2020年12月30日水曜日

漢字「舌」の成り立ち:甲骨の時代から二枚舌はあった?



漢字「舌」の成り立ち:甲骨文字の舌が二枚舌のように描かれているのは、食べると話すの二つの機能をを見える化したのかも知れません。
 漢字「舌」の由来と成り立ち:舌は非常に大切なものにもかかわらず「二枚舌、舌先三寸」のように軽く扱われてきた。

 昔から嘘をつくと閻魔大王に舌を抜かれると脅されてきた。また舌を嚙み切ると出血多量で死ぬといわれている。それほど舌は体の中で重要な部位である。にもかかわらず、舌は「二枚舌、舌先三寸」のように軽く扱われてきたのは、その軽さからなのだろうか。
 漢字「舌」に表されている舌の軽さに迫ることができるだろうか。


引用:「汉字密码」(P737、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「舌」の本来の意味は舌先です。 甲骨文にある「舌」という言葉、その下の「口」は口の絵文字、口から突き出ているのは舌であり、舌の先は二つに分かれまるで二枚舌のようです。その横にある小さな点は話しているときに飛び散る唾液を表しています。 形と長さの点では、甲金文の「舌」という言葉は蛇の舌に非常に似ていますが、まるで二枚舌のようです。 「説文」は「舌、口の中で話す、味わうこと」と解釈しています。舌が二枚舌のように描かれているのは、この二つの機能を見える化したのかも知れません。

 人間の舌には、話すことと味を区別することの2つの主要な機能があります。 したがって、中国語の「舌」は、「舐める、話すこと、味わうこと」に多く関係があります。舌のつく言葉は主にスピーチと味に関連しています。 話すとき、舌は器用に回転しなければなりません。したがって、舌の回転は「舌の無駄、唇枪舌剑(白熱した激しい議論)」などの言葉に拡張されます。また舌は「帽子のつば、火の舌」などの舌のようなものに拡張されます。



字統の解釈
象形:口中より舌の見える形。卜文の字形は舌端が二つに分かれている形に書かれている。


漢字源の解釈
会意文字 「干(盾をあらあわす)+口」で、口の中から自由に出入りする棒状の舌を表す


結び
 卜文に表された文字からはまるで二枚舌が甲骨の昔からあったかのような印象を受ける。甲骨文字の舌が二枚舌のように描かれているのは、食べると話すの二つの機能をを見える化したのかも知れません。太古の人々の思いとは異なるかもしれないが、思わず「クスッ」と笑ってしまうような漢字である.



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2020年12月27日日曜日

漢字「禍」の由来と成り立ち:災と異なり、「禍」は、人間が引き起こした自然のバランスを崩れにより引き起こされた災害のこと



漢字「禍」の由来と成り立ち:「禍」は、人間が引き起こした自然のバランスを崩れにより引き起こされた災害であるのに対し、「災」は「災」は、水、火、風などによる自然災害のことです。
 漢字「禍」の由来と成り立ち:今年の漢字の第2位は禍でした。コロナ禍が反映された結果でしょう
 今年一年はコロナ禍で明け、コロナ禍で終わろうとしています。コロナはたかが風邪だと思われたものが、結果的には世界中にパンデミックを引き起こしつつ、単なる疫病に終わらず、経済にも大きな傷跡を残し、人々の価値観さえも変えてしまったといわれています。

 漢字「禍」は今年の漢字の第2位となりました。これも、コロナ禍が反映された結果でしょう
 今年の漢字の第1位は「密」で、これもやはりコロナ禍に関連した漢字で、コロナに対する戒めとして、「3密」などの言葉が世の中を駆け巡りました。

 そこでここではコロナ禍の「禍」という漢字の由来と成り立ちに付いて一緒に考えて見ましょう。「禍」という漢字は、わざわいを読み・意味しますが、わざわいという漢字には「災」があり、この両者の違いについても調べてみることにします。



