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2023年9月28日木曜日

漢字「死」の由来の意味するところ:古代人の死生観・・人は二度死ぬ!


古代人の死生観・・人は二度死ぬ!


人の死するや、まずその屍は草間に棄てられた。これが、漢字「葬」である。風化を待つためである。まずは自然に帰る。漢字「死」意味するところ、生死のの死ではなく、屍を意味していた。
 風化して後は、殯葬という形式がとられ、正式にあの世に旅立つのである。




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漢字「死」の今

漢字「死」の解体新書

漢字「死」の楷書で、常用漢字です。
 人の死するや、まずその屍は草間に棄てられた。これが、漢字「葬」である。風化を待つためである。
 のち殯葬 という形式がとられ、板屋などに隔離し、安置した。 そして風化した骨をとって葬るので、いわゆる複葬 の形式をとる。ト文の生死の字は囚に作り、棺中に人のある形。
死・楷書


  
死・甲骨文字
死・金文
死・小篆


 

「死」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   シ
  • 訓読み   しぬ、ころす

意味
  • 人間・動物などが、呼吸したり、動いたりできない状態になる  
  • 自分で呼吸したり、動いたりできない状態にする。
  • そのもの本来の力や働きが果たされなかったり、うまく利用されなかったりする状態にある 
  • そのものがもっている活気(勢い)や価値がなくなる
  •  

同じ部首を持つ漢字     死、葬、蔞、螻、
漢字「死」を持つ熟語    死、妓楼、蔞、螻、


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漢字「死」成立ちと由来

引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)

唐漢氏の解釈

 甲骨文の「死」の文字は右側に「歹」の文字があり、上は水平、もう一方は力強く、顔を上にして真っすぐに横たわっている状態を示し、下は二本になっています。
 中央のものは足が縛られていることを示す斜めになっています。 足を縛られていると動けなくなり、歩くことも動くこともできない人が死んだ人になります。

漢字「死」の字統の解釈

 歺 と人とに従う。 歺は人の残骨の象。 「人」 はその残骨を拝する人の形であるらしく、死を弔う意である。
 死の声義について、人の死するや、まずその屍は草間に棄てられた。漢字「葬」は葬は死 (屍) の草間にある形。風化を待つためである。
 のち殯葬 という形式がとられ、板屋などに隔離し、安置した。 そして風化した骨をとって葬るので、いわゆる複葬 の形式をとる。ト文の生死の字は囚に作り、棺中に人のある形。いまの死字の形は、歺の前に人の跪く形で、明らかに複葬の形式を示している。
 それで死はもと生死の字でなく、屍を意味する字であった。




漢字「死」の漢字源の解釈

 会意文字: 死は「歺(骨の断片)+人」で人が死んで骨切れに分解することをあらわす。



甲骨密码

【死,薨】的甲骨文金文篆文字形演变含义 死・甲骨文字=(跪く人)+(口・叫び)+( 歺・死体)、造語の原義:命が終わると、他人が泣きその遺体を悼む。 甲骨には「口」を省略したものもあります。 青銅碑文と篆刻は甲骨碑文を引き継いでいます。 ここで篆書の「人」は転倒した形をとっています
(「甲骨密码」を参照)



漢字「死」の変遷の史観

文字学上の解釈


【死,薨】的甲骨文金文篆文字形演变含义 死・甲骨文字=(跪く人)+(口・叫び)+(悪・死体)、造語の原義:命が終わると、他人が泣きその遺体を悼む。 甲骨には「口」を省略したものもあります。 青銅碑文と篆刻は甲骨碑文を引き継いでいます。 篆書の「人」は公用書では「短刀」と書きます。

まとめ

 白川氏は漢字「死」を「歺 と人とに従う。 歺は人の残骨の象。 「人」 はその残骨を拝する人の形であるらしく、死を弔う意である。」と解釈している。この解釈が正しいとすると漢字「死」は死そのものではなく、残骨や遺体を配することを「死」と解釈していたことになる。


