2021年5月7日金曜日

漢字「水」の由来は「流れる水」だ。昨今、問題の「汚染水」と「処理水」とはどう違うのか


漢字「水」の成り立ちと由来の意味するもの:漢字「水」は水の流れの形に象る。
 最近、貯まった水を処理するのに単なる希釈をして「汚染水」を「処理水」と呼んで放流しようという動きがある。基本的になこととして、水で希釈しただけのものは、処理とは呼べないのが、水質保全の常識なのだ。

 漢字「水」の楷書で、常用漢字です。漢字の発達から我々の人間の認識は、最初には、「水」という認識はなかったのではと思われます。
 つまり、太古の先民は、水というような形のないものはどのように見たらいいのか分からなかったのではないでしょうか。

 太古の先民たちは「水」を「川」と捉えていたような節があります。目に見える川や山の具体的な形象のみを認識していたのではないかと思うのです。

 つまり、冷たい、形のない色のない物質が流れている「川」を「水」と認識していたのではないでしょうか。

水・楷書




  
「水」・甲骨文字「水」・金文
水・小篆
  


    


「水」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   スイ
  • 訓読み   みず

意味
  • 物質の性質 ・・・水銀、
  • 液体としての意味  生き物が生きていく上で必要な液体の意味
  • 水場・・・水のある場所としての意味   水辺などの水のある場所を表す
  • 置かれた状態  吃水、溢水、水位
  • 一時中断させる意味    相撲で4分以上勝負がつかない時や、行事や審判が続行しない方が良いと判断した時に使われる「水入り」は中断するという意味で使われます。
  • 邪魔をする意味   水を差す

熟語
  • 水の性質  塩水、熱水、汚染水(何かで汚染された水 水質に関わる言葉)
  • 水の処理   処理水(処理した工程に関わる言葉・・水質には言及していない)
      冷却水(冷却した水、冷却のための水)
  • 水の管理   治水、防水

部首 サンズイ等水に関係する漢字: 海、永、漢、㲹、氷、江、河、汁、汚、染、沈、溝、潮、汐、汌   




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「水」は甲骨文字の中で、非常に優美な字形を持っています。それがまるで一条の流れる河流のが曲がりくねっているようです。「水」の字を見るに、河水に浮かぶ波しぶきが流れ動く形状を見るようです。

 甲骨文の水の字は外側は点線で、中側は実線を用いていて、流水からくる形状の様です。「説文」では多くの水が集まって中にいるかのように見えます。小篆は甲骨文と同じく、水の字の造形で、両側の岸と縁の緩慢な流れ、突出した中間の急流を示しています。水の字の強調しているのは川の中のものです。

 古文の典籍の中、水は通常河流を指します。淮河が淮水と称するが如くです。
 中国の古代には大禹治水という伝説があります。ここでの「水」は水難・洪水を指すのであり、また河流も示します。

 

漢字「水」の字統の解釈
 象形:水の流れる形に象る。「説文」に「準(たいら)かなるなり。」と水準の義とするのは、古くその音が近かったであろう」 

 ここでも、水を物質そのものではなく、その流れる様というある種の形象を文字にしている。


まとめ
 地球の水は、太陽系が生まれたときに由来します。それは今から45億年も前に太陽系の誕生の時になります。いま水をめぐって様々な、芳しくないことが起こっていますが、このような事象は、今から100年前にはなかったことですから、地球誕生以来45億年という途方もない時間を、人類はたった100年で使い物にならなくしようとしています。


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2021年5月5日水曜日

漢字・明の成り立ちから、明らかになったもの。 また一つ謎が明かされる!


漢字「明」の成り立ちから、何が明らかになって、明らかでないものは、いつ明らかになるのか
漢字「明」・楷書
漢代の明堂
「字統」より抜粋
 漢字「明」の楷書で、常用漢字です。左は月明かりを取り入れるための窓だという。また右の記号は「月」だという。静かな夜、窓から差し込む月明り。その光景を思い浮かべただけで、なんとロマンチックで情緒的なんだろうとため息がでる。

 漢字「明」の成り立ちから、何が明示され、明らかでないものは、いつ明らかになるのか?
 漢字探索の旅は続きます。人間の限りない「文明の探索のロマンといえましょう。

 漢字「明」は、「日」+「月」と直感的に考えられてきました。今までいろいろの漢字を見てきたが、このような情緒に溢れた漢字は見たことがない、この漢字は、他の生活臭のふんぷんとするものと一線を画するような気がしている。
 このような月明かりがある建物は、それこそ竪穴式所住居というわけではなく、掘っ立て小屋では話になるまい。この字が生まれる背景は、相当に生活が豊かになって(上流階級だけかも知れないが)、庶民の生活とは切り離された生活が出現したのであろう。したがって月を愛でるような風流なことが赦される生活がそこにあると考える。この生活の変化はどこから来たのだろう。興味は尽きない。



  
明・甲骨文字
窓から冴えわたる月が煌々と差し込むさまを示す
「明」・金文
甲骨文字をそのまま引き継いだ漢字
明・小篆
字の構造は甲骨・金文と何ら変わっていない。窓が明示され、字の意図を明確にした


    


「明」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ミン  メイ ミョウ
  • 訓読み   あか(るい) あき(らか) あ(かす) あ(ける)

意味
  • 光があり、眼に良く見える
  • 明確である、はっきりしている
  • 名詞 光 
  • 明確になっていない・隠された・秘密になっていた事柄を秘密ではなくなる状態にする
  • 翌、次の

使い方
  • 動詞    明確にする、はっきりさせる行為・動作
  • 形容詞・副詞   名詞や形容詞・動詞を修飾する 

熟語   明察、明快、明治、明示、明瞭




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「明」は甲骨文の「明」の字は左右が結びついた構造をしている。右辺は月である。まるで湾曲した形で、左辺は窓の象形のデッサンである。両形の会意で、月が窓から差し込んで明るいさまを描いている。


 

漢字「明」の字統の解釈
 会意文字:窓と月とに従う。窓から月光が入り込むの意。そこは神の祀るところであり、神明の意がある。
 《説文》に「照らすなり。月に従い、冏に従う」とし、また古文の一字を録し、明に作る。
 明は元々神明の意である。


まとめ
 「明」が窓+月の会意であるということは、まだ仮説の状態だ。しかし、現在では、傍証を積み重ね、考古学の知見から、仮説が限りなく真実に近い状態になっている。その中には漢字自体の発展を明らかにするだけではなく、人々の生活や習俗、宗教などがどう変わってきたかということも検証されなればならない。
 漢字の起源と由来を求めることは、人間そのものをより正確にとらえるという意味で非常に大切なことと感じている。




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