引用:「汉字密码」(P825、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈

 「禍」はもともと象形文字でした。甲骨文の「禍」という言葉は、「凶兆」の卜骨を表示しており、祖先が古代には、助けることなく神々が災害をもたらすことを示しています。「禍」という言葉の第2款は、明示的に犬を使用して卜辞の骨を咥え去りを用いて、災害と患の到来を合わせて表現しています。

 金文の「禍」という言葉は、第1款の左側の横に「示」が追加されています。これは、禍を追い払い、禍を回避する祭祀を意味します。卜骨の下に、加えられた口は禍が神の口から来ることを強調されます。

  小篆の「禍」という言葉は金文を継承しており、楷書はそれに沿っており、「禍」と書かれています。

 古代人の目には、自然災害と人為的災害が区別されます。「禍」は、神の意志に違反することによる人為的なものによって引き起こされ、祖先の神の保護の失敗の結果だと看ていたようです。「災」は、水、火、風などによる自然災害のことです。洪水・飢饉の自然災害を災と表します。



字統の解釈
形声:声符は咼。咼は残骨に対して呪詛して祈る形の字で、「禍」はその声義を承ける字である。

 難しい言い回しだが、要は残された骨を呪い祈る意味だというのである。のろいにより引き起こされた禍とでも解釈するべきなのかもしれない。





漢字源の解釈
会意兼形声。「示」(祭壇)+音符咼(意味は穴を示す)で神のたたりを受けて思いがけない穴(落とし穴)に嵌ること


  結び
 唐漢氏も字統も漢字源も少しずつニュアンスが異なりますが、いずれも「禍」というのは「災」と異なり、人間が引き起こしたことにより、自然のバランスを崩したことにより引き起こされた災害と解釈され、古代人はそれを、神の呪いや神の怒りという表現で考えたようです。

 古代人の解釈が現代にそのまま通用するものではないのですが、コロナ禍とはまさにこの古代の言葉の定義にぴったりとはまるといえましょう。留まるところの知らない人々の交流、環境の破壊、森林破壊、温室化による温暖化現象これらの複合によりコロナ禍は引き起こされたものであるというえるでしょう。有吉佐和子の「複合汚染」をさらに大きな規模で考える必要がありそうです。
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参考ページ:来年は丑年です

2020年12月24日木曜日

漢字「告」の由来と成り立ち:告白とは重い響きの言葉だ。それは「告」が神に告げるという厳粛な言葉から来ている由縁である



漢字「告」の由来と成り立ち:告白が重い響きを持つのは、「告」が神に告げるという厳粛な言葉から来ている由縁である
 「告」は生贄の牛を祭壇に並べたことからくるという解釈と祭祀を執り行うとき神に告げる言葉を「サイ」という祝詞を入れる箱を木に結びつけたことからくるという説等諸説があるが、いずれにせよ単に話すとか語るということではなく祭祀に臨んで神に祝詞をあげるという厳粛な使い方をされたことから来るものだ。


引用:「汉字密码」(P24、唐汉著,学林出版社)
祭祀のとき神に祈りや祝詞を奉げ、告げること
唐漢氏の解釈
 「告」の字は甲骨文字の第一款は、「牛」と「口」から成り祭告、告庙を意味する。告の字の構造の形象から看て、それは祭壇の前の皿の上に置かれた、切り刻まれた雄牛の頭に非常によく似ています:彼の目は大きく開いていて、何かを言っている様子が伺える。

 告は牛の頭を祭祀に用いて祖先を慰める神祗を表示している。又「告」の本義は人びとが祭祀の時に発するする祈祷であり、それゆえ牛の鳴き声とも理解できます。



字統の解釈
 木の小枝に祝詞を収める器の賽をかけている形象形文字である。 祝詞の器を木の小枝に付けて捧げ 髪に祈告する意味で告とは神に訴え告げることを言う。説文には 牛と口に従う字とし「牛人に触る。角に横木をつくとし、人に告ぐるゆえんなり」とあり、牛が人に何かを訴えようとするとき横木をつけた口を摺り寄せてくると解するが、上部は牛の形ではなくて物をかける木の枝の形であることは卜文、金文の形において明らかである。

