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2023年6月30日金曜日

漢字「突」に込められた謎は? 穴から犬が出てきたことぐらいで漢字が生まれるだろうか?


漢字「突」は、「穴」と「犬」からなる。ここでいう穴は「竈」ではないか?

 漢字「突」は、「竈」と「犬」からなる。竈は神の宿る場所として神聖化されていた。

 しかし、その神聖な場所である竈から犬が飛び出したとすると、それは古代人にとっては想定外の「突然」のことではなかったろうか。かくして新しい漢字が生まれた。

導入

前書き

 「突」という字は、「穴」から犬が突然飛び出すことだというのが定説であった。

  しかし、犬が穴から飛び出したことぐらいのことで、なぜ新しい文字が誕生されなければならない出来事か? あまりに日常茶飯事のことではないだろうか。

  前々からこの定説?には違和感を持っていた。なぜ穴でなければならないのか、なぜ犬でなければならないのか。理解に苦しんでいた。この穴は普通の穴ではないのではないか、そして犬は穴の中には普通はいるはずのないものではないだろうか。

  そして甲骨文字を繙くうちに、この穴が実は竈ではないかという説に付きあたった。とすれば竈の中に犬は普通はいないものである。かまどは神が宿る神聖な場所として見なされていた。「穴」にはいるはずのない犬が飛び出すから突然なのだという説は、かなり俗っぽいもの。もちろん今の段階では、何が俗説かは分からないが、・・。

目次




**********************

漢字「突」の今

漢字「突」の解体新書


 

漢字「突」の楷書で、常用漢字です。
突・楷書


突・甲骨
突・金文
突・小篆




 

「突」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   トツ
  • 訓読み   つく

意味
     
  • つく
  •  
  • にわかに、急に
  •  
  • つきだす。

同じ部首を持つ漢字     穴、窒、窃、空
漢字「突」を持つ熟語    突然、煙突、衝突、猪突


**********************

漢字「突」の変遷はどこからもたらされたか:成立ちと由来

引用:「汉字密码」(P35、唐汉著,学林出版社)

唐漢氏の解釈

 「突」は会意文字である。甲骨文字の上半分は穴という字で、下半分は一匹の犬が洞穴の中でにわかに突破して出る図である。

 図に示すごとく、この一幅の図は犬が穴の中から雑草または雑草のようなものを身につけながらまさに出ようとしているところから出来たものだ。
 形は巧妙に兼ね備わったということが出来る。突の上部の穴が略して受け加えられて以降、金文、小篆、楷書体の一連の変遷を経て、形体は一致して一脈の流れを受け継いでいる。

 突の本義は急速に外に出ること、突囲、突破、狼奔系突の言葉にある。


漢字「突」の字統(P663)の解釈

漢字「突」の字統(P663)の引用

 会意 旧字は突に作り、穴と犬とに従う。穴は 穴(かまど)、犬は犬牲。 犬の形はもと友の形に作り、竈穴を犠牲をもって祓うことをいう。〔説文〕 に「犬、穴中より暫(にわか)に出づるなり、 犬の穴中にあるに従ふ」とするが、穴は犬の居るべきところでなく、また犠牲とされる犬ならば、突出してくるはずはない。
〔左伝〕 荘六年正月「王人子宊、 衛を救ふ」とあり、このとつが突の初文である。

 竈は火を用いるところ、竈神を祀り、家の中でも極めて神聖とされたところである。ここに犬牲を供えて祀ることが、古くは行なわれていたのであろう。突は竈の煙抜きのあるところで、突出するところであるから、突起・突兀の意となり、突如突怒のように急突、また突進・突撃のように勢いのよい意となる。

 

 
ここで、白川氏が主張する、「穴」は実は竈のことをいうという説に立ち返ってみる。竈という字は 上部は「穴」です。ここでは動物の巣穴を意味します。下部は虫の形象。竈とは土で作った穴の中に何かの動物(おそらく神聖な得体のしれない生き物)が生きていると想像したのではないでしょうか。そして古代人は竈を神の住む神聖な場所と考えた。
 そこで、いくら生贄といえ竈の中に動物をささげるとは考え難い。 

 しかし現実の問題として、犬が火の落ちた温かみのある竈に潜り込むことは十分考えられる。つまり神に代わって、いないはずの犬がいたとなれば突然とは考えないだろうか。とすれば、突然という意味も生まれてくると思うのだが。

古代中国の生贄

 字統によると、古代中国においては、「犬の生贄」が、広く行われていたということであるが、ChatGPTによれば、犬はそれほど多く犠牲になていないようだ。それは人間と犬との関わりの問題で、犬はむしろ協業の一端を担っていたからではないだろうか。

