漢字「闘」の成立ちと由来:闘いと戦いはどう違う?
「闘う」も「戦う」どちらも「たたかう」ですが、両者には明確な違いがあります。語源を見ればわかりますが、一口に言って「闘う」は武器を持たないで、争ったり、克服することです。
一方「戦う」は武器をもって戦闘行為をすることです。ウクライナ戦争といいますが、ウクライナ闘争とは言いません。
導入
前書き
目次
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漢字「闘と戦」の今
漢字「闘と戦」の解体新書
漢字「闘」の楷書で、常用漢字です。 鬥は鬪(=闘)の原字。鬥と鬪の間には、闘いの在り方にかなりの変化があったと考える。それが何かは今はわからない。 一方「戦」は明らかに盾と矛といった武具を使った構成で、「鬪」とは一線を画する「戦争」を表している。 | |||
鬥・楷書 | 闘・楷書 | 戦・楷書 |
鬥・甲骨文字 |
鬥・金文 |
鬥・小篆 |
鬪・小篆 |
「闘と戦」の漢字データ
- 音読み トウ
- 訓読み たたかう
意味
- たたかう
戦争する(例:戦闘)
思想や利害の対立する者どうしが自分の利益や要求の獲得のために争う
苦痛や障害を乗りきろうとする(病気と闘う) - たたかわせる(例:闘牛)
- 競う、争う、試合をする
同じ部首を持つ漢字 鬥、鬪、鬭
漢字「闘」を持つ熟語 闘、闘争、闘志、闘犬、
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漢字「闘と戦」成立ちと由来
引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)唐漢氏の解釈
「斗」は闘の簡体字である。甲骨文字の「斗」は二人の人が殴り合いをしているようだ。相手が自分の頭の髪の毛をつかみ、こちらは、相手の手を掴んでいる。二人組合っているが、金文と小篆の字形は二人が取っ組み合いをしているようには見えない。
まるで甲骨文字を継承していない様に見える。闘いの字の形と意味を理解するのは難しい。楷書ではこの縁から「鬥」と書く。漢字の簡略化から升斗の「斗」から借りて、鬥の簡体字になった。
漢字「闘と戦」の字統の解釈
正字は闘に作り、斲声。斲は 左手に盾を執り、右に斤を執って戦う形。鬥は手格(素手でたたかう。)の形で、この両字は声義近く、合せて一字となったが、字の構造法からいえば、斲(たく)の声義に従う字である。
〔説文〕「遇ふなり」とは、相接して戦う意であろう。すべて闘争する意に用いて、競争することをいう。
漢字「闘と戦」の漢字源の解釈
向かいあって、互いにゆずらずにたたかう。後へひかずにあらそう。
象形。二人の人が手に武器をもち、たち向かってたたかう姿を描いたもの。鬥は鬪(=闘)の原字。
漢字「闘と戦」の変遷の史観
文字学上の解釈
漢字「鬪」の甲骨文から簡体字までの変遷をまとめた。当初は殴り合いを生き生きしたタッチで表現していたが、時が経つにつれ戦い方が高度に?変化し、盾や矛を使ういわゆる戦闘へと変遷を遂げてくる。恐らく先頭に加わる人数、組織も文字が複雑になるにつれ変化したであろう。漢字からは文字の変化そのものの中に、そのものの在り方まで推察されて面白い。
まとめ
たたかうという言葉は今では「戦う」、「闘う」と書いて同じような意味に使われる。しかし、古代では両者はある意味では厳然と区別されていたようである。
戦うという漢字は。「盾」と「戈」からなり始めから武器をもって戦う、即ち戦争をするという意味に用いられていた。
一方、闘うという文字は、今では変化しているが、元々は「鬥」と書き武器を使わず、争うという意味に使われていた。ある意味平和的な方法での解決が試みられていたようだ。それが、明確に変わったのは、古代社会で階級分化が進み、単も部族を侵略するようになってからではないかと想像する。
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1 件のコメント:
闘うという字の象形文字は、今にも掴みかかりそうな、臨場感のある、迫力に満ちた形をしていますね。闘と戦とは、象形文字での成り立ちが違うとは、面白いです。
だんだん、武器を使用して戦うようになり、字も簡略化されていったとは、哲学的なものを示唆しているようで、興味深い話です。
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