 唐漢氏と字統の解釈は、祭祀に生贄の牛を使うか、木に祝詞を掲げるかの違いはあるが、祭祀に神に何らかの祈りをささげる点では一致している。

漢字源の解釈

 会意文字だとする。漢字源では、牛の角に縛った枷の原字だとする。後付の解釈のような気がする。


結び
 現代で告白という言葉は、単に「言う」とか、「話す」ということだけではなく、ある種の重みを持ったものとして語られる。告白が重い響きの言葉の理由は、「告」がそもそも漢字が発生した太古の昔から、神に告げるという厳粛な意味を持っている由縁である


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2020年12月21日月曜日

漢字「牲」の起源と由来 昔、祭祀で生贄に牛や羊が生きたまま用いられたことによる



漢字「牲」の起源は昔、祭祀で生贄に牛や羊が生きたまま用いられたことによる
 漢字「牲」には、祭祀で生贄に牛や羊が生きたまま用いられたことが残されている。生贄は現代では野蛮なこととして、否定されているが、太古の昔には、生贄として牛や羊、豚がその犠牲になった。時には人間さえもその犠牲となって、神々に祭られている。しかし日本での埴輪の出現にもあるように、生贄として生きた動物を使う風習は次第になくなっている。その理由は、残酷であるという理由ではなく、むやみに生贄として殺してしまうのは、労働力や生産の観点から好ましくないという理由もあったようだ。


引用:「汉字密码」(P22、唐汉著,学林出版社)
甲骨文字では羊、
金文と小篆では牛が生贄に使われたことが示されている
唐漢氏の解釈
 「牲」、これは会意文字です。甲骨文字の「牲」の文字、左側は羊の頭の形、下側は雌羊の生殖器を表す水平の三角形の記号、右側は草の成長の形です。 両形の会意でつまり、母羊は子羊を出生して繁殖させることの願い。

 金文と小篆の「牲」は、牛と生まれるからなる会意と形声の字に変化している。古代中国の文字では、獣畜類の形はしばしば互換される。動物の繁殖の意味を表現からは「羊」と「牛」の意味は同じようなものです。もちろん、画像の本体が変更された理由は、農業における牛の役割の増加にも関係しています。

 古代の祖先は、次の理由で「家畜」を犠牲として使用していました。その理由はまず、野生動物を狩る必要がありますが、捕獲される動物のほとんどは死体です。次に、狩猟は偶然性を伴うもので、祭祀の時に捕獲物があるというものではないので、育てた家畜を使って非常に太らせて、供応のとき、祖先や神々の神霊の優先を反映し、敬虔な神への心を体現したと思われます。

 体が大きく肉が多いため、古くは牛が最も犠牲になりましたが、農業における牛の役割から、この犠牲を使うことができるのは「王」だけです。例えば、「礼記・王制」では、「諸侯は理由もなく牛を殺さず、大夫は理由もなく羊を殺さない」と書いています。 「周礼」の定めるところによれば、牛肉を食べる資格があるのは皇帝であり、諸侯は平時は羊肉だけしか食べず、牛肉は毎月1日しか食べられない。下位レベルの大夫は、平日は豚肉と犬の肉、毎月1日しか羊肉を食べることができなかったようです。 古代の祖先の政治生活において、牛は非常に重要な役割を果たしましたが、これは牛にとって悲劇的な役割です。



字統の解釈
声符は生。「説文」に「牛完全なるなり」とあって、祭祀に用いる犠牲をいう



漢字源の解釈
会意兼形声。「牛+音符生」で生きたまま神前に供える生々しい牛のこと。


結び
 生贄には、当初羊が用いられたことが、甲骨文字からは知ることができる。太古の昔は、野生の獲物を生贄にしていたようfだが、祭祀のたびに捕獲するのは必ずしもできないこともあり、養育した牛を用いるようになったと考えられる。

