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2021年6月27日日曜日

漢字「卑」の成り立ちと由来:卑のもともとの意味は、柄杓を手に取るというものだった。しかしなぜ「いやしい」という意味になる?


漢字「卑」の成り立ちと由来:卑の原義は、柄杓を手に取るというものだった。しかも卑という漢字がなぜいやしいという意味を持ったのか納得ある説明は得られていない
 漢字「卑」は「尊」の対極にある。成句「男尊女卑」という句の中でも昔から語り継がれてきた。

 何故にこのようなことが言われなければならないのか。その根拠は何か。有史始まって以来女性を苦しめて来た。
 何故女性は「卑」といわれなければならなかったか、甲骨文字に遡って迫る。 勿論漢字にその責任があるわけではない。漢字はその社会の反映であり、インフラ的な位置付けではあるが、一つの結果に過ぎない。

 ここではっきり言えるのは、漢字「卑」は男性の発想から生まれた漢字であることは確かなようだ。


漢字「卑」の楷書で、常用漢字です。
 上部は杯形の器の形。基部はその柄を手に取る形で、椑の初文。柄のある柄杓のような形で、酒を酌むのに用いる。
 一方、漢字「尊」も酒を酌むための道具である。同じような酒に関わる道具・噐であるにもかかわらず、片や尊ばれ,片や蔑まれる。この違いは何であろうか?

 漢字「卑」は「女性の性器を弄ぶ」という解釈もある。この解釈であれば、「尊」が男性を崇拝することを表すものだという考え方と同じレベルの対比ということになり整合性は成り立つ。
 にもかかわらず「卑」を女性の性器を弄ぶという解釈には抵抗がある。漢字が造られた時代はそれほど発達しておらず、漢字に関わる世界はそこそこ知的なレベルの高い世界であったはずだ。その人々が、漢字を作るのにかくも低俗な発想をするのかという疑問は残る。
卑・楷書


  
卑・甲骨文字
下辺は手の象形であり、上辺は女性の性器の内部の象形であるという説もあるが、え、どうしてそんな解釈が?
卑・金文
小篆と金文の上部の記号は囟に変化した。
卑・小篆
金文と小篆を引き継ぎ、漢字化の過程で文字らしく記号化されている


    


「卑」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ヒ
  • 訓読み   いや(しい)、いや(しむ)、いや(しめる) 《外》ひく(い)

意味
     
  • いやしい   身分・社会的地位が低い  行動に品がない、服装が貧しい
           欲が深い、貪欲である、能力が劣っている
           つまらない
  •  
  • ひくい    位置が低い    盛んでない
  •  
  • いやしむ・いやしめる   劣ったものとしてバカにする、軽蔑する

「卑」を部首とする漢字   俾(にらむ)、睥、脾
漢字「卑」を持つ熟語    卑下、卑近、卑猥、卑怯、卑屈




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
  小篆と金文の上部の記号は囟に変化し楷書の卑になった。掌握した造字の権利の男から見ると女の自慰や男が手で女の性器をもてあそぶことも生育の一つの目的からの逸脱を意味している。したがって男の見方からすると下品で低俗な行為であると見える。

 しかし、甲骨文字そのものを女性の性器に手を付けるとみる発想そのものが卑猥であり、古代人は本当にこのような見方をしたのか疑わしい。

 


漢字「卑」の漢字源の解釈
 丈の低い平らなしゃもじを手に持つ様を示すもので、椑(平らで薄いしゃもじ)の原字。うすべったく暑さが乏しい意を含む。


漢字「卑」の字統の解釈
 上部は杯形の器の形。基部はその柄を手に取る形で、椑の初文。柄のある柄杓のような形で、酒を酌むのに用いる。「説文」いやしきもの也事を執るもの也とある


まとめ
 会意文字であるようだが、甲骨文字にせよ、金文にせよ、まるで象形文字であるかのように生き生きとした人々の姿が描写されている。漢字はその社会の反映であり、インフラ的な位置付けではあるが、一つの結果に過ぎない。時として社会に対し残酷な反作用も及ぼすこともある。



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2021年6月25日金曜日

漢字 「尊」の成り立ちに埋もれた歴史的真実:尊という漢字は男性崇拝そのものだった。漢字は男子優位の思想で貫かれた世界にある


漢字 尊の成り立ちから何が読める。神霊に酒を捧げることは、男性崇拝の表れなのか
 「男」という部首を含む漢字は、わずかに17文字しかありません。それに対して、「女」という部首を含む漢字はなんと992にも上ります。なぜでしょう?考えられるのは、漢字が作る側にいたのは男だったからだと思います。既に男優位の中にあって漢字が作られ、女は観察対象であったと考えられます。

 漢字の世界即ち、漢字が作られ使われた文化は基本的に男尊女卑の世界であったということが出来ます。

 そのことを踏まえて、改めて漢字 尊の成り立ちに迫ってみました。尊という漢字は男性崇拝そのものだったと考えられます。後にきれいごとの屁理屈が付けられたようですが、最も本源的な意味は「男は尊い」ということに尽きる気がします。


