2018年2月1日木曜日

漢字「奴」の成立ちを探る:女偏と旁は「手」の意

漢字「奴」の起源と由来
太古の女性は種族の由来を示すアイデンティティーな存在
 漢字もまだ出来ていなかった太古の中国では、人々は狩猟生活をしていたであろう。生産性も低かったため、その日の生命を維持するのがやっとであったろう。この時代は女性はおのずと種族の由来を示す明示的な存在として、重要視されていたであろう。

女性の地位の変化
 しかし農業が発達し、生産力が向上し、氏族制社会になると人口も増え、種族も由来を明示的に示す必要がなくなってきた。より多くの生産力を求め、部族間の抗争を繰り返すようになり、貧富の差や階級の差が生じてきた。こうして社会が次第に父系制に移行するようになると女性の苦難の時代が始まる。
 戦利品としての捕虜を確保するということには生産力を確保するという以外、もう一つ重要な意味があったろうと思う。それは氏族社会の中で血が濃くなることを防ぐということではなかったろうか。とりわけ女の捕虜は男の性的な満足だけではなく、外部の血を導入するという重要な役割を担っていたはずである。


引用:「汉字密码」(P559、唐汉著,学林出版社)

漢字「奴」の成り立ち
 「奴」これは会意文字である。甲骨、金文と小篆の「奴」の文字は、女偏でもう一遍は又である。又はもともと「手」であり、ここでは捕虜を示している。全部で字の形は、捕虜になった或いは略奪された女性を意味している。
 奴隷時代、むろん戦争中の女性の捕虜、或いは罪を負った家の女性は落ちぶれて奴隷となってこき使われるのが彼らの命運であった。この為「奴」の字は「手」と「女」から来ているのは彼らの用途を表している。

「奴」の字の本義は奴撲、奴婢
 「奴」の字の本義は奴撲、奴婢である。古代奴隷制の時代は従順でない男性捕虜や犯罪者は常々脳みそを削られたり、女性は柔弱に飼いならされたり、生殖器の価値もって、奴隷に落ちぶれたものが多くいた。だから「奴」は女偏で作られている。
 しかし、階級分化が進むにつれ、一部の人は奴役ともう一部の人に分かれる現象が普遍的となった。

「奴」は社会的身分を表す言葉になった
「奴」はまた労働をする奴隷を指すことが当たり前になった。陸遊の《年暮感懐》の詩にあるように「富豪千の奴隷を使い、貧老は僅かな慰みもない」。又史記の季布列伝では、布は略奪され売られ、燕の奴隷となった。季布は男性で、捉えられ売られて奴隷になったという命運である。
 奴隷の身分は低く、だから「奴」の字は、低い階級の男女の謙称として拡張された。「奴家」の言葉の如く、古代婦女の謙称であった。「奴」の字はまた他人に対する蔑称、軽蔑にも用いられた。「奴才、奴輩、守銭度」」などである。


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2018年1月25日木曜日

漢字「梅」の成立ち:木偏と母親を示す『毎』


漢字「梅」の起源と由来

引用:「汉字密码」(P155、唐汉著,学林出版社)

「梅」の字の成り立ち」
梅は形声字で木偏と「毎」からなっている。「毎」は象形文字で本義は氏族社会の中で、子供を最も多く育てた母親のことである。《詩経》では「原田毎毎」という表現で、田畑の植物がよく茂り繁殖していることを形容している。従って、梅がなぜ梅と書かれるようになったかの原因を知ることは難しいことではない。



古人は梅を如何に考えたか
 梅が実をつける時、必ず枝枝全てに累々と実をつけている。このほか、女性が妊娠した時酸っぱいものを食べたい時、いつも梅の果実を口の中に入れているのは中国の妊婦の習慣の一つである。古人も認めるように梅は女性が妊娠した時の生理反応を助け、胎児を平安に発育させることが出来る。この為人々は梅を一種のめでたい樹木と考えた。

「梅」の効用
 酢がなかったころ、古人は梅を使って生臭さを消した。《礼記・内則》にある「酵素を用いて和え、肉は梅を用いる」動物の肉を煮て食うとき、必ず梅のみを生臭さを消す調味料として使った。羹を和える時、塩梅を用いる。梅醤油を作る時、古人はこれを「酢」と云ったが、今の人はこれを酸梅汁と称する。


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