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2024年1月26日金曜日

漢字・鳥の由来と成立ち:太古の人々は甲骨文字の時代から身近にいた鳥には個別に名前を付けて親しんでいた


漢字・鳥の由来と成立ち:文字に見る鳥と人類の濃密な関係


このページは「漢字「鳥」の成立ちを「甲骨文字」に探る:甲骨文字の「鳥」はどこから見てもやっぱり鳥だった!」を全面的に加筆修正したものである

導入

押しかけ推薦・一度は読みたい名著  阿辻哲次著『漢字學

漢字學の原点である許慎の「説文解字」の世界に立ち返り、今日の漢字學を再構築した名著

前書き

目次    




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漢字「鳥」の今

漢字「鳥」の解体新書


漢字「鳥」の楷書で、常用漢字。
右の漢字「隹」は同じくトリと読むが、鳥が長尾系の鳥を表すのに対し、「隹」は短尾系のものを表すといわれる。
 尚漢字源によると「隹」はずんぐりとした鳥のことをいうとしている。
 また「禽」は網でとらえて飼う鳥のことをいう。
 「鳥」の仲間には「 鳩 はと 」や「 鶴 つる 」、「隹」の仲間には「 雀 すずめ 」や「雉 きじ」がある。

鳥・楷書隹・楷書


 
鳩・楷書
雉・楷書
鷄・楷書
酉・楷書
  


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「鳥」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   チョウ
  • 訓読み   とり

意味
  • 左右の翼と2足を持つ動物の総称
  •  
  • 約3億年前に生息していた小型の爬虫類から恐竜がうまれ、さらに鳥類が枝分かれしたと考えられている

同じ部首を持つ漢字     鳥、蔦、梟、鳩、鳶
漢字「鳥」を持つ熟語    鳥肌、鳥獣、野鳥、禽鳥、駝鳥


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漢字「鳥」成立ちと由来

引用:「汉字密码」(P63、唐汉著,学林出版社)

民俗学的な解釈

  基本を失ってしまった象形の特徴は、鳥の足跡が4個の小さな点に変ったことだ。簡体字になってその四個の点は横一線に変ってしまった。これでもう鳥の足跡とははるかに離れてしまった。
  鳥の本義は大よそ全ての飛ぶ鳥を指す。また今日言うところの鳥類である。唐詩の中にある「云开孤鸟飞」「鸟鸣山更幽」などの詩句の「鳥」は大よそ全て飛ぶ鳥を指している。「鳥瞰」の言葉は、鳥が高いところから地面の景色や物を見たときの俯瞰したと同じ像を表示している。
 鳥の字は部首字で漢字の中では、「鳥」で以て偏でも旁でもなる。全て禽類とその行為は関係がある。例えば「鳴」は鳥と口の字の合成で、鳥が鳴き叫ぶことを表している。また「島」の字は鳥と山の造字の構造部材が組み合わせ、海上で鳥が休息する山を表示している。

漢字「鳥」の字統の解釈

 象形 鳥の全形。〔説文〕四上に「長尾の禽の總名 なり。象形。鳥の足はヒに似たり。ヒに従ふ」という。短尾の隹に対していう。ト文・金文に、鳥を象形的にしるすものは多く神聖鳥で、風神とされる鳳 の初形は羽毛の眼文をもしるしており、また鳥星の鳥も具象的な形に描かれている。隹形のものと、尾の長短にはかかわりなく、その示しかたの上に異なる意識があるものとみられる。


漢字「鳥」の漢字源の解釈

象形。尾のぶらさがったとりを描いたもの。北京語の niǎoは、ぶらりとたれた男性性器(屌=吊。diau)と同音であるのをさけた忌みことば。 



漢字「鳥」の変遷の史観

文字学上の解釈

 「鳥」はいろいろの種類の漢字が早く甲骨文字の時代から創り出され使われてきた。
 鳥と人類の関係はずいぶん早くから築かれてきて、それに対応した漢字が作り出されている。しかもそれらの漢字は基本的には象形文字で、各々の鳥の特徴を見事に把握して表現している。鳥に限らず家畜などの描写は芸術的ともいえる完成度を持っている。
 しかしながら、記号から文字化の過程では、象形という特性は次第に失われ、抽象化と文字化の過程を経ながら、万人がたやすく理解できるように変化している。アジアのこの地で生命を育んだ我々の祖先の思考であるし文化である。
 この漢字の文化が、なぜここに生まれたのかまだ明らかにされなければならない研究分野である。



