2024年1月8日月曜日

竜と恐竜:毎日ことばの深読み、浅読み、斜め読み


漢字「竜」と恐竜:かつて地球に棲息した恐竜は現代に何を伝えたか

毎日ことば 24.01.04では恐竜の「竜」が取りあげられている。

つのりゅうるい 【角竜類】
—— 恐竜の一類型。草食で、角と襟飾りが特徴です。 亜紀のトリケラトプスが有名です。
 日本では兵庫県丹波篠山市などで化石が発見され ています。
 竜は空想の動物ですが、恐竜は 日本でも次々と見つかっています。

 ここでは、漢字の考古学ではなく、太古の昔に実際に生存した竜・恐竜について少し深堀をする。
 我々にとって「竜」という字から思い浮かぶのは、第一には中国の仮想的な生き物のである龍であるし、又現実の世界で思い浮かぶのは、「恐竜」であるし、もう一つのには「竜骨」ではないだろうか。  この竜骨は中国では,現代にいたるまで精神安定に効用のある漢方薬として古くから珍重されてきたし、わが国では正倉院の御物にも「竜骨」として納められている。そしてこの竜骨に刻まれていた文字こそが清朝末期の「甲骨文字」の発見の糸口となり漢字研究にとって、歴史的な大発見に繋がっていった。
 しかし、この竜骨が実際何物であったかは、近年になるまで明らかにはならなかった。それは象の骨であったり、鹿の骨であったり、いろいろのものが混在をしているといわれていたし、実際その通りであった。しかしながら考古学の発展により、これらの骨の中に数億年前の古代中国を闊歩していた恐竜の骨がそこそこ混ざっていることが明らかになった。かくして、竜骨こそが図らずも我々にとって知る由もなかった数億年前の恐竜を現代に蘇らせた立役者となった。




押しかけ推薦・一度は読みたい名著  阿辻哲次著『漢字學

漢字學の原点である許慎の「説文解字」の世界に立ち返り、今日の漢字學を再構築した名著

**********************

漢字「竜」の今

竜は龍の簡体字である。そして旧字体の「龍」は今では、専ら名前のみで使われ、普通には使われない。

漢字「竜」の解体新書

漢字「竜」の楷書で、常用漢字でである。竜は龍の簡体字。
 あまり恐竜にも、竜にも関係がないが、「土竜」という生き物をご存じだろうか。これはもぐらという。
 その由来は、諸説あるが、モグラが掘る長いトンネルが「竜のようだから」という説や、もともと中国ではミミズが土竜と言われていたが、日本に伝わった際に(モグラがミミズを食べることから)誤用されたという説などがあるとのことである。いずれにせよ、この「土竜」という漢字は、日本だけで通用するもので、中国語では鼹鼠と書き、ともかくややこしいので、これ以上調べるのは阿保らしくなったので止めにする。
竜・楷書竜・楷書


 簡体字とは一見、中国の建国後の文字の整備の中で新たに作りだしたものと思われがちであるが、実際は甲骨文字や金文などから取り出したものも結構多い。この竜などはその典型であろう。ここに示す通り、竜から龍に至るまでの変化は一目瞭然である。
竜・甲骨文字
竜・金文
龍・小篆


 

**********************


恐竜の出現から絶滅まで

 恐竜の時代
 2億4330万年から2億3323万年前の三畳紀中期に出現したものが起源とされている。
 恐竜は2億130万年前に発生した三畳紀〜ジュラ紀間における大量絶滅を生き延び、その後のジュラ紀と白亜紀を通して陸生脊椎動物の頂点に立ったが、白亜紀~新生代古第三紀間(6600年前) に鳥類を除くすべての種が絶滅した。

