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2012年7月9日月曜日

古人は稷を主食としていた:漢字の「稷」の起源と由来

古代人は何を食べていたのだろうか。その主食はなんであろうか?それを解くカギは甲骨文字にあった。これから文字から古代人の生活を蘇らせることに努めていこうと思う。

 古代人は主食は五穀を食べていた。即ち黄河流域の北部の乾燥地帯では、稷(きび)、粟、長江流域では早くから水田が開かれ、大規模な灌漑工事が施され、主食は米であった。この外五穀には小麦、豆等があげられる。豆はどこでも栽培されていたようだが、小麦はむしろ西域から伝わったようだ。



以下は「汉字密码」 (唐汉、学林出版社)より引用

稷は穀物の長

「禾」が穀類の作物をおおよそ指す一方、粟は穀物が成熟後の種子を指すのに用いられる。粟が「谷子」の専用名称になったために、穀物の種子を表すには、今日に至るまでずっと「稷」が用いられている。甲骨文字ではまるで人が穀物の苗をもてあそんでいるような字形である。金文と小篆の「稷」の字は人の形が一つ一つ変わって、採集は一個の形声字に変わっている。説文では「稷」は五穀の長で禾偏と形声からなる。



稷は中国東北地方では最も良く栽培された

「稷」は乾燥にも十分耐え、北方の干からびた天候に適しており、産量も比較的安定する。脱穀後粟飯粥または炊飯は少しさわやかな香りがする。だから、稷は古代先民からは穀物の神のように見られ、五穀の長とみなされた。古人の稷に対する評価は「天下はこれで安定だ。危なくなるはずはない」


古代では稷は農耕文明の中心的存在

中国は元々農業大国を誇り、土地と菱食は立国の本と見立てていた。古人は社で以て土神とし、黍は穀物の神と見ていた。社稷(土地の神と五穀の神)併せて国家の代称の言葉とされた。(社稷は国家という意味がある)漢代の大学者班固は解説して、「人は土地に立つにあらず、穀を食うにあらず、土地広くても、教えるに偏ること出来ず、五穀多くとも、いちいち祭りもできず、故に土地に封じて役所を作れば、土地があること示す。 稷は五穀の長である。故に稷を立て、これを祭る。」この事から稷は農耕文明の中心的な重要な位置を占めている。


農業の発展につれ、「稷」の農作物の中での比重は減少


今日農業の発展、進歩するにつれ、稷の農作物の中で占める比重は次第に小さくなった。しかし社稷が国家の代称ということも、長期に下火になった。北京公園内で明清の両代皇帝が使用してきた社稷坛はよくよく整備され欠けたところがない。

以上引用終わり



「漢字の起源と成り立ち 『甲骨文字の秘密』」のホームページに戻ります。

2010年6月2日水曜日

「男」という漢字の起源と由来は

今回は引き続き男と女の問題について上古の昔に戻ってみよう。

甲骨文字_男
男という字は会意文字である。甲骨文字の字の左は「田」である。この意は農耕のことである。

右側は「力」。これは「加」や「幼」の中の記号と同様である。元々は男の生殖器を指しており、ここでは男性を示す記号である。


小篆_男
 金文の男の記号は田の下に来ている。小篆の形体は基本的には金文と同じである。ただ「力」という字が完全に「田」の下に来ており形体もまた少しごちゃごちゃしている。楷書の「男」は小篆を引きついているが、「田」と「力」で簡単明快である。

殷商の初期、農耕はまさに土地を焼き、木の先を尖らして地上に穴を掘り、種をまいた後土をかぶせて、農作業を終えるといういわゆる焼き畑農業が行われていた。この種の簡単な労働は主として女が受け持った。しかしながらたとえ農耕の主力が女としても、氏族の集団で狩をしたり、狩猟は男の担当であった。このようにして甲骨文字の中の「男」の字は、商王国の中でもっぱら農耕部落の首領をさすようになった。


史書に記載している周の時代の「公候伯子男」爵の中の男爵は常々農事に功のあった臣に授けられる爵位である。この種の制度は殷商の時代の「男服」に源を発している。即ち「男服」とは常々農耕に従事しさらに王に農産物を貢ぐ部落の首領あるいは小規模の候国の王のことである。
周が滅んで後、華夏民族にとって民族的歴史に真の農耕時代をもたらされた。このときから狩猟活動は減少し、農業産出物が食物の本源的な主体となった。更に体力の強壮化によって、男子は農耕の生産の主体を担った。これに反し女子はその生理的条件と社会的地位の制限により、農耕領域では二次的な生産者の位置に下がってしまった。そうして家務を切り盛りし、桑や麻をつむぐことを主要な職務となった。
農耕と男子のこの種の関係は、「男」の字に新しい意味を付け加えることになった。農耕即ち男子のことである。「説文」(漢字の集大成された古文書)で「男は主人である。田と力から、力を持って田をなすことを男という。」
男の性別の意味が氏族の首領の意味に取って代わって以降、畑の中で労働する男を指し、さらに拡大して一般に成年男子のことを言うようになった。もちろん限定された使い方で、男の子を意味したり、息子を意味する場合もあるが・・。




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