 古代中国の一部の宗教的および文化的慣習では、動物に関連した犠牲や儀式がいくつかありました。ただし、古代中国の文化や宗教の概念は多様であり、地域や時代によって習慣も異なることに注意してください。古代中国に関連した動物の犠牲の例をいくつか挙げます。

  1. 牛のいけにえ: 牛は、古代中国のいくつかの宗教的儀式や農業儀式で一般的な犠牲動物でした。たとえば、天に犠牲を捧げる古代の儀式では、神への敬意を表すための犠牲として牛がよく使われました。
  2. 羊のいけにえ:羊は古代中国のいけにえによく使われる動物のひとつでもあります。一部の宗教的および伝統的な祭りの儀式では、人々は神や祖先を崇拝するための犠牲として羊を使用します。
  3. 鶏のいけにえ: 鶏は、一部の宗教や習慣において犠牲動物としても使用されます。たとえば、神を崇拝したり、祝福の儀式を行ったりするとき、人々は鶏を犠牲として使います。
  4. 魚のいけにえ: 中国南部の一部の地域では、魚も宗教儀式における重要な犠牲とみなされています。漢の伝統文化において、魚は縁起と富の象徴的な意味を持っています。
 時間の経過とともに、動物を犠牲にするこれらの古代の習慣は徐々に減少し、徐々に新しい価値観に置き換えられたことを指摘する必要があります。
 古代中国では、奴隷を生贄にささげることもあったようですが、奴隷も生産を担う重要な要素になってくるようになると、生贄にささげる風習は次第にすたれていったということです。

太古の中国の犬を生贄に使う習俗(ChatGPTより)

 中国の太古時代において、犬を生贄として使用する風習が存在したという記録はあります。しかし、具体的な時代や地域に関しては詳細な情報は限られており、断片的な記述や考古学的な証拠に基づいた推測が行われています。

  中国の古代の宗教や信仰体系では、生贄が行われることがありました。生贄は神々への奉納や儀式の一環として行われ、神聖視される存在として扱われました。犬はその中でも一部で使用された生贄の一つとされています。
 犬が生贄として用いられた背景には、犬の特別な性質や神聖視される要素が関与していた可能性があります。古代の中国では、犬は忠誠心や警戒心の象徴とされ、また神聖な存在とも考えられていました。そのため、犬を生贄として捧げることで神々により深い敬意を表すとされたのかもしれません。

 ただし、古代の風習や信仰は時代とともに変化し、断片的な記録や証拠に基づく情報の解釈には注意が必要です。また、現代の観点から見ると、犬を生贄とする行為は倫理的に問題があると考えられます。 以上の情報は、限られた記録や学術的な研究に基づいており、完全な詳細や背景については解明されていないことをご了承ください。 現代中国の宗教的および文化的実践では、動物への犠牲は比較的まれであり、より多くは象徴的な方法で行われます。同時に、現代社会は一般に、動物福祉と環境保護を保護するという価値観を提唱しています。

漢字「突」の漢字源(P1163)の解釈

 会意。「穴」+犬で、穴の中から犬が急に飛び出すさまを示す。


漢字「突」の変遷の史観

甲骨文研究ネット

 甲骨文字=(かやで覆った穴)+(犬)、言葉の意味:言葉の成立ち:犬が突然穴から出てきて、人々が予想しなかったため突然という意味が出てくる

まとめ

  字統における白川博士の注釈は、もっともらしい解説ではあるが、実際に竈で生贄を焼くという行為が行われていたかははなはだ疑問である。第一、生贄を焼くとなれば、反射炉でもない限り強烈な悪臭が発生し、以降竈の役割を果たさないと感じるのだが・・・。

     結論として、私は「突」という字は、「竈」は「蛇か何かの神聖視された動物」で構成される。結果として竈は白川博士の言う通り、神聖視され、神のいる場所とされた。その場所に、いるはずのない犬がいるとすれば太古の人々にとっては、突然という意味が生まれてくると考える。
  


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2021年9月5日日曜日

漢字「狼」の成り立ちと起源:「犬+良」から成る。鹿やイノシシなど農作物を捕食する動物として尊敬されてきたことから「良」という字がついた?


