2021年6月30日水曜日

漢字「師」の成り立ちから読めるもの:この漢字は最初から戦闘集団を表していた。一つの軍の塊を師団というのもここからきている


漢字「師」の成り立ち:出陣に際し、祭肉を祖先の廟に祭って戦功を祈願した
 軍の戦闘集団を師団といい、その指揮者を「師」というようになったのも、少なくとも10万人規模の国家でないと不可能である。この言葉が確立されたのは、周も末期になってからそれも春秋戦国時代に入ってからであろう。因みに春秋時代の総人口はせいぜい500万人前後だったろうという推察がなされている。

漢字「師」の楷書で、常用漢字です。
 昔から2500にんの師団を表すこと定着しているようだ。

 あるいはこの漢字一字で、軍を表したり、いくさ(戦争)を表すようだ。

  漢字「師」の左側は、甲骨文や金文では启で祭肉を表していた。ところが小篆では、神梯に変化している。なぜか。国家の規模が大きくなり、軍隊の規模も大きくなり、軍隊もさらなる神格化が必要になったと考えられる。したがって、今まで祭肉をシンボル的に使用していたが、もはやそれでは人々を引き付けられなくなり、神を持ち出したのではないだろうか。即物的な祭肉より、神梯からの神の降臨を演出ことで権威付けを強めたのではなかろうか。
即・楷書


 甲骨文字や金文の左側の記号は「祭肉」を表してた。ところが小篆では神梯を表すという。その変化は、軍の行動により神格化が求められた結果ではないだろうか。  
師・甲骨文字
軍が出行するとき、戦功を祈って祈願する時の祭肉を表す
師・金文
甲骨文字を引き継ぎ、軍の出行の際の祭肉を軍刀に突き刺し出陣すること
師・小篆
金文を引き継ぐが、祭肉が神梯に変化し、より神に祈ることを明確にしたものか


    


「師」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   シ
  • 訓読み   いくさ

意味
  • 軍隊 二千五百人の軍の隊のことを言った 例:出師
  •  
  • 人を教え導く人、先生     例 師匠
  •  
  • 先生として尊敬する、手本とする   (例:恩師)

漢字「師」を持つ熟語    師団、恩師、師匠、軍師、師走




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
字統の解釈
 启と帀に従う。启は軍の出行のとき携える祭肉の形で、師の初文。帀は把手のある曲刀の刃の部に小さな叉枝のあるもの。軍の出行するときは祖先の廟や軍社などに祭って、神佑を祈りその際肉を携えて出行するが、途中で軍を分遣して行動するときは、その際肉を分って出発させる。




漢字「師」の唐漢氏の解釈
 遠くからやってきて、腰を下ろし、休憩することを表す。


「師」古代漢語P63 王力編、高等学校教材
  • 軍隊で2500人で一師を構成する。一般に漠然と軍隊を指す。 
  • 知識を授ける技術人、先生。(弟子に相対する) 
  • 楽官 上古の楽師は一般的に盲目の人を任命していた。


まとめ
 この「師」という漢字は国家の規模を表す指標になったのかも知れない。国家・軍隊の輝度を推し測るのに戦車の数が使われたという。



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2021年6月27日日曜日

漢字「卑」の成り立ちと由来:卑のもともとの意味は、柄杓を手に取るというものだった。しかしなぜ「いやしい」という意味になる?


漢字「卑」の成り立ちと由来:卑の原義は、柄杓を手に取るというものだった。しかも卑という漢字がなぜいやしいという意味を持ったのか納得ある説明は得られていない
 漢字「卑」は「尊」の対極にある。成句「男尊女卑」という句の中でも昔から語り継がれてきた。

 何故にこのようなことが言われなければならないのか。その根拠は何か。有史始まって以来女性を苦しめて来た。
 何故女性は「卑」といわれなければならなかったか、甲骨文字に遡って迫る。 勿論漢字にその責任があるわけではない。漢字はその社会の反映であり、インフラ的な位置付けではあるが、一つの結果に過ぎない。

 ここではっきり言えるのは、漢字「卑」は男性の発想から生まれた漢字であることは確かなようだ。


漢字「卑」の楷書で、常用漢字です。
 上部は杯形の器の形。基部はその柄を手に取る形で、椑の初文。柄のある柄杓のような形で、酒を酌むのに用いる。
 一方、漢字「尊」も酒を酌むための道具である。同じような酒に関わる道具・噐であるにもかかわらず、片や尊ばれ,片や蔑まれる。この違いは何であろうか?

