2021年4月12日月曜日

漢字「宣」の由来の意味するもの:緊急事態宣言の「宣」の持つ何かおどろおどろしい雰囲気はどこから来るのか


漢字「宣」の成り立ちの意味するもの:緊急事態宣言の「宣」の持つ何かおどろおどろしい雰囲気はどこから来るのか
 漢字「宣」の持つ重々しい雰囲気、何かおどろおどろしい漢字はいったいなぜと考えていたが、ここにようやく謎が解けた漢字がする。つまり「宣」の由来は、獄舎を表す漢字だったからである。この漢字の建屋のなかで、殷の紂王が殺されたり、孝文帝が此処に繋がれたりし、またおそらく古くから軍事や獄訴訟のことが行われるところで、そこで発せられるものが宣言であったりしたことからくる背景を帯びているからであろう。

 この記事は、以前に上載した記事に全面的に加筆を加え、再録したものです。


漢字「宣」の楷書で、常用漢字です。最近「緊急事態宣言」というある種の重々しい響きをもった言葉がよく聞こえてくるようになった。
 ではこの宣言の「宣」という言葉のもと重々しさはどこから来るのか漢字「宣」の成り立ちと由来から探ってみよう。
宣・楷書




  
「宀」_甲骨文字
屋根や家屋。建屋を表す
「亘」・甲骨文字
建屋の内部構造で、複雑な部屋の構造渦巻き状に多くの部屋が付けられた獄舎という
宣・小篆
以上2文字を比較的忠実に引き継ぎ、文字として整備されている


    


「宣」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   セン
  • 訓読み   の(べる) のたま(う)

意味
  • のべる。 あまねく、意向を分からせる。
  • のたまう    天子が意向を述べ知らせる。
  • あまねし  あきらか。 広く行き渡るさま。

使い方
  • あまねく、意向を分からせる。広く意向を知ってもらう・・宣伝
  • 態度や考えを広く表明する・・宣言

熟語   宣誓、宣言、宣告、街宣、宣戦、宣布、託宣




引用:「汉字密码」(P720、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 "宣xuan " は、これは会意文字だ。甲骨文の "宣 " 字は、上部は家屋の外形"∩ "を表し、内部は回転を示す記号である。二つの形の会意で、人に屋内走り回らせるほどの大きい部屋と認められる。
 金文の "宣 "の外枠は、甲文と似ているが、中は回転の記号が美観上対称になっているだけだ。大いに巻いている様子と、その下はまた一つの点が加わり、家室前の足場も示しているようだ。またここから入っていく意味を表している可能性もある。
 小篆の "宣"の文字はこれから来て、楷書それ故に"宣 "と書く 。

 《淮南子・本経訓》に記載する "武王は武装した兵士三千を率いて、纣王を野に破り、宣室でこれを殺した。"ここの "宣室"、は纣王が居住する宫室の意味である。宣の "大きい家"の意味から、また引き出されて "大げさである"の義も出てくる。
 

漢字「宣」の字統の解釈
会意文字:「宀」と「亘」に従う。宀は廟屋、亘は半円形のものをいうことが多く、、亘の形が渦巻状で示されているおのは、その内部構造を示すものとみられる。

 唐漢氏が《淮南子・本経訓》の記述を引いて、この「宣」室が、殷の紂王の居室であったとするが、白川博士は宣室は、裁判や獄治に関する施設であっただろうと考えている。つまり獄舎ではないかと考えているようだ。

 私もいくら中央を捉えて殺すにしても、居室では殺さないと思う。やはり公の場所で殺すと考える方が理にかなっていると思う。


まとめ
 会意文字であることには異存はないようだが、漢字「宣」を周りを垣根を巡らせた宮殿とか、走り回れるほどの大きな屋舎とかといった解釈もあるが、白川博士も言うように、獄舎として使い方の例も多く、最も合理的と考える。


参考文献:「宣」 漢字の起源と由来
「漢字の起源と成り立ち 『甲骨文字の秘密』」のホームページに戻ります。

2021年4月11日日曜日

漢字の成り立ちと由来:漢字「延」 延々と続くまん延防止措置の期間は何時まで延びるのか


漢字の成り立ちと由来:漢字「延」 延延と続くまん延防止措置の期間は何時まで延びるのか
 緊急事態宣言の発令中、具体的な措置が何もなされないまま、解除され、案の定コロナは急拡大、政府は病気の蔓延は政治の問題ではないとどこ吹く風の雰囲気。次にはまん延防止措置の発令をする。これもまた自助が基本にあるだけに、「お願い」の声掛け、そしてやることは見回り隊など監視の強化。
 このままでは、政府は国民を監視することに満を持して待っていたとしか思われない。国民はあきらめと怒りしか残らない。
 このまん延防止措置期間は何時まで延びるのか。期限は一応切られてはいるが、実質的にまん延を防止できる時期は、何時まで延びるのか見通しは立たない。オリンピックの再延長はできない。ワクチン以外にほかに有効な手立ては打てないのか。
漢字「延」の楷書で、常用漢字です。左側は、「廴」で、白川博士によると「廷・建」にあるように儀礼の場所をいう。甲骨文字では、ギョウニンベンのように読め、行進、行くことを意味したものと思われます。右側は「止」の字のようだったようで、歩くという意味を持っています。
 両者の会意で、長く歩くことの意味であったようです。
即・楷書




  
甲骨文字「廴」
墓所に通じる道を表したもの
「止」・甲骨文字 原義は「足」を表し
歩くことの意味に拡張された
「延」・小篆
以上2文字の会意で、長く歩く、長い距離を行進するの意


    


「延」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   エン
  • 訓読み   の(びる) の(ばす)

意味
  • のびる。のばす。引きのばす。ながくなる。おくれる。
  • ひろがる。
  • ひく。ひき入れる。まねく。
  • のべ: 延べ人数


使い方
  • 声符
  • 構成要素  筵、䘰、涎、鋋、誕

熟語   延期、延伸、延滞、延着、延長、延命、遅延、蔓延 




引用:「汉字密码」(P400、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「延」は会意文字です。左側は道路の意味で「ギョウニンベン」で、右辺は前進を意味する記号です。両者の会意で歩いて前進することです。
金文は甲骨を引き継ぎ、構造は同じです。小篆は変化の過程で分化し「処」と延の2字に分化しました。その中の延の中の「止まる」が増加し、正の字になりました。歩いていく行程が長いことを示しています



漢字「延」の漢字源の解釈
会意文字:「止(あし)+廴(ひく)+ノ印(のばす)」で、長く引き伸ばして進むこと。「筵」(長く延ばすむしろ)などと同系


まとめ
 甲骨文字まで遡ってみると、現在使われている字形からは想像も出来ないことが浮かび上がってきます。文字に秘められた、コンセプトが時代とともに移り変わり、発展していくことに興味は尽きません。

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