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2023年5月29日月曜日

漢字・弦の由来は、狩猟の弓の弦。今では弓道、音楽、月などに用いられます


漢字・弦 は、形声文字である。弓の後ろの両端の間に張られた糸のこと。


矢を放つために使用されます。これを会意文字とする説もある。「玄」の玄は象形文字で、糸束をねじた形を表しているので、会意文字としても考えられる。白川博士は、これを形声文字とする。



目次

  1. この漢字の由来の諸説
  2. 漢字「弦」のいろいろのジャンルでの使われ方
  3. 「弦」の漢字データ
  4. 漢字「弦」の解釈
      唐漢氏の解釈
     漢字「弦」の字統(P269)の解釈
  5. 「弦」に関する諺
  6. 弦楽器の弓の弦の素材についての豆知識
      弦楽器の弓の弦の素材についての豆知識
      武器の弓の弦の素材についての豆知識
  7. 月の満ち欠けの「弦」
  8. まとめ

この漢字の由来の諸説


 この漢字の由来については、諸説ありますが、一般的には、弦を作るために用いられる「糸(いと)」が絡み合って張り巡らされる様子を表したとされています。

 これ以外に、楽器の弦が原義という説もありますが、やはり生活上の必需品である、弓の弦に由来すると考える方が自然でしょう。

 また、別の説では、戦国時代に斉の将軍・孫臏(そんぴん)が考案したとされる「発石器」(はっせきき)という兵器の一種に由来するという説もあります。この発石器は、石弾を弦で飛ばすために用いられた兵器であり、この弦の部分を「弦」と呼んでいたとされています。ただし、この説は定かではありません。

 一般的には、弦を作るために用いられる「糸(いと)」が絡み合って張り巡らされる様子を表したとされています。弓を引くと、弦が振動し音が鳴ることから、音を表す「音(おと)」と合わせて「弦」という漢字が作られたとも言われています。


漢字「弦」のいろいろのジャンルでの使われ方


  1. 音楽:
    「弦」は、楽器の弦を意味します。特に、弦楽器(げんがっき)で使用される弦を指します。代表的な弦楽器には、ギター、バイオリン、チェロなどがあります

  2. 弓道:
    「弦」は、弓と矢を用いた日本の伝統的な武道である「弓道(きゅうどう)」にも関連しています。
    弓道では、弓の弦(つる)を引いて矢を放つことにより的を射る技術を養います。

  3. 文字の意味:
    「弦」は、漢字の中でも音を表す文字です。他の漢字と組み合わせて音を表す役割を果たします。例えば、「弦楽器」の「弦」や、「弦月」の「弦」などが該当します。

  4. 比喩的な意味:
    「弦」は、弓や弦楽器の弦のように伸びやかでしなやかなものを比喩的に表す場合にも使用されます。
    例えば、「心の弦に触れる」「情熱の弦を奏でる」といった表現があります。
漢字「弦」の楷書で、常用漢字です。
 右側は「玄」で語義は、臍の緒を示しています。
弦・楷書


小篆は左が「弓」、右が「玄」の文字。 玄はへその緒に似ていて、絹の縄にも似ています。 へその緒はある程度の柔軟性を持った物理的な組織で、弓の弦は主に牛スジと絹の縄でできているため、「弦」という言葉は弓と臍の緒から成り立つもの、つまり弦を意味すると理解されます。 隷書への変更後、楷書では「弦」と表記される。 慣用句に慣用句に『箭在弦上,不得不发』という言葉があり、ここで「弦」とは弓の弦のことで、自分ではどうしようもない状況にあることを指します。
弦・小篆
弦・楷書
弓+玄
  


    


「弦」の漢字データ


漢字の読み
  • 音読み   ゲン
  • 訓読み   つる
 意味 
  • 弓の弦
  •  
  • 月の満ち欠けを表現する。・・上弦、下弦
  •  
  • 楽器に張る糸。(バイオリンやチェロ等の弓に張る糸のこと
     「弦」は「つる」と読みます。「つる」と読まれる理由は、古代日本で弓を作るために使われた植物の一つに「蔓科」の植物があり、その「つる」が弦を作るのに適していたことから、弦を表す漢字に「つる」の字が使われるようになったためと言われている。