 漢字「卑」は「女性の性器を弄ぶ」という解釈もある。この解釈であれば、「尊」が男性を崇拝することを表すものだという考え方と同じレベルの対比ということになり整合性は成り立つ。
 にもかかわらず「卑」を女性の性器を弄ぶという解釈には抵抗がある。漢字が造られた時代はそれほど発達しておらず、漢字に関わる世界はそこそこ知的なレベルの高い世界であったはずだ。その人々が、漢字を作るのにかくも低俗な発想をするのかという疑問は残る。
卑・楷書


  
卑・甲骨文字
下辺は手の象形であり、上辺は女性の性器の内部の象形であるという説もあるが、え、どうしてそんな解釈が?
卑・金文
小篆と金文の上部の記号は囟に変化した。
卑・小篆
金文と小篆を引き継ぎ、漢字化の過程で文字らしく記号化されている


    


「卑」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ヒ
  • 訓読み   いや(しい)、いや(しむ)、いや(しめる) 《外》ひく(い)

意味
     
  • いやしい   身分・社会的地位が低い  行動に品がない、服装が貧しい
           欲が深い、貪欲である、能力が劣っている
           つまらない
  •  
  • ひくい    位置が低い    盛んでない
  •  
  • いやしむ・いやしめる   劣ったものとしてバカにする、軽蔑する

「卑」を部首とする漢字   俾(にらむ)、睥、脾
漢字「卑」を持つ熟語    卑下、卑近、卑猥、卑怯、卑屈




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
  小篆と金文の上部の記号は囟に変化し楷書の卑になった。掌握した造字の権利の男から見ると女の自慰や男が手で女の性器をもてあそぶことも生育の一つの目的からの逸脱を意味している。したがって男の見方からすると下品で低俗な行為であると見える。

 しかし、甲骨文字そのものを女性の性器に手を付けるとみる発想そのものが卑猥であり、古代人は本当にこのような見方をしたのか疑わしい。

 


漢字「卑」の漢字源の解釈
 丈の低い平らなしゃもじを手に持つ様を示すもので、椑(平らで薄いしゃもじ)の原字。うすべったく暑さが乏しい意を含む。


漢字「卑」の字統の解釈
 上部は杯形の器の形。基部はその柄を手に取る形で、椑の初文。柄のある柄杓のような形で、酒を酌むのに用いる。「説文」いやしきもの也事を執るもの也とある


まとめ
 会意文字であるようだが、甲骨文字にせよ、金文にせよ、まるで象形文字であるかのように生き生きとした人々の姿が描写されている。漢字はその社会の反映であり、インフラ的な位置付けではあるが、一つの結果に過ぎない。時として社会に対し残酷な反作用も及ぼすこともある。



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2021年6月25日金曜日

漢字 「尊」の成り立ちに埋もれた歴史的真実:尊という漢字は男性崇拝そのものだった。漢字は男子優位の思想で貫かれた世界にある


漢字 尊の成り立ちから何が読める。神霊に酒を捧げることは、男性崇拝の表れなのか
 「男」という部首を含む漢字は、わずかに17文字しかありません。それに対して、「女」という部首を含む漢字はなんと992にも上ります。なぜでしょう?考えられるのは、漢字が作る側にいたのは男だったからだと思います。既に男優位の中にあって漢字が作られ、女は観察対象であったと考えられます。

 漢字の世界即ち、漢字が作られ使われた文化は基本的に男尊女卑の世界であったということが出来ます。

 そのことを踏まえて、改めて漢字 尊の成り立ちに迫ってみました。尊という漢字は男性崇拝そのものだったと考えられます。後にきれいごとの屁理屈が付けられたようですが、最も本源的な意味は「男は尊い」ということに尽きる気がします。


漢字「尊」の楷書で、常用漢字です。
 この漢字は、ある種の侵すべからざる雰囲気のある字として、漢字の中で、特別な位置を占めてきた。

 この漢字は、男性のみに用いられ、女性の立ち居振る舞いや雰囲気には用いられてこなかった。

 なぜだろう?それは、この漢字そのものが男根を表し、男性崇拝を担ってきたからだと考えられる。
尊・楷書


  
尊・甲骨文字
男根をあがめ奉る様。《酒を恭しく相手に献上する姿とも解釈される
尊・金文
基本的に、甲骨文字を引き継いでいる
尊・小篆
文字としての体裁が整うと共に
露骨な表現は影を潜め建前的な表現が、文字としての汎用性を高めるようになった。