漢字「狼」の成り立ちと起源:「犬+良」から成ることは間違いない。
 しかし、荒々しい獣の代表のような狼がなぜ良という字を持つのか>その不思議に迫れるか・・。



漢字「狼」の楷書で、常用漢字です。
 
狼・楷書


  
狼・甲骨文字
狼・小篆
構成の左は犬から取ってきています。右は「良」で、冷酷を意味するといいますが、後付けのように思います。
狗・甲骨
偏が犬偏ではないことに注意。現代では獣偏で統一されています


    


「狼」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ロウ
  • 訓読み   おおかみ

意味
     
  • 狼・・・おおかみ(イヌ科。家族単位で暮らし、冬には群れをつくって共同で狩りをし、大形の動物なども襲う)   (例:)
  •  
  • ひどい残虐なやり方をいう・・・豺狼
  •  
  • 酷い行いをする人をたとえ 

同じ部首を持つ漢字     狼、浪、痕
漢字「良」を持つ熟語    狼藉、一匹狼、狼煙、狼狽




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 字形から構造分析をすると、狼は犬に似てそのために字形の右側が「犬」のような形をしており、字形の左側は甲骨文「良」です。
 良とは元々、光線が穴から差し込んでくることを意味し、オオカミの目は2つのターコイズブルーのライトのようなものということから、「狼」という言葉は「良」を構成要素として使用しました。オオカミの眼の光は青緑色のライトのようで、ことのほか目を奪うものです。

 古代の先祖は「良、犬」の会意で以て狼の字を作り出し、観察は精密で考えの組み立ては巧妙です。

 



漢字「狼」の漢字源の解釈
  「犬+音符 良(冷たく澄み切った)」 冷酷な性質の動物の意


漢字「狼」の字統の解釈
 狼:形声文字。声 符号は良。説文に「犬に似て鋭頭白頬、高前廣後」と言う。その鳴く声は小児の声に似ている。暴虐の甚だしいものを虎狼といい、その代表とされる。飼うことのできない獣とされる


まとめ
 オオカミは人間との交流の歴史が長く、一部の農耕社会や狩猟採集社会では、鹿やイノシシなど農作物を捕食する動物として尊敬されてきた。漢字の生まれた中国の中原では農耕が発達し、基本的に農耕社会であった。このような意味から漢字「狼」には、「良」という文字がついているのかも知れない。またオオカミは、家畜やペットである犬の祖先とも言われている。



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2018年5月13日日曜日

漢字「犬」:人間と「犬」の係わりの深さを表現している


漢字「犬」の起源と由来

「犬」は、干支の「戌」とは全く関係がない
  来年の干支は、戌年だ。ここで取り上げた「犬」は、干支の「戌」とは全く関係のない、正真正銘の動物の「犬」だ。
 今では干支の「犬」もこの動物の犬を当てるが、本来干支の字と動物の犬ではそもそも起源が全く異なる。干支の「戌」の起源は別に譲るとして、ここではしばし、動物の戌の起源と由来について、話を進める。

引用:「汉字密码」(P026、唐汉著,学林出版社)

象形文字の「犬」は、輪郭の特徴をとらえた造字法
 象形文字の「犬」は、輪郭の特徴をとらえた造字法である。

 「犬」の字は象形文字である。2500年以上も前、孔子は「犬」字を見た後、少し感心した感じで、「犬の字は『狗』の絵の様だ。」といったという。


 明らかに犬の字は牛や羊のように、若干抽象的でかつ印象的な造字方法とは異なり、比較的忠実に特徴をとらえた線で輪郭を取る象形文字の造字法である。
 この方法ではしっかりと犬の外形的特徴をつかんでいる。体は細く、長い尾は巻いている。先民が犬を縦長に立てた状態で描いている。

字ははるか昔から先民は字を縦長に立てた状態で描いていた
   観察上字形を考えると、我々は犬の字を横から見た風に書くのが、実際の状態により忠実に対応できるのが分かる。しかしこれは漢字を横に狭く縦に長く書くという縦書きの特徴に適応したためで、3300年以前のはるか昔から先民は字を縦長に立てた状態で描いたものだ。

 甲骨文字の犬の字は適宜変化し、今日の犬の字の楷書になっている。厳格に言えば、今日の「犬」の字は一種の文字符号であるが、それは依然として象形文字である。

「字統」(白川静、平凡社)によると

象形文字、金文では、「員鼎」に「犬を執らしむ」とあり、近出の中山王墓には金銀の首輪をはめられた2犬が埋められていた。しかし、犬は犠牲とされることが多く、器物を犠牲の血で清めて用いられたとこから、「器、就」となると説明されている。


縄文時代の人と犬のかかわり
 また日本の話ではあるが、2018年5月13日付けの毎日新聞に「縄文の犬は人間と一心同体」と題し、愛媛県の「上黒岩岩陰(かみくろいわいわかげ)遺跡」~出土した日本最古の犬の埋葬の鑑定が掲載されていた。