恐竜の世界的分布

 恐竜の化石は世界中で発見されているが、発見された恐竜の種類においては北米大陸が最も多くなっている。
  北米大陸以外では、アジアの中国、モンゴルなどで多くの恐竜の化石が発見されている。
また、南米のアルゼンチンはアルゼンチノサウルスをはじめとする巨大恐竜の化石が多く発見されている他、最大級の肉食恐竜であるギガノトサウルスの化石が発見されている。
 ヨーロッパで発見された恐竜の化石は比較的、古い時代の恐竜が多い事が特徴的で、三畳紀やジュラ紀など白亜紀よりも前の時代に繁栄した恐竜の化石が多く見つかっている。
 変わった所では南極で発見されたクリオロフォサウルスで、この恐竜の化石が最初に発見されたことを皮切りに、後の南極での化石発掘につながっている。
 近年では日本でも化石が発見されるようになり、様々な国で多くの新種の恐竜の化石が見つかっている事から、 世界的に広く分布していたと考えられ、当時の地勢状況を知る上でも参考になる・




まとめ

恐竜絶滅の原因は,6550万年前の隕石衝突にあるとする説が有力視されている。

 はるか宇宙の彼方からやって来た直径10 kmの巨大隕石が,現在のメキシコ・ユカタン半島沖に衝突し,未曾有の大異変が始まった。
これほどでないにしても、直径100mぐらいの隕石が落下したとしても、被害は、とてつもなくなる。
  1908年6月30日。直径100mほどの隕石が地球の大気圏に突入、シベリアのツングース上空で爆発した。「Yahoo知恵袋」によると、成分にもよるが、直径が120m以下だと、地上に衝突する前に空中爆発する。このときの爆発では、爆心地から20km以内は炎に包まれ、すべての森林を焼きつくした。直径100mの隕石だが、放出エネルギーはTNT火薬20メガトン、広島に投下された原子爆弾の1000倍にもなる。
 もし、隕石が気球上の原発に衝突したら、考えるだけでも身の毛がよだつ。火力発電所の場合には、隕石だけの被害でも恐ろしいが、原発の上に落下して、原発で臨界事故でも発展したら、もう地球は壊滅状態だろう。それでも不可抗力と言えるのだろうか。仮定の話をいえばキリがないとというお叱りを受けるかもしれないが、やはり心配だ。

  


「漢字考古学の道」のホームページに戻ります。   

2024年1月3日水曜日

漢字「辰」の由来は? えとの「辰」は元々、ハマグリなどの二枚貝が足を出して動く形から来ている


未来の辰年には何が起こるかは分からないが、幸せな出来事が期待できるか??

 毎年一年も半ばになると、翌年の干支や年賀状が話題になる。十二支で来年は「タツ年」に当たる。現在では、中国で最も神聖な動物である「龍」を意味する。これは本来、「辰」という字に、大衆的にわかりやすいように「龍」という字を当てはめたもの。

中国の殷周の時代には既に地支を用いた暦が使われており、十干、十二支の組合せで60年を表していた。

 では「なぜ子丑寅なのか?」 これは諸説紛々として未だ定まらずという状態であるらしいが、我が唐漢先生は、「古人は天の動きを人間の生れてから成長の過程で表したもの」という。因みに辰年は「出生し、胎児と胎盤を分ける為、石の刀で臍の緒を分断する状態を示している」ことを指しているという。

 この唐漢氏の解釈は、突き詰めれば、天体の出来事を人間の世界の事柄で説明しようとするもので、基本的に無理がある。年賀のあいさつに使うぐらいならいいのだろうが、それ以上に拘泥するのはそろそろ脱却しなければならないだろう。

   ここでは、辰という漢字の成立ちと由来について調べてみた。



**********************

来年の「辰」年は縁起がいいことが期待できるのか

 辰は、縁起の良い漢字としても知られている。そして辰年生まれの人は、人生が順調に進み、幸せに恵まれるといわれている。
 そこで、この迷信じみた伝聞の「辰年は縁起がいい」ことに信憑性があるのか息抜き程度に直近の100年の出来事を調べてみた。

漢字「辰年」の今

CHAT GPTに聞いてみた。

辰年(龍年)は、中国の干支(十二支)の一つで、一般的には12年の周期で繰り返されている。以下は、過去の辰年におきた大きな出来事の一部である。ただし、これは一般的な傾向であり、年ごとの具体的な出来事はさまざまだ。