    


「〇」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ソン
  • 訓読み   とうと(い)、とうと(ぶ)、たっと(い)、たっと(ぶ)

意味
     
  •  尊敬すること  (例・・尊敬する  大切にする、重んずる (例・・尊重)
  •  
  •  えらそうにして、他人を見下げたような態度をとる (例・・尊大)
  •  
  •  尊称として他人に関する事物の上につけて敬意を表す」 (例・・尊顔)
  •  
  •  日本固有の使い方、みこと(神や天皇家の人に対する敬称 (例・・日本武尊

同じ部首を持つ漢字   遵、蹲、鳟
漢字「〇」を持つ熟語    楼閣、尊敬、尊重、尊顔




引用:「汉字密码」(P683、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「尊」は会意文字です。甲骨文音「尊」は下部は両手であり、上部は酒器です。両者の会意で、丁寧に人にうまい酒を献上する意です。金文と甲骨文は形はよく似ている。ただ、酒器の上部に模様が追加されている。

 小篆の「尊」は酒器の上に二個の払いが加えられており、外に傾けて、人に飲ませる意味を示している。楷書の「尊」の字は金文と小篆の中の二つの手が一つの手(寸)に変り、隷書化の後、「尊」となった。「尊」の字の本義は二つあり、一つは酒を敬うこと、もう一つは酒器そのものを指す。

 しかし、唐漢氏の「漢字「酉」の起源と由来」の説明の中では、この尊の中に含まれる「酉」という漢字が、「男根」を表すとしており、その説明から考えると、この「尊」という漢字は、強烈な男性を表したものと解釈される。この整合性をどう解釈すべきか、もう少し深い考察が必要とされるだろう。


漢字「尊」の字統の解釈
 酋と寸に従う。酋は酒器。上部に酒気のあることを示して八を加え下は寸または廾に従って、これを奉ずる形。神霊の前にこれを置いて祀ること。《説文》に酒気なり。酋に従う。廾はこれを持って奉ず。」としている。 


まとめ
 今回もまた、漢字は世の中の在り様を忠実に反映したものだということを立証することになってしまった。

 ともすれば漢字があからさまにする世界は実に残酷だ。しかしそれも現実であるし歴史である。我々は受け入れなければならない。その上に、本当の人間性の発露のある世界が来るものだと信じる。



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2021年6月24日木曜日

漢字 爵は古代如何に使われたか:爵は非常に高貴なものであり、権威の象徴として大いに利用された


漢字 爵の成り立ちから何が読めるか:クーベルタン男爵の嘆きが聞こえる!
 最近オリンピックが話題に上っている。オリンピックを提唱したのは、クーベルタン男爵であるが、近年のオリンピックは最初の理念から離れ、あまりに商業主義に陥っている。スポーツから離れ、メディアの利権の食い物にされてしまっている。これを提唱したクーベルタンもおそらく考えもつかなかったようなオリンピックの堕落だろう。高邁な理想を提唱したクーベルタン男爵も今頃地下で嘆いているのではないだろうか。
 これは男爵だの、伯爵だの当時の貴族趣味的発想のから生まれた理念が、資本主義をベースにした商業主義の金にまみれた結果であろう。

 「爵」というシンボルが、古代の国王が一段と高い位置に立ち、太陽を背景に爵を高々と掲げている光景が目に浮かンでいたものが色あせたものに変ってしまったものとよく似ている。


漢字「爵」の楷書で、常用漢字です。
 「爵」は夏商周の時期に流行した一種の酒用の器である。この種の青銅製の飲酒用の器は、3本の脚で、飲むのに口を接するところと酒を注ぐところがある。製造上の形は鼎から来たとことがあり、鼎は変化し、また鼎とセットにした使い方があります。

 古代においては、青銅器は非常に貴重であり、国王が自らの権威を高めるために最大限に利用したであろうことが明らかになっている。
即・楷書


  
爵・甲骨文字
酒器の形そのもの
爵・金文
甲骨文字を引き継いだ形で、大きな変化はない
爵・小篆
金文、甲骨を引き継いだもので、権威を高めるためか、多くの手が加えられ、必要以上に手の込んだものとなっている


    


