2022年12月31日土曜日

2022年の漢字「戦」の成立ち:「単」(盾の意味)と戈(攻撃用武器)から成る。


2022年の漢字は「戦」であった。戦いで明け、戦いで暮れる。だが戦とは何か。
 今年の漢字は「戦」清水寺の管長の揮毫が、かくも力強く、かくも悲しい
 今年も年の初めからロシアのウクライナ攻撃で明け、終わりの見えぬまま今年も暮れようとしている。
 この問題は以前にも取り上げた。しかし終わりの見えない現実。再度取り上げる。

 異常気象が叫ばれ、地球温暖化が危惧され、地球の滅亡も云々されているこの時に至っても、他の民族や国の人々の土地を奪おうとする執念は人間の業なのでしょうか。食べることができなくなるかもしれない恐れからくるのでしょうか。
 未来を予見することができるという人間の傲慢からくるのでしょうか。人間なんというものは宇宙から見ればゴミにも足らない存在にも拘らず、自分たちが世界を支配できると考えるのでしょうか。


 左側の文字は飾りのついた「盾」の甲骨文字で、現在は「盾」という漢字になっています。
 右側は飾りのついた「戈」(ほこ)で、刃が骨や石であった時代はこの文字が使われていたのですが、青銅が使われるようになると「矛」に置き換わります。
 つまり、「戦」という文字は、最初から「盾」と「矛」という文字から構成されていたのです。しかも両者とも飾りのついた武器であったということは、戦という字は個人の戦いを表現しているのではなく、何が知ら儀礼の入った集団の戦いを意味していたのではないだろうか。即ち、「戦」ということは、単に戈と盾を使うだけではなく、攻撃、防御という抽象的概念を表していたということではないだろうか。これが後世になってから、戈から攻撃、盾から防御という相反する概念が生まれ、さらに「矛盾」という概念が、ずーと後世になってから生まれたのでしょう。
盾・甲骨文字戈・甲骨文字
 戈は、敵を打ち据える動作によって殺傷するのに適した穂先を持つ、古代東アジアのピッケル状の長柄武器である。 (ヴィキペディアによる)
戈・金文 戈・小篆 戈・楷書


 矛、鉾(ほこ)は、槍や薙刀の前身となった長柄武器で、やや幅広で両刃の剣状の穂先をもつ。 日本と中国において矛と槍の区別が見られ、他の地域では槍の一形態として扱われる。
矛・金文
矛・小篆
矛・楷書


    


「戦」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   セン
  • 訓読み   たたかう、いくさ

意味
     
  • たたかう。たたかい
  •  
  • おののく
  •  
  • おそれる 

同じ部首を持つ漢字     単、戦、弾、禅、憚
漢字「戦」を持つ熟語    戦争、戦慄、戦役、戦禍、




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 柄の長い武器「矛」は、白兵戦で突き刺しや突き刺しに使用された。 殷の初期には石や骨が主に使用されていたが、製錬された青銅の硬度が向上したため、殷の後期には銅の矛が普及した。

 秦と漢の時代以降、鉄が広く使われるようになると、「矛」は徐々に「戈」に取って代わり、古代の戦争で最も長く使用された兵器の1つになった。
 銅碑の「矛」は「矛」の象形文字です。矛の頭は柳の木の葉の形状を成している。 胴体の部分には縄を結わえる半円の固定部が備わっている。小篆の「矛」の文字は青銅の碑文を継承しているが、象形文字の魅力を失い、楷書の文字の形は小篆の形体を整えたものとなっています。  「矛」は先が鋭く、刃が2枚あり、柄の部分は竹を集めたもので、つまり芯は直木で、外は竹の糸縄で縛り、漆できつく固めたもので、長さは主に 3.2 メートルから 3.8 メートルの間で、最長のものは 4 メートル以上あり、戦車で使えるように対応させている。「詩・秦風・無衣」:「王瑜興師、戈矛を我に修む」 戦国時代の戦争や征伐では、戈矛が併用されていたことが分かっている。

