2012年7月2日月曜日

実は中国の古代人も右利きだった


現代人からの推量

現代人の非常に多くの部分は右利きである。子供のころに左利きだったのに、親に無理やり矯正させられた経験を持つ方もあるだろう。
現代人に右利きの人が多いということは、古代人もやはり右利きが多かったではないだろうかと考えていた。その根拠は、若し昔左利きが多かったとすれば、左利きを右利きにするための何らかのかなり大きな変化がなければならないが、そういう要因はあまり考えられないということ。
ある統計でも日本人の約88%、香港の約90%、スウェーデンの約94%、トンガの約91%など、圧倒的に右利きが多いという結果が出ているということだ。

体の左にある心臓を守るには左手を空にしておくことが不可欠 

 もう一つの根拠は、人間の心臓は左にあり、若し何らかの事情で心臓に直接的危害が加わる恐れのある時、とっさに心臓をかばう為には、常に左手は空けておかねばならないということだ。これは、人類普遍のことであり、日本人だろうが、中国人だろうが、現代人だろうが、古代人だろうが、全く同じことであると考えるからである。

甲骨文字に「右」、「左」はどのように現れているか

甲骨文字の「右」
 さて、それが漢字に現れているのか、現れていないのかを見てみたい。甲骨文字の右という字は右の画像のとおりである。甲骨文字では、右手の象形文字になっている。では甲骨文字の左はどうなっているかというと、これまた左の画像の通り左手の象形文字である。

甲骨文字の「左」
 それならば、この右と左の手の形が甲骨文字の中でどのように現れているかである。まず手偏であるが、甲骨文字の段階で手偏が現れることは、まずないといっていい。次に左右の文字について、調べてみると、右の手では、針を持ったり、刀を持ったり、指で目を突っついたり、棒でたたいたりする動作の殆どは右手でなされていたことが分かった。では左手はどうかというと、「左」という字でも分かる通り、工具を支えたり、右手の動作を支えたりする事にしか使われていないことが分かった。この点については、「漢字源」でも、左には「そばから左手で支える意味を持つ」と書かれている。甲骨文字すべてについて見たわけではないので、もう少し深い研究が必要であるが、ざっと概観した限りでは、この観察結果に間違いはないように思う。

「漢字源」の中で、右はどう定義づけられているか

さらに、やはり「漢字源」の中で、「右」は以下の意味を持つとされている。
  1.  
  2. 右の方に行く
  3.  西    王宮は南向きに建てられたので、王座から見て右は西に当たるということで右=西となった。
  4. 上位 戦国時代は左はいやしく、右は尊いとされた

以上の考察から、古代においても、右利きが優勢を占めていたことは間違いがないと思われる。おそらく人数でも優位だったろう。
 

「右」という漢字の変遷と使われ方


因みに「右」の字についての解説を最後にしておく。参考にしたのはもちろん唐漢さんの「汉字密码」である。
右は甲骨文では完全に右手の正面の形状である。金文中の字形は変化して会意文字になっている。右下に一個の口が加わり、ご飯を食べようとする手を表している。楷書の「右」の字は書くのに便利なように、ちょうど鏡像の様に反転して、今日の右の字になっている。
「右」の本義は右手である。説文での解釈は「右、手と口が相助けるなり」としている。右手が飯を食べる時食べ物を口の中に運ぶのに効率よく、だから右の字は助けるの意味もある。『·襄公十年』では天子介るところ、独り者またこれを祐く。この句の中で「右」は即ち助けるの意味である。以降右のこの一つの意味から「佑」の字が出来た。
右は又方位を表す名詞である。左の反対だ。「孫氏の兵法」にある、「左に備え右を薄ということ、右に備えることは、左が薄いということ」 多くの人にとっては、右手は総じて左手に比べ器用である。だから古人もまた右を巧みで、より高く、成語でも「右に出るものなし」という言葉もできた。即ち優れたという意味である。 
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「苗」:漢字の起源と由来


 先日台風4号が来て、和歌山の田が水浸しになっていたのがニュースになっていた。レポーターが百姓さんに大丈夫ですかと聞いていたが、百姓さんは「未だ植えたばかりなんで大丈夫です」と答えていた。これが高知だったらもう第一期分は刈り取りの時期なので大きな被害があったに違いと思いながらみていた。

苗という字の語源と由来


「苗」という字は会意文字である。金文と小篆の字形は、等しく小さな草が萌え出て来て、田と組み合わせになっている。草かんむりと田が合わさって、田の中から成長してくる幼い苗が正に生え始めていることを表している。植物の成長の過程で漸く成長する時を「苗」という。開花時は「秀」といい、結果の時は「実」という。


論語で曰く「苗而不秀者,有矣夫!秀而不者,有矣夫! (苗而して花付けないものもおり、花咲いて実をつけないものもいる。)」これは孔子が彼の弟子顔回英が年若くして逝ったことを惜しんでいったことである。後に「苗而不秀」は成語になって、才能のある人が早く死ぬことを言う時に専ら用いられるようになった。


苗のいろいろな使い方

 拡張されて、「苗」の字は広く植物の株や動物がまだ初めの状態にあること指す。例えば、苗場、豆苗、苗、花苗、苗等である。また更に拡張され、事物が初めてその兆候を表すことを示すことを言う。(露頭)、火苗(火頭)等である。また特に疫苗を指し卡介苗(ワクチン)などという。この類の疫苗は人体に注入し、人体の免疫力を増加するためのものである。


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