 それによると、縄文時代(7400~7200年前・・縄文時代早期末~前期初頭のものと判明し、改めて最古と確認された)のこの古墳では、犬は人間と共に狩をし、共に食事をし、大切にされ、最後は手厚く葬られたであろうと考えられている。





編集後記

犬と猫は歴史的に見れば、最も長く人間と共に苦楽をしてきた動物と評価されている。しかし、犬と猫では人間との係わり方が時代と共に違って来ているようである。猫は愛玩や癒しで関わってきたのに対し、犬は猟犬や番犬として、労役を共にしてきている。
 それに対し、最近ではこの犬猫の地位に違いが出てきて、猫が犬に比べると人間との間の距離が近くなっているようです。その要因は、人間が犬猫に対し、労役に役立つかどうかの経済を中心とした見方よりも、精神的な結びつきを重視する見方に変わってきているにあるようです。これからは猫に関係した漢字がもっと増えてくるかもしれません。

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2018年2月10日土曜日

漢字「笑」の成立ち:竹かんむり(竹の鞭)に犬である。

漢字「笑」の起源と由来
「字統」では、巫女が手を上げ首を傾げて、舞い踊る様と説明している。
「漢字源」では、会意文字で、竹+夭(細い)で細い竹のこと。
唐漢氏は犬に竹ムチ打った時、犬が歯をむき出して唸るとしている。ここから笑いが出てくるのか少し変。
三者三様、どれがもっともらしいのっだろうか?

引用:「汉字密码」(P38、唐汉著,学林出版社)

色々の古文書の中の「笑」
 「笑」は笑は考古の出土から出る字は、「竹かんむりに犬」である。説文では、「竹に犬」と説明し、解釈して「喜び也。竹と犬からなる。」

 しかし後世の人が、これは解釈できないとして、竹かんむりに「夭」としたものだが、それを都合よく踏襲して今日に至っている。文字学としては、このような勝手気ままな改竄は受け入れられていない。事実考古出土の文字を見てみると笑の字は確実に竹と犬からなっている。

 かつて宋の時代、王安石は「字説」の中で、竹で犬を鞭して笑うとして、笑の字の源を解釈している。これに対し、苏东坡の「竹で馬を鞭すれば「篤」となるのか、竹で犬を鞭すればどうして笑いになるのか分からないという揶揄に会っている。しかし、王安石の解釈は漢字を要素に分解して解釈するときに、少し適用に勇み足があったものからくるのかも知れない。

 犬を鞭打てば、犬は硬く尾っぽを挟み、体を曲げ、歯をむき出し、威嚇の表情を示し、うなり声を上げる。
 人は大笑いする時は口を大きく開け、犬と同様に犬歯をむき出す。人は大笑いする時、体を曲げ、「ハハハ」の大きな声を出す。このことは犬に鞭打つ時と同じ様である。古人の生活観察の細かいことが逆に分かってしまう。

 古人の笑い声の中に純真さと痛快さがあり、彼らはその笑の中に偽善と抑圧の混ざるに至るまで成長して(掏れて)いない。古代の祖先たちは腹を抱えて腰を曲げて大笑いする除いては、・・後世の子孫たちが微かに歯を見せ、顔の一部を動かすのを笑いといっている・・「笑」を知らない。

 この説明には多少の無理があるように思うが、「竹に夭」より未だわかりやすいと思う。


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2017年11月28日火曜日

干支の「いぬ」の漢字「戌」の成立ちを甲骨文字に探る


漢字「戌」の起源と由来
 干支の「戌」は「犬」ではありません。
 中国では年を表すのに10を一サイクルとする十干(甲、乙、丙・・・)、12を一サイクルとする十二支(子、丑、寅・・)の二つの指標を使って表してきた。これで比較的になじみが多いのが、丙午だろう。日本ではこれを避けるために、出生率がぐんと下がるほどの影響力を持っている。
 来年の干支は「戌」である。この漢字は動物の「犬」とは起源も由来も違い、中国人独特の思考方法により生み出されてきた漢字である。


引用:「汉字密码」(P878、唐汉著,学林出版社)

 「戌」の構造形は元々一種の丸い刃の広い短い柄の戦闘用の斧から来ている。
 古代はこれを「鉞」と称していた。「戌」は甲骨文字では象形文字である。突き出した半円形の刃の部分は典型的な「鉞」の特徴を持っている。
 金文の「戌」の字はその他の兵器の文字と同様な変化をして、右辺の「木偏+必」(木の柄)の形は矛・戈 という旁になった。左辺の半円の刃の部は線条化の変形過程の後、トとなった。金文から小篆以来、楷書は小篆を受け継いでいる。
 戌の字は兵器の象形文字である。
 しかし戌は十二支であり、兵器からの直接の由来ではなく、「戌」という名の神祇から来ている。
 上古先民はこの「戌」という名の神祇は嬰児のある神秘的な関係を持っているとする。それゆえ戌という神祇に向かって子供の成長を加護の献祭が必要になる。このため戌は十二支の第11番目に借用されている。