まとめ

 太古の祖先は数多くの種類の漢字を作り出してきた。鳥についても、雉、鳩、鶏などは一字の漢字である。しかし、白鳥、椋鳥などは複数の文字から成り立っている。
 なぜだろうか。一字からなる鳥は人間との付き合いが古く、鳥の識別、区別を一字で可能であったぐらいの狭い範囲の中にいた鳥であったのではないだろうか。
 これは、妄想なのかもしれない。しかしこうした妄想は決して悪いものではないと信じている。
  


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2021年2月20日土曜日

漢字の成り立ちと由来:漢字「離」は何から離れることを示しているの?


漢字の成り立ちと由来:漢字「離」は何から離れることを示しているの? 鳥の巣立ちのこと?
 3月は人々が離れ行く季節です。卒業で学校を離れ、人事異動で職場を離れます。

 甲骨文字や金文などの古代文字が何とも面白い。漢字の元となるこういった文字は、直感的に、見たまま、感じたまま捉え表現している。人間の認識というものは、本来こういうものではなかったろうか。なぜ漢字以外文字が発展しなかったのか考えて見る価値はありそうだ。



引用:「汉字密码」(P121、唐漢著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「離」は会意文字です。甲骨文の離の字はまさに長い柄のついた捕獲用の網にまさに一匹の鳥を入れた状態を示している。金文の離の文字は捕獲用の長い網の下に一つの手を加え、上部には、「森」のシンボルが使用して鳥が隠れている草むらを示しています。
 小篆は甲骨と金文に基づき組み合わせを整合して、鳥が草の中の巣から離れることを明確に示しています。楷書はこの関係から「離」と書きます。簡体化の時に半分を取り除き「离」と書きます。

 離の字は一匹の鳥が網にかかり、永遠に自分の巣に別れを告げる様を示しており、この為「離」の本義は災難が降りかかり、災難にあうという意味を示している。


字統の解釈
 「離」とは、鳥もちにかかった隹(鳥)の意味で、之を離去することを「離」という



漢字源の解釈
 会意文字。 「隹」と「离(大蛇)」で、もと蛇と鳥が組みつ離れつ争うことを示す。
 甲骨文字を見る限り、この解釈は少し違うように思えるのだが…。

 

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2016年12月2日金曜日

漢字「雉」の成立ちを「甲骨文字」に探る:矢と隹とから「雉」の字が出来た


漢字「雉」の起源と由来
引用:「汉字密码」(P66、唐汉著,学林出版社)

 昔松山に住んでいた、母が関東大震災の時に、裏山で雉がけたたましく鳴くのを聞き、何か起こったのではないかと不安に思ったが、後で震災の話を聞き「やっぱり」と思ったのだそうだ。動物には人間の感じない何かを持っている。そんなことを思い出しながら、この記事で雉のことを書いている。キジで辞書で出て来る漢字は「雉、記事、生地、木地」だ。これ頭の体操。
 「雉」人々は又これを「野鶏」と称する。古文の中の「ウサギは犬の穴に入り、雉は梁の上を飛ぶ」。ここでの雉は野鶏のことを指している。雉は矢と隹の会意文字である。矢は即ち俗に言う箭のことで、箭は射出後直線飛行をする。但しどのように飛ぼうとも、地に落ちてしまう。さらに一般的にはそれほど遠くへ飛べないものだ。雉も矢と同様で、脅かされると直線飛行をするが、数十メートル飛ぶと落下してしまう。雉は矢の類のように短い尾の鳥であるために、野鶏はいつも弓矢で捕獲されてしまう。このため古くから今日に至るまで、漢字の中では矢と隹の組み合わせで出来ている。
しかし金文と小篆の間の字形の差は大きい。古代雉は城郭の体積の計算の単位に用いられた。長さ3尺で高さ1丈を「一雉」とし、おおよそ雉が一家に飛ぶのが、三尺の距離で一丈の高さであることによる。《左傳・隠公元年》のごとく、「都城过百雉 , 国之害也。」これは、春秋時代、諸侯の住む城は全て300雉を超えることは出来なかったし、諸侯が封じる人の住む城は100雉を超えることは出来なかった。もし超えるならば、国家の災いとなった。