 この生贄の風習は、今でも残っており、中東では羊が用いられ、太平洋諸島では、豚が再使用の生贄に用いられるようである。




2020年12月17日木曜日

漢字「牛」の起源と由来:牛の頭を正面から見た形、「牛」は「丑」ではない



漢字「牛」の起源と由来:牛の頭を正面から見た形「牛」は「丑」ではない
 牛は反芻動物であり、人間が飼い馴らした最初の6畜の動物の1つです。強力で性質が良く、耕作地や物資の運搬に使用でき、中国国民の農業文明の少しでも欠けてはいけない役割の1つです。 現代社会では、牛は徐々に「耕畜」から引退し、「牧畜業」の主力となっています。牛乳、牛肉、牛革はどれも経済的価値が非常に高い。
 さてその牛は十二支では「丑」というまったく別の漢字があてがわれている。漢字の発生は「牛」と「丑」ではまったく異なる。
 「牛」と「丑」は似ても似つかない! ここでは本来の「牛」について、漢字の起源を探るたびに出たい。



引用:「汉字密码」(P14、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 古代中国の文字「牛」は水牛の雄牛の頭を簡略化したものです。上の画像は内に湾曲した角に似ており、下の画像は簡略化した雄牛の頭に似ています。

角と耳の特徴が強調されています。古代中国の文字「羊」と比較すると、 明らかに、これは2つの動物の「角」の異なる特性に基づいています。中国語の文字では、「牛という字」の付くすべての文字は牛とその行動に関連しています。





字統の解釈
 象形文字である。牛を正面から見た形。「説文」に「大牲なり」とし、下体は牛に特徴的な腰骨墳起の状を移しているものであろう。


漢字源の解釈
象形文字。やはり牛を正面から見た形とする。


結び
漢字「牛」の成り立ちについては、象形文字で、牛の頭を描いたものであろうということに誰しも異論がないようである。

 ウ冠に「牛」と書いて、牢という字になるが、この字の「ウ冠」は家を表すのではなく、柵を表現するものという。古代中国の中原地方には野牛が大量に群れをなしていたという。われわれの祖先は水牛を飼い馴らすのに地面に大きな穴を掘り、その中に野牛を囲い込んで飼い馴らしたという。このときの柵がウ冠で表現されたことから「牢」という字が生まれたという。
 このことは伝説の物語として、殷の王子・王亥(BC1854-BC1803)が初めて牛を飼い馴らしたとの記述が「楚辞」にあり、王亥という人物の真偽は別としても、野生の牛が殷王朝のころには既に飼い馴らされていたであろうことと符合する。このように漢字の中には、人間の生活が刻まれている。




「牛」を含む故事・成語については「牛にかかわる故事来歴、役に立つ人生の糧・成語集」に触れられているので、紹介しておこう
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2020年12月5日土曜日

漢字「豐」(豊)の起源と成り立ち:たかつきという足の高い器に山盛りに盛りつけた様子の象形文字



引用:「汉字密码」(P737、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 甲骨文字と金文の「豐」の字は本来上古の時代では客を迎えた時、玉器を飾る習慣があった。即ち珍蔵の玉や玉器などを選んで来て、誇示するのと併せて誠心の付き合いの生活情景。上古の時代、客を接待するのに祭りの品を奉献し玉器の数量の多いことで誠意を推し量った。俗語でいわゆる「出血を惜しまない」ということだ。因みに「豐」は「盛んなること」「数の多いこと」の意味がある。小篆の丰を別の意味と区別するようにし、もっぱら豊盛の意味だけに用いるようにし、豊の字とは細かい区別を生じ二つの丰の間に一つの区分けの記号を設けた。楷書では「豐」と書き、簡略化の方式の決りから「丰」を簡体字とした。 

