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2021年3月22日月曜日

漢字の成り立ちの意味するもの:漢字「守」は守ること、保護すること、保持すること等を表現する


漢字の成り立ちの意味するもの:漢字「守」は宀(家・廟屋)+寸(手、肘)で、守ること、守備すること、保護すること、保持すること等を表現する
「守」甲骨文と金文の「守」の字は会意文字です。上部は家の形で、下部は「寸」で、肘を表示し、両形の会意で、腕とひじを使って、家の前をブロックする、つまりガードすることを表している。小篆と楷書はこの関係から守と書くが、基本形に変化はない。守の本義は守護、護衛という意味だ。

 「守る」の字義から発展拡張され、様々な意味を生み出している。「職務」、守護の意味はまた保持の意味。さらに、保守「従う」「・・に照らして」という意味になる。「待ち受ける」にもなり、離れない、傍らに寄り添うの意味にもなる。
守・楷書




  
宀・甲骨文字 家を表す「寸」・甲骨文字
手首から少し肘の上がったところを指す
守・甲骨文字
以上2文字の会意で、家を防護する意味を示す


    


「守」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   シュ  ス
  • 訓読み   まも(る) もり  かみ

意味
  • 守る、防御する、防衛する 
  • お守り  子守
  • 日本の昔の地方長官、地位

使い方
  • 防衛する  管理する
  • 世話をする   子守
  • 武士の位 摂津守

熟語   守備、専守、厳守、保守、 攻守、御守り、子守、肥後守、守護




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)

漢字「引」の漢字源の解釈
会意文字。「宀(屋根)+寸(手)」で、手で屋根の下をかかえこんで守る様を示す。






まとめ
 会意文字であるようだが、甲骨文字にせよ、金文にせよ、まるで象形文字であるかのように生き生きとした人々の姿が描写されている。文字の形に簡略化し、無駄を省いたデッサンとなっており、実に素晴らしい記号化、抽象化がなされていると思う。



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2021年2月26日金曜日

漢字「怒」の成り立ちと由来:漢字「奴」と「心」の意味するものは


漢字「怒」の成り立ちと由来:漢字「奴」と「心」の意味するものは
 日本語は漢字の使い方によって、発声が異なることがあり、日本語が難しいといわれる所以でもあります。ここで取り上げる、「怒」にしても、下記のように「ド」と「ヌ」という読み方があり、読み方により、微妙に異なる響きを持つことができます。

漢字「怒」の読み方、呼び方
音読み:① ド 漢音 例:怒髪天を衝く・・ドと濁ることにより、感情が強く押し出される感じがします。
      ② ヌ 呉音 例:憤怒・・フンヌという発声は、いかにも怒りが内に籠った感じを与える響きになります。
訓読み:① いかる ② おこる


引用:「汉字密码」(P499、唐漢著,学林出版社)
漢字の成り立ちの解釈
 「怒」の字は左上部は女で、右上部は手に点を2点追加した形を示している。下辺は心の象形字である。3形の会意で、女の人が手で掻いて心に怒りが生まれていることを示している。 
 白川氏は形声文字とみて、声符は奴。奴に努など、激しく勢いを加えてことをなす意があり、怒もそのような心意の状態をいう。
 これに対し、藤堂氏も会意兼形声であり『奴は力をこめて働く女の奴隷のこと。「怒」は「心+音符・奴」で強く心を緊張させること。』としている。

 3氏の見解は全て、セクハラに対する怒りを表現したものということで一致している。

そこでここで、文字の構成要素を分解し、もう各要素ごとにもう少し細かく分析してみよう。


漢字の解体分析(ターヘルアナトミア)
左の画像が甲骨文字の「怒」の構成要素です。
  1. 「女」+「手」⇒「奴」:奴は奴婢のこと。当時は奴婢は戦利品という立場にありました。戦争捕虜などは男を処刑した後、捕らえた女性を奴隷にしたこともあったようです。殷商時代は、5%ぐらいの奴隷が存在したといわれています。この場合の発声は「ヌ」になると思います。
  2. 「奴」+「心」⇒「怒」:漢字を作る側の人間が奴婢の心に思いを寄せていたとは考えにくいのですが・・。
    従って、白川氏の考察が最も当を得ているのかも知れません。
甲骨文字:女甲骨文字:手(又)甲骨文字:心



漢字「怒」の構成要素は?

