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2023年8月13日日曜日

漢字「人」は、人間のどの様な状態をから生まれたのか? 少しひざを曲げた側身を表したもの


漢字「人」は、人間のどの様な状態から生まれたのか? 少しひざを曲げた側身を表したもの


導入

前書き

 人という字は、お互いに助け合うから二本の線が寄りかかったような形をしているのだという説がある。これは文字学者から言えばとんでもない誤解だということである。

 この「人」という字は象形文字であって、足で立ち上がった様子を側面から眺めたものだということが定説のようである。

   ここでは、なぜ側面からの立像なのかの理由も追及してみたい。

目次




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漢字「人」の今

  確かに甲骨文字を見ると二本足で立ったかのような様子が伺える。

しかしもう少し詳細にこの文字を眺めてみるとまっすぐ直立しているのではなく前屈しており、手を前に垂らしているかのような様子に見る。
 この文字から歩いているとか、まっすぐ直立不動で立っているという様ではない。なぜだろう。  確かに、我々が他人を見るとき、直立不動で立っているとか、あるいはまっすぐ立っている様子というのはあまり見られるものではない。
 人々は絶えず動いており何らかの連鎖的な動作の中の1ステップにあるとすれば、立ち上がりかけの状態とかあるいは少し構えて次の行動に移ろうとする状態が多いのではなかろうか。

 古人が人間を観察した場合にこの漢字のような状態を見てしまっていうのはある意味自然なことではなかろうかと考えられ、改めて古人の観察力と表現力に感心する次第である。

楷書「人」:甲骨文字「人」:
少し前屈な姿勢はなぜ?

漢字「人」の解体新書

漢字「人」の楷書で、常用漢字です。
 
人・楷書


  
人・甲骨文字:前かがみで、腰が少し引け、膝をを曲げ、次の行動に移りやすい姿勢をとっている
人・金文
真ん中から左斜め下に突き出した線が足であるとは言い難いのだが
人・小篆
図形を文字化する際の一様性が出ているのか


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「人」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   じん・にん
  • 訓読み   ひと

意味
  • ひと
  •  
  • 数量詞
  •  
  • 人種を表す集合名刺 

同じ部首を持つ漢字     作、儀、供、伴、侶、備
漢字「人」を持つ熟語    人類、人間、人類、殺人


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漢字「人」成立ちと由来

引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)

唐漢氏の解釈

 「人」之は典型的な象形文字である。図に示すように典型的な象形文字です。 図に示されているように、「人」という字のイメージは、横向きの人の立像で、甲骨、金文、小篆および楷書体で、全て簡潔で明快な線状の組み合わせです。

 「説文」はこのことを述べています。 これはまさに人体の突出した四肢と明確に使い分けられた手と足を示しており、人の特質を示しています。また側立の形を用いて、人と動物の典型的な特徴を示してる。

 「人」の字は単純で、振りかけるのは1つだけですが、古代人の物事の観察の綿密な精度と精度を反映しており、古代人が自分自身を理解する能力を示しています。人と他の動物の主な違いは、手足、人と動物の違いは直立して歩くことであり、人間は両手を解放して道具を使用することが可能になった。

漢字「人」の字統P479の解釈

 象形字 人の側身の形。説文に「天地の性、もっとも貴きものなりとする。」卜文、金文ははみな側身形、匈、包、身などみなその形に従う。夷の卜文、金文の字形もこれに近く、いくらか膝を屈する形に作る。

漢字「人」の漢字源の解釈

 象形。人のたった姿を描いたもので、もと身近な同族や 隣人仲間を意味した。 孔子は、その範囲を「四海同胞」というところまで拡大広く隣人愛の心を仁(ヒューマニズム)と名づけた。

【単語家族 二(二つくっついて並ぶ) 爾(そばにくっついている相手、なんじ)・尼(相並び親しむ人)・仁と同系。


漢字「人」の変遷の史観

文字学上の解釈

第1図
「人」・甲骨文字
第2図
人偏・甲骨文字

「人」の甲骨文字は、字統には、左の第1図のごとく、人の側身の形。説文に「天地の性、もっとも貴きものなりとする。」卜文、金文はみな側身形、匈、包、身などみなその形に従うとある。

 以下「人」という漢字はこれが基本形となっている。さらに人偏の甲骨文字は、左の第2図の通りである。人偏は、まずは対象を明示し、部首や旁と共に、漢字における人間の属性を示す。
 さらに部首の中に入って、文字の在り方を示す。(例:囚、閃)




まとめ

 古代人の観察の細かさ、表現の豊かさには本当に感心する。
   漢字「人」は基本的な漢字として、実に多くの概念を派生しながら生き続けてきた。漢字の「人」の旁や偏を通して漢字が如何に構成されているかを見たが、非常に構造的に、機能的に構成されており、実に論理的な思考がなされているか感嘆する。これが文化だ!
 これらは分化する前の中華民族の優秀さをいまさらながら誇示しているように思う。


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2023年7月7日金曜日

漢字「北」はかくして生まれた:人間関係で、背中を向けられたら、古人も今も悩みは同じ?