 一方動物の「いぬ」の漢字は「犬」で、甲骨文字でははっきりとした象形文字で犬の形が具象化されており、誰が見ても犬にしか見えないもので、干支の「戌」の漢字とは似ても似つかないまったく異なる由来であることが良く分かる。


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漢字「狗」の本来の意味は何?


漢字「狗」の起源と由来
なぜ漢字で[狗]を「狗」と書き表したか?
 漢字では「犬」を「狗」とも書き表す。このことは人々が通常湾曲した形状のものを「鈎」と称したことによるものだ。湾曲したものをつなぎ合わせて一緒に「句(gou)搭」と呼んだ。雄犬と母犬が交配をする時、大変長い時間「離れがたく一緒」にいる。先住民は交配している犬を見て、自主的に「句住」と呼んだものだろう。こうして長い時間を経て、「句」の発音は犬の通称となった。発音に基づき、犬と句の音と犬の字を同時に使用して、人々は「狗」の字を作った。


引用:「汉字密码」(P27、唐汉著,学林出版社)

漢字「狗」の構造
 漢字の中で「犬」の字は部首である。偏と旁に用いる時、犬は「狐、狼」の偏のように書かれる。「犬」の旁は通常犬と同類の哺乳動物の類を表す音を表す旁を用いて、狗と表記する。

 《诗•小雅•巧言》のなかに「子供のウサギに心が躍る、犬に会ってこれを捕まえる」の記述がある。これから分かることは相当早い時期から、犬は既に人々の狩りの助けをし、人々のために犬馬の労に献身していたようだ。


韓信の無念
 西漢の年、漢の高祖が天下を取るのに戦功を立てた大将軍韓信は謀反の嫌疑をかけられ、毒を飲まされ自殺した。彼は辞世の句を残している。「狡兔死,走狗烹。」この意味はずるい兎を捕まえる時は犬は一定重用されるが、一旦ウサギが捕まり、犬が用いられなくなると料理されて食べられるものだ。これは韓信の自嘲の気持ちを表している。我々は、この事から、犬を狗と呼ぶようになったのは相当古いことであり、また中国では、漢の時代から狗は食用にされていたことが分かる。 

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2013年4月28日日曜日

「狂」:漢字の起源と由来

 最近、何かが狂い始めている。国の指導者も然り。本人は実に真面目に「一生懸命」である。だから余計に始末が悪い。
 
 諺に「亀の甲より年の功」といわれるが、最近特に感じることである。
 例えば戦争に行くことが、決していいことだと言わないが、すくなくとも戦争を経験したものは、二度と戦争をしたいとは思わない。しかし、戦争を経験していないものは、意識が抽象的になって、「戦争」を簡単なものに考えてしまうのではないだろうか。北朝鮮の指導者にしても、日本の首相や高級官僚などの国を指導する人々は、なぜあんなに戦うことを急ぐのか?
 「強いアメリカ」「強い日本」「強い中国」、いずれも民族主義を肩に担いで動こうとする。大衆の意向がそうといえばそうであるが、そもそも大衆の意向は何で決まるかといえば、その政治で決まる。つまり前の政権を引き継いだにせよ、指導者が自ら作り出してきた「潮」である。
 
 民族主義は非常に危険な思想だが、しかし自然発生的に出てくるものではなく、強力な権力が何らかの意図を持って、国外または国内で工作を仕掛け意識的に誘導して作り出されるものが、殆どではないかと思われる。そしてそれに易々とだまされるのが、概して貧困層であり、教育を受けていない被支配者階級(階層)なのだ。
 人類は結局、お互い闘い殺し合い、最後は死滅するのかもしれない。その時になって初めて、「人間とは何と愚かな生き物なんだ」と気付くのかもしれない。その時まで、この狂気の思想に取りつかれたまま、死に向かって行進するのかもしれない。

 世の中全体が、或いは自然までも狂い始めているように感じられる。だれが、世の中を狂わしているのか?


