則性を人間の出生から始まる身近な事柄に当て嵌めていた。それが十二支の原義である』と説いた

  来年の干支は「卯」。これは象形表意文字だ。「子丑・・」から初めて4番目に位置する。

唐漢氏の解釈 
 唐漢氏は『古代人は、天体の規則性を人間の出生から始まる身近な事柄に当て嵌めていた。それが十二支の原義である』と説いた。
 この説は、通俗的であり、感覚的に受け入れ易いものである。しかし、天体の規則性を認識することと、身近に起こる出来事を結び付けるには別問題で、体系的な認識が必要で、直感的にできるものではない。
 甲骨文字の字形は嬰児と胎盤が母体から出ているが、両体が共存する状態からの母親と嬰児の間の分離を見ることができる。卯の字は育産を体現しており、この苦痛であるが偉大な過程が完成した状態を示しており、一個の新しい生命の誕生を表示している。金文の卯は甲骨文字と同様であり、小篆は字形に美観と丸みを持たせ上部に横に広がりが出ている。楷書は簡単さがなくなり、繁雑になって、模倣して(猫をまねて虎を描くということわざがある)卯になった。 

 人間の胎盤はおおよそ400-500gで嬰児の6分の一程度である。卯の本義はもともと母と嬰児、胎児と胎盤の分離である。だから「分」と「産」の意味である。これが即ち卯の字が物象の源であると説く唐漢氏の考えである。

 卯は卵の形の上の基礎になっており、卯を知らずしてどうしても卵と識別する方法もない。分体の意味は子供を産むことの完成であり、だから原義は拡大され「止」の意味を持ち、ないし「留」形の源にもなっている。胎児と胎盤の割断から、拡大解釈され「殺」の意味を持ち、「劉」の繁体字の由来でもある。


字統の解釈 字統P794
 牲牛の肉を両分する形。
 卜辞に犠牲を卯す(ころす)意に用いており、それが字の初義である。
 説文に「冒なり」と同声の字をもって訓し、卜文と金文の字形は牲牛の肉を両分する形と見られる。我が国の俗説はふ古く卯の日の信仰から来たものと考えらえる。



 

卯・兔にまつわる成語
 うさぎは体も小さく運動能力も優れているわけではない。そのために外敵も多く、狐、狼、鷲などに狙われやすい。したがってうさぎの危機管理に関わる言葉ことわざなど教訓として今日まで受け継がれている。
狡兔三窟
狡兔三窟・・・かしこい兔は多くの隠れ穴を持つ。あらかじめ逃げ道を用意しておき、巧に身の安全を図る。
 


兔子不吃窝边草
兔子不吃窝边草・・・うさぎは自分の巣の傍にある草を食べない



2011年に「卯」の説明はこちらをクリックしてください。


「漢字考古学の道ホームページ」に戻ります。

2022年11月2日水曜日

「占」:王は権威付けのために「占い」を行い、その記録を文字に残した。それが甲骨文字である。

漢字「占」の起源と由来「占」は漢字の発明の母?

  王は権威付けのために「占い」を行い、その記録を文字に残した。それが甲骨文字である。
 とすれば「占」は漢字の発明の母である。

 
占_楷書
昨今占いブームである。マスコミには数々の占い師が登場し 持ち前の技能を指導している。 ひところテレビでは、 FBI の今日の超能力と言われる捜査官が登場し行方不明になった方々を探し出すと言う企画が画面を賑わした。これも一種の占いである。
  占いの歴史は古く占星術がバビロニア、エジプト、中国などの古文書にも登場する。 中国では三国志の中で諸葛亮孔明が占いにより戦略を決めるといった場面が我々にもおなじみである。
その中国で歴史上、明らかになっているものは殷の時代の占いの記録の甲骨文字が現在に残されている。これは亀の甲羅を火あぶり、甲羅に出来た亀裂から、いろいろの物事を占うというもので、この占いは神聖化され、王の言葉を決定づけるものとして独占的に占有され、記録に残されている。 甲骨文字に記されているのは甲骨文字という文字であるが、漢字漢字の原始形態といわれている。
 中国文化文化は漢字文化といわれるが、この漢字が占から生まれたとすれば、この占いこそ文明の母といってもいいのではないだろうか。
 ここには少し論理の飛躍がある気がするが、占は文化の発展の一翼を担っているという位置づけぐらいはあるのかも知れない。