同じ部首を持つ漢字     玄、玄人、率、眩、呟
漢字「弦」を持つ熟語    上弦、鳴弦、正弦、弦楽

漢字「弦」の解釈

引用:「汉字密码」(P570、唐汉著,学林出版社)

唐漢氏の解釈


 「弦 Xian」は、会意文字である。弓の後ろの両端の間に張られたロープを指し、矢を放つために使用されます。 小篆は左が「弓」、右が「玄」の文字。 玄はへその緒に似ていて、絹の縄にも似ています。 へその緒はある程度の柔軟性を持った物理的な組織で、弓の弦は主に牛スジと絹の縄でできているため、「弦」という言葉は弓と臍の緒、つまり弦を意味することから理解されます。 隷書への変更後、楷書では「弦」と表記される。
 

漢字「弦」の字統(P269)の解釈

「弦」 形声文字。 声符は弦。 説文に「弓弦なり」とし、玄は発声(音)を表す記号と考えてよい。


「弦」に関する諺

 「弦」に関する諺としては、「弦を引けば音が出る」があります。これは、琴やギターなどの楽器に弦を張って弾くことで音が出るように、努力をすれば結果が出るという意味で使われます。 また、「弦が切れるほど引き締める」という表現もあり、物事に取り組む際には適度な緊張感を持つことが大切であるという意味が込められています。
最後に「弦」が取り入れられた諺を後学の為紹介しておきます。

  1. 弦外之音
    「弦外」は弦の外側を意味し、「之音」は音を指します。この成語は、本来の話題や本題から外れた意見や話をすることを指して使われます。つまり、本題から逸れた話や意見を述べることを批判的に表現する際に使われます。
     最近テレビやメディアで特に耳障りなのが、この音です。芸人上がりのコメンテーターがべらべらと愚にもつかないことをまことしやかにしゃべるのを見るのは反吐が出ますね。

  2. 弦を切る(つるをきる)
    この表現は、困難や苦境に直面して諦めることを指します。弦が切れて楽器が演奏できなくなるように、何かの原因で行動や努力が中断されることを意味します。

  3. 弦高を上げる(げんだかをあげる)

    「弦高」は楽器の弦の高さの調整を指し、この表現は困難な課題や問題に取り組む意欲や能力を高めることを指します。困難な状況に立ち向かい、自身の能力や努力をさらに高めて乗り越えることを表現しています。

  4.   
  5. 韋弦の佩(いげんのはい)
    自分の性格の悪い点を改めるために常に努力することのたとえ。
     「韋」はなめし皮。「弦」は弓のつる。「佩」は身につけるという意味。
     中国の春秋戦国時代の武将が、自らの性格を直すため、なめし皮や弓の弦を身につけ、いましめとした故事から出た言葉

これらの諺や成語は、「弦」の持つイメージや音楽的な意味合いを通じて、さまざまなメタファーを表現しています。


弦の素材についての豆知識


弦楽器の弓の弦の素材についての豆知識


     
  • 弦楽器の弓の毛は、馬のしっぽの毛が最も一般的です。馬の毛は、柔らかく、弾力性があり、摩擦力が高いため、弦楽器の音を出すのに最適な素材です。また、馬の毛は、比較的手に入りやすく、価格も安価なため、弦楽器の弓の毛としては最もポピュラーな素材です。

  •     
  • 他にも、ウシやシカなどの動物の毛、クジラのひげ、合成繊維などを弓の毛に使用することもできます。しかし、これらの素材は、馬の毛ほど音質や弾力性に優れていないため、一般的には使用されません。

  •  弦楽器の弦は、主にガット、ナイロン、鋼線、金属線などを使用しています。ガットは、牛や羊などの動物の腸から作られた素材で、柔らかく、温かみのある音色が特徴です。ナイロンは、化学繊維で、ガットよりも耐久性があり、メンテナンスが簡単です。鋼線は、金属で、ガットやナイロンよりも明るく、力強い音色が特徴です。金属線は、鋼線よりも高価ですが、最も明るく、力強い音色が特徴です。