 漢字「怒」の構成要素は、「女」、「手」、「心」の3要素が挙げられますが、「怒」という漢字を決定づける要素は、「奴」と「心」の2つの要素と考えるべきだと思います。その理由は一つに、「怒」の発声が「ヌ」、「ド」であり、これらの音を持つ構成単位は「奴」という漢字です。意味的にも奴をひと固まりで考えた漢字が多数を占めているという理由によります。


関連記事:漢字「怒」の成り立ちと由来:手を付けられた女の気持ちは怒りとなってほとばしる
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2020年9月2日水曜日

漢字「受」:後に授受に分化する。授受の立場の違いが、漢字の中に歴然と?


最初は授受の区別はなかった。しかし授受の立場の違いが、漢字の中に歴然と?
 今は受と授は受動的な行為と能動的な行為にはっきり分けられているが、太古の昔は両者の区別はなく、受けるも授けるも同じ漢字「受」を使っていたようだ。

 考えてみれば、受けるも授けるも視点を変えれば同じ行為となるので、同じ漢字を使っていたとしても、それほど混乱は生じなかったのかもしれない。




引用:「汉字密码」(P115、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「受」、これは会意文字です。甲骨文と金文の「受」という言葉は、上下に手があり、中央に「船」の象形があります。会意の考えで、ある人が「ボート」を別の人の手に渡したという意味です。

 このイメージは「与える」と「受け取る」の両方を意味するため、古文では、与えることと受け取ることの2つの意味を両方とも「受」で表現していました。

 受の字形の分析から、殷商の時代の船はおそらくただ人を乗せるためだけではなく、航海の前後には、全て人から人への引き継ぎプロセスがあったはずだ。 一人の人の手から他の人への手にという受渡しの過程がある。

 小篆の「受」という単語が変更され、両手はまだ残っていますが、中央の「舟」は見えなくなり、単なる識別記号にすぎません。そのため、楷書では「受」と書かれています。


言葉の進化
 「受」、「説文」は「受、お互いに支払う」と解釈されている。つまり、引き渡しです。

 この元々の意味は後に「授」(与える)と「受」(受け取る)に分化しました。

 たとえば、「孟子•离委上」:「男性と女性に物を与えることは「礼節」の礼ではない」意味することは、男女は物品を授受することで親しく近づくことではない。私の読みが正しければ、ものの授受と礼節の問題まで言及されている。



字統の解釈
 会意文字。「上下の手」と舟に従う。ここで「舟」は「盤」の象形。盤中のものを手に入れて授受することをいう。ここで、舟はものを盛る盤で搬ぶ(はこぶ)などはその形に従う字である。



結び
 唐漢氏は受の媒体が本物の舟であるという論理を展開しているが、白川氏は「舟」は本物の舟ではなく、ものを乗せる{盤」であると解釈している。舟の使い方がもう一つはっきりしないのでなんともいえないが、問題は単純に舟と割り切れない部分がある。

 受け渡しの間に「船が入るか盤であるか」は別として、受け渡しの行為は、単なる行為の違いだけではなく、立場や態度の違いが生じてしまう。ここに礼節の問題が出てくるのだろうか。人間の世界は面白い。




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2020年6月18日木曜日

「専」は古代に使われた麻糸をつぐむための糸車のこと 別にひねくり回すことが専門ではない


漢字「専」の成立ちと由来は
 2020年の年頭から、われわれの前に現れた政府の機関といえば、「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」だ。テレビでも毎日ことある毎に「専門家会議」の見解と会見とかと紹介されてきた。まるで戦時中の「大本営発表」さながらである。しかしその見解が、書面やデーターに基づいて、明確に分かるような説明がなされていたかというと甚だ心もとない。

 しかしここでは会議自体についてはおいて置いて、この専門家という言葉の中の「専」という漢字がどのようにして生まれ、どのようにして使われてきたか、漢字の歴史について触れることとする。