引用:「汉字密码」(Page、唐漢著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「占」、会意文字。 甲骨碑文の「占」には二つの書き方があり、小さな会意文字です。 甲骨文の「占」は2款があり、簡単なものは上部は一つの小さい卜で、下辺は小さい口で、両形の会意で骨の形は単純です。
 金文と小篆の「占」の文字と甲骨文の第2款は相同で楷書に受け継がれている。楷書も引き継がれて「占」と書かれています。
 殷と商の時代には、「王」だけが祖先や精霊と通信する絶対的な力を持っていた。したがって、占いの人が占の卦を行った後、王はしばしば兆紋と卜辞をチェックして修正し、最終的な吉凶の決定をした。これは甲骨文字中の「王占曰く」という模範文にも表れている。     「説文」では「占、兆しを見て問うなり」と解釈され、「占」の本来の意味は、記号や言葉を見て、最終的に善悪の意味を判断することであることがわかる。
 「卜」は「占、占い、夢占い、占星術」など、物を観察して良し悪しを判断することである。このことから、一般的な意味での「測定と検査」に拡張され、「後漢書・虞诩传」:「地勢を占う」など、地理的な状況を検査して判断することにも用いられた。
   王の最終決定から、「主導権を握る、優位に立つ、優位に立つ」など、一定の優先状態にあるように拡張され、そこから拡張され領有の意味に解釈される。


字統の解釈 P515
 会意文字 卜と口とに従う。 卜は甲骨による占いの時の卜兆の形。口はサイを表す。祝禱をおさめる器の形で神に祈りながら卜問をすることを占いという。説文では兆を見て問うなりといい、会意文字とする。口を口舌の意としているが祝禱の意である。  



漢字源の解釈P214
 会意文字。 「占+口」。この口は「くち」ではなくあるものやある場所を示す記号。 占いによって一つのものや場所を選び決めること。

 

「漢字の起源と成り立ち 『甲骨文字の秘密』」のホームページに戻ります。

2022年5月28日土曜日

漢字「固」の持つ意味は? 二つとないものを指していた。後に『個』が派生する


漢字「固」:成り立ちと由来、元々二つとないものを指していた?
 漢字「固」から派生した言葉に『個』ある。この元々の使い方は、「偏なり」と解釈され、片方だけのものを指していたようだ。それにしても、「個性」とはなんと素晴らしい翻訳語ではないか。

漢字「固」の楷書で、常用漢字です。
 「古+口」で語義は、干(盾)を口で囲って保護する意味。

 柵を用いて囲ったりする堅固な地のことである。拡張して、牢固な事物を指す。
 個性などの「個」のように用いられるのは、比較的新しい使い方だそうだが、個の元々の使い方は「偏なり」と解釈され、片方だけのものを指していたようだ。それにしても、「個性」とはなんと素晴らしい翻訳語ではないか。
固・楷書


 
  
固・甲骨文字
盾の象形文字で象形であって中と或いは申すと書く。下部は落とし穴の関係の口を示す。両者は両者は防衛防護物を意味する
固・金文
城の入り口と疎外物に当たる
固・小篆
以上2文字の会意で、即ちとか直ちにを意味する
個・楷書
「固」の派生語


    



「固」の漢字データ

 

漢字の読み
  • 音読み   コ
  • 訓読み   かた(い)

意味
  • かたい、固くする、固める
    しっかりしている、丈夫、頑丈な
  •  
  • かため(守備、守り)、警固、備え
  •  
  • かためる、固定する、固くする、凝固させる
    しっかりと安定させる

同じ部首を持つ漢字     固、個、箇
漢字「固」を持つ熟語    固辞、堅固、固執




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「固」説文では「固」は四塞なりという。いわゆる城郭の周囲を堀で囲ったり、柵を用いて囲ったりする堅固な地のことである。拡張して、牢固な事物を指す。《苟子•议兵》:『高城深池不足以为固。』(高い城と深いプールはしっかりするだけでは十分ではありません。)

 