武器の弓の弦の素材についての豆知識

中国の古代の弓の弦の素材についての豆知識
    古代中国の弓の弦の素材は、主に麻、絹、獣皮などでした。

  • 麻は、古代中国で最も一般的に使用された弓の弦の素材でした。麻は、強度と弾性に優れていました。また、麻は比較的安価で、入手しやすい素材でした。


  • 絹は、より高価な素材で、より滑らかで静かな音を奏でました。絹は、通常、戦場以外で使用される弓に使用されました。

  • 獣皮
     獣皮は、最も強度の高い素材で、特に戦場で使用されました。獣皮の弦は、通常、1本の獣皮を長方形に切り抜いて作られました。獣皮の弦は、非常に強力で、耐久性に優れていました。


  •  漆は、古代中国の弓の弦に使用された最も一般的な塗料でした。漆は、弦を保護し、腐食を防ぐのに役立ちました。また、漆は弦に滑らかで静かな音を与えました。

日本の古代の弓の弦の素材についての豆知識
    古代日本の弓の弦の素材は、主に麻や苧(からむし)が用いられていました。

  •      麻は丈夫でしなやかで優れた素材でした

  •    

  • 苧は強度と弾性に優れているため、弓の弦に適した素材です。

  •    
  • 牛や馬の腱
         また、古代日本では、弓の弦に牛や馬の腱を用いることもあったようです。

  •    
  • 現代
    現代では、弓の弦に化学繊維が用いられています。化学繊維は、麻や苧よりも丈夫で、伸びが少ないため、より精密な射撃が可能となります。
     弓の弦は、弓の性能を大きく左右する重要な要素です。古代日本では、弓の弦に様々な素材が用いられていましたが、現代では化学繊維が主流となっています。

月の満ち欠けの「弦」

    月の満ち欠けは、月が地球の周りを公転する際に太陽の光が反射して見える部分が変化する現象です。
     月は約29.5日かかって新月から新月までの周期を一巡します。

    月の満ち欠けは主に次のような4つの段階に分かれます。
  • 新月(しんげつ):太陽、地球、月の順に一直線に並んだ状態で、月の表面が太陽に直接照らされることがなく、見えなくなります。

  •      
  • 上弦の月(じょうげんのつき):太陽、地球、月の順に一直線になり、月の右半分が太陽の光で照らされ、左半分が暗くなります。右半分の月が「D」の字のように見えることから、「第一四半期」とも呼ばれます。

  •      
  • 満月(まんげつ):太陽、地球、月の順に一直線に並び、月の表面が太陽の光で完全に照らされます。この時、月の表面のほとんどが見えるため、満月と呼ばれます。

  •  
  • 下弦の月(かげんのつき):太陽、地球、月の順に一直線になり、月の左半分が太陽の光で照らされ、右半分が暗くなります。左半分の月が「C」の字のように見えることから、「第三四半期」とも呼ばれます。

  •  

     このサイクルは繰り返され、新月から次の新月までの期間を1ヶ月とします。ただし、地球の公転速度が一定ではないため、月の満ち欠けの周期は約29.5日となります。
      この月の満ち欠けに基づき作られた暦を陰暦と呼び、可視的で直感的なため、日本では江戸時代までは、この陰暦が長い間採用されていました。また、地球上の観測者の位置や時間帯によっても見え方が異なる場合があります。
    なお、月の満ち欠けは潮汐(ちょうせき)にも関連しており、満潮と干潮のタイミングに影響を与えます。

   


まとめ

弦(げん)は、漢字の1つで、音を出すための細いひもを表します。由来は、古代中国で弓矢に使われていた細いひもから来ています。弦は、楽器や弓矢、また物事をつなぐものなど、さまざまな場面で使われます。

 弦の使い方には、次のようなものがあります。
  1. 楽器の弦:弦楽器の音を出すための細いひも。
  2. 弓矢の弦:弓矢に張られた細いひも。
  3. 物事をつなぐもの:物事をつなぐための細いひも。
  4. 物事を支えるもの:物事を支えるための細いひも。
  5. 物事を切断するもの:物事を切断するための細いひも。
  6. 弦は、音を出すための細いひもを表す漢字です。

由来は、古代中国で弓矢に使われていた細いひもから来ています。弦は、楽器や弓矢、また物事をつなぐものなど、さまざまな場面で使われます。    


「漢字考古学の道」のホームページに戻ります。   

2021年5月5日水曜日

漢字・明の成り立ちから、明らかになったもの。 また一つ謎が明かされる!