引用:「汉字密码」(P185、唐汉著,学林出版社)
古代に使われた麻糸をつぐむための瓦専という道具
唐漢氏の解釈
 「专」は「専」の簡体字です。 甲骨文字の「専」という言葉は会意文字です。右下が手の象形であり、左上が古代のスピニングホイールの素描です。
 金文と小篆の「専」という言葉は甲骨の碑文を継承しており、楷書は「専」と書かれ、簡略化された文字は「专」と書かれていました。

 殷商王朝、さらには漢王朝でも、人々はほとんど手で糸車を回して糸を紡いだ。古墳から発掘されたスピニングホイールは、石、陶器、木材、さらにはヒスイでできています。
 形状はほぼ同じですが、扁平形、太鼓形、ビーズ形の違いがあります。

 古代人は糸車の中心にねじり棒を挿入し、麻の準備ができていました。いわゆる「績」とは、片手で糸車を回転させ、片手で糸をつなぎ合わせて撚り合わせ、糸車の力を利用して糸を細くて丈夫な糸に撚ることです。糸が長い時や糸車が地面に触れようとすると、既に行われている糸を糸車のねじり棒に巻きつけ、糸車を回転させて次のサイクルを開始します。
紡ぎ車は「瓦専」と呼ばれていました。

 《诗•小雅•斯干》:「生まれた女、地に寝させ、おくるみを着せ、糸巻きで遊ばせることです。 「その中の「瓦専」は糸のことです。つまり、女の子の誕生当初から、彼女は「糸巻」と運命を決定付けられていました。 「専」とは、麻糸を紡ぐことを指します。紡績糸はより糸を撚って糸にするため、「専」は特別を意味するために使用されます。


字統の解釈
 旧字は 専に作りとそれに従う。嚢の上部を括った形、寸は手、専は嚢の中にいれたものを手で打ち固める意味である。
 説文に 「六寸の簿なり」とあって、 メモ用の手版の意味とし、また「一に曰く。もっぱらは紡専なり」という。 それは、瓦専と呼ばれ、円錐形の形の器であり紡専の意図するものである。

 字の構造から言えば 袋の中に入れたものを 打ち固める意味を持つ塼の初文である。


漢字源の解釈
 会意文字兼形声文字。叀は吊り下げた紡錘を描いた象形文字。
 専は叀+寸(手)紡錘は何本もの原糸を一つにまとめ一箇所に留まり、動揺しないのでそこから専一の意味を生じた。



結び
 唐漢氏の解釈も字統の解釈も漢字源の解釈もほぼ一致した。甲骨文字の解釈からすれば、このような結論に至ることは間違いがなかったであろう。

 ただ専門家の意見がこのように明確に一致することは、現代の「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」でも、難しいようである。ただ後で振り返ってみれば、、専門家会議の議事録は残されていないようである。記録に残すことが如何に大切かが明白であろう。古代の記録となると記録自体に様々な解釈が生じるのであるからなおさらのことであろう。しっかりと記録に残すことは、歴史に対する責務といわねばならない。




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2019年1月19日土曜日

今話題のファーウエイは、「華為」の中国語読みです。


漢字「為」の起源と由来
今話題のファーウエイは、「華為」の中国語読みです。つまりこの会社は、大昔にあったとすれば、「中華の象調教」会社という名前で呼ばれていたかも知れません。

 太古の昔は、甲骨文字の生まれた地方、いわゆる中原は現代より暖かく、亜熱帯性の気候であり、水牛や「象」が闊歩していたと想像される。

 そして古代の人々は、その象を見て、「象」の鼻が自在に器用に動くことから人間の手のように色々なことをしたり、物を作ったりする機能を象を借りて文字を作った。


引用:「汉字密码」(P89、唐汉著,学林出版社)

「為」の字の成り立ち」
 一頭の大きな象の完全な図形、左上に手が描かれている。グラフィック全体を通して、象と手の会意によって、象の鼻が人間の手のように自在に器用に動くことを表現している。事実、古代の先祖は象の鼻の器用な機能から「する」または「作る」という一般的な意味を表現するようになった。

