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2025年2月10日月曜日

漢字[心]:古代人は心を生物・生命力の中枢、感情や精神の宿る場所と把握

漢字[心]:古代人が心を生命力の中心と認識した事の歴史的重要性に驚嘆!


はじめに

 漢字「心」(シン、こころ)は、中国語と日本語の両方において、非常に基本的でありながら奥深い意味を持つ文字の一つです 。
 本稿では、この重要な漢字がどのようにして生まれ、その形と意味が時代とともにどのように変化してきたのかを詳細に探ります。
 使用者の問いに応え、その起源から現代における意義まで、「心」の変遷を多角的に考察します。この探求は、単に文字の歴史を辿るだけでなく、古代中国の人々がどのように人間の意識や感情を捉え、表現してきたのかを理解する上で重要な手がかりとなります。
 文字の成り立ち、古代文字の形、意味の変化、そして文化的な背景といった様々な側面から「心」を掘り下げることで、漢字という文化遺産の豊かさを改めて認識できるでしょう。古代人は狩りを通して、動物の体や人間の体を我々が今思う以上にきちんと把握していた。



目次



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漢字「心」の起源:心臓そのままの象形文字

漢字「心」の今

漢字「心」の成立ち

心_楷書
漢字「心」の楷書で、常用漢字です。
   漢字の「心」は、心臓の形を象った象形文字です。心臓は、体全体に血液を送る重要な器官です。そのため、心臓は古代中国では生命の中心と考えられていました。また、心臓は感情や思考の中心とも考えられていました。そのため、「心」という字は、心臓だけでなく、感情、思考、意志、意識、思いやり、愛情など、人間の精神的な側面を象徴する字となりました。

 「心」という字は、中国の甲骨文字(紀元前1200年頃)にすでに見ることができます。甲骨文字の「心」は、心臓の形を簡略化した形になっています。

心 甲骨文字
心・楷書




「心」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   シン
  • 訓読み   こころ

意味
  • ひく。ひきよせる。
  •  
  • むなしい。から。中空。
  •  
  • つなぐ。ウシをつなぐ。つながれる。

同じ部首を持つ漢字     忠、応、志、芯、蕊

漢字「心」を持つ熟語    心、中心、心中、偏心、

一口メモ

 読み:しべ 意味: 種子植物の花の生殖器官。雄蕊と雌蕊に分かれる。
飾り紐の先端にある総(ふさ)の根元につけて、紐本体との境をなす飾り。



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漢字「心」成立ちと由来

引用:「汉字密码」(P440、唐汉著,学林出版社)
心_4款(甲骨 金文 小篆 楷書

唐漢氏の解釈

 「心」これは象形文字である。甲骨文字は心臓の形によく似ている。金文は簡略化していくらか変化している。それでも核心を突いた心の像だ。小篆は心臓の外形像からは変化している。それでも心臓の切開画像のようである。楷書はこれから「心」と書く。
 古人が殷の時代から、「心房、心室」をこのように、解剖学的に実に正確に把握し、字の形にしているということは驚きでもある。

 「心」の本義は心臓の器官である。心跳、冠心病、狼心狗肺などの中の「心」である。また拡張して心思、心意など。古人は心臓が体に中心にあることを認めていたので、いわゆる中心、中央の意味も出てくる。李白の詩《送翅十少府》にある「流水折江心」の江心とは揚子江の中央という意味である。


漢字「心」の字統(P467)の解釈

 象形 心臓の形に乗る。〔説文〕「人の心 なり、土の藏、身の中に在り。

 象形。博士設に以て 「火の藏と隠す」とあり、藏(藏)は臓(臓)。許慎の当時には、すべてを五行説によって配当することが行なわれ、今文尚書説では肝は木、心は火、脾 土、肺、腎は水、古文尚書説では脾は木、肺 は火、心は土、肝は金、腎は水とされた。
  金文に「心にす」「乃の心を明にせよ」 「心忌せよ」などの用法がある。
心は生命力の根源と考えられていたが、文にはまだ心字がみえ徳や愈など情性に関する字も二十数文をみることができる。文字の展開を通じて、その意識や観念 の発達を、あとづけることが可能である。



