2020年8月30日日曜日

漢字「祝」の起源と成り立ちは神の成り立ちまで探る必要があるのか?



 「祝」は今ではそこらじゅうで祝い、喜びを表現しているが、古代には神事に伴う厳粛で、厳かなものであったらしい。神がわれわれに近づいたのか、われわれが神に近づいたものか?

  神のためならなんだってできる。人だって簡単に殺される。では神って何だ!


引用:「汉字密码」(P826、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「祝」これは会意文字である。甲骨文字の右辺は「兄」で本義は話ができる子供のことである。左辺は示偏で祭祀の中で神主の位牌である。ここでは両形の会意でお供えの机を前にして神霊の面前で祈祷をしていることを示している。祭祀者は神主の前に跪いて、ある言葉を念じている。

金文、小篆、楷書の祝うの字は、甲骨文を一脈受け継いでおり、形体は相似。ただし書き方で多少違うところのある。



祝の少し詳しい説明
 「祝」は説文では祭主祭詞者のことと解してしている。みことのりを用いて神に福を求める人。神に仕える者。また拡張して、「司祭者」などの口の中での祈りも指します。






字統の解釈
 示と兄とに従う。 示すは祭卓、兄は祝壽の器を奉ずるもので、祝詔する人を言う。
 白川博士によると「兄」というのは、古代では単なる兄弟の「兄」ではなく、神のお告げを入れる器を捧げ持つ人という特殊な立場の人を指したという。

 説文に「祭りに賛詞を主るものなり」とあり、女の巫を女巫、男巫を祝と言う。



結び




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漢字「箸」:その成り立ちから社会の変化を探る



 箸は竹かんむりです。これは漢字ができたころには箸が発明されており、しかも材質は竹が主流であったようだ。




引用:「汉字密码」(P115、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「箸」は形声文字で、竹と者の音声から構成されます。 「者」の本来の意味は、箸に漆で塗ることであり、箸を囲み、つけるという意味が込められています。

「箸」は竹を使用してその材料特性を示し、「者」は箸が食べ物を箸に付けることを可能にするものであることを示します。

 この解釈には唐漢氏の事実誤認があるような気がする。なぜ漆でなければならないのか、時代考証が必要ではなかろうか。


箸にまつわる故事
 「韩非子」が記載の本に基づくと、殷と商王朝の終わりに、商の纣王は、自分のために「象の箸」を作るよう命じた、つまり象牙の箸を注文した。大臣の算子はこれを見て、これが周の纣王の腐敗と堕落の始まりであり、殷商がすぐに滅びるであろうと考えて、非常に恐ろしく感じた。事実、殷商朝は周によってすぐに滅ぼされてしまった。

 現代では、ワシントン条約の関係で象牙の箸はすっかり鳴りを潜めたが、ごく最近まで一般家庭でも象牙の箸は普通に見られた。殷商の時代との間には3500年の開きがあるが、人間はなんと贅沢になったものだと思う。この人間の傲慢さが、今の地球の危機を産んでいることになる。


字統の解釈
 形声文字。声符は「者」。




結び
この逸話から分かることは、殷商の時代には贅沢品にしろ、象牙細工が流通していたことだ。しかしその象牙細工はべらぼうに高いものであったようだ。



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