この記事は2011年にアップしたものに、加筆・修正を加えたものです。
漢字「娶」には、太古の昔、単なる戦利品としてしか扱われなかった、略奪された女たちの凄まじい怨嗟のうめき声が聞こえる。
嫁と娶のいずれの漢字も現代では結婚することを示している。同じ意味ではあるが、一方は女性が他の家にとつぐことをいい、他方は男から見た結婚即ち妻を娶ることをいう。しかし、その成り立ちには、大きな違いがあり、男女の立場の違いが明確に出た漢字である。
「娶」は嫁をとることです。それとは逆に嫁にいくことは「嫁」ぐという漢字で、表現されます。
私は、この「嫁をとる」と「嫁に行く」という言葉遣いそのものに、そして「娶」という言葉の中に、既にきわめて男中心主義的な匂いを感じざるを得ません。
そして漢字自体も、「娶」は「女を取ってくる」で、「嫁」はなんで「女+家」になるのでしょうか?嫁に行くのは、少なくとも家に入ることを示しています。「女を取ってくる」という用語から比べると、はるかに格が上であることは間違いがありません。
漢字「娶」の楷書で、常用漢字です。この文字は女性にとっては、非常に屈辱的な文字です。 世の中が、母系制社会から、家父長的な父権制社会に変貌を遂げる中で、作り出された文字で、部族ごとに戦争を繰り返し、氏族の発展のために他を略奪する抗争に明け暮れていた時代です。 略奪された部族は、奴婢となったり、女性は子供を産むための役割しか与えられませんでした。この文字の原義は、「女を取る(略奪)」することなのです。 | |
娶・楷書 |
昔の戦争では、戦功の一つとして、殺した敵兵の数があった。それの証拠として、敵兵の耳を削ぎ落すというものであった。これは秀吉の朝鮮出兵でも、行われている。漢字「娶」には、その行為が明確に刻み込まれている。 | |||
「娶」・甲骨文字 「耳+又(手)」+「女」 から構成される会意文字です |
「娶」・金文 成り立ちは甲骨文字を引き継いでいるが、絵画から文字に進化している |
「娶」・楷書 「取」+「女」からなり、甲骨文字よりも概念的には明確になっている |
漢字としては「娶」の方がはるかに古く、殷商の時代には既に作られていたようである。
唐漢氏の「漢字の暗号」によれば、「娶」という字は、大変古い字で、甲骨文字の時期は会意文字であった。甲骨文字の「娶」の字は女の人の右上方に手が耳をつかんでいる形である。
娶は部族間の戦争で勝者が「戦利品」として 女性を略奪したことの名残り |
殷商時代の部族の戦士は戦争中の捕虜の女性から戦利品から我がちに奪い取り妻にした。
小篆の「娶」の字は、「女」と「取」の発声から形声字となり、その意味もまた変化を遂げた。「説文」では娶を嫁を取ると解釈している。ここの「娶」は既に「妻を迎える、嫁を娶る」の意味である 明らかに「娶」の字に内包するものは時代につれ変化した。殷商時期は捕虜の女性を取ってくるという意味に用いられ、両周以降は嫁を取るという意味に逐次変化した。
一方「嫁」の方は「漢字源」によれば、女性が相手の家に入るということで、女偏に家と書いてとつぐと書くようになった。こちらは氏姓制度が確立し父系制が行き渡って後の話である。
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