2023年2月26日日曜日

漢字「兵」の成立ち:大勢の人間で武器を捧げ持つことを表現している。誰かが戦争を始めるかも知れない


漢字「兵」
  「兵」は甲骨文字の時から、すでに集団で武力行使を行うことを文字で表現している。
 いまロシアがウクライナに武力侵攻をかけ、戦争を仕掛けている。その根拠は、今まで言い尽くされてきたことであり、戦争を仕掛けた彼ら自身が、もはや自らを律することができない状態にあるように思える。ロシアは自らの国民に最終的に犠牲を強いながら、破滅への道を突き進むのか。それとも何らかの勝算があるというのだろうか。

 人類は長い歴史の中で戦争を繰り返してきた。それがいかに愚かなことであることも十分に悟ってきたはず。しかし、まだ戦争が起こるのは、自らの「生」の前には他人をも殺してでも勝ち取ろうとする、人間の業なのか。
 ここでも言及したように、ナチの元帥ゲーリングの言葉は、今の日本ばかりではなく、ロシア、北朝鮮、韓国 そして中国にもそのまま当て嵌まって居ないだろうか、冷静に見直すべきと考える。
 もっと深く考えなければならないのは、更に以上ここに揚げた国々全てにかかわっている国、アメリカを見逃すわけにはいかない
漢字「兵」の楷書で、常用漢字です。
 
即・楷書


 「兵」は会意文字。甲骨文の「兵」の字は上部は柄の曲がった大きな斧の頭(斤)で下部は斧の両側から斧を持つ手で、斧を持ち上げ、振り下ろして叩き切るのに用いる。金文の斧の頭は右向きに変わり、符号「「」が加わって斧で叩き切ることが強調されている。小篆では依然として二つの手、すでに斧の頭は反転符号を一体となっている。楷書の「兵」の中の斤の字は元通りで、二つの手は形はなくなっている。
兵・甲骨文字
兵・金文

兵・小篆



    


「兵」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ヘイ
  • 訓読み   常用漢字内なし

意味 
  • 武器を持って戦うひと、軍人、
  • いくさ
  • 軍隊
  • 武器

同じ部首を持つ漢字     宾、鋲、 浜、娦 · 㙃 、
漢字「兵」を持つ熟語    兵隊、兵站、兵糧、兵役、


引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「兵」の本義は武装した人のことであり、それゆえ兵器と軍隊を表示するのに用いられるのである。曹操の《置屯田令》の「夫定国之术,在于强兵足食」(国を安定させる術は、十分な食糧で軍隊を強化することにあります)ここでの「強兵」は強大な軍隊を指す。汉代贾谊《过秦论》:『收天下之兵 , 聚之咸阳。』(天下をおさむるの兵士、聚を咸陽に集めること。)ここでの「兵」は兵器を指す

 
漢字「兵」の漢字源の解釈
 会意文字。 上部は斧の形。その下部に両手を添えたもので、武器を手に持つ様を示す。 並べ合わせて敵に向かう兵隊の意。


漢字「兵」の字統の解釈
 斧を両手で差し上げている形。 武器を取って戦うものの意。 説文に「械なり」とは、兵器の意であるが、のち戦う人をもいう。 老子31章にも「兵はなお火のごときなり。治めずんば、まさに自ら焼かんとす。」は古い言葉であるが、今の時代に最も切当な言葉である


まとめ
 老子の言葉「兵はなお火のごときなり。治めずんば、まさに自ら焼かんとす」は重い。
 日露戦争から第二次世界大戦までの歴史を少し振り返ってみるだけでも、胸に突き刺さる。

そして、ナチスの将軍のゲーリングの言葉は、さらに追い打ちをかける。

国民を戦争に参加させるのは、つねに簡単なことだ。 とても単純だ。
(・・・)
国民には攻撃されつつあると言い、平和主義者を愛国心に欠けていると非難し、国を危険にさらしていると主張する以外には、何もする必要がない。この方法はどんな国でも有効だ。

ここまであからさまに言われても、まだ我々は同じ道を歩もうとするのか!




