2023年5月10日水曜日

漢字・化には古代人のどんな想いが込められているのか。底流には驚くべき東洋的思想が流れていた


「化」は、どこから来たのか、人の最も大きな変化は死です。
 太古の人々は旁に人偏を逆転させ、併せて一字でその変化を表現しました。


甲骨文字・化の発生過程
 甲骨文字(こうこつもじ)は、中国の殷(いん)・周(しゅう)時代(紀元前14世紀~前3世紀)に使用された文字の一種で、主に龜甲(きっこう)や獣骨(じゅうこつ)に刻まれた文字です。

 「化」(か)という漢字は、甲骨文字の中でも非常に古い時代から存在していた文字で、古代人のどんな想いが込められているのか。
 底流には驚くべき東洋的思想が流れていた。
 「化」は、もともと「変わる」という意味を持ち、物事が姿や性質を変えることを意味している。甲骨文字の左側は人偏で人を表し、右側は「の字形は「人」を逆転させた形で、「死」を表している。
 即ちこれらの会意で「化」をいう変化を意味している。それも人間の究極の変化である「生」から「死」を!

ここには東洋人の死生観が現れているような気がします。


漢字「化」の楷書で、常用漢字です。
 右側は「匕」で字形は「人」を逆転させた形で、その意味は「死」です。

 即ち古代人は人の最も大きな変化である生死を一字で「変化」を表現しました。
化・楷書


  
化・甲骨文字
左の人偏が逆転し、右の旁になっている
化・金文
跪いた状態を表している漢字
化・小篆
人偏と旁の会意で、化という字ができた


    


「化」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   カ、ケ
  • 訓読み   ばけ

意味
     
  • 変化する。 
  •  
  • 化ける
  •  
  • つなぐ。ウシをつなぐ。つながれる。 

同じ部首を持つ漢字     貨、訛、花、囮、靴
漢字「化」を持つ熟語    変化、化粧、化ける、化身


引用:「汉字密码」(P852、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「化」は会意文字である。甲骨文の「化」は正立と倒立した二人の人間の像である。
 この正立と倒立の人は変化を表示されるようになった。実際上は、上古先民の概念中、この正立、倒立した人の形はまさに生き死にの二つの状態である。生は正立し、死は倒立である。


 


漢字「化」の字統P70 の解釈
人と匕に従い、死人の倒錯している形。
説文に「教え行わるるなり」とし、「匕に従い、人に従う。匕は亦聲なり」とし、人を教えて化する意とするが死去の意。匕がその初文。化けは複数形にすぎない。
(周礼、大祝)に「化祝」があり、兵災に対する祈りを言う。化去の義よりして変化・化育などの義が生まれる。


まとめ
 会意文字であるようだが、一文字で、ある状態から別の状態への変化を表すという発想はなかなか出て来ない。
 また、化の「匕」を匕首と主張する論者もあるようだが、甲骨文字から予断なく判断すると、人が逆転した形と考えるのが、最も素直な見方であるような気がする。

 この文字は冒頭にも書いたように、東洋人の死生観を表現したものとすれば、かなり深い哲学的なものを持っていることになる。遥か3500年前の人々が果たしてそのようなことを考えるだろうか。筆者の単なる思い付きかも知れないが、何か世紀の発見をしたようで嬉しくなっている。

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2023年2月26日日曜日

漢字「兵」の成立ち:大勢の人間で武器を捧げ持つことを表現している。誰かが戦争を始めるかも知れない


漢字「兵」
  「兵」は甲骨文字の時から、すでに集団で武力行使を行うことを文字で表現している。
 いまロシアがウクライナに武力侵攻をかけ、戦争を仕掛けている。その根拠は、今まで言い尽くされてきたことであり、戦争を仕掛けた彼ら自身が、もはや自らを律することができない状態にあるように思える。ロシアは自らの国民に最終的に犠牲を強いながら、破滅への道を突き進むのか。それとも何らかの勝算があるというのだろうか。

 人類は長い歴史の中で戦争を繰り返してきた。それがいかに愚かなことであることも十分に悟ってきたはず。しかし、まだ戦争が起こるのは、自らの「生」の前には他人をも殺してでも勝ち取ろうとする、人間の業なのか。
 ここでも言及したように、ナチの元帥ゲーリングの言葉は、今の日本ばかりではなく、ロシア、北朝鮮、韓国 そして中国にもそのまま当て嵌まって居ないだろうか、冷静に見直すべきと考える。
 もっと深く考えなければならないのは、更に以上ここに揚げた国々全てにかかわっている国、アメリカを見逃すわけにはいかない
漢字「兵」の楷書で、常用漢字です。
 
即・楷書


 「兵」は会意文字。甲骨文の「兵」の字は上部は柄の曲がった大きな斧の頭(斤)で下部は斧の両側から斧を持つ手で、斧を持ち上げ、振り下ろして叩き切るのに用いる。金文の斧の頭は右向きに変わり、符号「「」が加わって斧で叩き切ることが強調されている。小篆では依然として二つの手、すでに斧の頭は反転符号を一体となっている。楷書の「兵」の中の斤の字は元通りで、二つの手は形はなくなっている。
兵・甲骨文字
兵・金文

兵・小篆



    


「兵」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ヘイ
  • 訓読み   常用漢字内なし

意味 
  • 武器を持って戦うひと、軍人、
  • いくさ
  • 軍隊
  • 武器

同じ部首を持つ漢字     宾、鋲、 浜、娦 · 㙃 、
漢字「兵」を持つ熟語    兵隊、兵站、兵糧、兵役、


引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「兵」の本義は武装した人のことであり、それゆえ兵器と軍隊を表示するのに用いられるのである。曹操の《置屯田令》の「夫定国之术,在于强兵足食」(国を安定させる術は、十分な食糧で軍隊を強化することにあります)ここでの「強兵」は強大な軍隊を指す。汉代贾谊《过秦论》:『收天下之兵 , 聚之咸阳。』(天下をおさむるの兵士、聚を咸陽に集めること。)ここでの「兵」は兵器を指す

 
漢字「兵」の漢字源の解釈
 会意文字。 上部は斧の形。その下部に両手を添えたもので、武器を手に持つ様を示す。 並べ合わせて敵に向かう兵隊の意。


漢字「兵」の字統の解釈
 斧を両手で差し上げている形。 武器を取って戦うものの意。 説文に「械なり」とは、兵器の意であるが、のち戦う人をもいう。 老子31章にも「兵はなお火のごときなり。治めずんば、まさに自ら焼かんとす。」は古い言葉であるが、今の時代に最も切当な言葉である


まとめ
 老子の言葉「兵はなお火のごときなり。治めずんば、まさに自ら焼かんとす」は重い。
 日露戦争から第二次世界大戦までの歴史を少し振り返ってみるだけでも、胸に突き刺さる。

そして、ナチスの将軍のゲーリングの言葉は、さらに追い打ちをかける。

国民を戦争に参加させるのは、つねに簡単なことだ。 とても単純だ。
(・・・)
国民には攻撃されつつあると言い、平和主義者を愛国心に欠けていると非難し、国を危険にさらしていると主張する以外には、何もする必要がない。この方法はどんな国でも有効だ。

ここまであからさまに言われても、まだ我々は同じ道を歩もうとするのか!




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