 

漢字「心」の漢字源P422の解釈

 象形。心臓を描いたもの。それをシンというのは、しみわたる) (しみわたる)・浸(しみわたる)などと同系で、血液を細い血管のすみずみまで、しみわたらせる心臓の働きに着目したもの。



古代の碑文における「心」

  1.  甲骨文字(こうこつもじ)における「心」
     最も古い漢字の形態の一つである甲骨文字において、「心」という独立した文字はまだ確認されていません 。
     しかし、人を正面から描いた「文」(ブン)という文字の胸の部分に、心臓のような形が書き加えられている例が見られます 。これは、古代中国において、心臓が生命力の象徴として捉えられ、一時的な入れ墨(文身)の模様として用いられていたことを示唆しています 。このことから、まだ独立した文字としての「心」が存在していなかった時代においても、「心臓」という概念、あるいはそれが象徴する生命や活力といった意味合いは、他の文字の中に組み込まれる形で表現されていたと考えられます。
     ただし、一部の研究では、甲骨文字の中に心臓の断面図に似た「心」の字形が存在するという指摘もあり 、この点については今後の研究の進展が待たれます。
  2. 金文(きんぶん)における「心」
     甲骨文字よりも後に現れた金文(青銅器に刻まれた文字)においては、「心」という文字が独立した形で現れるようになります。金文の「心」は、甲骨文字に見られる心臓の形をより簡略化し、曲線的な表現を持つことが多いです。特筆すべきは、金文の時代には既に、「心」が単に心臓という物理的な器官だけでなく、「こころ」、つまり精神や意図といった抽象的な意味合いを持つ言葉としても用いられていたことです。「乃(なんじ)の心を敬明にせよ」(あなたの心を敬い明らかにしなさい)という金文の記述 は、その一例と言えるでしょう。また、初期の金文には、心臓の内部構造である膜弁のようなものが描かれていたり、中央に点が加えられたりする形も見られます。現代においても、メンタルヘルスのクリニックのロゴマークに金文の「心」が用いられるなど、その歴史的な意義が尊重されています。

漢字「心」の変遷の歴史と認識

器官から知性へ:「心」の初期の意味

 「心」の最も本質的な意味は、疑いなく人間の心臓という物理的な器官を指していました 。
 しかし、古代中国の人々は、心臓を単に血液を循環させるポンプとしてだけでなく、思考や感情、知性の源であるとも考えていました 。これは、西洋において脳が思考の中心と考えられていたのとは対照的な見方です 。
 多くの古代文献において、心臓は「考える器官」として言及されており 、喜びや悲しみといった感情も心臓から生じると信じられていました 。金文に見られる「心」が「精神」や「意図」、「徳性の本づくところ」(道徳的な性質の根源)といった意味合いを持つことも 、この初期の意味の広がりを示しています。

 このように、「心」という文字は、具体的な心臓という形から出発し、人間の内面的な活動全般を指す抽象的な概念へと発展していったのです。

唐漢氏は古人は心を一種の感覚器官とも考えていたので、《孟子》の中で言うように「心の官即ち思う」であると考えている。いわゆる心は思想、感情、意念を表すのにも用いられ、心機、心態、独具匠心、心领神会など。「心跟」は一般的に心底、内心を現す。 
 また「心」は部首字であるので、左辺にあるときは、「リッシン・偏」となり、そうでないときは、"想、愁、慕、念"等のように、下でしっかりと支える形となる。全て心で思うことに関係している。

視覚的な変遷:「心」の字形の進化

 「心」の字形は、時代とともに大きく変化してきました。その変遷を主要な書体ごとに見ていきましょう。

  • 甲骨文字: 心臓の形を写実的に表しており、内部の構造が描かれている場合や、「文」という文字の中に組み込まれている形が見られます 。   
  • 金文: 甲骨文字の形を受け継ぎつつも、より曲線的で簡略化された形へと変化しています 。