  金文中の「為」という単語は、長い象を除いて短い小さな段に短縮されている。
  小篆から隷書まで、隷書から楷書iまで、そして繁体字を経由して簡体字に至るまで、象のイメージと意味はまったく見ることができません。中国語の「為」は、多義的な単語であり、一般的な単語です。


今では、「為」をどのように使うのか
 今では、できる、するという一般的な意味に使われたり、更に拡張されて「だから・なので」、「・・するために」、「・・されて」という意味を持ち込むことになります。また文の最後にあって、感嘆詞や「いずくんぞ〇〇や」などのように反語的語気を示します。


漢字源の解釈
 会意文字:「為」の甲骨文字は、「手」+「象」で、象に手を加えて手懐けて、調教するさま。この事から、人手を加えてうまく仕上げるの意味。

字統の解釈
 「手」と「象」とに従う。手を以て象を使役するかたち。

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2018年12月1日土曜日

今年の漢字予想:私の予想は右翼の「右」、世界中で右旋風が吹き荒れた


一足先に漢字「右」の起源と由来を調べてみた
漢字の話の前に、右翼(英:right-wing, rightist, the Right)とは、
左翼の対立概念であり、政治においては「特権階級による特権の維持を目指すための社会制度を支持する層」を指すとされ、一般に、社会秩序や社会的成層への支持を表すために使われる。

 因みにこの右翼とか左翼といった用語は、フランス革命期の国民議会の議場で,議長席から右側の位置に極端な保守派が議席を設けたところに由来する。つまりそれまでは、政治的立場で右も左もなかったということか。

 日本や中国では、右大臣、左大臣という役職があったそうで、右大臣とは、太政官(だいじょうかん)の長官で、太政大臣・左大臣に次ぐ地位。政務を統轄した官。ということで、一番偉いのは、太政大臣、次に左大臣、右大臣と続く。

引用:「汉字密码」(P336、唐汉著,学林出版社)

「右」の字の成り立ち」
 完全に右手の正面の形状である。金文中の右の字は変化して、会意文字となり、右下にひとつの「口」が加わっている。これは食事をするときの手を表している。楷書の右の字は書きやすいようにと、形を整えて、鏡像反転をして、今日の右の字となっている。

「右」の持つ意味
 「右」の字の本義は右手である。説文では「右」は手と口を相互に助ける字なりとしている。右手の主な効能は食事をするとき食物をつかんで口に物を運ぶことなので、いわゆる右の字は助けるという意味も持っている。

「右」は高く、優れている
 大多数の人間に言えることだが、右手はすべからく、左手より器用に動く。これをもって古代人は「右」を巧み、高いと考えている。成語中でも、「无出其右」(その右に出るものはない)とそれより優れたものはいないという意味に用いる。
「左に出るものは居ない」とは言わない。 


右は左より偉いのか
 だいたい右が偉いだのいや左だのということ自体ナンセンス。右と左はこんにゃくの裏表みたいなもの。こんにゃくの裏表に貴賤はない。
 しかし、心臓は左にある。従って左にある心臓を守るために、人間は、右手を使うようになっている。右手を使う人が古今東西圧倒的に多いのはこうした理由による。


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2018年9月26日水曜日

漢字「妥」の起源と成立ち:手と女からなり、慰撫するという意味から発展し、安定を表わす。今日では適当という意味に使うことが多い


漢字「妥」の由来
 手と女からなり、慰撫するという意味から発展し、安定を表わす。漢字の成り立ちからいうと、男尊女卑の概念を色濃く残した漢字です。女の頭をナデナデすることを表現している。しかし、最近では、女の頭を撫ぜてうまくいくことは殆どない。むしろ、男の頭を撫ぜて、その後ろに控える奥さんに納得してもらうことで旨くいくようなことが多いようである。

