2018年2月10日土曜日

漢字「笑」の成立ち:竹かんむり(竹の鞭)に犬である。

漢字「笑」の起源と由来
「字統」では、巫女が手を上げ首を傾げて、舞い踊る様と説明している。
「漢字源」では、会意文字で、竹+夭(細い)で細い竹のこと。
唐漢氏は犬に竹ムチ打った時、犬が歯をむき出して唸るとしている。ここから笑いが出てくるのか少し変。
三者三様、どれがもっともらしいのっだろうか?

引用:「汉字密码」(P38、唐汉著,学林出版社)

色々の古文書の中の「笑」
 「笑」は笑は考古の出土から出る字は、「竹かんむりに犬」である。説文では、「竹に犬」と説明し、解釈して「喜び也。竹と犬からなる。」

 しかし後世の人が、これは解釈できないとして、竹かんむりに「夭」としたものだが、それを都合よく踏襲して今日に至っている。文字学としては、このような勝手気ままな改竄は受け入れられていない。事実考古出土の文字を見てみると笑の字は確実に竹と犬からなっている。

 かつて宋の時代、王安石は「字説」の中で、竹で犬を鞭して笑うとして、笑の字の源を解釈している。これに対し、苏东坡の「竹で馬を鞭すれば「篤」となるのか、竹で犬を鞭すればどうして笑いになるのか分からないという揶揄に会っている。しかし、王安石の解釈は漢字を要素に分解して解釈するときに、少し適用に勇み足があったものからくるのかも知れない。

 犬を鞭打てば、犬は硬く尾っぽを挟み、体を曲げ、歯をむき出し、威嚇の表情を示し、うなり声を上げる。
 人は大笑いする時は口を大きく開け、犬と同様に犬歯をむき出す。人は大笑いする時、体を曲げ、「ハハハ」の大きな声を出す。このことは犬に鞭打つ時と同じ様である。古人の生活観察の細かいことが逆に分かってしまう。

 古人の笑い声の中に純真さと痛快さがあり、彼らはその笑の中に偽善と抑圧の混ざるに至るまで成長して(掏れて)いない。古代の祖先たちは腹を抱えて腰を曲げて大笑いする除いては、・・後世の子孫たちが微かに歯を見せ、顔の一部を動かすのを笑いといっている・・「笑」を知らない。

 この説明には多少の無理があるように思うが、「竹に夭」より未だわかりやすいと思う。


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2018年2月1日木曜日

漢字「奴」の成立ちを探る:女偏と旁は「手」の意

漢字「奴」の起源と由来
太古の女性は種族の由来を示すアイデンティティーな存在
 漢字もまだ出来ていなかった太古の中国では、人々は狩猟生活をしていたであろう。生産性も低かったため、その日の生命を維持するのがやっとであったろう。この時代は女性はおのずと種族の由来を示す明示的な存在として、重要視されていたであろう。

女性の地位の変化
 しかし農業が発達し、生産力が向上し、氏族制社会になると人口も増え、種族も由来を明示的に示す必要がなくなってきた。より多くの生産力を求め、部族間の抗争を繰り返すようになり、貧富の差や階級の差が生じてきた。こうして社会が次第に父系制に移行するようになると女性の苦難の時代が始まる。
 戦利品としての捕虜を確保するということには生産力を確保するという以外、もう一つ重要な意味があったろうと思う。それは氏族社会の中で血が濃くなることを防ぐということではなかったろうか。とりわけ女の捕虜は男の性的な満足だけではなく、外部の血を導入するという重要な役割を担っていたはずである。


引用:「汉字密码」(P559、唐汉著,学林出版社)

漢字「奴」の成り立ち
 「奴」これは会意文字である。甲骨、金文と小篆の「奴」の文字は、女偏でもう一遍は又である。又はもともと「手」であり、ここでは捕虜を示している。全部で字の形は、捕虜になった或いは略奪された女性を意味している。
 奴隷時代、むろん戦争中の女性の捕虜、或いは罪を負った家の女性は落ちぶれて奴隷となってこき使われるのが彼らの命運であった。この為「奴」の字は「手」と「女」から来ているのは彼らの用途を表している。

「奴」の字の本義は奴撲、奴婢
 「奴」の字の本義は奴撲、奴婢である。古代奴隷制の時代は従順でない男性捕虜や犯罪者は常々脳みそを削られたり、女性は柔弱に飼いならされたり、生殖器の価値もって、奴隷に落ちぶれたものが多くいた。だから「奴」は女偏で作られている。
 しかし、階級分化が進むにつれ、一部の人は奴役ともう一部の人に分かれる現象が普遍的となった。

「奴」は社会的身分を表す言葉になった
「奴」はまた労働をする奴隷を指すことが当たり前になった。陸遊の《年暮感懐》の詩にあるように「富豪千の奴隷を使い、貧老は僅かな慰みもない」。又史記の季布列伝では、布は略奪され売られ、燕の奴隷となった。季布は男性で、捉えられ売られて奴隷になったという命運である。
 奴隷の身分は低く、だから「奴」の字は、低い階級の男女の謙称として拡張された。「奴家」の言葉の如く、古代婦女の謙称であった。「奴」の字はまた他人に対する蔑称、軽蔑にも用いられた。「奴才、奴輩、守銭度」」などである。


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