  • 篆書(てんしょ): 秦の始皇帝による文字の統一政策により、字形がより整然とした形になります。心臓の形状を保ちつつも、装飾的な要素が加わることがあります 。

  • 隷書(れいしょ): 篆書からさらに変化し、現在の楷書に近い形へと大きく変化します。心臓の面影は薄れ、より記号的な表現となります 。

  • 楷書(かいしょ): 現代の標準的な書体であり、四つの筆画で構成される「心」の形が確立します 。

 この字形の変化は、使用される筆記具や材料の変化、そして文字の標準化といった要因によってもたらされました 。また、「心」が部首として他の漢字の左側に位置する場合には「忄」(りっしんべん)、下部に位置する場合には「⺗」(したごころ)といった変形した形で用いられることも特徴的です。

まとめ

  漢字「心」の成り立ちからその変遷を辿ることで、この一文字の中に、古代の人々の世界観や人間観が深く刻まれていることが明らかになりました。
 心臓という具体的な形から生まれた「心」は、時代とともにその形を変え、意味を広げ、現代においても私たちの感情や思考を表現する上で欠かせない文字となっています。その変遷は、単に文字の進化を示すだけでなく、人間の内面世界に対する理解が深まってきた歴史を映し出していると言えるでしょう。

 「心」という漢字を通して、私たちは中国文化の豊かな歴史と、そこに息づく人々の精神世界を垣間見ることができるのです。この探求は、漢字という文字体系のダイナミックな性質と、それが持つ文化的意義の深さを改めて認識する機会となりました。


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2022年2月10日木曜日

漢字「怒」の成り立ちと由来:漢字の構成要素「女+又+心」は何を意味する?


漢字「怒」の成り立ちと由来

漢字「怒」の成り立ちと由来:手を付けられた女の気持ちは怒りとなって噴出する

 

まえがき

「怒」は「女+又+心」という漢字から成り立ちます。ここで「又」は古代では「手」を意味します。この3つの文字の会意で、手を付けられた女が持つ心」を表しています。その心は「怒り」です。古代から虐げられた女は怒っているのですね。
  漢字「怒」は、今世間を賑わしている「セクハラ」に対する世間の怒り・特に女性の怒りをそのまま字にしたような字です。セクハラの怒りは3000年前からあったことをこの字は示しています。

 甲骨文字や金文などの古代文字が何とも面白い。漢字の元となるこういった文字は、直感的に、見たまま、感じたまま捉え表現している。そこには『忖度』などは、入り込む余地はない?

 人間の認識というものは、本来こういうものではなかったろうか。勿論太古の昔と今ではまるっきり違っているともいえるが、人々の根底に流れるものは、古今東西変らないのではなかろうか? 漢字「怒」を見ていてそんな気がしてきた。

目次

  1. 漢字「怒」の成立ち
  2. 漢字「怒」の解釈
    唐漢氏の解釈
     字統の解釈
     漢字源の解釈
  3. Chat GPTに漢字「怒」の成立ちと由来について聞いてみた
  4. まとめ


漢字「怒」の今

「怒」の漢字データ

漢字の読み

  • 音読み   ド、ヌ
  • 訓読み   いか(る)、おこ(る)

意味

  • おこる
  • 腹を立てる 
  • 憤る

同じ部首を持つ漢字

    奴、努力、奴隷、奴婢

漢字「怒」を持つ熟語

    憤怒、怒号、忿怒

漢字「怒」の成立ち

引用:「汉字密码」(P499、唐漢著,学林出版社)

漢字「怒」の解釈

唐漢氏の解釈

 古文の「怒」の字は左上部は女で、右上部は手に点を2点追加した形を示している。古文の「掻」の字である。下辺は心の象形字である。3形の会意で、女の人が手で掻いて心に怒りが生まれていることを示している。小篆の「怒」の字は手の中の2点がなくなって心と奴の発声からくる形声字になっている、また「怒」の字が持っていた十分な趣もなくなってしまっている。

 大方のこの時期の貴族たちは、全ての奴僕の心中に怒りがあることを知っていたのであろう。このため「怒」の字は意味が変わった。楷書は小篆を受け継ぎ、「怒」と書くようになった。

