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2020年10月13日火曜日

「妊」に関係する漢字のまとめ:孕,包,妊,身,育


「妊」に関係する漢字のまとめ:孕,包,妊,身,育 子供を生み、育むことの苦闘が漢字に表れている?
  太古の昔から妊娠は重大な問題であった。だからこそ妊娠を意味する漢字は甲骨の時代から数多く存在していた。

 菅義偉首相が少子化対策として不妊治療の公的保険の適用拡大を打ち出している。実現までの間も助成金を大幅に増額するよう厚生労働省に指示した。
 これは新内閣の目玉として、大きくマスコミなどで取り上げられている。この不妊治療が、日本の「国難」とまで言われている「少子化」の問題解決にどれほど寄与するのか、はなはだ疑わしい部分がある。

 しかしながら、子供を生み、育むことは人類にとっても重要な問題である。

 3500年も前から、人類の祖先は、子供を身ごもり、育てることに全精力を費やしてきたであろう。その結果として、妊娠や身ごもりを表す漢字が数多く残されている。それだけ人類は子孫を残すことに全身の力を傾けていたのではないだろうか。その営みは、ある意味崇高なもので、現代のような性を弄ぶ風潮はとても許されるものではなかっただろう。

ここではこの「不妊治療」の
「妊」に関係する漢字:孕,包,妊,身,育について、少し考えてみたい。
因みに「不妊治療」は中国語で「生育治疗」という。言葉の問題から言うと、「不妊治療」より、「生育治療」といったほうが、問題点を大きく捉えているといえよう。なぜなら中国語の概念の中には、単に妊娠できない状態の治療というばかりではなく、「生んで、育てる」ことも含んでおり、育てる環境も含んだものとして、包括的に、概念的には考えることができるからである。
 


漢字「妊」の起源と成り立ち
「妊」説文では「妊」即ち孕むことなりと云っている。
 
漢字の成り立ちについては、この漢字「妊」のページを参照ください

 

漢字「孕」の起源と成り立ち
  「孕」という字は身重、懐妊の意味である。

 非常に分かりやすい漢字であるが、「孕」の本義は懐妊である。妊婦のことである。

 漢字「孕」の成り立ちについては、漢字「孕」のページを参照ください




漢字:「包」
漢字「包」の語源と由来:胎児が胎嚢に包まれている状態を著す



  

漢字「身」
漢字「身」起源と由来:象形文字である。身ごもった状態が実に生き生きと表現されている





  

漢字「育」
漢字「育」起源と由来:会意文字である。子供が頭を逆さまにして、正常な状態で生まれることを表し、正常に育つという意味に拡張された。原義は正常出産の意味

 左のヒエログラフは、こどもが女性性器から出てくることを示しているが、上下に180度逆転してみるとその意味合いがよく読めるように見える。





漢字「毓」

漢字「毓」は「育」の異体字である。この漢字も分娩を表す漢字である。

 唐漢氏はこの漢字を分娩時に羊水が流出している様を表現しているとしている。甲骨の昔からこのような直截な表現の漢字が存在していたかは、知る由もないが唐漢氏はそのように考えている。




結び
 太古の昔から人類にとって、子供を生み、育むことは大問題であったことは、妊娠や身ごもりを表す漢字が数多く残されていることからも伺える。それだけ人類は子孫を残すことに全身の力を傾けていたのではないだろうか。



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2012年2月13日月曜日

漢字「身」起源と由来:身ごもった状態を表す象形文字

漢字「身」起源と由来:象形文字である。身ごもった状態が実に生き生きと表現されている
 民主主義とはある個人について見たとき、身分、性別などによってその人の処遇、行動などが制約を受けないでおられる状態にあるときと言うことができるかもしれない。 線引きが不可能なら、その社会の成熟度を民主主義の度合いのような尺度と考える必要があるのかもしれない。 さて、そこで身分、身の程知らず、身を切る、身内、身体などで使われている「身」とはいったい何ぞや? その起源に迫ってみたい。