漢字「固」の漢字源の解釈
 会意兼形声文字。 古は固く、干からびた頭蓋骨を描いた象形文字。 固は「口+音符古」で周囲からカッチリ囲まれて動きの取れないこと

漢字「固」の字統の解釈
 会意文字。古と口とに従う。古は祝禱の器の上に聖器としての干を置き、その祝禱の呪能を護るの意であり、固はそれに外囲を加えて、一層厳重にこれを固守する意を示す。ゆえに固閉・堅固の意となる。箇のは説文によると竹べらを指し、ものを数えるのに用いたとある

まとめ
 祝禱の器の上に聖器としての干を置き、その祝禱の呪能を護るという意にせよ、周囲をがっちり固めるにせよ、固くなったものを指すことには間違いがない。又個人、個性などという語はいずれも新しい翻訳語である。





「漢字考古学の道」のホームページに戻ります。   

2022年5月11日水曜日

漢字「啓」の成立ち、由来:神の言葉の祝禱の入った扉を開き、広く明らかにする


漢字・啓の由来、成立ち:神の言葉である祝禱の入った扉を開き、広く明らかにする
 启は説文は「開なり」これは開門の意味がである。大まかに出るということを示している。封筒の上に常にXX啓と書くすなわち人に開けさせるという意味である

漢字「啓」の楷書で、常用漢字です。
 上部は「戸+手」で語義は、手で開くことを表わしている。
啓・楷書


  
啓・甲骨文字
開き戸の「戸」+手
啓・金文
字統では祝禱を収めたサイを手で開くことを表している漢字
啓・小篆
字形を整えた


    


「啓」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ケイ
  • 訓読み   ひら(く)

意味
     
  • ひらく、開放する、開ける、教え導く (例:啓発)   
  • 教え広げる   例:啓発
  •   
  • 貴人に申し上げること、またはその文書
  •  
  • 広がる、広げる
  •  
  • 申す、申し上げる   例:拝啓

漢字「启」を持つ熟語    啓示、啓蒙、拝啓、啓発、啓蟄

引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 甲骨文の啓の字は会意文字である。右半分は戸口の戸でひとつの開き戸のことを示す。左半分は手である。人が手で開き戸を開けている様を示している。開門の意味で、金文の启 の字は左右の構造の調整をして、戸の下に一個の口を加えたのである。開門して口が開いてぽっかり開いた穴のような様子を示している。またこのことから人の口と言うこともできる。だから金文の启の字は開門の意味を除いて説話、陳述の意味を表す。金文は又は文に文に変わって支は打つの意味である。このために言葉の意味は未だ変わらず。小篆と楷書の繁体字はこの縁があって啓と書く。現代漢語で启は啓の簡体字である。


漢字「引」の漢字源の解釈
 会意文字である。「戸 +手+口」。閉じた戸を手で開くこと。また戸を開くように閉じた口を開いて陳述する意を表す


漢字「啓」の字統の解釈
 旧字は啓に作り、启と又(ゆう)に従う。启は扉の中に祝禱の器であるサイを納めている形。それを手で開けることを啓くという。
 祝禱は扉の中に秘匿して祈ることによって神の感応を求めうるものであり、神の感応もそこに啓示として示される。


まとめ
 教えることにより、無知蒙昧から、人々を明るく導くという意味



「漢字考古学の道」のホームページに戻ります。   

2022年4月23日土曜日

漢字 境の意味するところは? 境界それは連続の尽きるところ、即ち連続した世界の終焉を意味する 現代は人類の境界、地球の境界


漢字・境は何を意味していた? 「全ての事の終結、終了すること」をいう
 ほんの数年前までは、『国境』という概念は厳然と峻立していた。それが今では、この概念はひところと比べれば、見る影もなく薄くなっている。その今までのある種の規制のぶち壊しの立役者は、資本の国際化だ。今風に言えば、『グローバリゼーション』である。通貨もビットコインと称して一国の通貨からネットの通貨が幅を利かし、通貨では国境という規制が際限もなく押し下げられている。

 この「消えゆく国境」の現象は、単に通貨にとどまらず、人の流れ=民族の流動化を引き起こし、経済活動の拡大は、ツンドラの凍土地帯の解凍、、アマゾンの切り開きによる密林の伐採等による気象の変動など等様々な事象がカオスの様相をきたしている。