 当時の貴族たちが奴隷の心中まで推し量っていたとは到底思われない。。多分に後付けの説明のような気がするが・・。
 あるいはこの漢字を文字要素の通り解釈すると「手を付けられた女の心の心中をそのまま文字に表した」と解釈すれば、今世の中を覆いに騒がしているセクハラに対する世間の気持ちをそのまま文字にしているとも読み取れる。勿論古代と現代では優に3000年の差はあるが、虐げられたものの怒りや恨みは悠久の年を越えて今に共感するものかもしれない。

字統の解釈

 形声:声符は奴。奴に努など、激しく勢いを加えてことをなす意があり、怒もそのような心意の状態をいう。

漢字源の解釈

 会意兼形声。 奴は力をこめて働く女の奴隷のこと。「怒」は「心+音符・奴」で強く心を緊張させること。


ChatGPT(Chat GPT;AIチャット)に漢字「怒」の成立ちと由来について聞いてみた

成立ち:
 漢字「奴」は、「女」(おんな)と「又」(また)という2つの偏(へん)から構成されています。上部の「女」は女性を表し、下部の「又」は手を表しています。この字は、女性の手を持つ人や僕人(しもべ)を意味する漢字として成り立っています。

由来:
 「奴」の由来については、古代中国の社会で奴隷制度が存在していたことから派生したと考えられています。奴隷や奴僕を指す字として用いられました。また、後には「奴」は卑屈な人を意味する言葉としても広まりました。

意味するもの:
 漢字「奴」は、元々は奴隷や奴僕を指す意味で使用されました。しかし、現代の日本では差別的な言葉として認識されることが多く、一般的には避けられるようになりました。現代の日本語では、「奴」の代わりに「人」や「者」といった言葉が使われることが一般的です。


 なお、漢字の意味や由来については、時代や文化によって異なる解釈が存在する場合もあります。上記の情報は一般的な解釈に基づいています。

  また、この解釈では「奴+心」がなぜ怒りになっているのかの説明になっておらず、さらなる考察が望まれます。

まとめ

 漢字「怒」の成り立ちと由来:手を付けられた女の気持ちは怒りとなって噴出する。虐げられたものの怒りや恨みは悠久の年を越えて今に共感するものかも知れない。

 最近、なにかと話題の多いChat GPTを使ってみたが、Chat GPTを使う際に、留意すべきこととして、Chat GPTは問いかけに対して、全方位的にこたえるものではなく、問いかける側が、それなりの見識を持って臨むべきことは当たり前のことだが明らかなことです。Chat GPTは全能のAIではない。


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2021年2月26日金曜日

漢字「怒」の成り立ちと由来:漢字「奴」と「心」の意味するものは


漢字「怒」の成り立ちと由来:漢字「奴」と「心」の意味するものは
 日本語は漢字の使い方によって、発声が異なることがあり、日本語が難しいといわれる所以でもあります。ここで取り上げる、「怒」にしても、下記のように「ド」と「ヌ」という読み方があり、読み方により、微妙に異なる響きを持つことができます。

漢字「怒」の読み方、呼び方
音読み:① ド 漢音 例:怒髪天を衝く・・ドと濁ることにより、感情が強く押し出される感じがします。
      ② ヌ 呉音 例:憤怒・・フンヌという発声は、いかにも怒りが内に籠った感じを与える響きになります。
訓読み:① いかる ② おこる


引用:「汉字密码」(P499、唐漢著,学林出版社)
漢字の成り立ちの解釈
 「怒」の字は左上部は女で、右上部は手に点を2点追加した形を示している。下辺は心の象形字である。3形の会意で、女の人が手で掻いて心に怒りが生まれていることを示している。 
 白川氏は形声文字とみて、声符は奴。奴に努など、激しく勢いを加えてことをなす意があり、怒もそのような心意の状態をいう。
 これに対し、藤堂氏も会意兼形声であり『奴は力をこめて働く女の奴隷のこと。「怒」は「心+音符・奴」で強く心を緊張させること。』としている。