「身」の原義は妊娠である。この意味から「孕」の字形が
引き出され、後には「体躯」という意味にもっぱら
用いられるようになった。
漢字「身」象形文字である。
 「身」は象形文字である。甲骨字は人の字の腹に一つの孤線を付け加え、突出した女の人の身ごもった有様に似ている。第二の身の字は中間に一つの点を加え、さらにまるで身ごもった様子である。

  金文の身の字は甲骨文字の同じ構造の形の下部に横棒を短く加えている。この事で女性が妊娠中は性交を行ってはならないことを示している。

  小篆の字形は金文の基礎の上にさらに美観を整え、明確になっているがこの字形は身と孕の字形への分化を示し、字の意味が身の本義から変換が引き出されて、身の意味が孕という意味に代わって来ている。

 これは人の身体をもっぱら指し、「身力強壮、身段、全身運動、獅子の身体で人面像等の言葉の身の字のように、みな人あるいは動物の体を示している。小篆はただ孕むという字に代わり赤ちゃんの為にもっぱら用いられるようになった。 

 体躯は人の肉体の根幹である。このため「身」の体躯の意味から自我の意味が引き出されてくる。"身先士卒、身体力行、以身作则"(「自分がまず兵士を率い、体が一生懸命行い、身を以て範を垂れる」の意味)この中で「身」は自分という意味である。自我の意味からは人の一生という意味も引き出されてくる。"献身、身后遗物"等である。又人の地位・品徳という意味も引き出される。"出身卑微、有失身份、身败名裂"等である。



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2011年11月21日月曜日

漢字「包」の語源と由来:胎児が胎嚢に包まれている状態を著す

漢字「包」の語源と由来:まさに生まれてくる胎児が胎嚢に包まれている状態を著す

「包」と「孕」の漢字はいわば兄弟。
「包」これは象形文字の甲骨文字と金文の字形は同じように、まさに生まれてくる胎児が胎嚢に包まれている状態である。小篆の字形の口は人の形の勺にかわり、中の「子」は「己」に変化して、勺と己の会意文字になった。しかし、依然として包嚢に包まれた胎児を表す。「包」は「胞」の初めの文字である。

これは「包」の字の左辺に「肉」を加えたもので(現代漢字では肉月偏である)、もっぱら「包」の字の本意を表す。即ち胞衣の中で既に形の出来た胎児で、まとめてこの構成で「同胞」とか双子などの意味の「双胞胎」等の言葉がある。


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2011年10月22日土曜日

漢字の成り立ちの意味するもの:漢字「孕」を作った発想はすごい。まんまじゃー 

漢字の成り立ちの意味するもの:漢字「孕」を作った発想はすごい。

  「乃」と「子」からなる。「乃」は金文では二人称に用いられ、いわゆる「汝」として用いられる。また中国語では「奶」(おっぱい)の旁に用いられる。以上のことから類推して「孕」は汝の子として作られた可能性もある。
漢字「孕」の本義は懐妊である。

妊婦の腹の中に子を包んでいる様が形象化されている。
金文の中の下部の横線は懐妊中は
性交を禁忌すべきことを表したもの。
 「孕」と「身」はともに同じ由来を持っていて、甲骨文字では同じ構造をしている。

 従って「孕」という字は「身」の意味を持っている。即ち身重、懐妊の意味である。

 甲骨文字中で細かく描かれているものは、金文中の中では「子」の形は簡略化され一点になっている。また、下辺に加えられた横線は妊娠期間中は性交を禁じたものである。

 小篆の「孕」の字は体と「子」から構成されたものである。
 字形が整えられて、母親の腹の中にいる子供を強調したものである。

 「孕」の本義は懐妊である。妊婦のことである。即ち懐妊した女性を指す。《説文》の解釈は、子を包むこと。《庄子・天運》曰く、妊婦は10月で子を産む。いろいろな事を発生することから、生育と似たように捉えて、いわゆる孕育の一語でたくさんの新事物が萌生・発育することを比喩している。例えば、雨は雲の中で孕育するとか新しい文化が旧体系の中で孕育される等など。

胎児は母親の腹の中にあって、自ら包含する意味から、いわゆる孕の字は包孕のように特に包含することに用いられる。

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