漢字「尊」の楷書で、常用漢字です。
 この漢字は、ある種の侵すべからざる雰囲気のある字として、漢字の中で、特別な位置を占めてきた。

 この漢字は、男性のみに用いられ、女性の立ち居振る舞いや雰囲気には用いられてこなかった。

 なぜだろう?それは、この漢字そのものが男根を表し、男性崇拝を担ってきたからだと考えられる。
尊・楷書


  
尊・甲骨文字
男根をあがめ奉る様。《酒を恭しく相手に献上する姿とも解釈される
尊・金文
基本的に、甲骨文字を引き継いでいる
尊・小篆
文字としての体裁が整うと共に
露骨な表現は影を潜め建前的な表現が、文字としての汎用性を高めるようになった。


    


「〇」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ソン
  • 訓読み   とうと(い)、とうと(ぶ)、たっと(い)、たっと(ぶ)

意味
     
  •  尊敬すること  (例・・尊敬する  大切にする、重んずる (例・・尊重)
  •  
  •  えらそうにして、他人を見下げたような態度をとる (例・・尊大)
  •  
  •  尊称として他人に関する事物の上につけて敬意を表す」 (例・・尊顔)
  •  
  •  日本固有の使い方、みこと(神や天皇家の人に対する敬称 (例・・日本武尊

同じ部首を持つ漢字   遵、蹲、鳟
漢字「〇」を持つ熟語    楼閣、尊敬、尊重、尊顔




引用:「汉字密码」(P683、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「尊」は会意文字です。甲骨文音「尊」は下部は両手であり、上部は酒器です。両者の会意で、丁寧に人にうまい酒を献上する意です。金文と甲骨文は形はよく似ている。ただ、酒器の上部に模様が追加されている。

 小篆の「尊」は酒器の上に二個の払いが加えられており、外に傾けて、人に飲ませる意味を示している。楷書の「尊」の字は金文と小篆の中の二つの手が一つの手(寸)に変り、隷書化の後、「尊」となった。「尊」の字の本義は二つあり、一つは酒を敬うこと、もう一つは酒器そのものを指す。

 しかし、唐漢氏の「漢字「酉」の起源と由来」の説明の中では、この尊の中に含まれる「酉」という漢字が、「男根」を表すとしており、その説明から考えると、この「尊」という漢字は、強烈な男性を表したものと解釈される。この整合性をどう解釈すべきか、もう少し深い考察が必要とされるだろう。


漢字「尊」の字統の解釈
 酋と寸に従う。酋は酒器。上部に酒気のあることを示して八を加え下は寸または廾に従って、これを奉ずる形。神霊の前にこれを置いて祀ること。《説文》に酒気なり。酋に従う。廾はこれを持って奉ず。」としている。 


まとめ
 今回もまた、漢字は世の中の在り様を忠実に反映したものだということを立証することになってしまった。

 ともすれば漢字があからさまにする世界は実に残酷だ。しかしそれも現実であるし歴史である。我々は受け入れなければならない。その上に、本当の人間性の発露のある世界が来るものだと信じる。



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2018年2月10日土曜日

来年は「酉」年! 漢字「酉」の成立ち:元々酒瓶を模したのでは

漢字「酉」の起源と由来

「汉字密码」(P877、唐汉著,学林出版社)
読み方:(音) ユウ (訓) とり 
 酉は象形文字である。
 甲骨文字の酉の字と半坡遺跡から出土した底のとがった陶器のビンの形はよく似ている。
 この字は男根の「且」の字をあらわしている。これによって酉の字の本義は男の嬰児である。母を知るが、父を知らない母系社会で男子の血縁はせいぜい下に向かって下る辿る他ない。
  申と酉の字を互いに受け継ぎ、一つは女性の共祖、一つは男性の後代に対応している。(「申」を参照) 酉の字は早くから十二支の名前に借りてその本義を失っている。酉の字が構造的に酒瓶の酉の字に似ていて、男性の祖先(先王)に酒を祭り福を祈願することから、言葉が発生し転移し、十二支の酉と醸造の酉が混淆したものだ。


金文の酉
 金文の酉は既に完全に酒瓶の形状をしている。このことはこの時代には製陶技術が大きな発展をしたためである。酉瓶は既に酒を醸造するための瓶となり、酒盛りの専用器具となった。原本の酒の字は水の形を省いた後、酉となった。金文から小篆は変質し、楷書は酉と書く。   酉の本義は逆さまの「且」である。底のとがった陶器の瓶である。即ち器の皿として酉は「尊」の初めの文字である。酒を盛る器を示し、指事詞に用いられる。(「尊」は甲骨文字では、酒瓶即ち『酉』を両手でささげ持つ形をしている。)

酒を入れる器が「酉」となったのは、上古先民は男根信仰によるもの

 「酉」十二支の表示に仮借されて、十二支の10番目をあらわす。元々上古先民は男根信仰があり、酒を男根にささげていた。嬰児が大きく成長して、子々孫々絶えることなく栄えることを希求した。時間をあらわすと午後5時から7時を表す。酉は部首字で漢字の中では「酉」は組み合わせて、字を作る。酒と大いに関係がある。酝、酿、酔、醒などなど。
 この説明は、少しこじ付け臭いが、男根信仰は日本でも見られ、強ち否定は出来ない。 


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