 「狂」という漢字の起源と由来に当たって見よう。この狂いを太古の人々はどのように認識していたのか。


引用 「汉字密码」(P35,唐汉,学林出版社)

甲骨文字の「狂」の字の右半分は犬の象形のデッサンである。

甲骨文字の「狂」の字の右半分は犬の象形のデッサンである。左半分の上部は足の足跡を表示し。下辺は「土」の字である。



「犬」の字は、犬が狂犬病を患った後で走り回る情景を表している

 両形は会意文字である。犬がその本性を失ってしまって、走り回ることを止められない。犬が狂犬病を患った後で走り回る情景を表している。小篆の「狂」の字は既に会意兼形声文字となっている。「犬と圭」。隷書から楷書まで一歩ずつ変化し、今日の狂の字がどのようにして一歩ずつ変化したか(訛り)を見るのは難しいことではない。楷書の「狂」の字は既に典型的な形声字となっている。犬という字と「王」の発声。


現代漢字中、「狂」の字は人の精神の常を失しているという意味である。

 現代漢字中、「狂」の字は人の精神の常を失しているという意味である。
 またこれから拡張され人の「狂妄、人が理知的な状態を失って、あるがままに放蕩し拘束を受けない状態を言う。心を失い、病に狂い・・。
 また拡張され、情勢が猛烈で広く大きい時、「狂風暴雨。狂暴不安」のように用いる。
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2013年4月23日火曜日

獄:漢字の起源と由来

 犬にまつわる漢字について、連続して調べているが、今回は「獄」という字である。獄という字は、「監獄、地獄」という風にあまり好いイメージには使われない。犬は最も古くから人間と馴染んできた動物であるが、その割には昔からあまりいい評価を与えられていない。犬は人間が飼いならして以降、人間に忠実で、人に逆らうことはなかったことから、却って見下げられてきたのかもしれない。どこかの首相がどこかの大統領に媚びた為、「ポチの尻尾」と呼ばれたことにも通じるのかもしれない。この方は、この一国の首相の個人の問題で終わらなく、その国民全体が今や世界からあまり評価を受けなくなってしまっていることに、深刻な問題をはらんでいる。

引用 「汉字密码」(P29,唐汉,学林出版社)

「獄」という字は、二匹の犬が相まみえて唸り鳴いている形をしている


  「獄」という字は金文では、二匹の犬が相まみえて唸り鳴いている形をしている。真ん中の字形は「言う」の字で、これは二匹の犬が争っている時の叫び声を表している。犬が相互にかみ合っていることから、拡張され争いを表している。人と訴訟する意味である。敗訴になった人は牢につないがれたことから拡張され、漢代以降、人々は監牢を「獄」と称するようになった。

 獄の字は二匹の犬が守って、牢獄の一つの概念を示している。単に監獄に犬を看守として用いるだけではなく、無論大きな家の人は、皆通常は百姓等も皆犬を使って、大きな家の警護した。


歴代の統治者は犬
 犬は人間に対しては多くの用途があり、いわゆる歴代の統治者は犬を十分重んじてきた。《周礼•秋官》の中で、宮廷では犬と人一緒ではなく、専門に飼い犬を掌管し、犬の用事をした。漢代には「犬監」という、皇帝の飼い犬を養育を請け負う専門の部署があり、唐代には犬を養う「狗房」があった。元代の"狗站"は犬の駅を提供する役使であった。


人間の犬に対する評価

 犬と人は密接な関係を持っていたけれども、しかし中国人は犬に対してはそんなに高い評価をしているわけではない。犬で以て人を例えて、賎しいとか軽蔑の意味を持つ。「走狗、狗屁(たわごと)、狗屎(くだらないやつ)、狗官(悪役人)、狗眼看人低(権力や金持ちに媚びるような人間は、決って貧しい人を軽蔑するものである。)等など。皆貶す意味をもった生活習慣用語である。
 
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2013年4月21日日曜日

狗:漢字の成り立ちと由来 いつから犬のことを「狗」と呼ぶようになったのか?

 中国では犬のことを「狗」と呼ぶ。日本でも天狗や走狗というように用いられるが、犬は専ら「犬」である。しかし現代中国でも、牧羊犬、警犬、玩赏犬、食肉犬というが、番狗、食肉狗とは言わない。また犬歯というが、狗歯とは言わない。いつからそのようになったのだろう。犬と狗との使い分けはどうなっているのだろう。少し探って見た。
引用 「汉字密码」(P27, 唐汉,学林出版社)

