漢字「禍」は、人為災害であるのに対し、「災」は、自然災害のこと。
「禍」と「災」を古代人はどう捉えていた?
「禍」は神の意志に違反することによる人為的なものによって引き起こされ、祖先の神の保護の失敗の結果だと看ていたようです。「災」は、水、火、風などによる自然災害のことで、洪水・飢饉の自然災害を「災」と表します。br />
導入
このページから分かること
ブログページ「漢字「禍」は、人為災害であるのに対し、「災」は、自然災害のこと。」で漢字「禍」の原字は「残骨」であることがわかった。
このページでは漢字「骨」の成り立ちと漢字がどのように形作られてきたかを徹底的に明らかにしようと思う。
これぞまさに「漢字『骨』の解体新書」である。
ブログページ「漢字「禍」は、人為災害であるのに対し、「災」は、自然災害のこと。」で漢字「禍」の原字は「残骨」であることがわかった。
このページでは漢字「骨」の成り立ちと漢字がどのように形作られてきたかを徹底的に明らかにしようと思う。
これぞまさに「漢字『骨』の解体新書」である。
**********************
漢字「禍」の由来と成り立ち:今年の漢字の第2位は禍でした。コロナ禍が反映された結果でしょう
今年一年はコロナ禍で明け、コロナ禍で終わろうとしています。コロナはたかが風邪だと思われたものが、結果的には世界中にパンデミックを引き起こしつつ、単なる疫病に終わらず、経済にも大きな傷跡を残し、人々の価値観さえも変えてしまったといわれています。
漢字「禍」は今年の漢字の第2位となりました。これも、コロナ禍が反映された結果でしょう
今年の漢字の第1位は「密」で、これもやはりコロナ禍に関連した漢字で、コロナに対する戒めとして、「3密」などの言葉が世の中を駆け巡りました。
そこでここではコロナ禍の「禍」という漢字の由来と成り立ちに付いて一緒に考えて見ましょう。「禍」という漢字は、わざわいを読み・意味しますが、わざわいという漢字には「災」があり、この両者の違いについても調べてみることにします。
漢字「禍」の漢字の由来
引用:「汉字密码」(P825、唐汉著,学林出版社)唐漢氏の解釈
「禍」はもともと象形文字でした。甲骨文の「禍」という言葉は、「凶兆」の卜骨を表示しており、祖先が古代には、助けることなく神々が災害をもたらすことを示しています。「禍」という言葉の第2款は、明示的に犬を使用して卜辞の骨を咥え去ることを示し、災害と患の到来を合わせて表現しています。
金文の「禍」という言葉は、第1款の左側の横に「示」が追加されています。これは、禍を追い払い、禍を回避する祭祀を意味します。卜骨の下に、加えられた口は禍が神の口から来ることを強調されます。
小篆の「禍」という言葉は金文を継承しており、楷書はそれに沿っており、「禍」と書かれています。
古代人の目には、自然災害と人為的災害が区別されます。「禍」は、神の意志に違反することによる人為的なものによって引き起こされ、祖先の神の保護の失敗の結果だと看ていたようです。「災」は、水、火、風などによる自然災害のことです。洪水・飢饉の自然災害を災と表します。
字統の解釈
形声:声符は咼。咼は残骨に対して呪詛して祈る形の字で、「禍」はその声義を承ける字である。
難しい言い回しだが、要は残された骨を呪い祈る意味だというのである。のろいにより引き起こされた禍とでも解釈するべきなのかもしれない。
漢字「禍」の漢字源の解釈
会意兼形声。「示」(祭壇)+音符咼(意味は穴を示す)で神のたたりを受けて思いがけない穴(落とし穴)に嵌ること
漢字「禍」の変遷の歴史
![]() |
冎の甲骨文字 |
漢字「禍」の成立ちの主たる説明
