立春と漢字「春」の秘密:古代文字が語る物語
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清少納言 |
桜の花の便りが聞こえてくる今日この頃。いよいよ春ですね。春の訪れを告げる『立春』。この日、私たちは古代の人々が文字に込めた想いに触れます。
昔の人も書きました。
「春はあけぼの、ようよう明るくなりゆく・・」と枕草子の中で清少納言は謡った。
また「もうすぐ春ですね~、恋をしてみませんか」という歌詞も記憶に新しい。猫のさかりの声がやかましくなる時期でもあります。
2月4日は立春である。このところ世界中は紛争や戦争、地震かみなり火事、親父と暗い息苦しい状態が続いていますので、明るい春が望まれます。
しかし、何はともあれ、開花予想をきけば心がウキウキしますね。
この記事は、2014年のアップグレード版です。
「漢字の成り立ちと由来:甲骨文字の「春」からは、古代の先人たちが春を心から待ち望んでいた様子が窺える!」
導入
前書き
目次
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漢字「春」の今
漢字「春」の成立ち
漢字「春」の楷書で、常用漢字です。 右の「旾」は春の異体字。 漢字の成立ちを見ると、この文字は象形文字の範疇に入るのだろうか。むしろ極めて概念的な文字であるような気がする。 | ||
春・楷書 | 旾 春の異体字 |
古代の「春・旾」は甲骨文字、金文、小篆の何れも「木、日と発芽を表す屯」をモチーフにしていることは共通していることからある意味、人間の共通した認識なのかもしれない。 甲骨文字にせよ・金文にせよ、象形文字というには少し違和感がある。形象というより、むしろ概念を表したという方が当を得ていると思う。 | |||
春・甲骨文字 他の字形と乖離している 左は木に日、右は屯である |
春の異体字・旾・ 旾の字に草冠が春の原字であるようだ |
春の異体字・旾・小篆 |
「春」の漢字データ
- 音読み シュン
- 訓読み はる
- 異体字 旾
意味
- 季節の名前
- 比ゆ的に厳しい状態から一気に解放された状態をいう 青春
同じ部首を持つ漢字 屯、蠢、頓、純
漢字「春」を持つ熟語 春、青春、新春、
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漢字「春」成立ちと由来
参考書紹介:「落合淳氏の『漢字の成立ち図解』」
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春・4款 春らしい |
唐漢氏の解釈
春の原本は会意文字である。
- 甲骨文字の左辺は上下に分かれ、「木」の二つの部分である。木の中間に「日」があり、太陽が昇ることを表している。字の右辺は「屯」であり、潜り込んだ根が発芽することを表している。明らかに春の字の本来の意味は太陽の光が強くなり草木が生え出す時期を表している。
- 金文と小篆の春は甲骨と比べ字形は均整化されている。
上部は草冠、中間は「屯」の字で下部は「日」である。以後隷書の変化を経て今日の字体となり、「草」、「屯」の字は最早現らわれていない。 - しかし「春」は一年の開始を示し、この本義はずっと変わらずにいる。春のような景色は「春色」「春光」といい、春の農繁期は「春忙」といい、30歳になると赤い紙に吉祥の文字を対連で「春联」などなど。古代文学者は大変多くの草木の生長する様を描写して、「春に至りて江南の花自ら開す」「春の到来を人は草木に先んじて知る」「春に至れば人間万物鮮やかなり」など、これらの詩句春に万物が萌出る現象を表現している。又「春」という字から始まる成語も多数ある。
漢字「春」の字統の解釈
形声文字: 屯声。詳しい説明をご希望の方はこちらロクリックしてください。
「春」の字統の詳しい説明
漢字「春」の漢字源P708の解釈
会意兼形声。異体字 旾
屯は生気が中にこもって、芽が萌え出でるさま。春はもと「草+日+音符屯」で地中に陽気がこもり、草木が生え出る季節を示す。ずっしり重く、中に力が起こもる意を含む。
漢字「春」が歴史的にどう変わっていったか
文字学上の解釈
字統では、季節を表す漢字が生まれたのは、春秋戦国時代になってからという。しかし、唐漢氏は甲骨文字の時代から季節を表す漢字は存在していたと主張する。真偽のほどは分からないが、人間が少なくとも農業を営むようになってからは、季節を明確に認識していただろう。ということは季節を表す文字も早くから出来ていないはずはないと考える。
まとめ
春はここにあるよというように、草木がもえ出る様子を表したものであり、夏は暑い最中に人が扇ぐ様子、秋は虫を象し、冬は狩猟道具を具象して漢字がつくられてきた。漢字の創成、発達の歴史を見るとやはり人々の暮らしの中から生れ育まれてきたものであることは間違いはないようだ。甲骨文字が卜術の中から生成されたから宗教的意味合いを強調される向きもあるが、基本は人々の生活の営みを外すわけにはいかない。その意味で、まだまだ漢字の研究は解き明かさなければならない任務を持っているといえよう。
形声文字: 屯声。〔説文〕「下に「推なり」と訓し、字形を「日と䒑クサと屯」に従い、屯の亦声」とする。屯を亦声とするのは、屯を草木初生 のとき、屯蹇(伸びなやむ)の象とみるものであ るが、屯は絶縁(へりぬい)の象であるから、声符とみるべきである。「推 なり」の訓は春と双声の字で、〔礼記、郷飲酒義〕に「春の言たる、蠢なり」と、万物の蠢動をはじめ る時期とする。
四季の名は、西周の金文に至るもな おその徴がなく、ト辞中に四季の名に擬せられているものは、にわかに信じがたい。陳夢家の〔殷虚卜辞綜述〕に、屯・楙を春、龝を秋とするが、季節名として用いるものではない。
夏は〔製公設〕に「夏」の語があるも、これを春夏の意に用いた例がない。ただの (春秋)に四季をもって月の名を象け、「春正月」のように言う。春はおそらく陽光の関係のある字で、動く、輝くの意を持つ語であろう。
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