アメリカの経営学者のピーター・ドラッカーは「断絶のの時代」という著書の中で警告をしていた。
  継続の時代の終焉——20世紀半ば、社会と文明における根源的な変化が起こりつつあった。情報化の進展、グローバル経済の出現、知識社会の到来、多元化、そして政府の無力化。本書で予期された変化は、確かに訪れた。そして今なお、余震は続いている。変化の本質を知らなければ、未来を見誤ってしまうだろう。

 ここにきて、ロシアのウクライナ侵略が起こり、世界は未曽有の混乱を引き起こしている。いま世界に起こっていることはドラッカーの予言通りであったのだろうか。少なくとも見かけ上はそう見える。一方で資本主義の終焉が叫ばれている。資本主義は肥大化し続け、グローバリズムの名の下に資本主義はあらゆる障壁を取り払いつつ拡大し、さらには資本主義の内部の境界までも取り払いつつある。人間の犯さざるべき基本的人権すらも資本の自由の名のもとに取り払われ、資本の赴く先、見境がなくなっている。

ここで取り上げた「境」はまさしく今の時代を言い表す言葉だ。
世界の境界、時代の境界、価値観の境界、そして地球の境界。
人類はどこに向かうのか

漢字「境」の楷書で、常用漢字です。
左は土で、右側の旁は「竟」です。
 「境」の原字は『竟』です。「竟」の語義は、全ての事の終結、終了することを竟といいます。
境・楷書境・楷書


  
竟・甲骨文字
下辺は人で上辺は辛で、移送される囚人の刑具である。中間の国は首に「辛」がついているという意味で、囚人になるという意味です
竟・金文
金文の竟の字は甲骨文字を承継し、上辺の「辛」が人の首の上にあることを示しています
竟・小篆
金文を受け継ぎ楷書は隷書化の過程で、変化している


    


「境」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   キョウ・ケイ
  • 訓読み   さかい

意味
  • 境界、境目   例:国境、境界
  •  
  • 場合、地位   例:境遇、逆境
  •  
  • 神社などで、神の鎮座する特別な領域と意味付けて、特別な呼称で呼ぶ。境内:ケイダイと読む。

同じ部首を持つ漢字     竟、鏡、
漢字「境」を持つ熟語    境内、境界、境遇、異境


引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 [竟]の本義は捕虜になった時に発せられる感嘆及び捕虜という命運で、捕虜という自由を喪失した。為に「竟」は完了、終わりの意味だ。『未竟的事业』の中の竟は完了の意味です。捕らわれたことの命運、意外なことの慨嘆。 竟は実はの意味で、他のことを言っていることではない。また拡張されて到底の意味が出る。このために竟には离境の意味がある。

漢字「竟」の漢字源の解釈
  会意文字である音+人で音楽の終わり。楽章の最後を示す。 境(端末の切れ目)などと同系


漢字「竟」の字統の解釈
 竟:音と人に従う。 説文に楽曲を盡するを竟となしとあって、終竟の意とする。竟とは祝禱の終わることその成就することを言う。それで全ての事の終結、終了することを竟といい、又これを地に施して境と言う。


まとめ
 「境」は『さかいめ、区切り』を意味するものだと思っていた。しかし、別の見方からは「物事の終わり、終焉」を意味するという。終末思想ではないが、最近の世界を見ていると、世界の終焉。終わりを示すように思えて仕方がない、



「漢字考古学の道」のホームページに戻ります。   

2022年4月10日日曜日

旅という漢字の成立ちは「旗と人々」から成る。その意味は?


漢字・旅の生まれは現実的で厳しいものだった

旗の下で行軍するもようを表した象形文字だった
目次
  1. 前書き
  2. 漢字旅のつくり
  3. 「旅」の漢字データ
  4. 唐漢氏の解釈
  5. 漢字「旅」の漢字源の解釈
  6. 漢字「旅」の字統の解釈
  7. まとめ
前書き
  「旅」は昔から人々にある種の郷愁を醸し出してきた。その意味で、「旅」は広い意味での旅行や移動だけでなく、人生の旅や経験の積み重ねといった精神的な旅を指すこともあります。人々が新しい場所や文化に触れ、成長や学びを得る過程を表す言葉としても使われます。
 しかし、旅という漢の成立ちは、その様なロマンティックなものではなく、隊列を組んで更新する軍隊の行軍そのものを表す象形・会意文字でした。