「爵」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   シャク
  • 訓読み   ー 

意味
     
  •  さかずき 
  •  
  •  貴族の身分を表すもの 日本では明治時代には公・侯・伯・子・男の五等の爵位があった
  •  
  •  中国古代の酒を入れる器。3本足の青銅器で、夏代から周代に礼器(儀式に使う器)として使用された。王の権威を高める道具としても活用された 

漢字「爵」を持つ熟語    爵位、男爵、伯爵




引用:「汉字密码」(P687、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
  「爵」は象形字です。甲骨文の爵の字はまさにその形の輪郭です。金文の爵はさらに迫真の形状をしています。小篆の爵の字は一個の鬯を加えて、香酒の意味を表示しています。又手の字を加えて、手で持った爵の意味を表示している。このため爵の字は変化し、会意文字に成っている。

 「爵」は説文では、礼器なりとし、爵の形を表す。爵は古代の酒器で酒と暖かい酒を盛るのに用いる。古人は爵の形は雀に似ていると考えた。

 


漢字「爵」の字統の解釈
 象形: 酒器の爵の形に象る。「説文」に「礼器なり」とし、字の上部を雀の形とするが、卜文、金文の形は明らかに酒爵の象形であり、雀とは関係がない。「説文」に挙げる古文の字形など全く信じがたいものだ。


まとめ
 漢字 爵は象形文字である。盃であり、王の権威を高めるための礼器であり、祭器でもあった。中国の夏、殷、周の古墳からたくさん出土している。



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2021年6月23日水曜日

漢字・敗が生まれた時代は漢字・破の時代から社会・経済はどのように変化したかを仮説してみた


漢字「敗」の成り立ちから何が読めるか:財宝を叩き壊すという意味、勝ち負けの勝敗よりも財宝に焦点を当てた漢字
 漢字・破から漢字・敗が生まれるまでには、相当の時間があったと考える。「破」は動物の皮を手で剥ぐという、行為の対象、手段を表現しているが、「敗」の漢字には漢字「破」には見られなかったものが含まれている。即ち鼎や貝で表される宝物の概念である。

 そこには明らかに生産の発展がみられ、貨幣という概念まで出現している。「敗」という文字の生まれる背景には、人間が狩猟・採取を営んでいた時代とは異なる富の蓄積の歴史が存在していると考えても不思議ではない。


漢字「敗」の楷書で、常用漢字です。
 今では「敗」の漢字は、もっぱら「負ける、敗れる」という意味に使っていますが、本来は、負かす、破るという意味にも使っていたようです。つまりこの漢字は、勝敗に関係なく使っていたようです。

 この漢字と同義語の漢字に「破」があります。この漢字は「石」+「皮」で、2つの会意で、「皮を手で引き裂く」ということを表しています。漢字の成り立ちは「敗」とは全く異なっていますが、今では「破」は専ら物が壊れるという意味に用い、「勝敗」の意味には用いないことが多いようです。 杜甫の「国破れて山河あり」という、詩で詠われているのは、「国は破壊されて、残っているのは、山河だけだ」という意味なのでしょうね。
負・楷書


  
敗・甲骨文字
鼎を手に持ったこん棒でたたき壊すさま
敗・金文
鼎の代わりに財宝を象徴する貝を二段重ねにした宝物を表すものを打ち壊す
敗・小篆
甲骨と金文を受け継いであるが、文字化のためによりシンプルなものになっている。


    


「敗」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ハイ
  • 訓読み   やぶ(れる)、やぶ(る)

意味
     
  • やぶれる  負ける  例:勝敗  
  •  
  • やりそこなう、しくじる   (例:失敗)
  •  
  • 壊れる、損なわれる、つぶれる、ついえる(例:損敗) 

漢字「敗」を持つ熟語    敗軍、敗戦、失敗、勝敗、完敗、惨敗、成敗




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「败」は「敗」の簡体字である。甲骨文字の「敗」もまた会意文字である。左辺は「鼎」の象形素描であり、一個の手が棒を持って、叩いている様子である。両形は会意で杯を壊すことを表している。俗語の「あなたの家の茶碗を打ち砕く」と同様のことだ。金文の旁は二つの貝となり、貴重で、値打ちのあるということをあらわしている。小篆と楷書ではこのことから「壊したり、名誉を傷つけたりすること」である。  説文では「敗」を壊すこととしている。本義は壊したり破壊することである。

 