 丰の本義は盛んなること、数の多いことである。現代中国語では「豊か」という意味では、「丰」が用いられ、漢字「豊」は、「たかつき」の意味に使われているようだ。


字統の解釈
 豆中にものを盛って入れた形。説文に「豆の豊満なるものなり」をいう。



漢字源の解釈
 会意兼形声文字、丰は△型に実った穂を描いた象形文字。豐は山+豆(たかつき)+音符丰二つ」で、たかつきの上に、山盛りに△型を為すように穀物を盛ったことを示す


結び
 豐と豊は別字である。豐の簡体字は現代中国では、丰と書く。

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2020年12月4日金曜日

漢字「舞」の起源と成立ち:原字は「無」、祖先の無心に踊る喜びを表現していたであろう。


漢字「舞」の起源と成立ち:原字は「無」、松とヒノキの枝を両手に持って踊る人間の形としても表現
 漢字「舞」という字の初文は「無」であった。無心に舞い狂う祖先の姿が見えてくる。
 甲骨文や金文からは紛れもなく、この「無」が「舞うこと」を表していたであろうことが良く分かる。

 甲骨文字は実に生き生きと人々の生活を表している。おそらく祖先は祭りや神への奉納の中で、踊り喜びを表現していたであろう。それを表した字が「無」なのだろう。しかし、漢字「無」は「有無」の無に仮借されたために、区別するためにこの字の下に両足をつけ、全身で踊る姿が体現されたと考えられる。

 漢字「舞」の原字は「無」、松とヒノキの枝を両手に持って踊る人間の形としても表現されており、実に生き生きした古代の人々の息づかいが目に浮かぶ。


 甲骨文では手足に飾りをつけ、エクスタシーになって舞い狂う祖先の姿が見えてくる。古代に「無」という概念が在ったのかどうかは分からないが、おそらく金文や小篆では無我の境地と現実の「舞う」という行為を字で持って区別したのだろうと思う。

引用:「汉字密码」(P802、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 甲骨文字の「舞」という言葉は、松とヒノキの枝を両手に持って踊る人間の形としても表現されています。その発音も、ダンスの集合的な呼びかけ、つまり「鳴、鳴」から来ています。金文では、「無」というのは「有無」の無に仮借されたから、言葉の意味を区別するために、「舞」の下に意味記号「舛」(二つの足の形)が追加されています。 小篆の「舞」は金文を継承し、楷書は「舞」と書きます

「舞」の本義は踊りです。 《礼记乐记》には「手で踊るのを知らないなら足を踏み鳴らす」というものがあります。踊りの起源は遺伝学の観点から説明されています。古代の祖先の心の中で、歌と踊りを通して内なる感情と願いを表現することは、「祖先の神々」とのコミュニケーションの目的を具体化することができます。歌と踊りの祭典は、儀式や魔術において非常に実用的な役割を果たしました。



字統の解釈
 無と舛に従う。無は舞の初文。後に無に両足をつけた舞が舞楽の字となり、 無はもっぱら有無の無、否定の言葉に用いる。説文に「楽しむなり。足を用いて相背く」とする。舞は無の繁体字である。



漢字源の解釈
 漢字源による解釈 会意兼形声文字である。人が両手に飾りを持って舞うさまを表す文字「無」の下に、左足と右足を開いたさまを表す字形「舛」が追加されたもの。



結び
 甲骨文字は実に生き生きと人々の生活を表している。おそらく祖先は祭りや神への奉納の中で、踊り喜びを表現していたであろう。それを表した字が「無」なのだろう。後にこの字の下に両足をつけ、全身で踊る姿が字に体現されたと考えられる。これぞロマンだ!



参考
 漢字「無」の由来:「舞」という字の初文。無心に舞い狂う祖先の姿が見えてくる
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