2012年2月13日月曜日

漢字「身」起源と由来:身ごもった状態を表す象形文字

漢字「身」起源と由来:象形文字である。身ごもった状態が実に生き生きと表現されている
 民主主義とはある個人について見たとき、身分、性別などによってその人の処遇、行動などが制約を受けないでおられる状態にあるときと言うことができるかもしれない。 線引きが不可能なら、その社会の成熟度を民主主義の度合いのような尺度と考える必要があるのかもしれない。 さて、そこで身分、身の程知らず、身を切る、身内、身体などで使われている「身」とはいったい何ぞや? その起源に迫ってみたい。


「身」の原義は妊娠である。この意味から「孕」の字形が
引き出され、後には「体躯」という意味にもっぱら
用いられるようになった。
漢字「身」象形文字である。
 「身」は象形文字である。甲骨字は人の字の腹に一つの孤線を付け加え、突出した女の人の身ごもった有様に似ている。第二の身の字は中間に一つの点を加え、さらにまるで身ごもった様子である。

  金文の身の字は甲骨文字の同じ構造の形の下部に横棒を短く加えている。この事で女性が妊娠中は性交を行ってはならないことを示している。

  小篆の字形は金文の基礎の上にさらに美観を整え、明確になっているがこの字形は身と孕の字形への分化を示し、字の意味が身の本義から変換が引き出されて、身の意味が孕という意味に代わって来ている。

 これは人の身体をもっぱら指し、「身力強壮、身段、全身運動、獅子の身体で人面像等の言葉の身の字のように、みな人あるいは動物の体を示している。小篆はただ孕むという字に代わり赤ちゃんの為にもっぱら用いられるようになった。 

 体躯は人の肉体の根幹である。このため「身」の体躯の意味から自我の意味が引き出されてくる。"身先士卒、身体力行、以身作则"(「自分がまず兵士を率い、体が一生懸命行い、身を以て範を垂れる」の意味)この中で「身」は自分という意味である。自我の意味からは人の一生という意味も引き出されてくる。"献身、身后遗物"等である。又人の地位・品徳という意味も引き出される。"出身卑微、有失身份、身败名裂"等である。



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2012年2月8日水曜日

漢字「政」の起源と由来:その本質は「自ら棍棒を用いて他人を既定の目標に向かわせること

[政」の字の意味するところは自ら棍棒を用いて他人を既定の目標に向かわせようとすること
 先日あるテレビ政治討論会を見ているとやたら「政局」という言葉が出てきた。誰かが言うのに「最近政局の話ばかり出てくる。いま大事なのは政局ではなく、政策だ。」とのたまう。

  それを聞いてなんとなくそんなものかなと納得するようなしないような!? 
 確かに問題の解決はそっちのけで、「民に問え」「解散総選挙にもっていく」等と話しがやたら多く見ている側も白けてくる。 では、そもそもこの政治の「政」という字はいかなる意味を持っていたのか?甲骨文字に遡って見よう。
  「そりゃ、いくらなんでも遡りすぎだよ」という声が聞こえて、確かにその様に思うが、やはり原点に戻るのが一番だ。しかし甲骨文字はなかったようで、時代は少し下った紀元前1000年前後の青銅器の時代の文字である

 唐漢氏いわく、「政」この字は会意文字であり形声文字でもある。「説文」では「政は正なり」と解釈し、「支」と「正」から来て、発声は「正」を取ったとしている。金文の「政」の字の右辺は棍棒を手に持った形で、左辺の下部は「足跡」があり、歩みを表す。上部は一本の短い横棒で行動の目標を表す。明らかに政の字の構造の意味するところは、自ら棍棒を用いて他人を既定の目標に向かわせようとすることである。小篆は金文と相似であるが美観は一層整っている。


 ここで、ちょっと待てよと感じられる向きも多いと思うが、なぜ「棍棒なのか?」  議論の「議」のように、「羊の頭を旗頭に掲げ結集を促すために言う」のような穏やかなものではなく、初めから棍棒で強制的、抑圧的な権力者の頭でもって考えられた概念である。

このように政という字はもともと武力行使で方向を定めていく側面が強かったのだが、いろんな方面での議論を通して次第に「棍棒」という暴力的側面が見えなくなってきて、法令、機関、政策を指すようになったのかもしれない。
 民主主義の今日、あらゆる局面、あらゆる場所で「多数決」で物事が決定されている。仕方がないといえ「数」という一種の「棍棒」という力に頼らなければならないのは、人間の世界は昔とそれほど大きな違いはないのかも知れない。


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