現代人からの推量
現代人の非常に多くの部分は右利きである。子供のころに左利きだったのに、親に無理やり矯正させられた経験を持つ方もあるだろう。
現代人に右利きの人が多いということは、古代人もやはり右利きが多かったではないだろうかと考えていた。その根拠は、若し昔左利きが多かったとすれば、左利きを右利きにするための何らかのかなり大きな変化がなければならないが、そういう要因はあまり考えられないということ。
ある統計でも日本人の約88%、香港の約90%、スウェーデンの約94%、トンガの約91%など、圧倒的に右利きが多いという結果が出ているということだ。
ある統計でも日本人の約88%、香港の約90%、スウェーデンの約94%、トンガの約91%など、圧倒的に右利きが多いという結果が出ているということだ。
体の左にある心臓を守るには左手を空にしておくことが不可欠
もう一つの根拠は、人間の心臓は左にあり、若し何らかの事情で心臓に直接的危害が加わる恐れのある時、とっさに心臓をかばう為には、常に左手は空けておかねばならないということだ。これは、人類普遍のことであり、日本人だろうが、中国人だろうが、現代人だろうが、古代人だろうが、全く同じことであると考えるからである。
甲骨文字に「右」、「左」はどのように現れているか
甲骨文字の「右」 |
さて、それが漢字に現れているのか、現れていないのかを見てみたい。甲骨文字の右という字は右の画像のとおりである。甲骨文字では、右手の象形文字になっている。では甲骨文字の左はどうなっているかというと、これまた左の画像の通り左手の象形文字である。
甲骨文字の「左」 |
それならば、この右と左の手の形が甲骨文字の中でどのように現れているかである。まず手偏であるが、甲骨文字の段階で手偏が現れることは、まずないといっていい。次に左右の文字について、調べてみると、右の手では、針を持ったり、刀を持ったり、指で目を突っついたり、棒でたたいたりする動作の殆どは右手でなされていたことが分かった。では左手はどうかというと、「左」という字でも分かる通り、工具を支えたり、右手の動作を支えたりする事にしか使われていないことが分かった。この点については、「漢字源」でも、左には「そばから左手で支える意味を持つ」と書かれている。甲骨文字すべてについて見たわけではないので、もう少し深い研究が必要であるが、ざっと概観した限りでは、この観察結果に間違いはないように思う。
「漢字源」の中で、右はどう定義づけられているか
さらに、やはり「漢字源」の中で、「右」は以下の意味を持つとされている。
- 右
- 右の方に行く
- 西 王宮は南向きに建てられたので、王座から見て右は西に当たるということで右=西となった。
- 上位 戦国時代は左はいやしく、右は尊いとされた
以上の考察から、古代においても、右利きが優勢を占めていたことは間違いがないと思われる。おそらく人数でも優位だったろう。
「右」という漢字の変遷と使われ方
因みに「右」の字についての解説を最後にしておく。参考にしたのはもちろん唐漢さんの「汉字密码」である。
右は甲骨文では完全に右手の正面の形状である。金文中の字形は変化して会意文字になっている。右下に一個の口が加わり、ご飯を食べようとする手を表している。楷書の「右」の字は書くのに便利なように、ちょうど鏡像の様に反転して、今日の右の字になっている。
「右」の本義は右手である。説文での解釈は「右、手と口が相助けるなり」としている。右手が飯を食べる時食べ物を口の中に運ぶのに効率よく、だから右の字は助けるの意味もある。『左传·襄公十年』では天子介るところ、独り者またこれを祐く。この句の中で「右」は即ち助けるの意味である。以降右のこの一つの意味から「佑」の字が出来た。
右は又方位を表す名詞である。左の反対だ。「孫氏の兵法」にある、「左に備え右を薄ということ、右に備えることは、左が薄いということ」 多くの人にとっては、右手は総じて左手に比べ器用である。だから古人もまた右を巧みで、より高く、成語でも「右に出るものなし」という言葉もできた。即ち優れたという意味である。
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