漢字「骨」の初文の甲骨文字「冎」を以下に示す。ここでは2款示すが、骨がばらばらの状態のものと頭蓋骨と体が繋がった両形があるようだ。古代人が人が死んで暫く放置した後、その場所に行ってみたときの見た儘を表したものであろう。骨はバラバラで散らばっており、繋ぎ合わせないと、元の形は頭に浮かび上がってこなかったのではなかろうか。
右の字形は字統の中で提示されている漢字「冎」の甲骨文字である。
漢字「骨」の初文の甲骨文字「冎」を以下に示す。ここでは2款示すが、骨がばらばらの状態のものと頭蓋骨と体が繋がった両形があるようだ。古代人が人が死んで暫く放置した後、その場所に行ってみたときの見た儘を表したものであろう。骨はバラバラで散らばっており、繋ぎ合わせないと、元の形は頭に浮かび上がってこなかったのではなかろうか。
右の字形は字統の中で提示されている漢字「冎」の甲骨文字である。
![]() |
禍の甲骨文字 |
漢字「禍」の甲骨文字である。これまで冎と咼の成り立ちについて調べてきた。
字統では「冎」は上体の残骨、口は祝禱の器の口と説明している。しかし、どうみても甲骨文と「咼」が結びつかない。骨ツボに入った骨片にしか見えない。この違和感をどう説明できるのか。「冎」は骨から肉を取り去った形である。
れから月を取り去ったから残るは残骨というには合点がいかない。
そこで「冎」が付く文字を調べてみた。
大雑把に言って以下の15種類の漢字をリストアップすることが出来た。
冎:
咼: 呙(咼の簡体系部件)
禍 :残骨を使って呪いをかけるために祈ることを言う
過 :特定の場所を通過するときの呪儀をいう
渦 :くぼんだもの、めぐるもの
鍋 :調理に使う容器
窩 :眼球の収まる頭蓋骨のくぼみを指す。
蝸(例:蝸牛):カタツムリ
媧 : 例 女媧 中国伝説の女神
堝 : 例 坩堝(るつぼ) 耐熱性の容耐熱性の容器
緺 : 読み方: カイ、カ、ラ、ケ。
意味: 紫(むらさき)や青色の組紐(くみひも)のこと。
猧(ちん) 読み方: ちん、ワ。
意味: 中国産の小型の犬の一種。
撾 読み方: 音読みはタ、訓読みはうつ。
意味: 鼓(つづみ)などを打つ、たたくこと。
剮 読み 音読み:カ、ケ 訓読み:さ(く)、わ(ける)
意味: 肉をそぎ取る:骨から肉を切り取る、そぎ取る、という意味があります。
騧 読み: カ、ケイ
意味: 鹿の子模様の馬
![]() |
鹿の子模様 |
鹿の子(かのこ)模様の馬のこと。栗毛のまだらな毛並みを指す。
駿馬(しゅんめ)を意味する場合もある。
以上の漢字のほとんどは現在は死語に近く、日常生活に使われることはなくなっている。そしてこれらの漢字を細かく見ると、多くは鍋などのくぼみにあてがわれたものか、細い線上のものを表現するのに用いられており、残骨にかかわるような使い方のものは、どちらかというと少数派に近い。
まとめ
唐漢氏も字統も漢字源も少しずつニュアンスが異なりますが、いずれも「禍」というのは「災」と異なり、人間が引き起こしたことにより、自然のバランスを崩したことにより引き起こされた災害と解釈され、古代人はそれを、神の呪いや神の怒りという表現で考えたようです。古代人の解釈が現代にそのまま通用するものではないのですが、コロナ禍とはまさにこの古代の言葉の定義にぴったりとはまるといえましょう。留まるところの知らない人々の交流、環境の破壊、森林破壊、温室化による温暖化現象これらの複合によりコロナ禍は引き起こされたものであるというえるでしょう。有吉佐和子の「複合汚染」をさらに大きな規模で考える必要がありそうです。
「漢字の起源と成り立ち 『甲骨文字の秘密』」のホームページに戻ります。 |
0 件のコメント:
コメントを投稿
ブログ「漢字考古学の道」をお尋ねいただきありがとうございます。