2022年11月2日水曜日

「占」:王は権威付けのために「占い」を行い、その記録を文字に残した。それが甲骨文字である。

漢字「占」の起源と由来「占」は漢字の発明の母?

  王は権威付けのために「占い」を行い、その記録を文字に残した。それが甲骨文字である。
 とすれば「占」は漢字の発明の母である。

 
占_楷書
昨今占いブームである。マスコミには数々の占い師が登場し 持ち前の技能を指導している。 ひところテレビでは、 FBI の今日の超能力と言われる捜査官が登場し行方不明になった方々を探し出すと言う企画が画面を賑わした。これも一種の占いである。
  占いの歴史は古く占星術がバビロニア、エジプト、中国などの古文書にも登場する。 中国では三国志の中で諸葛亮孔明が占いにより戦略を決めるといった場面が我々にもおなじみである。
その中国で歴史上、明らかになっているものは殷の時代の占いの記録の甲骨文字が現在に残されている。これは亀の甲羅を火あぶり、甲羅に出来た亀裂から、いろいろの物事を占うというもので、この占いは神聖化され、王の言葉を決定づけるものとして独占的に占有され、記録に残されている。 甲骨文字に記されているのは甲骨文字という文字であるが、漢字漢字の原始形態といわれている。
 中国文化文化は漢字文化といわれるが、この漢字が占から生まれたとすれば、この占いこそ文明の母といってもいいのではないだろうか。
 ここには少し論理の飛躍がある気がするが、占は文化の発展の一翼を担っているという位置づけぐらいはあるのかも知れない。



引用:「汉字密码」(Page、唐漢著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「占」、会意文字。 甲骨碑文の「占」には二つの書き方があり、小さな会意文字です。 甲骨文の「占」は2款があり、簡単なものは上部は一つの小さい卜で、下辺は小さい口で、両形の会意で骨の形は単純です。
 金文と小篆の「占」の文字と甲骨文の第2款は相同で楷書に受け継がれている。楷書も引き継がれて「占」と書かれています。
 殷と商の時代には、「王」だけが祖先や精霊と通信する絶対的な力を持っていた。したがって、占いの人が占の卦を行った後、王はしばしば兆紋と卜辞をチェックして修正し、最終的な吉凶の決定をした。これは甲骨文字中の「王占曰く」という模範文にも表れている。     「説文」では「占、兆しを見て問うなり」と解釈され、「占」の本来の意味は、記号や言葉を見て、最終的に善悪の意味を判断することであることがわかる。
 「卜」は「占、占い、夢占い、占星術」など、物を観察して良し悪しを判断することである。このことから、一般的な意味での「測定と検査」に拡張され、「後漢書・虞诩传」:「地勢を占う」など、地理的な状況を検査して判断することにも用いられた。
   王の最終決定から、「主導権を握る、優位に立つ、優位に立つ」など、一定の優先状態にあるように拡張され、そこから拡張され領有の意味に解釈される。


字統の解釈 P515
 会意文字 卜と口とに従う。 卜は甲骨による占いの時の卜兆の形。口はサイを表す。祝禱をおさめる器の形で神に祈りながら卜問をすることを占いという。説文では兆を見て問うなりといい、会意文字とする。口を口舌の意としているが祝禱の意である。  



漢字源の解釈P214
 会意文字。 「占+口」。この口は「くち」ではなくあるものやある場所を示す記号。 占いによって一つのものや場所を選び決めること。

 

「漢字の起源と成り立ち 『甲骨文字の秘密』」のホームページに戻ります。

2022年5月28日土曜日

漢字「固」の持つ意味は? 二つとないものを指していた。後に『個』が派生する


漢字「固」:成り立ちと由来、元々二つとないものを指していた?
 漢字「固」から派生した言葉に『個』ある。この元々の使い方は、「偏なり」と解釈され、片方だけのものを指していたようだ。それにしても、「個性」とはなんと素晴らしい翻訳語ではないか。

漢字「固」の楷書で、常用漢字です。
 「古+口」で語義は、干(盾)を口で囲って保護する意味。

 柵を用いて囲ったりする堅固な地のことである。拡張して、牢固な事物を指す。
 個性などの「個」のように用いられるのは、比較的新しい使い方だそうだが、個の元々の使い方は「偏なり」と解釈され、片方だけのものを指していたようだ。それにしても、「個性」とはなんと素晴らしい翻訳語ではないか。
固・楷書


 
  
固・甲骨文字
盾の象形文字で象形であって中と或いは申すと書く。下部は落とし穴の関係の口を示す。両者は両者は防衛防護物を意味する
固・金文
城の入り口と疎外物に当たる
固・小篆
以上2文字の会意で、即ちとか直ちにを意味する
個・楷書
「固」の派生語


    



「固」の漢字データ

 

漢字の読み
  • 音読み   コ
  • 訓読み   かた(い)

意味
  • かたい、固くする、固める
    しっかりしている、丈夫、頑丈な
  •  
  • かため(守備、守り)、警固、備え
  •  
  • かためる、固定する、固くする、凝固させる
    しっかりと安定させる

同じ部首を持つ漢字     固、個、箇
漢字「固」を持つ熟語    固辞、堅固、固執




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「固」説文では「固」は四塞なりという。いわゆる城郭の周囲を堀で囲ったり、柵を用いて囲ったりする堅固な地のことである。拡張して、牢固な事物を指す。《苟子•议兵》:『高城深池不足以为固。』(高い城と深いプールはしっかりするだけでは十分ではありません。)

 



漢字「固」の漢字源の解釈
 会意兼形声文字。 古は固く、干からびた頭蓋骨を描いた象形文字。 固は「口+音符古」で周囲からカッチリ囲まれて動きの取れないこと

漢字「固」の字統の解釈
 会意文字。古と口とに従う。古は祝禱の器の上に聖器としての干を置き、その祝禱の呪能を護るの意であり、固はそれに外囲を加えて、一層厳重にこれを固守する意を示す。ゆえに固閉・堅固の意となる。箇のは説文によると竹べらを指し、ものを数えるのに用いたとある

まとめ
 祝禱の器の上に聖器としての干を置き、その祝禱の呪能を護るという意にせよ、周囲をがっちり固めるにせよ、固くなったものを指すことには間違いがない。又個人、個性などという語はいずれも新しい翻訳語である。





「漢字考古学の道」のホームページに戻ります。