 「死」の甲骨文字にはいくつかの字体が存在していて、漢字「死」の変遷の史観の項に掲げた。これ等の字体がすべて正しく表現されている保証はないが、一応参考のために掲げた。
 これらを概観してみるといずれも囲いの中に入っていることと、人が反転して書かれていること(漢字「化」の旁の部分)などもある。

 これらのことから考えてみるに、古代人は人間の死を抽象的には捉えることができないで、「人が死んだあと骸骨や死体が風化した後を見て『ああ、死んだのだ』と認識していたのではないだろうか。従って、白川氏の「字統」の記述にも、「副葬」という記述がみられるのは、こうした事情によるものではないだろうか。



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2023年5月10日水曜日

漢字・化には古代人のどんな想いが込められているのか。底流には驚くべき東洋的思想が流れていた


「化」は、どこから来たのか、人の最も大きな変化は死です。
 太古の人々は旁に人偏を逆転させ、併せて一字でその変化を表現しました。


甲骨文字・化の発生過程
 甲骨文字(こうこつもじ)は、中国の殷(いん)・周(しゅう)時代(紀元前14世紀~前3世紀)に使用された文字の一種で、主に龜甲(きっこう)や獣骨(じゅうこつ)に刻まれた文字です。

 「化」(か)という漢字は、甲骨文字の中でも非常に古い時代から存在していた文字で、古代人のどんな想いが込められているのか。
 底流には驚くべき東洋的思想が流れていた。
 「化」は、もともと「変わる」という意味を持ち、物事が姿や性質を変えることを意味している。甲骨文字の左側は人偏で人を表し、右側は「の字形は「人」を逆転させた形で、「死」を表している。
 即ちこれらの会意で「化」をいう変化を意味している。それも人間の究極の変化である「生」から「死」を!

ここには東洋人の死生観が現れているような気がします。


漢字「化」の楷書で、常用漢字です。
 右側は「匕」で字形は「人」を逆転させた形で、その意味は「死」です。

 即ち古代人は人の最も大きな変化である生死を一字で「変化」を表現しました。
化・楷書


  
化・甲骨文字
左の人偏が逆転し、右の旁になっている
化・金文
跪いた状態を表している漢字
化・小篆
人偏と旁の会意で、化という字ができた


    


「化」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   カ、ケ
  • 訓読み   ばけ

意味
     
  • 変化する。 
  •  
  • 化ける
  •  
  • つなぐ。ウシをつなぐ。つながれる。 

同じ部首を持つ漢字     貨、訛、花、囮、靴
漢字「化」を持つ熟語    変化、化粧、化ける、化身


引用:「汉字密码」(P852、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「化」は会意文字である。甲骨文の「化」は正立と倒立した二人の人間の像である。
 この正立と倒立の人は変化を表示されるようになった。実際上は、上古先民の概念中、この正立、倒立した人の形はまさに生き死にの二つの状態である。生は正立し、死は倒立である。


 


漢字「化」の字統P70 の解釈
人と匕に従い、死人の倒錯している形。
説文に「教え行わるるなり」とし、「匕に従い、人に従う。匕は亦聲なり」とし、人を教えて化する意とするが死去の意。匕がその初文。化けは複数形にすぎない。
(周礼、大祝)に「化祝」があり、兵災に対する祈りを言う。化去の義よりして変化・化育などの義が生まれる。


まとめ
 会意文字であるようだが、一文字で、ある状態から別の状態への変化を表すという発想はなかなか出て来ない。
 また、化の「匕」を匕首と主張する論者もあるようだが、甲骨文字から予断なく判断すると、人が逆転した形と考えるのが、最も素直な見方であるような気がする。

 この文字は冒頭にも書いたように、東洋人の死生観を表現したものとすれば、かなり深い哲学的なものを持っていることになる。遥か3500年前の人々が果たしてそのようなことを考えるだろうか。筆者の単なる思い付きかも知れないが、何か世紀の発見をしたようで嬉しくなっている。

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