漢字「北」はかくして生まれた

「従うべきか、背くべきか、比べるべきか、それでもだめなら死ぬべきか?」 ハムレットそのものではないか?

導入

  人は自分の立ち位置は、一人でいるときは、分からないものですが、二人になるとおのずと明確になるものです。
 人間関係を見事に表現した漢字「従・北・比・化」ほ人間のありようの七変化

 これほど人間関係を見事に表現したものはほかに見当たりません。
 この漢字が出来て、三千年も経った後の、遠く離れたヨーロッパでの、ハムレットの叫び!

前書き

 少し古い話ですが、2017年の漢字は「北」が 1 位だったようです。
 その心は「北朝鮮」というところだろうか。そのほか、この年には九州「北」部の記録的豪雨、大谷選手の大リーグ移籍や清宮選手の入団など「北」海道日本ハムファイターズに注目が集まったことなどが理由となったようです。

 漢字「北」の意味は、二人が相背くということと方角の「北」という二つの意味を持っているといわれています。 この漢字の由来を探ってみよう。

目次




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漢字「北」の今

漢字「北」の解体新書

    甲骨文字「北」分解分析:
    左側:人の正立側面象形記号 
    右側:人を表す記号を左右反転させている
  1. 二人が相背くということ
  2.  
  3. 方角の「北」という意味を持っている。 

  問題は古代ではこの二つの意味のどちらが先に使われたのかということである。
 実際の生活上では「北」という方角を知ることが非常に重要なことであることは容易に想像できる。
 また人々が集落を作って、集団で生活をするようになると、人の立ち位置が非常に重要になってくる。

ある概念が重要視されるか否かは、その社会の成熟度、文明の発達度によって変わってくる。



「北」の漢字データ

 「説文」に「背くなり。2人相背くに従う。」とあり、背中の初文。
 この解釈は、甲骨文字が発見されたのちも一貫しており、金文、小篆のいずれも文字の解釈としては「背を向けあう」人の形とされているのが通説である。 
北・甲骨文字
北・金文
北・小篆

  

漢字の読み
  • 音読み   ホク
  • 訓読み   きた

意味
  • 方角の北
  •  
  • 敗北する
  •  
  • そむく、背を向ける

同じ部首を持つ漢字     背、乖、燕
漢字「北」を持つ熟語    北側、北面、北上、北極、


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漢字「北」成立ちと由来

 甲骨文字は、人が背を向け合っている様が見て取れる。これは反目している状態の会意文字であるというのが通説であるようだ。この説明からは北という字が「背」に使われているなどには確かに説得力がある。白川静氏の「字統」の中の説明でも、二人相背く形とあり、「説文」の「二人相背くに従ふ」とあり、「背」の最初の文字だと説明している。この解釈が、一般的である。



唐漢氏の解釈(P335)

  これに対し、わが唐漢さんの解釈は、甲骨文字の形は一人の人間と影である。正午自分どこに向いていても、影の頭はすべて北向いている。北方の冬の時期は人影は一般に長く地上に映え非常に顕著である。このため古人は地上の影が向いている方を北とした。


漢字「北」の字統(P803)の解釈

 二人相背く形。「説文」に「背くなり。2人相背くに従う。」とあり、背中の初文。卜文・金文に北方の意に用い、また地名にも用いており、古くその音があった。相背く意より敗北、敗走の意となる。


 

漢字「北」の漢字源の解釈

会意文字: 左右の両人が背を向けてそむいた様を示すもので、背を向けてそむくの意味


漢字「北」の変遷の史観

文字学上の解釈

 人間が文字や絵で何かを伝えようとする場合、身近なものを使うはずで、その意味でここに掲げた記号は人間の思考の発展過程がよくあらわされているといっていい  
従(从の原字・甲骨文字
人が二人左を向いて並んでいる。左の人に右の人は追随していることを示している。
比・甲骨文字
从の字の人の向きが右向けになっており、「比」べることを表している。
北・甲骨文字
二人の人間がお互いに背を向け合った反目した状態とあらわす。敵に背を向けるということで敗北の「北」となった。
化・甲骨文字
左辺は人の生きた状態を表し右辺は人が逆さになっていて、人の変化を表す。その究極の形が、人の死である。


まとめ

 甲骨文字は、王が卜辞により、広く自分の意を示すために作られたと言う。しかし、いくら亀の甲に記号を刻んだといえ、それを理解する人々が相当するいなければならない。甲骨文字のように体系だった文字が突如として現れるはずはなく、その前段階、前々段階が長くあったはずである。
 その意味でこのページで述べるように、言素たる「人」の記号を、いろいろに組み合わせて新しい概念を作り出した思考過程を跡付けることができて非常に興味深い