 


漢字「矛」の字統の解釈
 象形文字 説文「長い柄を持つほこの形。酋矛なり。兵庫に建つ長さ2丈。象形」という。
 長さ2丈4尺のものは夷矛、枝刃のあるものは戟、この矛を台座につけて兵庫の上に建て淳巡を行うことを遹正という。矛盾は特殊な読み方。


まとめ
 、「戦」という文字は、最初から「盾」と「矛」という文字から構成されていたのです。即ち、「戦」ということは、戈と盾を使うものだということだったということです。これが後世になってから、戈から攻撃、盾から防御という相反する概念が生まれたにせよ、「戦」という漢字にはそれが生まれたときから、「盾」と「矛」という相反する概念が含まれていたことに間違いはないでしょう。



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2022年11月14日月曜日

漢字「貞」:神にお伺いをたてるということから、ある種の神聖な響きを持ち「貞淑」と使われる


漢字「貞」の成立ちと由来:神にお伺いをたてること
 「貞」と聞けば、「貞淑、不貞、貞操」などの言葉がすぐ頭に浮かぶ。道徳的な意味合いによく使われることが多いようだ。
 国語辞典によると女の操を守ることを「貞」としている。女が美しさを保つためには、毅然とした姿勢を保つべしというところからきているのかも知れない。貞が使われている言葉の多くは女性に関するものだ。「貞」が付く言葉で男に係るものは、童貞ぐらいなものだ。これも封建遺制ともいえるが、「種の保存」という別の見方からすれば、至極当然なのかもしれない。動物の世界でも摂理である。

 それがはるか昔に「力」という一点だけから自然の摂理に反し、「男尊女卑」になったのが、
 人間の不幸の初まりなのかも知れない。
 誤解を覚悟していうと、女は子孫を残す原点で、男は「生むという」ことに決定的ではない。
 力を有する「男」が「女」を隷属させるためには、物理的な力以外の何かが必要である。それが、神であり、神の声をを聞くための『お伺いや占』が必要であった。
  少し話がずれたが、「貞」という言葉は、占いから生まれた言葉だ。鼎にかけて卜するというのが本来の意味であるというのが定説であるらしい。
貞・楷書


 
  
「貞」・甲骨文字
「鼎」
鼎の象形文字
「貞」・金文
「鼎」+「卜」
から構成される会意文字です
「貞」・楷書
金文を継承している


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「貞」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   テイ
  • 訓読み   さだ、ただ

意味
  • ただしい。
  • 心が正しい。
  • みさおを守る。

同じ部首を持つ漢字     偵、媜、遉、楨、碵
漢字「貞」を持つ熟語    貞操、貞淑、不貞




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「貞」は会意文字です。甲骨文の「貞」の文字は、上下が結びついた構造で、上が卜で、鼈甲や牛の骨で占うことを意味する、下が鼎の象形のデッサンです。これが祭器の鼎の意味であり、重さであり、実在であり、このことの確実性を表す。 『金文』の第一款の「貞」は甲骨文を継承し、第二款の「貞」は下部の「鼎」の形を変えて「貝」に簡潔にしている。小篆や楷書は間違いを重ねて「真」と書きますが、漢字が簡体字の時にと「貞」に簡略化された。

漢字「貞」の字統の解釈
 正しい字は鼎に作り、鼎と卜とに従う。鼎をもって卜するもので、探湯盟誓のような方法であるのか、湯神楽 のような方法であるのかあるいは鼎中の犠牲の様子によるものであるのか何とも明らかにしがたいが、ともかく鼎を用いる卜問 の方法であることには疑いはない。


まとめ
 「貞」とは本来、鼎を用いる卜問を表していたが、男性社会の中にあって、女性に対し「貞節を守る」という意味にもっぱら用いるようになった。貞節を守ることはいいことであるが、なぜ女性だけに要求されるのか?



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