漢字「敗」の字統の解釈
 会意 貝と攴に従う。貝は宝器とすべきもので、それを撃って毀敗することをいう。「説文」「毀つなり。攴貝に従う。敗・賊はみな貝に従う 会意」とする。


以前にアップした記事に加筆・補強をしています。
参考ページ:漢字「敗」の成立ちを「甲骨文字」に探る:鼎を打ち壊すこと


まとめ
 漢字は生れてから、3500年もの間、その形は時代とともに変化はしているが、基本的な構造は変化することなく発展を続けている。

 そして、それは、今の世に太古の昔の人々の生活と息吹を生々しく伝えてくれる人類の貴重な財産である。



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2021年6月21日月曜日

漢字 斧、斤、鉞の成り立ちから、用途の違いを考える


漢字 斧の成り立ちから何が分かる:斤+父の会意で、大きい「斤」(手斧)をいう
 この斧は人間が作り出したもので、ものが先にあって、漢字や呼び名が後で出来たものではない。

漢字「斧」の楷書で、常用漢字です。
 「斤」と「父」からなる。「斤」は「ちょうな」と呼ばれる手斧の形であろう。斧は斧鉞ともいう大きな斧をいう。したがって手斧の大きなものという意味で「父」という形容詞を被せ、会意文字として「斧」が出来たと考えられる。
斧・楷書


 
  
斧・甲骨文字
柄が折れ曲がった斧を手に持つ形
斧・金文
甲骨文字に比べ形は整えられているが、形象は損なわれている
斧・小篆
小篆を引き継いでいるが、抽象化しすぎている?
鉞・金文
斤、斧、鉞戸では文字の造りが全く異なる




        


「斧」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   フ
  • 訓読み   おの



意味
    鉞(まさかり)
     
  • おの・まさかり(柄の先に、厚くて重い刃を装着した、叩き切るための刃物・武器)
  •  
  • きる(切)、おので物を切る
  •  
  • おのの形をした模様

同じ部首を持つ漢字     斤、斥、斧、斬、斯、新、断
漢字「斧」を持つ熟語    手斧(チョウナ・片手斧)、石斧(石の斧)




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「斧」は会意兼形声文字。甲骨文の斧は右辺は「斤」もしくは古代の曲がった柄の斧の象形;左辺は「父」の字である。両形の会意は成年男子が斧を手に持ちたたき殺そうとしている。

 斧の原本は割り裂く工具である。成年男子は手に持って兵器にもなる。たたき切る殺人兵器である。商代の斧は銅の斧で銅銭と形は似ている。文献中斧銭をもってとあるが、殺すという性格のもので形上は区別はつかない。銅斧の主な特徴は、斧の体が比較的長く狭い、刃は平か少し弧を描いている。鈍い形の作りで、刃は広く弧を描いている。「斧」は説文では斧なりとしている。 





漢字「斧」の字統の解釈
 声符は父。父は斧鉞を持つ形であるから、父の第1画がその象形、斧はその形声字である。「説文」に「斫る也」とあり、斧戉は刑具に用い、又指揮を執る時の儀器で、父とはその儀器を執るものをいう。もとより、伐薪などにも用いるものである。「孟子・梁恵王」にもその用法の記述がある。


まとめ
 会意文字であるようだが、甲骨文字にせよ、金文にせよ、まるで象形文字であるかのように生き生きとした人々の姿が描写されている。文字の形に簡略化し、無駄を省いたデッサンとなっており、実に素晴らしい記号化、抽象化がなされていると思う。



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2021年6月20日日曜日

漢字 駒の誕生と由来:古人は若々しい馬をみて、若い、小さい馬と素直に表現したのだろう。一言で「駒」!


漢字「駒」の誕生秘話:古人は若い牡馬のことを駒と呼んだ。
古人が若い馬を見た時、普通の馬との句ベルをどう付けたのか:一番の特徴は、「若い(小さい)」というのが最も納得できる特徴づけかも知れない


漢字「駒」の楷書で、常用漢字です。
 馬と句からなる。駒とは五尺以上なるをいう。また説文に「馬の2歳なるを駒という」とあり、これらを合わせると、2歳馬で、五尺以上でかつ、成馬でないものを「駒」というようである。つまり馬の通淫を避けるために群れから離している若い雄馬(種馬)のことを駒と呼んでいるようだ。

 句が小さいことや曲がったことを表す要素として使われていることが多い
駒・楷書


  
駒・甲骨文字
馬+牡であることを示す
駒・金文
句+馬
駒・小篆
以上2文字の会意で、即ちとか直ちにを意味する


    