  



从、従、比、北、化はたった一字で全て人間と人間の関係を表現したもの。 ☜ 注意:このページは以前にアップした記事を加筆修正したものでです

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2021年8月31日火曜日

从、従、比、北、化の漢字の成り立ちと由来:元は人が二人並んだもの。それはたった一字で、見事に人の人との関係を表現している


从、従、比、北、化はたった一字で全て人間と人間の関係を表現したもの。
人は自分の立ち位置は、一人でいるときは、分からないものですが、二人になるとおのずと明確になるものです。
 漢字は人間の立ち位置を見事に表現しています。

 漢字「従」の楷書で、常用漢字です。从は従の簡体字です。
 从は従の原字です。現在中国では、この文字を正字として使用しています。
従・楷書


 
  
从・甲骨文字
人が二人左を向いて並んでいる。左の人に右の人は追随していることを示している。
このころからすでに左が上位という概念があったのかも知れない
比・甲骨文字
从の字の人の向きが右向けになっており、「比」べることを表している。
北・甲骨文字
二人の人間がお互いに背を向け合った状態をさす。反目した状態とあらわすまた、敵に背を向けるということで敗北の「北」となった。
化・甲骨文字
左辺は人の生きた状態を表し
右辺は人が逆さになっていて、人の変化を表します。その究極の形が、人の死を表す。即ち死体を表示している。




漢字[从」の発展過程
漢字[从」の発展過程
  漢字「从」は生まれてから、従という形に発展し、その後簡体化の過程を経て、現代中国で使われている簡体字「从」の字体に変化する過程と、左に示すように一貫して初期の書体を踏襲したまま成長した二つの過程に分かれたことがわかります。この変化により、我々は人間認識の成長過程を跡付けることができます。


引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「从」は会意文字である。甲骨文の「从」の字前後に二人の人形があり、まるで一人の人が前面を歩いているかのようです。別の人は後を付き従っていく様子です。いわゆる従の本義は従うことです。金文では歩いていくことを示す「止と道路を示す「□」が付け加えられの会意で、二人の人が相随行して道路を行くことを示している。
小篆の従は金文と構造上は同じで、ただ文字の構成上一定の調整がなされている。楷書は「従」と書く。簡体字では「从」と書く。  
    


「従」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ジュウ
  • 訓読み   したが(う)

意味
     
  • したがう(自)。  ・・ 追従 したがえる。(他)  ・・従軍  
  •  
  • つきそう。つきしたがう 
  •  
  • ききいれる.  従順

同じ部首を持つ漢字     縦
漢字「従」を持つ熟語    従順、従軍、従事




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「从」は会意文字である。甲骨文の「从」の字前後に二人の人形があり、まるで一人の人が前面を歩いているかのようです。別の人は後を付き従っていく様子です。いわゆる従の本義は従うことです。金文では歩いていくことを示す「止と道路を示す「□」が付け加えられの会意で、二人の人が相随行して道路を行くことを示している。
小篆の従は金文と構造上は同じで、ただ文字の構成上一定の調整がなされている。楷書は「従」と書く。簡体字では「从」と書く。

 


漢字「従」の字統の解釈
 旧字は従に作り、辵と从に従とする。从は従の初文。説文に「从、相聴くなり。二人に従う」とし、聴許の意とする。また「从」については随行するなりとするが、辵と从に従う。卜文、金文の字形は从、後に従の字形となるが、もともと一字である。


まとめ
 人は社会的動物であるともいわれる。人は一人でいるときは自分の立ち位置が分からない。しかし二人になった途端、その関係が目の前に現れてくる。これらの漢字は、たった一字で私たちに自分が何者であるかを教えてくれる。そして四文字で人間の一生が表現されているといっても過言ではない。



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2021年8月7日土曜日

漢字「縦」の原義は従うこと! 人間の上下関係を表すようになったのはいつから?


漢字「縦」の成り立ちと由来:甲骨文字では二人の人間の関係だけで、「相聴く」という意味であったが、
時代が下るにつれ、二人の上下関係、立場の関係を表すようになった

 漢字「縦」の原字は「从」です。従って行くということを文字の上からも明確にするために、「縦」という文字が作られましたが、近代になって、簡体字化の過程で、元に戻され、「从」と書くようになりました。

漢字「従」の楷書で、常用漢字です。従の簡体字は「从」ですが、原字でもあります
 語義は従うことを表すということです。

「縦」という字の甲骨文字は、二人の人が同じ向きに並んでる様をあらわしていますが、二人の人がお互い背を向け合っている様を示す右の文字は「北」を表し、そむくという意味を表します。