漢字「明」の成り立ちから、何が明らかになって、明らかでないものは、いつ明らかになるのか
漢字「明」・楷書
漢代の明堂
「字統」より抜粋
 漢字「明」の楷書で、常用漢字です。左は月明かりを取り入れるための窓だという。また右の記号は「月」だという。静かな夜、窓から差し込む月明り。その光景を思い浮かべただけで、なんとロマンチックで情緒的なんだろうとため息がでる。

 漢字「明」の成り立ちから、何が明示され、明らかでないものは、いつ明らかになるのか?
 漢字探索の旅は続きます。人間の限りない「文明の探索のロマンといえましょう。

 漢字「明」は、「日」+「月」と直感的に考えられてきました。今までいろいろの漢字を見てきたが、このような情緒に溢れた漢字は見たことがない、この漢字は、他の生活臭のふんぷんとするものと一線を画するような気がしている。
 このような月明かりがある建物は、それこそ竪穴式所住居というわけではなく、掘っ立て小屋では話になるまい。この字が生まれる背景は、相当に生活が豊かになって(上流階級だけかも知れないが)、庶民の生活とは切り離された生活が出現したのであろう。したがって月を愛でるような風流なことが赦される生活がそこにあると考える。この生活の変化はどこから来たのだろう。興味は尽きない。



  
明・甲骨文字
窓から冴えわたる月が煌々と差し込むさまを示す
「明」・金文
甲骨文字をそのまま引き継いだ漢字
明・小篆
字の構造は甲骨・金文と何ら変わっていない。窓が明示され、字の意図を明確にした


    


「明」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ミン  メイ ミョウ
  • 訓読み   あか(るい) あき(らか) あ(かす) あ(ける)

意味
  • 光があり、眼に良く見える
  • 明確である、はっきりしている
  • 名詞 光 
  • 明確になっていない・隠された・秘密になっていた事柄を秘密ではなくなる状態にする
  • 翌、次の

使い方
  • 動詞    明確にする、はっきりさせる行為・動作
  • 形容詞・副詞   名詞や形容詞・動詞を修飾する 

熟語   明察、明快、明治、明示、明瞭




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「明」は甲骨文の「明」の字は左右が結びついた構造をしている。右辺は月である。まるで湾曲した形で、左辺は窓の象形のデッサンである。両形の会意で、月が窓から差し込んで明るいさまを描いている。


 

漢字「明」の字統の解釈
 会意文字:窓と月とに従う。窓から月光が入り込むの意。そこは神の祀るところであり、神明の意がある。
 《説文》に「照らすなり。月に従い、冏に従う」とし、また古文の一字を録し、明に作る。
 明は元々神明の意である。


まとめ
 「明」が窓+月の会意であるということは、まだ仮説の状態だ。しかし、現在では、傍証を積み重ね、考古学の知見から、仮説が限りなく真実に近い状態になっている。その中には漢字自体の発展を明らかにするだけではなく、人々の生活や習俗、宗教などがどう変わってきたかということも検証されなればならない。
 漢字の起源と由来を求めることは、人間そのものをより正確にとらえるという意味で非常に大切なことと感じている。




漢字「明」を含む故事、成語、ことわざ ☜ については、こちらが詳しいです

「漢字の起源と成り立ち 『甲骨文字の秘密』」のホームページに戻ります。

2021年1月18日月曜日

漢字「間」の由来:古代の「間」の字は「門」の中に月であった。門の中に月(肉を意味する)を置いて祈祷した名残りだろう


漢字「間」の由来:古代の「間」の字は「門」の中に月であった。門の中に月(肉を意味する)を置いて祈祷した名残りだろう

引用:「汉字密码」(P261、唐汉著,学林出版社)
 间は間の簡体字であり、会意文字である。金文の間の月が門の上にあり下は門である。月光が2枚の開き扉の間から差し込んできている様を表示している。本義は隙間ということだ。小篆は将に月が門の上から、中に移っている。楷書では簡単化の過程でJianと読み、间と書く。説文は解釈して隙なりとする。





漢字「間」の字統の解釈
 正字は門構えに月に作り、門と月に従う。「説文」に「隙なり。門と月に従う」とする。この字(古文)は仆に従う形で、卜の字形を含んでいる。この古文の字は、門中に肉をおいて祀り、安静を祈願するいみ。

ただし何れの解釈でも、月が日にどうして変わったのかの説明に乏しい。


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