2021年5月23日日曜日

漢字・妾 に込められた「女の怨念」は3千年を経た今日でも何ら解放されていない


漢字 妾の成り立ちから何が見えてくる:どこまで「女の怨念」は字の中に、押し込められ続けねばならないか!
 漢字「妾」は以前にも一度取り上げた。しかし、この1、2年「セクハラ」が大きく取り上げられ、男女差別の解消が社会の大きな課題として取り上げられている。
 そこで、以前にこのブログでも取り上げた漢字「妾」を取り上げ、セクハラを漢字の一面から取り上げてみよう。

以前のブログ:女の漢字シリーズ:妾


漢字 妾の楷書で、常用漢字です。妾:この字は会意文字である。
 「辛」と「女」の字で構成されています。この「妾」の字の原字は、「辛」+「女」 の字からなる。

この「辛」とは、入墨を入れる刑具であった。

 太古の昔、戦いで制圧した部族の女を「戦利品」として、奴隷にすることが行われた。この際奴隷であることを明確にするために、女の額に入墨を入れたが、この入れ墨用の針を「辛」といったことから、入墨を入れられた女のことを「妾」と呼んだのがそもそもの始まりである。
妾・楷書


「娶」・甲骨文字
原義は「戦利品」として、
女を取るを意味していた。
「妾」・甲骨文字
女が入墨を入れられ、
「所有」を明確に表している
「妻」・甲骨文字
髪飾りを付けた女に手を
付けた?ことを表している
古人の婚姻制度は決して男女にとっていい形で出現したわけではない。ましてやこの形態の最高の形式であったわけではない。それに反しそれは女性にとっては男の奴隷にもなることを意味した。

 婚姻は全歴史を通じて両性の衝突の宣告と出現するものとなった。
(エンゲルス「家族私有財産国家の起源」より)


    


「妾」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ショウ
  • 訓読み  めかけ・わらわ

意味
  • 「正妻のほかに愛し扶養する女性」、「婚姻した男性の、経済的援助を伴う愛人」を指す言葉です。
  • 妾(わらわ)・・女性が自分をへりくだっていう言葉でわたくしという意味(武家の女性につかわれていた。)  

同じ部首を持つ漢字     接
漢字「妾」を持つ熟語    愛妾、男妾、妾出




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「妾」この字は会意文字である。甲骨文字と金文の「妾」の字は、下の部分は皆ひざまずいた女人の形をしている。女性の頭の上には「辛」 の字がある。上古社会では部族間では常に戦いがあった。領土の争い以外は皆多くは略奪であった。相手方の氏族の女性を捕獲するのは、常に戦争の目的の一つであった。「辛」は捕虜に入墨を入れる刑具であった。「女」の上に「辛」を加えて、略奪してきた捕虜の女であることを示している。 

 はるか昔の時代は、どの氏族も皆女子を捕獲して来て自己の氏族に組み入れ、氏族の産む女性の数を増やすことで氏族の人口の拡充を図った。

 このことは近代社会においては、全面否定されているが、近代化されていない部分においては、未だ隠然たる意識が支配的なところもある。
 

 

漢字「童」の解釈
戦争の悲劇は女性だけではなく子供達にも降りかかった
 「童」これは会意文字である。甲骨文字の童の字は体に刑具を科せられた人である。土を積み上げた上でつま先立ちをして遠くを見ている人である。刑を科せられて子供が故郷を渇望している版刻の図形である。

 


まとめ
 戦争というものは、権力者が起こす最大の犯罪である。そして、その犠牲となるのは、力の弱き女性であり、子供達である。一連の漢字の中にも、その堕としこめられた女性たち・力の弱きものの怨嗟の叫びが聞こえる



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2021年5月20日木曜日

漢字「威」の成り立ちから見えてきた太古の昔の嫁姑争いの泥沼。嫁姑の闘いは太古の昔から続けられてきて、いつ果てるともない


漢字「威」の成り立ちと由来にみる太古の昔の嫁姑争い
漢字「威」は、「女」+「戉」からなる文字です。ここで「戉」とは、昔の武具で、非常に大きな「斧」のことで、斧の化け物みたいなものです。このことは何を意味するのでしょう。
 太古の昔は、小さな部落単位で生活していました。この様な村落では、出自のはっきりしている、女性の力が大きく、、その集団では、年老いた経験豊かな女性が大きな発言権を持っていたのでしょう。
 そういった女性が、村の武力をも動かす力を持ち得たのではないでしょうか。その実態と反映して生まれたのが「威」という漢字だと思われます。
 このことから、威厳、威風などの言葉が生まれたのでしょう.


漢字「威」の楷書で、常用漢字です。「女」+「戉」からなる文字です。これは、嫁から姑を見ていう言葉のようです。ある意味では、すごい漢字で、太古の嫁にとってみれば、姑はこのように見えたのかも知れません。しかし、よりにもよって、戉や鉾など物騒なものが出て来るとは思いもよりませんでした。
威・楷書


  
威・金文 「威」・小篆
「姑」・楷書


    


「威」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   イ
  • 訓読み   該当なし

意味
  • 近寄りがたい ・・・例 威厳
  • 相手や、辺りを圧する気配 ・・・ 例 威圧、脅威
  • 勢い、力   例・・・権威
  • 人を従わせる力  ・・・ 例 威力


漢字「威」を持つ熟語    威儀、威厳、威風




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「威」 《説文》では、「威」は姑なりとしている。女と戉からなる。金文の「威」の字は「女」の上に鉞型の斧の兵器を加えている。まるで女が鉞を担いでいるかのようだ。

 実際女子はもともと兵器とは関係はなく、ここの女は母親を指す。女と鉞の会意で、母親が嫁にしたしつけ教育である。

 





漢字「威」の字統の解釈
 会意文字:戉と女に従う。「説文」に「鉞と女の会意とし、婦が姑を呼ぶ語即ち威姑の義であるとする。

 しかし、白川氏は「威」は「戈」の下に「妥」を加える形であると解釈する。即ち「威」とはもと聖なる兵器で以て、女子を落ち着かせる儀礼をいう。
 鉾や鉞で邪霊を退ける意味から威厳の義がうまれる。


まとめ
 漢字は現実社会の反映である。嫁から見て姑は、鉞や矛を背負っているように見えたのであろうか。太古の昔、まだ人々が小さな部落で狩猟や採取で生計を立てていたころ、女性の地位は果てしなく高かったのだろう。それがやがて農耕で生計を立てるうち貧富の差が出来て、私有財産が蓄積された。人間の欲望はこの時から広がりはじめ、今では果てしなく膨らんで、欲望の泥沼にはまり込んでしまった。人間は欲望の沼に溺れ込むのかもしれない。



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