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2021年5月8日土曜日

漢字「川」の成り立ちの意味するもの:屹立した両岸に挟まれてできた「川」の中を流れるのが「水」だった


漢字「川」の成り立ちの意味するもの:屹立した両岸の間に挟まれてできた「川」の中を流れるのが「水」だった
甲骨文字「川」と「水」に垣間見える古代人の驚くべき認識論。漢字「川」とは屹立した両岸の間に挟まれてできた「川」。その中を流れるのが「水」だった。こんな単純なことが、私には見えていなかった

漢字「川」と「水」を見ると、現代の字を見ていると全く両者には関連はないように思えます。

 しかしこれらの甲骨文字を比べてみると古代人の驚くべき発想が浮かび上がってきます。字から見ると、「水」があって「川」が生まれたのではなく、まず川という字が生まれ、後で水ができたのではないかと想像されるのです。

 古代人は水のような抽象的な概念が最初に頭に浮かんだのではなく、水をたたえた川を見て川という字を作ったに違いありません。

 しかしこれは仮説です。ここでは、甲骨文字から古代人の豊かな発想を跡付けて見ましょう。
川・楷書水・楷書




川・甲骨文字
「川」の中に「水」が見える
(流れている)
「川」・金文
文字としてより簡単に記号化されている
文字の発展過程が良く分かる
川・小篆
金文を引き継ぎ、より美しく
洗練され整えられている。
水・甲骨文字
「川」の甲骨文字と比べれば、水は「川」の中に存在し、流れていることが明瞭
 


    


「川」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   セン
  • 訓読み   かわ

意味
  • かわ(陸上の屹立した部分に挟まれ流れ下る水の通り道)    例:河川
  • 水流(水が流れること。また、その流れ。
  • 原(はら)  水の流れで土砂などが堆積して出来た平らな部分

漢字の構成要素
  • 馴、釧 (例)釧路、訓 (例)訓練 、順 (例)順序

熟語   川流、川原(かわら)、川端(かわばた)、川面(かわも)、四川(中国の省の名前)




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「川」の字は水の字形の音義と密接な関係がある。甲骨文字の川の字は川と「水」は同じ源であるが、但し川の字の造形は水とは相反している。流れははっきりしなくなり、両側に突出して、まるで両側が水を挟んだ状態・意味の様である。川の本義は水の道、河流と見える。
 
 この唐漢氏の考え方には同意できない。つまりこの説は、氏が常々主張している発想と逆ではないかと考える。古代人はまず具体的なものから、次第に抽象化する概念を生み出してきたのであって、先に抽象的な、形を持たない「水」があったのではないと思えるからだ。
 

漢字「川」の字統の解釈
象形: 水の流れる形とし、実に単純明快である。


まとめ
 甲骨文字「川」と「水」を比べて見て、初めてそこに認識の発展の具体的な道筋が見えたようで、私にとっては実に大きな発見であった。



「漢字の起源と成り立ち 『甲骨文字の秘密』」のホームページに戻ります。

2021年5月7日金曜日

漢字「水」の由来は「流れる水」だ。昨今、問題の「汚染水」と「処理水」とはどう違うのか


漢字「水」の成り立ちと由来の意味するもの:漢字「水」は水の流れの形に象る。
 最近、貯まった水を処理するのに単なる希釈をして「汚染水」を「処理水」と呼んで放流しようという動きがある。基本的になこととして、水で希釈しただけのものは、処理とは呼べないのが、水質保全の常識なのだ。

 漢字「水」の楷書で、常用漢字です。漢字の発達から我々の人間の認識は、最初には、「水」という認識はなかったのではと思われます。
 つまり、太古の先民は、水というような形のないものはどのように見たらいいのか分からなかったのではないでしょうか。

 太古の先民たちは「水」を「川」と捉えていたような節があります。目に見える川や山の具体的な形象のみを認識していたのではないかと思うのです。

 つまり、冷たい、形のない色のない物質が流れている「川」を「水」と認識していたのではないでしょうか。

水・楷書




  
「水」・甲骨文字「水」・金文
水・小篆
  


    


「水」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   スイ
  • 訓読み   みず

意味
  • 物質の性質 ・・・水銀、
  • 液体としての意味  生き物が生きていく上で必要な液体の意味
  • 水場・・・水のある場所としての意味   水辺などの水のある場所を表す
  • 置かれた状態  吃水、溢水、水位
  • 一時中断させる意味    相撲で4分以上勝負がつかない時や、行事や審判が続行しない方が良いと判断した時に使われる「水入り」は中断するという意味で使われます。
  • 邪魔をする意味   水を差す