漢字旅のつくり
漢字旅のつくりは㫃と从からなる。意味は旗印のもと大勢の人が行進するという意味で、ここから旅団という語が生まれた。
 漢字を構成する「方」は単独の意味を持つというより、施や旋等と同じように旁と一体と考えるべきものである。ここでは旗や吹き流しの下にあることを表している


漢字「旅」の楷書で、常用漢字です。
 吹き流しと従に従う。 吹き流しは旗を掲げて多くの人が他に出行をする意。それで軍行の集団の意となり、旅行の意となる。説文に「軍の500人となす。軍旅の意となる。」軍事用語で旅団はここからできた言葉。

 現代では、旅団とは1,500名から6,000名程度の兵員によって構成される部隊をいい、師団より少し下の単位を指す。
旅・楷書


  
旅・甲骨文字
これは古代の旗の下には2人がいて、兵士たちが軍旗に従って行進していることを示しています。
旅・金文
金文は戦車に大きな旗を掲げており、兵士たちは大きな旗の周りに集まっています。
旅・小篆
小篆は甲骨文字に似ており、大旗の下に2人の人(兵士)がいます。


    


「旅」の漢字データ
 
漢字の読み
  • 音読み   リョ
  • 訓読み   たび

意味
     
  • よその土地へ行く、旅行する。  旅・旅客・旅行 
      たび    旅人・長旅・船旅」
  •  
  • 軍勢。隊を組んだ軍。戦争。戦。 旅団・軍旅・師旅
  •  

同じ部首を持つ漢字     方、於、施、旋
漢字「旅」を持つ熟語    旅行、旅団




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「旅」、これは会意文字です。甲骨文字の「旅」の上部は古代の旗の象形文字です。
 右下には2人がいて、兵士たちが軍旗に従って行進していることを示しています。金文は戦車に大きな旗を掲げており、兵士たちは大きな旗の周りに集まっています。 小篆は甲骨文字に似ており、大旗の下に2人の人(兵士)がいます。楷書の「旅」が改変され、下部の2人が上下を繋ぐ民の字に変化しています。

 


漢字「旅」の漢字源の解釈
 会意。「旗+人二人」で人々が旗のもとに隊列を組むことを示す。人々が旗のもとに隊列を組むことを示す丸幾つも並んで連なる意も含む。軍旅がその原義にに近い


漢字「旅」の字統の解釈
 会意文字。㫃と从に従う。 㫃は吹き流しをいう。意味は旗を掲げて多くの人が他に出行をする意。それで軍行の集団の意となり、旅行の意となる。説文に「軍の500人となす。軍旅の意となる。」

まとめ
 漢字「旅」は現代の漢字からだけではその意味を推し量ることはできない。甲骨文字や金文に戻って初めて,その秦の意味に辿り着くことができる。



「漢字考古学の道」のホームページに戻ります。   

2022年4月3日日曜日

漢字・戒の由来と成立ち:「戒」は主に「いましめ」の義に使う。本義は武器をとることであった。警戒の意味に使うようになったのは後のことであろう

漢字・戒の由来と成り立ち:戈(ほこ)+ 廾(両手)から、成る
  今では「戒」は警戒するの意味に主として用いる。原義は武器を持った集団即ち兵・軍隊のことであった。
 戦うことと警戒することとは同義的と考えられていたことから、後に警戒するという意味に用いられるようになったのだろう。漢字の生まれから考えて、最初から警戒という概念があって、後に兵・軍隊が生まれることはないのではないだろうか。


漢字「戒」の楷書で、常用漢字です。
 戈と廾とに従う。廾は両手。戈を高く両手であげている形で、警戒の意
戒・楷書
説文に桎梏なり。桎梏とはかせ。 また一に曰く。「器の総称なり。 持するなり。一に曰く盛あるを械となし、盛なきを器となす。」
 盛とは攻撃性の武器のことで、甲冑兜は内成の器、戈弓戟は外成の器である。孫子に「この両者を併せて器械を具す」という。また、

 説文の別の説明には、桎は足枷なり。梏は手枷なりとあり、桎梏は外から制約を加えるの意を持つ。
械・楷書


 甲骨文字は、両手で飾りのついたシンボルとなる戈と支えているように見える。それは戦いに備えるというより、戦いの最中に、自分たちの旗幟を懸命に打ち立てて味方全体を鼓舞しているように見えないだろうか 
戒・甲骨文字
戒・金文
た状態を表している漢字
戒・小篆
以上2文字の会意で、即ちとか直ちにを意味する


