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2021年6月21日月曜日

漢字 斧、斤、鉞の成り立ちから、用途の違いを考える


漢字 斧の成り立ちから何が分かる:斤+父の会意で、大きい「斤」(手斧)をいう
 この斧は人間が作り出したもので、ものが先にあって、漢字や呼び名が後で出来たものではない。

漢字「斧」の楷書で、常用漢字です。
 「斤」と「父」からなる。「斤」は「ちょうな」と呼ばれる手斧の形であろう。斧は斧鉞ともいう大きな斧をいう。したがって手斧の大きなものという意味で「父」という形容詞を被せ、会意文字として「斧」が出来たと考えられる。
斧・楷書


 
  
斧・甲骨文字
柄が折れ曲がった斧を手に持つ形
斧・金文
甲骨文字に比べ形は整えられているが、形象は損なわれている
斧・小篆
小篆を引き継いでいるが、抽象化しすぎている?
鉞・金文
斤、斧、鉞戸では文字の造りが全く異なる




        


「斧」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   フ
  • 訓読み   おの



意味
    鉞(まさかり)
     
  • おの・まさかり(柄の先に、厚くて重い刃を装着した、叩き切るための刃物・武器)
  •  
  • きる(切)、おので物を切る
  •  
  • おのの形をした模様

同じ部首を持つ漢字     斤、斥、斧、斬、斯、新、断
漢字「斧」を持つ熟語    手斧(チョウナ・片手斧)、石斧(石の斧)




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「斧」は会意兼形声文字。甲骨文の斧は右辺は「斤」もしくは古代の曲がった柄の斧の象形;左辺は「父」の字である。両形の会意は成年男子が斧を手に持ちたたき殺そうとしている。

 斧の原本は割り裂く工具である。成年男子は手に持って兵器にもなる。たたき切る殺人兵器である。商代の斧は銅の斧で銅銭と形は似ている。文献中斧銭をもってとあるが、殺すという性格のもので形上は区別はつかない。銅斧の主な特徴は、斧の体が比較的長く狭い、刃は平か少し弧を描いている。鈍い形の作りで、刃は広く弧を描いている。「斧」は説文では斧なりとしている。 





漢字「斧」の字統の解釈
 声符は父。父は斧鉞を持つ形であるから、父の第1画がその象形、斧はその形声字である。「説文」に「斫る也」とあり、斧戉は刑具に用い、又指揮を執る時の儀器で、父とはその儀器を執るものをいう。もとより、伐薪などにも用いるものである。「孟子・梁恵王」にもその用法の記述がある。


まとめ
 会意文字であるようだが、甲骨文字にせよ、金文にせよ、まるで象形文字であるかのように生き生きとした人々の姿が描写されている。文字の形に簡略化し、無駄を省いたデッサンとなっており、実に素晴らしい記号化、抽象化がなされていると思う。



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2021年1月2日土曜日

新年の「新」の起源と成り立ち:新は囚人の拘束具を斧で解き放つ意味で、囚人から奴隷へと新しい命運の始まりをいう

新年の「新」の起源と成り立ち:新は囚人の拘束具を斧で解き放つ意味で、囚人から奴隷へと新しい命運の始まりをいう
 「新年おめでとう」、「謹賀新年」などと普段から何気なく使う新年の「新」。実はその起源と成り立ちは我々が思いもよらなかった歴史が秘められていて、そこには血と涙の弛まぬ人々の思いがこめられていた。

 漢字「新」の左側は囚人のための拷問器具である「辛」、右側は柄の折れ曲がった斧である「斤」です。 二つの図形の会意文字は、囚人を護送した後、斧を使用して拷問器具を首から外すことを意味しています。囚人の拘束具を斧で解き放つ意味で、囚人から奴隷へと新しい命運の始まりをいう。


引用:「汉字密码」(P622、唐汉著,学林出版社)
「新」は囚人の首から斧で枷を外す意味
唐漢氏の解釈
 「新」、これは会意文字です。甲骨文の「新」という言葉は左右が結びついた構造を持っています。左側は囚人のための拷問器具である「辛」、右側は柄の折れ曲がった柄の斧である「斤」です。 二つの図形の会意文字は、囚人を護送した後、斧を使用して拷問器具を首から外すことを意味しています。

 金文の「新」は甲骨文字を継承しましたが、斧の形は「斤」に変化しました。小篆の文字「新」が左側の「辛」の下に「木」が追加されています。これにより、小篆の左側の構成が簡略化され、「亲」になり、そのため、「新」と表記されます。 捕虜から奴隷へ、それは新しい命運の始まりです。