「駒」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ク
  • 訓読み   駒

意味
     
  • 若い元気な馬、二歳の馬、五尺以上で六尺以下の子馬。
  •  
  • 若者、子供
  •  
  • こま 将棋のこま、三味線の糸をささえるこま

同じ部首を持つ漢字     駒、狗、拘、鉤
漢字「〇」を持つ熟語    若駒、駒下駄




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「駒」 は生育がしっかりとした小さな仔馬のことをいう。即ち雄の仔馬のことをいう。甲骨文の「駒」の字は右側は馬の象形である。左側は雄馬の生殖器の図形である。

 金文の「駒」は馬と句からなる。文字の構造からみて金文の駒の字の右は非常に美しい馬のデッサンで、左側は「斗」(句)で「駒」の字の発音にもなっている。

 若い種馬は馬の強い方向にあるので、走り、労苦にもよく耐え、恐れを知らない。

 


漢字「駒」の字統の解釈
 声符は句。句に小なるものの意がある。《説文》に「馬の2歳なるものを駒という」とあり、《詩、周南、漢広》に「駒とは5尺以上なるものをいう。」とする。
 成馬は6尺以上のものをいう。駒の通淫を避けるために、一時群れから離すことが記されているが、馬政上重要なこととされている。


まとめ
 句は若い、小さいを表す言葉という説のほかに、交尾を示す言葉という説もある。ここでは取り上げなかったが、句の甲骨文字の字体からはこの説も捨てがたいと感じる。何故、雌馬を「駒」と呼ばなかったのか。駒という漢字の中には「オス」という指標が入っていなければならないように思うのだが?


参考ページ: 漢字の成り立ちの意味するもの:「馬」の歴史は、人の歴史そのものだ

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2021年6月18日金曜日

漢字の誕生物語:漢字 松はどのように生まれたか。漢字 松からイメージできるもの


漢字 松の誕生物語:漢字 松の成り立ちと由来
私は今まで漢字に興味を持ちその成り立ちを探ってきました。

 今までのアプローチ方法は、まず漢字ありきでした。
 しかし、今よくよく考えてみますと、漢字の成立した過程は、全く逆の過程を通っていると考えられます。
 最初にはまず物や人や行動、あるいは事象があり、それを認識・理解した後、他の人に伝達・説明するために言葉が生まれたはずです。つまり、まず最初には「もの」があったはずです。

 最初に、ものがあり、それを把握し、その事物人らかの手を加え、それで行動を起こし、他の人にその自分の意図を伝えたいときに漢字も生まれたはずということです。

 こんな当たり前のことを忘れていました。そして、漢字を見て、どう解釈したらいいかということばかり気にしてきました。



 古代の人々が松の木が植わっており、その松の木を他の人に伝えるにはどうしたでしょう。

 もっとも特徴的な物で説明するのが一番だと思います。

 皆さん、誰かに松というものを人に伝えたいときに、松という漢字を使わずに説明したいときにはどうしますか。まず、木と松葉と松ぼっくりの絵をかくのが一番手っ取り早いと思います。
松の葉と松かさです


  
松・金文
木+松葉+松かさ
松・小篆
金文を引き継いだ
松・楷書
字としての形を整える。


    


「松」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ショウ
  • 訓読み   まつ




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「松の木」は中国文化の中で、重要な位置を占めている。夏朝は「松」を神木として奉り、商の人は柏を神木とし、周の人は栗を神木とした。

 又古代人は松の木の品格を賛美した。一般的に言えば、枯れやすい木は、葉面積が比較的大きく、いわゆる「広葉樹」です。 対照的に、「針葉樹」の木の葉が、針葉樹やヒノキのようなものはかなり異なります。針葉樹のような細かい葉は、さまざまな気候や環境に適応できることなどの理由から、松などの木を神聖なものとし珍重してきました。

 





漢字「松」の字統の解釈
 声符は公。「説文に「松木なり」とし別体として容に従う字を録する。常緑の木で、古くから祝頌詩に詠われ、吉祥のものとされた


まとめ
 漢字には、見たままを絵で表し、それを抽象化し、本質的なものだけを選別して、人に伝える力がある。したがって、漢字を見れば、漢字から逆にそのものをイメージすることができる。この力は、漢字だけが持つ、ほかの言語にはない魅力だ。



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