 甲骨文字の段階は、文字は単なる二人の関係を表すだけであったものと推察されますが、時代が下るにつれ、文字は単に二人の関係だけではなしに、二人の社会的立場を表すようになり、いわゆる「従う」という意味が出てくるようになり、それを明確にするために、ギョウニンベンが追加され、先の人に従う、或いは従えてゆくという意味が明確になってきたものと考えられます。
従・甲骨文字


  
从・甲骨文字
前後に二人の人形があり、まるで一人の人が前面を歩いているかのようです。
从・金文
金文では歩いていくことを示す「止と道路を示す「記号」が付け加えられ、二人の人が相随行して道路を行くことを示している。
从・小篆
小篆の従は金文と構造上は同じで、ただ文字の構成上一定の調整がなされている。


    


「従」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ジュウ
  • 訓読み   したが(う)

意味
  • したがう (動詞)
  •  
  • 従って
  •  
  • 従える(したがえる)

同じ部首を持つ漢字     従、縦
漢字「従」を持つ熟語    従事、屈従、主従、従容、合従、従者

引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「从」は会意文字である。甲骨文の「从」の字前後に二人の人形があり、まるで一人の人が前面を歩いているかのようです。別の人は後を付き従っていく様子です。いわゆる従の本義は従うことです。
 金文では歩いていくことを示す「止と道路を示す「符号」が付け加えられ、二人の会意で、二人の人が相随行して道路を行くことを示している。
 小篆の従は金文と構造上は同じで、ただ文字の構成上一定の調整がなされている。楷書は「従」と書く。簡体字では「从」と書く。

 

漢字「従」の字統の解釈
 旧字は従に作り、辵と从に従とする。从は従の初文。説文に「从、相聴くなり。二人に従う」とし、聴許の意とする。また「从」については随行するなりとするが、辵と从に従う。卜文、金文の字形は从、後に従の字形となるが、もともと一字である。


まとめ
 ここでも、文字の変化は社会の変化を映したしたものとして、跡付けることが出来る



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2012年2月22日水曜日

漢字「自」の語源と由来:我は「自」のことかと鼻を指す

「自」はもともと鼻の意味である。 昔の人は
自分の の鼻を親指で示し 「俺」と言っていた
ことから「自分」という意味になった。
 「自」はもともと鼻の形を表した象形文字である。甲骨文字の上部は鼻柱の様だし、下部は左右の鼻孔。
 金文の字形は鼻の山根の部位の皺を強調しているが、甲骨文字の形状とは似ていない。小篆字は金文から発展させたものだし、楷書はこの流れで「自」と書いた。

  「自」の本義は鼻である。かつて人々は話の中で自分のことを強調する時、常々親指で自分の鼻を指していた。この為、「自」は自分の意味を表示するのに用いられた。
 自白、自己の如く第1人称代詞になった。鼻は大気を吸って体内に入れることから、正に体内の排気、呼出の効能を持つ。この説は古今東西正しいものと受け止められているようだ。

 「自」から拡張され「従、由」という意味になったことから、自然的と同義となって、副詞や介詞に用いられた。

 「自生、自滅」のように、自然の生長と滅亡と解釈され、而して自、自古の自、即ち介詞に用いられるようになった。

 意味の同じ従、由には「自」を当て更に多くのところで運用するようになって以降、人々は新しい「鼻」という字を作り「自」の本来の意味にとって替えるようになった。
 「鼻」の上部は「自」という字で、下部は「異」という字で「通じる」という意味を兼ね備えている。また読み音も表示している。

 「自」と「鼻」の間の関係は古今字となっている。「自」は古字で主には拡張した意味に用いられている。「鼻」は今字で「自」の原義を表す。即ち呼吸と嗅覚器官の意味である。「鼻音、鼻水、鼻青脸肿(殴られて鼻青黒く、顔がはれ上がる様)」等の言葉の中の「鼻」 の字である。 

 鼻は顔の中で突出した部位である為、人の顔の美観上重要な作用を持っている。
 《列女伝》の中に紹介されている「梁高行」はこの一例になっている。梁高行は梁某の妻であった。見目麗しく、聡明で、未だ花も実もある時に夫を失ってから、却って子供の面倒をよく見て、どうしても再婚しようとしなかった。梁王が人を家に差しやって媒酌の労を取ろうとした。梁高行は鏡に向かって自分の鼻を切り落としてしまった。彼女は使いの人に向かっていうに「私は我が子が孤児になるのが忍びがたく自殺できません。私は自分の鼻を切り落としました。あなたはどうか私を放っておいてください。梁王はそれを知って彼女を敬い「梁高行」という名を与えた。

 この故事の中で梁高行はなぜ耳を切らなかったのか、なぜ指を切断しなかったのか?それは鼻が容貌上の位置が別の器官と比べて非常に重要だったからである。


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