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2021年5月24日月曜日

女の漢字シリーズ:漢字「娶」の成り立ちの意味するもの。上古には女性は戦利品として取り扱われた名残り

女の漢字シリーズ:漢字「娶」の成り立ちの意味するもの。上古には女性は戦利品として取り扱われた名残り

 この記事は2011年にアップしたものに、加筆・修正を加えたものです。

 漢字「娶」には、太古の昔、単なる戦利品としてしか扱われなかった、略奪された女たちの凄まじい怨嗟のうめき声が聞こえる。

 嫁と娶のいずれの漢字も現代では結婚することを示している。同じ意味ではあるが、一方は女性が他の家にとつぐことをいい、他方は男から見た結婚即ち妻を娶ることをいう。しかし、その成り立ちには、大きな違いがあり、男女の立場の違いが明確に出た漢字である。

   「娶」は嫁をとることです。それとは逆に嫁にいくことは「嫁」ぐという漢字で、表現されます。
 私は、この「嫁をとる」と「嫁に行く」という言葉遣いそのものに、そして「娶」という言葉の中に、既にきわめて男中心主義的な匂いを感じざるを得ません。
 そして漢字自体も、「娶」は「女を取ってくる」で、「嫁」はなんで「女+家」になるのでしょうか?嫁に行くのは、少なくとも家に入ることを示しています。「女を取ってくる」という用語から比べると、はるかに格が上であることは間違いがありません。


 漢字「娶」の楷書で、常用漢字です。この文字は女性にとっては、非常に屈辱的な文字です。
 世の中が、母系制社会から、家父長的な父権制社会に変貌を遂げる中で、作り出された文字で、部族ごとに戦争を繰り返し、氏族の発展のために他を略奪する抗争に明け暮れていた時代です。
 略奪された部族は、奴婢となったり、女性は子供を産むための役割しか与えられませんでした。この文字の原義は、「女を取る(略奪)」することなのです。
娶・楷書


 
昔の戦争では、戦功の一つとして、殺した敵兵の数があった。それの証拠として、敵兵の耳を削ぎ落すというものであった。これは秀吉の朝鮮出兵でも、行われている。漢字「娶」には、その行為が明確に刻み込まれている。  
「娶」・甲骨文字
「耳+又(手)」+「女」
から構成される会意文字です
「娶」・金文
成り立ちは甲骨文字を引き継いでいるが、絵画から文字に進化している
「娶」・楷書
「取」+「女」からなり、甲骨文字よりも概念的には明確になっている





 漢字としては「娶」の方がはるかに古く、殷商の時代には既に作られていたようである。

 唐漢氏の「漢字の暗号」によれば、「娶」という字は、大変古い字で、甲骨文字の時期は会意文字であった。甲骨文字の「娶」の字は女の人の右上方に手が耳をつかんでいる形である。 
 
娶は部族間の戦争で勝者が「戦利品」として
女性を略奪したことの名残り
 上古社会には部族間の戦争は頻繁にあった。双方戦いを終結する時、敵を殺した数字を数えるのに、敵の切り取った左耳の数に基づいた。よって、「取」は敵を殺し、耳を切り取ったの意味である。

 殷商時代の部族の戦士は戦争中の捕虜の女性から戦利品から我がちに奪い取り妻にした。

 小篆の「娶」の字は、「女」と「取」の発声から形声字となり、その意味もまた変化を遂げた。「説文」では娶を嫁を取ると解釈している。ここの「娶」は既に「妻を迎える、嫁を娶る」の意味である 明らかに「娶」の字に内包するものは時代につれ変化した。殷商時期は捕虜の女性を取ってくるという意味に用いられ、両周以降は嫁を取るという意味に逐次変化した。

 一方「嫁」の方は「漢字源」によれば、女性が相手の家に入るということで、女偏に家と書いてとつぐと書くようになった。こちらは氏姓制度が確立し父系制が行き渡って後の話である。

 

「漢字の起源と由来ホームページ」に戻ります。

2021年5月23日日曜日

漢字・妾 に込められた「女の怨念」は3千年を経た今日でも何ら解放されていない


漢字 妾の成り立ちから何が見えてくる:どこまで「女の怨念」は字の中に、押し込められ続けねばならないか!
 漢字「妾」は以前にも一度取り上げた。しかし、この1、2年「セクハラ」が大きく取り上げられ、男女差別の解消が社会の大きな課題として取り上げられている。
 そこで、以前にこのブログでも取り上げた漢字「妾」を取り上げ、セクハラを漢字の一面から取り上げてみよう。