         


「戒」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   カイ
  • 訓読み   いまし(め)

意味
     
  • いましめる 用心する・・警戒、厳戒
          控え目にする
          してはいけないと禁止する
  •  
  • いましめ・・戒律

同じ部首を持つ漢字     械、成、戦、賊、我
漢字「戒」を持つ熟語    十戒、警戒、戒告、訓戒``




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「戒」は会意文字です。甲骨文字の形の中間は下部の左右両側は長戈を固く握った両手です。全体の字形は、迫ってくる敵の犯行に対する備えを表しています。金文の構造は甲骨文の相似ですが、ただ左右にあった手が、戈の左下に移っています小篆の形体は金文から直接変化し、二つの手は戈の下になっています。楷書の形体は変化し、戈の形体はまるで似ている。しかし、手の組み合わせが「艸」になり、手の形がまったく見えなくなりました。

漢字「戒」の漢字源の解釈
 会意文字:「戈+両手」で武器を手に持ち用心して備えることを示す。 張り詰めて用心するを含む


漢字「戒」の字統の解釈
 戈と廾とに従う。廾は両手。戈を高く両手であげている形で、警戒の意。戉を挙げる形は兵で字の作り方が同じである。警戒の意より戒告の義となる


まとめ
 「戒」の字は、闘うことは備えることだと教えてくれる。特に昨今の情勢では、意味深い字である。




漢字「〇」を含む故事、成語、ことわざ ☜ については、こちらが詳しいです

「漢字考古学の道」のホームページに戻ります。   

2022年3月17日木曜日

戎の成立ちと由来:「戎」は戈と干から成る。干は甲である。では戈と甲で何を意味するのか


戎の成立ちと由来:「戎」は戈と干から成る。干は甲である。二つの文字の会意で、戎とは武器や軍事の意である
漢字「戎」は戈と干(たて)から成る。干は盾。攻防の武器を合わせて、兵器と軍事を示す。
 古代の村落は周りに堀をほり、武器は戈や盾を身に着け、男子は集合住宅に集め、敵に備えていた。漢字が生まれつかわれるような社会は既に社会は発展し、国家という形態をとるようになったころであろう。


漢字「戎」の楷書で、常用漢字です。
 戎・会意文字である。甲骨文の戎の字は、戈と盾から成る。もしくは戈の柄の上に、一つの盾の図形を加えたものである。戈と盾を合わせて、兵器を表示したものである。また軍隊の意を表示したものです。金文の左下の十字は盾の省略形。小篆は戈の下の盾は「甲」に変化して、戈と甲の会意文字になっている。楷書は金文に相似で戈と十字(盾のシンボル)から戎と書く
戎・楷書




    




  
戎・甲骨文字
戈の柄の上に、一つの盾の図形を加えたものである。両者の会意で、武器を表す
戎・金文
左下の十字は盾の省略形
戎・小篆
戈の下の盾は「甲」に変化して、戈と甲の会意文字になっている。
  


    


  ************** 

「戎」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ジュウ
  • 訓読み   えびす
漢字「戎」を持つ熟語    戎衣、戎夷、戎夏、戎克、戎攻



引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「戎」は兵なりとする。即ち兵器である。
 古代には、五戎といい「弓、支、矛、戈、载」の五種類の攻撃用兵器を敵の攻撃に絶えず備えていた。

 




漢字「戎」の漢字源の解釈
 会意文字:もと、戈+甲で、様々な武器を表す。粘り強く、壊れない意を含む


漢字「戎」の字統の解釈
 戈と干(盾)に従う。干は盾。攻防の武器を合わせて、兵器と軍事を示す。説文に挙げる小篆の字形は甲に従う形に作り、「兵なり。戈甲に従う」とするが、卜文、金文の形と異なる。卜文・金文は戈と干とに従い干を戈身に結び付けているものもあり、併せて一組の武器とする意。それで軍事をいい、金文に戎工、戎攻などの語がある。


まとめ
 漢字は社会を映し出した鏡のようである。私たちは漢字から昔のsh会を直接的に知ることは難しいが、漢字を知ることによって当時の社会を知ることができる。



「漢字考古学の道」のホームページに戻ります。