引用:「汉字密码」(P502、唐汉著,学林出版社)
「妥」の字の成り立ち」
「妥」は会意文字である。甲骨文字の「妥」の字の左辺は手(爪)で右辺は背筋を伸ばして膝まづいている女の人の形である。金文形体は基本的に甲骨文字と同じである。小篆の妥は手が女の人の頭の上に置かれている。
 これは構造が合理的であるばかりではなく、さらに文字の表意・・意味するところを顕示するものとなっている――手を用いて女性を慰めたり抑えたりすることを示している。それは安定を表わしている。
  「妥」の字の構造は女子を安撫させ、それを安定させる。妥の字は安定する。このため妥の字は安穏・安定の常用を示す。稳妥、妥帖(穏当であるや妥当)であるのごとく、「妥」は制限する、抑えつけるの意味がある。
 解釈としては、「字統」(白川静著、平凡社)にもほぼ同様の解釈をしている。

古人は「妥」を如何に用いたか
 杜甫の《故司徒李光粥》 にあるように「兵を抑え、河やぬかるみを抑えて、千里が始めて穏当になる。ここの妥帖は武力が安定するの意味である。また拡張され、適当、適合を指し、人々が常に口にするように、「不妥」(不適当である)もまた適切でないという意味である。「妥善、妥为安排、欠妥」の中の「妥」の字は全て、適当、適合の意味である。

 話し合いで対立していた双方が、適当なところで折り合いを付けることを妥協、妥結といい、適当であることを妥当という。  

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2018年2月1日木曜日

漢字「奴」の成立ちを探る:女偏と旁は「手」の意

漢字「奴」の起源と由来
太古の女性は種族の由来を示すアイデンティティーな存在
 漢字もまだ出来ていなかった太古の中国では、人々は狩猟生活をしていたであろう。生産性も低かったため、その日の生命を維持するのがやっとであったろう。この時代は女性はおのずと種族の由来を示す明示的な存在として、重要視されていたであろう。

女性の地位の変化
 しかし農業が発達し、生産力が向上し、氏族制社会になると人口も増え、種族も由来を明示的に示す必要がなくなってきた。より多くの生産力を求め、部族間の抗争を繰り返すようになり、貧富の差や階級の差が生じてきた。こうして社会が次第に父系制に移行するようになると女性の苦難の時代が始まる。
 戦利品としての捕虜を確保するということには生産力を確保するという以外、もう一つ重要な意味があったろうと思う。それは氏族社会の中で血が濃くなることを防ぐということではなかったろうか。とりわけ女の捕虜は男の性的な満足だけではなく、外部の血を導入するという重要な役割を担っていたはずである。


引用:「汉字密码」(P559、唐汉著,学林出版社)

漢字「奴」の成り立ち
 「奴」これは会意文字である。甲骨、金文と小篆の「奴」の文字は、女偏でもう一遍は又である。又はもともと「手」であり、ここでは捕虜を示している。全部で字の形は、捕虜になった或いは略奪された女性を意味している。
 奴隷時代、むろん戦争中の女性の捕虜、或いは罪を負った家の女性は落ちぶれて奴隷となってこき使われるのが彼らの命運であった。この為「奴」の字は「手」と「女」から来ているのは彼らの用途を表している。

「奴」の字の本義は奴撲、奴婢
 「奴」の字の本義は奴撲、奴婢である。古代奴隷制の時代は従順でない男性捕虜や犯罪者は常々脳みそを削られたり、女性は柔弱に飼いならされたり、生殖器の価値もって、奴隷に落ちぶれたものが多くいた。だから「奴」は女偏で作られている。
 しかし、階級分化が進むにつれ、一部の人は奴役ともう一部の人に分かれる現象が普遍的となった。

「奴」は社会的身分を表す言葉になった
「奴」はまた労働をする奴隷を指すことが当たり前になった。陸遊の《年暮感懐》の詩にあるように「富豪千の奴隷を使い、貧老は僅かな慰みもない」。又史記の季布列伝では、布は略奪され売られ、燕の奴隷となった。季布は男性で、捉えられ売られて奴隷になったという命運である。
 奴隷の身分は低く、だから「奴」の字は、低い階級の男女の謙称として拡張された。「奴家」の言葉の如く、古代婦女の謙称であった。「奴」の字はまた他人に対する蔑称、軽蔑にも用いられた。「奴才、奴輩、守銭度」」などである。


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