 「新」の本来の意味は「新生」、つまりさしあたり死から逃れ(古代社会では大きな祝福です)、「奴隷の新しい運命」の始まりです。このことから、拡張され一般的な意味の「新」すなわち「新しい人、新しい火、新しい芽、花嫁」などの一般的な意味での「新しい」に拡張されます。
 捕虜の首から拷問器具を外し、薪に使用します。したがって、「新」はたきぎの意味を持つことから「薪」とも書きます。「新」に「草冠」を付け加えたものです。 《南史•陶渊明传》のなかの「助汝薪水之劳。」の中の 「薪水」の本来の意味は、薪と水です。薪と水は生活必需品です。したがって、後世は「薪水」を「俸禄」と呼び、現在は「給料」と呼ばれています。



字統の解釈
 会意文字:辛と木と斤に従う。辛は針。新木を採るとき、木を選ぶのに矢を放ち、針を打つなどして選木の儀礼があって、神に供すべきものを定めた。新とは新死者のための神位を作るの意味。


漢字源の解釈
 会意兼形声 辛は鋭い刃物を描いた象形文字。亲は「木+音符「辛」の会意兼形声文字で、木を切ること。「新」は「斤(斧)+音符「亲」で、切り立ての木、生々しい意。


結び
「新年おめでとう」、「謹賀新年」などと普段から何気なく使う新年の「新」。実はその起源と成り立ちは我々が思いもよらなかった歴史が秘められていて、そこには血と涙の弛まぬ人々の思いがこめられていた。



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2017年11月28日火曜日

干支の「いぬ」の漢字「戌」の成立ちを甲骨文字に探る


漢字「戌」の起源と由来
 干支の「戌」は「犬」ではありません。
 中国では年を表すのに10を一サイクルとする十干(甲、乙、丙・・・)、12を一サイクルとする十二支(子、丑、寅・・)の二つの指標を使って表してきた。これで比較的になじみが多いのが、丙午だろう。日本ではこれを避けるために、出生率がぐんと下がるほどの影響力を持っている。
 来年の干支は「戌」である。この漢字は動物の「犬」とは起源も由来も違い、中国人独特の思考方法により生み出されてきた漢字である。


引用:「汉字密码」(P878、唐汉著,学林出版社)

 「戌」の構造形は元々一種の丸い刃の広い短い柄の戦闘用の斧から来ている。
 古代はこれを「鉞」と称していた。「戌」は甲骨文字では象形文字である。突き出した半円形の刃の部分は典型的な「鉞」の特徴を持っている。
 金文の「戌」の字はその他の兵器の文字と同様な変化をして、右辺の「木偏+必」(木の柄)の形は矛・戈 という旁になった。左辺の半円の刃の部は線条化の変形過程の後、トとなった。金文から小篆以来、楷書は小篆を受け継いでいる。
 戌の字は兵器の象形文字である。
 しかし戌は十二支であり、兵器からの直接の由来ではなく、「戌」という名の神祇から来ている。
 上古先民はこの「戌」という名の神祇は嬰児のある神秘的な関係を持っているとする。それゆえ戌という神祇に向かって子供の成長を加護の献祭が必要になる。このため戌は十二支の第11番目に借用されている。



 一方動物の「いぬ」の漢字は「犬」で、甲骨文字でははっきりとした象形文字で犬の形が具象化されており、誰が見ても犬にしか見えないもので、干支の「戌」の漢字とは似ても似つかないまったく異なる由来であることが良く分かる。


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2015年4月24日金曜日

漢字:「城」の起源と由来 高くて大きい城郭と「戌」からなり、両形の会意で防御用に作られた城堡の建築物を示している







引用 「汉字密码」(P728,唐汉,学林出版社)

漢字:「城」の起源と由来 高くて大きい城郭と大きな斧「戌」からなり、両形の会意で防御用に作られた城堡の建築物を意味している

  「城」の字は会意文字である。金文で城の字の左辺は「郭」の字の古文体であり、高くて大きい建築物を表し、城都の中を見渡し、また城を護る角楼のように見える。右辺は古文で「戌」の字であり、柄の長い大きな斧の象形文字である。そして両形の会意で防御用に作られた城堡の建築物を示している。 金文中の別の城の字は右半分の下辺に土を加えて、守護用の広大な土壁を強調している。

 小篆では変化の途中で角楼とその影響の合体図形がなくなり、又右半分の下辺の「土」が左辺に移動し、一個の土と成からなる会意兼形声文字となった。

城は守護の意味を持つ造字で城堡の意味である。説文では「城は以て民を護る」としている。城壁から意味が拡張され、城壁を護る場所を示している。即ち城市である。「史記・孫子呉起列伝」では、魏の文候は呉起を以て将となし、秦を攻撃し、五城を奪取した。古文中、城、郭と同時に言うときは、城は内城を指し、郭は即ち外城を指す。城郭と連用するときは広く城市を指す。

 それにしてもこの城という字は実に堂々とした風格のある字だと思う。


まとめ
 漢字:「城」とは高くて大きい城郭と大きな斧「戌」からなり、両形の会意で防御用に作られた城堡の建築物のことである

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