 因みに、鶏も分類では「雉科」に入るそうだ。


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2016年11月28日月曜日

漢字「旧」の成立ちを「甲骨文字」に探る:ある種の大型の鳥が他の鳥の巣に侵入し荒らされ打ち捨てられた巣のこと

漢字「雀」の成立ちを「甲骨文字」に探る:小さく尾っぽが短い鳥を示す「隹」の頭に多いことと小さいことを示す修飾図が付いたもの


漢字「雀」の起源と由来
引用:「汉字密码」(P64、唐汉著,学林出版社)


 「雀」の字は会意文字である。古文中の雀の字は、均しく隹の頭の上に三つの小さい点がついていて、数が多いこと(古人は3は多いことを言う)と小さいこと(又古文の小さく見える)を表している。通常集まってきた雀や山雀を示すのに好んで用いられる。この種の鳥の体形は多くは太っていて小さい。群れを成して飛んできて飛び去るのが好ましい。人々はこの種の鳥を小雀と呼ぶ。《诗.召南 .行露》の中のように、「誰が言うのか雀には角がないと。何を以ってわが家をうがつ」
 以後小型の鳥を大雑把に雀と称する。楚国の詩人宋玉の《高唐赋》では「多くの雀ががやがや騒がしく、雄雌がしゃべっているワイ」
 漢字が長く使用され、変化していく中で、少し法則性のない混乱も発生する。例えば鶏は古文中では「旁を隹」と書いていた。
又常には「鶏」とかく。右辺の部分が鶏や隹になるがどちらでもいい。大概は現実には長い尾の雄鳥であったり、また太った尾の短い母鳥であったりする。古人は実在では鳥が長い尾の鳥か、短い尾の鳥かは区別しがたいので「鳥」と「隹」の中はみな一つの区分しかない。
 因みに日本では焼き鳥は現在では、鶏を焼いた料理を言う。筆者が思うに昔は焼き鳥といえば雀ではなかったろうか。今は雀は余り見かけないが、私の子供のころはそれこそ喧しいぐらい周りにはいたものだ。値段も鶏に比べ格段に安かったろう。4つ足を嫌っていた日本人も鳥は二本足だから重要な蛋白源ではなかったろうか。
 もう一つ本文中では雀は小さくて太っている。と書いているが、実際雀は毛をむしると太っているどころか、骨と皮ばかりで肉は殆どない。それがコリコリして美味しいわけだが、どうして太っているという風に考えたのだろうか。毛があると確かに少し丸々とはしているように見えるのだが・・。ああいうのを「毛太り」というのかな?


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2016年11月26日土曜日

漢字「隹」(フルトリと読む)の起源・由来を「甲骨文字」に探る


漢字「隹」の起源と由来

引用:「汉字密码」(P63、唐汉著,学林出版社)

 来年の干支は「酉」。鳥の語源を調べてみた。鳥を現すものには色々ある。「酉、鶏、鳥、禽、隹」など等

 「鳥」の字を除き、字の中で鳥の種類を現す象形文字は隹(「佳」ではない)。隹も又頭、羽、身、足の鳥の形の全体を具えている。この字はフルトリと読む。

 早期の甲骨文字中鳥と隹は元々同一の字である。
 即ち、鳥は隹で、隹は鳥である。鳥と隹は同じでないところから始まった。鳥は尾っぽの長い鳥を称し、"隹"は尾の短い小鳥を称している。

 「説文解字」の許慎の記述を細かく調べると、鳥は尾の長い鳥の総称であり、隹は尾の短い鳥の総称である。



 隹は現今の漢字の中では既に独立してない字になっており、編や旁になっている。およそ全ての「隹」を含む字は鳥類を現している。すべてずんぐりした隹の形態を有し、集合的な集まりの意味を持っている。これだから隹は小さい小鳥の群れを意味している。例えば高く盛られた土は「堆」と書き、いわゆる堆積である。即ち次第に集まって一箇所に集まり一団となったものである。農家の春の米の臼、即ち「碓」(石編に堆)を用いて細かい穀物を集めることを現す。
そのほか准、維などの字のごとく、全て細かいもの(水、糸)を集める意味をもっている。 鳥類の内、雁、雛、雀などは寄り集まるのを好み、群れなして暮らす鳥である。これによって、それらの名前もまた隹が造字の用件となっている。



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