 3氏の見解は全て、セクハラに対する怒りを表現したものということで一致している。

そこでここで、文字の構成要素を分解し、もう各要素ごとにもう少し細かく分析してみよう。


漢字の解体分析(ターヘルアナトミア)
左の画像が甲骨文字の「怒」の構成要素です。
  1. 「女」+「手」⇒「奴」:奴は奴婢のこと。当時は奴婢は戦利品という立場にありました。戦争捕虜などは男を処刑した後、捕らえた女性を奴隷にしたこともあったようです。殷商時代は、5%ぐらいの奴隷が存在したといわれています。この場合の発声は「ヌ」になると思います。
  2. 「奴」+「心」⇒「怒」:漢字を作る側の人間が奴婢の心に思いを寄せていたとは考えにくいのですが・・。
    従って、白川氏の考察が最も当を得ているのかも知れません。
甲骨文字:女甲骨文字:手(又)甲骨文字:心



漢字「怒」の構成要素は?

 漢字「怒」の構成要素は、「女」、「手」、「心」の3要素が挙げられますが、「怒」という漢字を決定づける要素は、「奴」と「心」の2つの要素と考えるべきだと思います。その理由は一つに、「怒」の発声が「ヌ」、「ド」であり、これらの音を持つ構成単位は「奴」という漢字です。意味的にも奴をひと固まりで考えた漢字が多数を占めているという理由によります。


関連記事:漢字「怒」の成り立ちと由来:手を付けられた女の気持ちは怒りとなってほとばしる
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2018年5月15日火曜日

漢字「愛」の由来:昔の「愛」には心があった。簡体字の「爱」には心がない


漢字「愛」の起源と由来
 唐漢氏の解釈は少し突飛過ぎるようには思うが。それも一つの見方として捉えておきたい。われわれの見方というのは、あくまでの現代人の概念に基づくものであるから・・。
 いずれにせよ、「愛」という字の形には、人々の心をこめた情感が覗える。

引用:「汉字密码」(P886、唐汉著,学林出版社)
「愛」の字の成り立ち」
愛は会意文字である。
 金文の愛に対しては2種類の解釈がある。ひとつの解釈は、一人の人が両手で心をささげ持つ形である。そっぽを向いているが、口では心の中を懸命に訴えている様。
 別の解釈は、犬の画の中に丸い形の心が認められる。これは犬が主人に対して喜びの情をしめしているという。

 小篆の愛の字は下部に一本の線が突出しているが、歩いてくることの意味を付け加えている。これは愛が一種の「主動」であることを表わしていいる。  小篆の字形の形態は美しいが、却って象形の趣を失っている。楷書は隷書を経て「愛」に変化した。

 漢字の簡単化の中で、心は省略されて現在に至っている。  現代中国語の「爱」はもともとの漢字の持つ意味や情感が失われてしまっている。少し皮肉っぽくいえば、現代中国の簡体字の「爱」では、「心」が失われてしまっているように思うのだが・・。愛には心が必要だ!!

「愛」の字の持つ意味
 「愛」はもともと主動で「愛慕」の気持ちを表白することから来ている。人や事物に備わる一種の情感を表わす。

  愛はまた男女の情愛または愛慕でもあり、「性愛、愛欲、歓愛」などなど。現代口語では、「愛」は「容易・平常」の意味にもなる。

「愛」を古代人たちはどう捉えていたか
 「愛」古代漢語では、よく「けち臭い、惜しがる」の意味に用いる。論語の中で、「尔爱其羊 , 我爱其礼」「羊を惜しむのはその礼を惜しむようなもの。そのなかの「愛」は惜しむことの意。哲学者の講義の中に「爱是一种自私」愛は「自分の一種」他人を愛することは自分を愛することだ。『戦国策』のなかで、父母子供を愛し、すなわち深く謀る。このことは父母は子供を愛するなら、子供ためによく計画を立て、長くためになるようにすべきだ。子供の成長の中から恩恵を預かることが出来れば、而して災難にはならない。


「字統」の解釈
 白川博士は「字統」の中で、「愛」について、「後ろを顧みて立つ人の形を表わす字形と「心」の会意文字である。
 後に心を残しながら立ち去ろうとする人の姿を写したものであろうとしている。確かにこちらの方が私たちの感覚にはよく合う。
 説文では、「恵」の古代文字を出して「恵」なりとしているということだが、これは、「愛」と同字異文であるとしている。


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