「漢字考古学の道」のホームページに戻ります。   

2023年2月24日金曜日

漢字「賊」の成立ち:「賊」とは、力ずくで財産を奪い、占拠することもしくはその集団。


漢字「賊」の成立ちと由来
 昨年暮れから今年初めにかけて起こった強盗事件は、従来の強盗の概念を打ち破るものであった。強盗の実行犯をネットで募集し、お互いに顔も知らないものをグループとして編成し、強盗を働かせる、実に手っ取り早く、手荒に現金を強奪するというものである。
 これが成立する背景に、今まで考えられない規模で、情報収集がされ、広範囲にネットを通して売買される社会がある。この犯罪は、昔から古典的に語られてきた「賊」などとは全く様相を異にする異質の集団である。この世の中、古典的な犯罪集団「賊」では語れない、不気味なものを持っている。
 賊という言葉は、この世に青銅器が発明された、紀元前1500年前ごろからすでに存在していたようである。彼らはそれなりの絆で結び付けられていたと考えられる。しかし、近年、この絆が希薄になり、流動的になっているのではないだろうか。この「賊」の概念に変化が出てきたのではないかと疑われる。


漢字「賊」の楷書で、常用漢字です。
 偏は貝で古代は子安貝が貨幣として流通していたことの証左です。また別の一節によると、これは貝ではなく、青銅の鼎という説もあります
賊・楷書


 「賊」という言葉の本来の意味は、力ずくで財産を奪い、占拠することです。 略奪のプロセスは他人の財産の破壊であるため、「賊」という言葉は破壊することにも拡張されています。
  例えば「孟子」:「仁を壊すものは賊と言っています。」 「賊」という言葉には、傷害を与える、または殺害するという意味もあります。
  宋王朝の学者である蘇軾は、「賊民は同じではないが、兵を好むものは必ず滅びる」という格言を残しました。今でも有用する格言ですね
賊・金文
賊・小篆


    


「賊」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ゾク
  • 訓読み   常用漢字なし

意味
  • そこなう
  • しいたげる(いじめる、虐待する)
  • ぬすむ、強奪する

同じ部首を持つ漢字     財、
漢字「賊」を持つ熟語    盗賊、海賊、匪賊、義賊、


引用:「汉字密码」(P653、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「賊」、これは会意文字です。 金文の「賊」の字は、貝と戌の二文字で構成されており、字の外側は戈を持って警護する人のように見える守衛の形で、字の真ん中は貝の字で、古代の物々交換していた時の「貨幣」です。
 「賊」という文字には「人・戈・貝」の3つの記号で構成され、これは略奪と所有を意味する。小篆の字形は金文と比べ変化はない。但しパーツには変化がある。「貝」は下から左に移動:「戌」は右に移動 楷書は隷書に変化する過程で変化し、「戌」は「戎」に変更。
 唐漢氏は物々交換したころの時代を表すとしていますが、貝が貨幣として使われt時代は、もう少し下って、貝が共通の価値を表すシンボルとして使われたころと考えると、貨幣経済の走りの時期と見ていいでだろう。もちろん物々交換もかなり残っていたであろう。

 
漢字「賊」の字統(P556)の解釈
 正字は鼎と戎に従う。その昔、重要な盟約を結ぶときは、鼎に銘を入れて、盟約を交わしたが、その鼎銘を入れた重要な誓約を破棄するときは、この銘をを戈で削り取ることで、破棄したとのこと。この銘を削り取る行為を賊という。賊とは故意に銘文を剥ぎ取りその契約を破棄する行為をいうものである。

まとめ
 漢字「賊」とは、単に人の財産を略奪し、奪い取るものだという解釈であったが、字統によると、盟約を破棄するために、盟約の際に鼎に彫り込んだ銘を戈で削り取るという解釈は、説得力がある。



「漢字考古学の道」のホームページに戻ります。