「狗」は犬の交配から先住民が呼び出したことによる

 「犬」の字はなぜQuan(チュアン)と発音するのか?これは犬の子の鳴き声の「きゃんきゃん」というところから来ている。これは犬の発音は子犬の擬声語から来ている。
 しかし、人々はなぜ「犬」を「狗」と呼ぶのだろうか。このことは人々が通常湾曲した形状のものを「鈎」と称したことによるものだ。湾曲したものをつなぎ合わせて一緒に「句(gou)搭」と呼んだ。雄犬と母犬が交配をする時、大変長い時間「離れがたく一緒」にいるが、まるで繋がったものと同じようである。先住民は交配している犬を見て、自然に「句住」と呼んだものだろう。こうして長い間、「句」の発音は犬の通称となった。発音に基づき、犬と句の音と犬の字が同時に使用されて、人々は「狗」の字を作った。


漢の時代には既に「犬」は「狗」と呼ばれていた

 西漢の初年、漢の高祖が天下を取るのを助けた戦功を立てた大将軍韓信は謀反の嫌疑をかけられ、毒を飲まされ自殺した。彼は一句世に伝える名言を残している。「狡兔死,走狗烹。」この意味はずるい兎を捕まえる時は犬は一定重用されるが、一旦ウサギが捕まり、犬が用いられなくなると料理されて食べられるものだ。これは韓信のの自嘲の気持ちである。我々は却って、この事から、犬を狗と呼ぶようになったのは相当古いことだと見て取れる。

 漢字の中で「犬」の字は部首である。偏と旁に用いる時、犬は却って「狐、狼」の様にかかれる。「犬」の造りは通常犬と同類の哺乳動物の類を表す旁となる。音を表す旁を用いて、犬の行為に関係を示す。

「犬」は早い時期から狩りの助けなど
人々の生活に係わってきた

《诗•小雅•巧言》のなかに「子供のウサギに心が躍る、犬に会ってこれを捕まえる」の記述がある。これから分かることは相当早い時期から、犬は既に人々の狩りの助けをし、人々のために犬馬の労に献身する。
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2013年4月19日金曜日

「犬」:漢字の起源と由来

前回と前々回で「臭」と「献」の字について、それがいずれも犬から派生された字であることが理解できた。そこで今回は、これらの大本の由来である、「犬」の字の起源と由来について、唐漢氏に尋ねてみることにする。
 犬は中国人は「狗」という。犬科で聴覚、嗅覚とも鋭敏で、犬歯は鋭く、前脚は5趾、後ろ足は4趾で曲がった爪をもち性格は機敏で、訓練に適応し、狩犬、牧羊犬、番犬、愛玩犬、食肉犬等になる。 犬は人類が最も早く(約8千年前)から順化させた野生動物の典型は中国狗で、尾は後ろに巻きあげている。


ここで一つの疑問が出てくる。中国の3300年前の先民たちは、なぜ字を書くのに縦長で、立てて描いたのだろうか?

これは漢字や文字が縦に書かれることのルーツであるような気がする。
引用 「汉字密码」(P26,唐汉,学林出版社)

「犬」これは象形文字であり、輪郭の特徴をとらえた造字法である

「犬」これは象形文字である。2千年以上も前、孔子は「犬」字を見た後、少し感心した感じで、「犬の字は『狗の絵の様だ。」といったという。
 明らかに犬の字は牛や羊の造字方法の特徴とは同じでなく、犬の字が従っているのは、輪郭の特徴をとらえた造字法である。即ち線で輪郭を取る方法である。この種の方法はしっかりと犬の外形的特徴をつかんでいる。体は細く、長い尾は巻いている。

先民が犬を縦長に立てた状態で描いた

観察上字形を述べると、我々は犬の字が横から見た、実際の状態に対応できるのが分かる。これは漢字の横に狭く縦に長く書くという特徴に適応したためで、3300年以前のはるか昔の先民が犬を縦長に立てた状態で描いたものだ。まさにこれは一つの原因であり、それ以降犬の字は随時一つ一つ変わっていって、今日の犬の字の楷書になっている。厳格に述べれば、今日の「犬」の字は一種の文字符号であるが、それは依然として象形文字である。
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2013年3月17日日曜日

「献」の字は犬の肉を神前に捧げたことを伝える


 中国人や朝鮮人は犬の肉を食うとある意味ある種の差別的感覚で言われる。しかし、彼らの祖先はむやみやたらと犬の肉を食ったわけではない。犬は古代社会においても一緒に狩りをしたりする家族同然の扱いを受けていた。彼らは神に祈りをささげ、祈願する時お供えとして犬を神前に捧げていた。その名残りが「献」という字である。
  その様なことは日本でも行われていた。各種伝承にある「人身御供」である。こちらは犬どころの騒ぎではなく、若い「生娘」というのが相場が決まっていたようである。一体どちらが残酷なのか?あまり他人のことをとやかく言うものではない。