熟語
  • 水の性質  塩水、熱水、汚染水(何かで汚染された水 水質に関わる言葉)
  • 水の処理   処理水(処理した工程に関わる言葉・・水質には言及していない)
      冷却水(冷却した水、冷却のための水)
  • 水の管理   治水、防水

部首 サンズイ等水に関係する漢字: 海、永、漢、㲹、氷、江、河、汁、汚、染、沈、溝、潮、汐、汌   




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「水」は甲骨文字の中で、非常に優美な字形を持っています。それがまるで一条の流れる河流のが曲がりくねっているようです。「水」の字を見るに、河水に浮かぶ波しぶきが流れ動く形状を見るようです。

 甲骨文の水の字は外側は点線で、中側は実線を用いていて、流水からくる形状の様です。「説文」では多くの水が集まって中にいるかのように見えます。小篆は甲骨文と同じく、水の字の造形で、両側の岸と縁の緩慢な流れ、突出した中間の急流を示しています。水の字の強調しているのは川の中のものです。

 古文の典籍の中、水は通常河流を指します。淮河が淮水と称するが如くです。
 中国の古代には大禹治水という伝説があります。ここでの「水」は水難・洪水を指すのであり、また河流も示します。

 

漢字「水」の字統の解釈
 象形:水の流れる形に象る。「説文」に「準(たいら)かなるなり。」と水準の義とするのは、古くその音が近かったであろう」 

 ここでも、水を物質そのものではなく、その流れる様というある種の形象を文字にしている。


まとめ
 地球の水は、太陽系が生まれたときに由来します。それは今から45億年も前に太陽系の誕生の時になります。いま水をめぐって様々な、芳しくないことが起こっていますが、このような事象は、今から100年前にはなかったことですから、地球誕生以来45億年という途方もない時間を、人類はたった100年で使い物にならなくしようとしています。


「漢字の起源と成り立ち 『甲骨文字の秘密』」のホームページに戻ります。

2012年3月4日日曜日

「氏」 文化・社会のもう一つの原点はここにあり

 長い間、人間の社会の根幹の部分を作り上げてきた、姓名。これは現在の日本、中国では家族を表す指標であり、韓国においては広義の血族関係を表す本貫である。これは東洋に留まらず西洋でもFamily Nameという呼称でこの関係があらわされる。これは人類共通の歴史的過程を経てきたことからこのような結果を生んでいるといえる。この共通の過程とはなにか?それは「氏姓制度」である。穴居生活からやがて家族が生まれ、私有財産が蓄積され、村落・部族を形成する過程こそ人類共通の歴史的過程である。
 さてこの姓と氏という漢字の由来について、日本の白川博士と我が唐漢氏の間では天と地の開きがある解釈を展開されている。
 勿論ここでは常々言っているように、どちらが正しいということを解明しようとする立場に立つものではない。両方とも正しいかも知れぬが、それを認めなければならないのも人文科学の宿命かもしれない。
 
「姓」と「氏」はこれまでの社会の成り立ちの根源
 唐漢氏は言う。「氏」は指示造語である。表意の漢字の仮借である。甲骨文字の「氏」の上部は最も簡単な「水」を表す記号から四点を省いた記号、下部は一本の長い縦の指示符号で、水面から水底までの意味であると唐漢氏はいう。金文の「氏」は甲骨文字を受け継いでいるが、美観なものになっている。下部の長い縦棒には一個の丸い点が付け加えられている。小篆はこの点が横に長く変化し、文字構造上の形の均整がとられている。
  要は唐漢氏は「氏」の本義は水の水面から水底までを示す漢字だというのである。



  「氏」は古代社会では本来宗族的称号であった。すなわち同一の血源の出生の繁衍の子孫を表す。即ち姓あれば氏ありで、また姓の区別あれば族号である。氏は姓の分支である。乃至同一家族から出たものは次は一級分枝の称号である。
  姓は不変であるが、氏は変えることは可能だ。即ち同一血源からは同一姓で、その分支としての「氏」が存在する。
  即ち古代中国では、氏は官位、住所、その他社会的位置づけによって名づけられる(変えることが出来る)ものという。しかし「姓」は同じ血縁から出たものは同じ「姓」を引き継ぐものだという。
 上古社会では「姓」は女性の祖先に遡り、「氏」は男系の子孫の承継である。これは、女性が女性を生むと明確に母親、祖母、祖祖母という血縁の接続を知ることが出来たが、男の場合はただ下に向かってのみ追跡でき、ただ自分の子、孫が誰であるか知るのが出来るだけである。これが姓と氏の本質的違いであるという。