2021年7月27日火曜日

漢字・疑の成り立ちと由来:自分はどうすべきか、凝然と立ち尽くす様を示す。この文字の語意は「迷う」ことである。では疑うを示す漢字は何?


漢字「疑・嫌」はいずれも「疑い」示すことは疑いようがない。この二つの言葉の真の違いが今明らかになる。
 漢字・疑の成り立ちと由来:人は疑う動物である。3500年前から今に至るまでDNAに受け継がれている。今や疑惑の時代言い換えればフェイクの時代!

 漢字・疑の成り立ちは自分はどうすべきか、凝然と立ち尽くす様をしめす。この姿は甲骨文字から一貫して今も全く変わらない。今でも人は進むべきか留まるべきか迷い続けている漢字を見れば歴史がわかる。人の世の移り変わりが分かる。この漢字「疑」も甲骨文字では、人が単に立ち止まって凝然としている様をあらわしていたものが、金文になると道が加わり、道路が整備されたことがわかり、さらに「牛」まで付け加えられ、失われた牛を探すと言う有様まで表すことから、世の中で農業が盛んになり牛を農耕に使うようになったことが推察されます。

 このように一つの漢字だけからでも人るの歴史物語が出来てしまいます。


漢字「疑」の楷書で、常用漢字です。
 甲骨文も、金文も一様に人が立ち止まり凝然として行く手を決めかねている様が生き生きと描かれている。まさに百聞は一見に如かずである
疑・楷書




  
疑・甲骨文字
人が後ろを向いて凝然と立ち杖を立てて進退を決めかねている様子
第2款・・道路を表す「符号」を追加して、意味をより明確にしている
疑・金文
甲骨文を継承し、左辺には牛の記号が付け加えられ、右辺下部に「足」を追加して、歩いていくことを意味しています
疑・小篆
金文では牛を探したものが、小篆では子供を探すさまが付け加えられている。人々の視点が農業から人間社会に変化したと考えられる




    


「疑」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ギ
  • 訓読み   うたが(う)

意味
     
  • うたがう (動詞)  本当かどうかあやしく思う
    迷う、ためらう  
    怖がる、不安になる
  •  
  • うたがわしい(形容詞)  本当かどうかあやしい  
  •  
  • うたがい(名詞)

同じ部首を持つ漢字     凝、擬、嶷
漢字「疑」を持つ熟語    懐疑、危疑、疑義、疑獄、疑心、疑惑




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「疑」の本意は、惑わされることを指し、確定する方法がないことを言う。甲骨文の「疑」という言葉は、杖をもって出た人が左右うろうろと、道に迷い、どこに行けばいいのかわからないことを示しています。甲骨の別の書き方では、道路を表す「符号」を追加して、意味をより明確にしています。

 金文は甲骨を継承していますが、下部に「足」を追加して、歩いていくことを意味しています。加えられた「牛」は失われた牛を探すことを意味します。これにより、「疑い」という言葉の構成がより鮮明になり、金文の時期に農耕が重要な地位を占めていたことを反映してます。
 小篆は変化を遂げていく過程で、人が振り返った人の頭の形を「匕」とし、人の形の「大」は「矢」に変化し右の牛の形も変化して「子」になっています。次第に今日の楷書の「疑い」になります。

 「疑」とは

漢字「擬」の漢字源の解釈
 子供に心が引かれ、親が足を止め、どうしようかと思案する様

 「疑」と同様の意味を持つものに、「嫌」(うたがう)がある。こちらはこうではないかと気を回しておもう、悪い方へと連想する。今日われわれは疑うというと、こちらの意味に使うことが多いように思う。


漢字「疑」の字統の解釈
 象形文字 初文は「ヒ+矢」(ギ)人が後ろを向いて凝然と立ち杖を立てて進退を決めかねている様子で、心の疑惑している様を示す。後にまた足の形を加えて今の字形となったが、初形はかなり失われている。

説文の解説は既に字形の初形を失っている篆書の字形によっていうもので、そこから字形を解くことはできない。


まとめ
 単なる思い付きであるが、漢字の生成時期はいくつかのステージに分かれると思っている。即ち、文字の創成期、文字の広範囲に使われる時代、卜文などで、権力に取り込まれる時代そして、完成期。思い付きが、確証になることを望む。漢字「疑」は、迷うと考えた方が原義に近い。いわゆる人を「うたがう」という意味では、「嫌」に近いようである。