引用 「汉字密码」(P31,唐汉,学林出版社)

左辺は「高」という3本足の鍋、右辺は犬。
「献」は神前に狗肉を捧げたことを表している。

古人は、犬の肉に対しては独特の感じを持っていた
   古人の感覚では、犬の肉に対しては独特の感じを持っている。肉質は柔らかで、カロリーは満ち溢れている。しかし犬はまた狩りをする。各家の助手でもある。この為古人は犬を易々と殺してこれを料理をしなかった。古人は更に多く地方で犬の肉をお供えに当てたようだ。「献」の字の如く、最もいい犬の肉を祖先の神前に捧げることを表している。説文では「献」は宗廟に犬の名と羹を捧げることを言い、犬の脂身を捧げる。

「献」の字の成り立ち
 甲骨文字の「献」の字は左辺は、大きな口の「高」を示している。「高」は古代の3本の足を持つ鍋のことで、右辺は犬である。ここで表示されているのは犬の肉である。金文の「献」の字は甲骨文字を引き継いでいるが、ただ犬と高が形象化されている。小篆の「献」の字は、高の字の上部に虎の字の簡略形が追加されている。ここでは大口の高或いは虎の紋を施したものを表し、楷書はこの流れで「献」となり、簡体字の規範は「献」とした。

「献」の字の現代の用法
 「献」の字もともと最も貴重な青銅鍋で「香肉」を煮ることで、祖先の神霊に奉献することである。これから拡張されて、一般の意味の「献花、献礼、献旗、貢献」などの進献の意味になった。又引き伸ばされて、他人に見させる表現「献技、献丑(つたない芸をお目にかけるという謙遜した意味、献殷勤(手厚く、丁寧にさせていただくという意味)」等等に用いられる。
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2013年3月14日木曜日

「臭」:漢字の起源と由来


 前回匂いに関する漢字「香」を研究した。しかし匂いに関する漢字は、この漢字以外に「臭」、「薫」、「匂」といくつか上げられる。
 我々は、以前に文化の発達とともに、漢字が発達分化し、色々の語彙が生まれることを知っている。  そこでここでは「臭」という漢字の
語源と由来について調べてみよう。



引用 「汉字密码」(P31,唐汉,学林出版社)

犬の肉の「香」と対比をなすのが「臭」の字である。「臭」は会意文字である。犬と自の2文字の組み合わせで出来た。甲骨文字の字形は上下が結びついて、上部は「自」の字で鼻を表し、嗅覚の器官を代表し、下部は「犬」の字で、犬の形状を表す。小篆と楷書は甲骨文の脈絡を受け継ぎ、書体は暫時変わっていく。
 犬は嗅覚は非常に発達しているから、犬と鼻から会意文字の「臭」の字が出来た。即ち何かの匂いを嗅ぐ(のちに嗅ぐの字に取って代わった。「臭」の字は元々は気味を示し、香を指すこともあった。臭の字は元々は香を指していた。また悪い汚らわしい雰囲気を指すこともあった。成語では「無声無臭」のごとく、「音もなく声もない」というのは雰囲気もないということを指している。ここでは「臭」という字で、雰囲気を指し、xiu と読む。のちに「臭」はChouと読み、専ら悪い汚い匂い雰囲気を指すようになった。たとえば「臭汗、臭豆腐,臭気天を燻す」のような言葉の中の臭いの字は等しく強い刺激のある悪い臭いを指すようになった。
 嗅覚は非常に発達しているから、犬と鼻から会意文字の「臭」の字が出来た。即ち何かの匂いを嗅ぐ(のちに嗅ぐの字に取って代わった。「臭」の字は元々は気味(匂いや香り、性格や好み・気質)を示したが、すでに香を指すようにもなっていた。また悪い汚らわしい雰囲気を指すこともあった。成語では「無声無臭」のごとく、「音もなく声もない」というのは、味気もないということを指している。ただ、ここでの「臭」という字は単なる味気を指し、xiu と読む。のちに「臭」はChouと読み、専ら悪い汚い匂い雰囲気を指すようになった。たとえば「臭汗、臭豆腐,臭気天を燻す」のような言葉の中の臭いの字は等しく強い刺激のある悪い臭いを指すようになった。
  
 ここでも明らかなように「臭」という字は本来単なる「匂い」という意味で用いられていたようだが、ただ動詞で「嗅ぐ」に用いられてることもあったようだ。
 しかし、後に単なる香りというのではなしに、「嫌な不快な匂い」に専ら用いられて、嗅いでいい「香」とはっきり区別されるようになってきたようだ。


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