以前のブログ:女の漢字シリーズ:妾


漢字 妾の楷書で、常用漢字です。妾:この字は会意文字である。
 「辛」と「女」の字で構成されています。この「妾」の字の原字は、「辛」+「女」 の字からなる。

この「辛」とは、入墨を入れる刑具であった。

 太古の昔、戦いで制圧した部族の女を「戦利品」として、奴隷にすることが行われた。この際奴隷であることを明確にするために、女の額に入墨を入れたが、この入れ墨用の針を「辛」といったことから、入墨を入れられた女のことを「妾」と呼んだのがそもそもの始まりである。
妾・楷書


「娶」・甲骨文字
原義は「戦利品」として、
女を取るを意味していた。
「妾」・甲骨文字
女が入墨を入れられ、
「所有」を明確に表している
「妻」・甲骨文字
髪飾りを付けた女に手を
付けた?ことを表している
古人の婚姻制度は決して男女にとっていい形で出現したわけではない。ましてやこの形態の最高の形式であったわけではない。それに反しそれは女性にとっては男の奴隷にもなることを意味した。

 婚姻は全歴史を通じて両性の衝突の宣告と出現するものとなった。
(エンゲルス「家族私有財産国家の起源」より)


    


「妾」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ショウ
  • 訓読み  めかけ・わらわ

意味
  • 「正妻のほかに愛し扶養する女性」、「婚姻した男性の、経済的援助を伴う愛人」を指す言葉です。
  • 妾(わらわ)・・女性が自分をへりくだっていう言葉でわたくしという意味(武家の女性につかわれていた。)  

同じ部首を持つ漢字     接
漢字「妾」を持つ熟語    愛妾、男妾、妾出




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「妾」この字は会意文字である。甲骨文字と金文の「妾」の字は、下の部分は皆ひざまずいた女人の形をしている。女性の頭の上には「辛」 の字がある。上古社会では部族間では常に戦いがあった。領土の争い以外は皆多くは略奪であった。相手方の氏族の女性を捕獲するのは、常に戦争の目的の一つであった。「辛」は捕虜に入墨を入れる刑具であった。「女」の上に「辛」を加えて、略奪してきた捕虜の女であることを示している。 

 はるか昔の時代は、どの氏族も皆女子を捕獲して来て自己の氏族に組み入れ、氏族の産む女性の数を増やすことで氏族の人口の拡充を図った。

 このことは近代社会においては、全面否定されているが、近代化されていない部分においては、未だ隠然たる意識が支配的なところもある。
 

 

漢字「童」の解釈
戦争の悲劇は女性だけではなく子供達にも降りかかった
 「童」これは会意文字である。甲骨文字の童の字は体に刑具を科せられた人である。土を積み上げた上でつま先立ちをして遠くを見ている人である。刑を科せられて子供が故郷を渇望している版刻の図形である。

 


まとめ
 戦争というものは、権力者が起こす最大の犯罪である。そして、その犠牲となるのは、力の弱き女性であり、子供達である。一連の漢字の中にも、その堕としこめられた女性たち・力の弱きものの怨嗟の叫びが聞こえる



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2018年10月1日月曜日

「姻」の起源と成り立ち:父権制の確立後に生まれた文字、新婦の寝る場所を示す


漢字「姻」の起源と由来

引用:「汉字密码」(P505、唐汉著,学林出版社)

「姻」の字の成り立ち」
「姻」は会意文字であり、形声文字でもある。小篆の字形の左辺は「女」の字で、右辺の「因」は甲骨文字の原本は筵の上で寝ることを表示している。拠り所のあるという意味である。父権制の確立後、中国の婚姻風俗は一般には皆女子は男の家即ち新郎の家に出かける。それゆえ新婦の拠り所となる場所となる。また直視的な解釈で新婦が寝る場所という意味である。  いわゆる姻は女と因の組み合わせである。その中で因は又表音を表わす。姻は婚と同じく会意と形声文字である。

古人は婚姻を如何に考えたか
 「姻」は説文では「姻、婚家なり」と解釈され、それゆえ拡張され、姻親と関係する。《尔雅•释亲》の説くごとく、「婚これ父曰く、婦の父を婚となす。このことは「親家の間、女性の父親を婚と呼び、男の父親を姻と呼ぶ。


現代の日本の法律上の「親族」「姻族」の定義
親族の定義
 一般的には,親族というと,親戚の方全般を指すものとして使われています。  法律上の「親族」は,すべての親戚を指すわけではない。すなわち,法律上の親族とは,6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族のことを指します。
姻族の定義
 姻族(いんぞく)とは,一方の配偶者と,他方の配偶者の血族との間の関係のことをいいます。例えば,妻と夫の父母などは姻族となる。  姻族関係は,あくまで配偶者双方の問題です。したがって,配偶者以外の者同士が姻族関係になるというわけではないことを知っておいても損はない。   


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