「漢字の起源と成り立ち 『甲骨文字の秘密』」のホームページに戻ります。

2021年7月25日日曜日

漢字の口は象形文字。古代人たちは事物をありのままに描いて情報伝達をしていた。やがて甲骨文字や金文となって結実する


漢字「口」は、祝禱を入れるサイなのか、或いは食べたり、話したりする普通の口なのか
 「口」という文字は、象形文字でその形状は非常に単純で、容器以外考えようがない。形状から見ると、祝禱や固形物を入れるよりも液体を入れる容器のように思える。

 しかし、わが国の漢字学の権威の白川静氏は、これをサイと呼び、祝禱を入れる器と解釈した。

 氏は「従来の説文学において、口耳の口に従うと解するために字形の解釈を誤るものは極めて多く、古・召・名・各・吾などに含まれる「口」は全てサイと解釈すべきものを誤解したものだ」と喝破されている。しかし、私には、この単純な「口」という文字が、逆に、ほとんどがサイと呼ぶべきものとは到底考え難く、之こそが大いなる誤謬というべきものと考えざるを得ない。この点、字統では、「口という字は早くから用いられているが、卜文金文にその明確な用義例がなく祝禱の器の形である(サイ)との異同を確かめることはできない。」との解釈をしていることを考えても、「口」を「サイ」であると断定をすることは不可能のように思うのだが・・。


漢字「口」の楷書で、常用漢字です。
 象形文字であり、甲骨から金文・小篆に至るまで、その文字の形体は一貫しておりいささかも変化が見られない。

 この文字記号の生成から後世のかなり使い込まれた時代に至るまで、その形体上にほとんど変化が見られないということそのものが、この記号が時代を経ても一貫して同じ意味合いで捉えられていたというっ証左であり、一貫して「口」であり続けたのだ。
口・楷書


  
口・甲骨文字
口の象形文字。
口・金文
口にしては口角が上がっており、液体を入れる容器のようにも感じられる。
口・小篆
甲骨・金文を引き継いでいる。これをサイと認識するには社会通念上の大きな変ぼうが必要である気がする。


    


「口」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   コウ、ク
  • 訓読み   くち

意味
     
  • くち(飲食し、音声を発する器
  •  
  • 入口、穴、港
  •  
  • 量詞  例)一口、 

同じ部首を持つ漢字     咽、員、右、唄、可、嚇、各、喝、喚、含、喜、器、吉、喫、吸、叫、吟、句、君、啓、古
漢字「口」を持つ熟語    口外、口蓋、口唇、口頭、悪口、陰口、口語、口誦、口説、口調、口座 




引用:「汉字密码」(P418、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「口」の形状は、まさに人や動物の口である。《説文》は「口」を解釈して、「人が話したり食べたりするところなり」。意味するところは、「口は人と動物が発声したり食べる器官である。

 この為に「口」は食べたり話したりすることに関係する偏・旁の字に多い。「可、听、吟、号、咆」並びに吃、味、 吐、吮」等など。

 


漢字「口」の漢字源の解釈
 象形文字:人間の口や穴を描いたもの。


漢字「口」の字統の解釈
  •  象形文字「口の形」 説文に「人の言食する所以なりという。卜文・金文に見る字形のうち、口、耳の口と見るべきものはほとんどなく、概ね祝禱の器の形であるサイの形に作る。
  • 従来の説文学において、口耳の口に従うと解するために字形の解釈を誤るものは極めて多く、古・召・名・各・吾などはみな祝禱の器を含む形。
  • もっとも「口」という字は早くから用いられているが、卜文金文にその明確な用義例がなく祝禱の器の形である(サイ)との異同を確かめることはできない。

 白川氏が言うように「口」が「サイ」であったとすると、古代人は人間の食べたり話したりすることをどんな漢字で表現していただろうか。
 人間の食。発声という行動は、基本中の基本であり、このことを言い表さずして人間のいかなる行動も表すことができないと考える。これが白川氏の主張に違和感を覚える最大の理由である。


まとめ
 漢字「口」は基本中の基本の言葉である。それだけに文明が高度になる前に、古代人の間では広く使われていたと考える。勿論最初は、象形文字というより、得に過ぎなかったかもしれない。文字を使って情報を伝達する高度な文明の前に、古代人たちはものをそのまま絵にかいて、相談をしたり、意思を伝えあっていただあろう。文字が最初から権力者たちの専有物であったと考えるのは妄想に過ぎなかったのではなかろうか。



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