  1.  1916年: 第一次世界大戦の最中に、ロシア革命が勃発し、ロマノフ王朝が崩壊。
  2.  1928年: ワーナー・ブラザースによって初のトーキー映画『The Jazz Singer』が公開され、映画産業が大きく変革。
  3.  1940年: 第二次世界大戦が勃発し、ヨーロッパや太平洋で激しい戦闘が繰り広げられた。
  4.  1952年: エリザベス2世がイギリス女王に即位。
  5.  1964年: 東京オリンピックが開催され、日本が国際的な注目を浴びる。
  6.  1976年: 文化大革命が終結し、中国が改革開放政策を導入。
  7.  1988年: ソウルオリンピックが開催され、韓国が経済的に成長し国際的な注目を浴びる。
  8.  2000年: インターネット・バブルが崩壊し、ドットコムブームが終息。 
  9.  2012年: ロンドンオリンピックが開催され、イギリスが国際的なスポーツイベントを成功裏に主催。
  10.  2024年: 未来の辰年には何が起こるかは分からないが、大きな出来事が期待される。
 このCHAT GPTの答えをどう見るかは、各人それぞれのお考えにお任せするしかない。辰年生まれの方は、いい運勢が期待できるのかもしれないが、しかし、一般論で、今年の出来事の連続性を考えると、来年はだいぶ悲観的になる。これについて論評すると、せっかく来年に期待を膨らまでている方々に冷や水をぶっかけることになりそうなので、これ以上は言わないことにする。Good Luck❣

 

タイトルにある、毎日ことばでは以下のように説明している。 「えとの「辰」は元々、ハマグリなどの二 枚貝が足を出して動く形から来ています。 後に十二支の竜に当たるとされ、一方で辰 は蜃の字に変化し大ハマグリを表すように なりました。蜃気楼はこの貝の息といわれ ましたが、蜃は竜の一種との説もあります。」(https://salon.mainichi-kotoba.jp)

2024年1月1日、2日と続けて 年明け早々とんでもない事件が発生。
   ●  能登半島北端で直下型大地震が発生。震度7以上。
     マグニチュード7.5の津波が発生
     7、80人がなくなっている。さらに被害者は増加するもよう。

   ●  1月2日 夕方4時過ぎ 
     札幌発の日本航空の旅客機が海上保安庁の飛行機と衝突。
     海上保安庁に搭乗していた5人が生じる死亡。
     日本航空側の乗員乗客330数名は奇跡的に脱出・全員無事


   干支や占いによる予測とは大体こんなものだ。可能性の一つとして、心の準備をする分には一向に差し支えない。


漢字「辰」の解体新書

漢字「辰」の楷書で、常用漢字です。
 右に「辰」の甲骨文字を示した。
 字統の説明によれば、字が蜃(オオハマグリ)の象形であることは、 ト文・金文の字形においては明らかなこととある。また漢字源によると、「辰」は二枚貝の象形だということである
辰・楷書辰・甲骨


  
辰・甲骨文字
辰・金文
辰・小篆


**********************

「辰」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   シン
  • 訓読み   たつ

意味
  • たつ(十二支の第五位)

  •   方位では東南東
       月では陰暦3月
       時刻では午前8時。また、それを中心とした2時間。
       
  • 動物では竜(たつ)
  •  
  • さそり座の首星アンタレス

同じ部首を持つ漢字     震、娠、晨、農
漢字「辰」を持つ熟語    辰、北辰、辰砂


**********************

漢字「辰」成立ちと由来

引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
[辰」出生をし胎児と胎盤を分ける為石の刀で
臍の緒を分断している状態

唐漢氏の民俗的解釈

  「辰」これは会意文字である。甲骨文字中の「辰」の字には2つの書き方がある。等しく上古の先民が刀を用いて臍の緒を断ち切るという実生活上のことから来ている。第一の上部の横一は切り開くということで、ここでは分離の意味である。下部は人の両手が石の刀を取っている象形を描いているという。

その少し下部の図形は両手を前に推した形である。字形を整え、図解してみると鋭利な石刀を用いて臍の緒を裁断しているのを表示して、胎児と胎盤を分離していると読み解かれるとされる。

 金文の「辰」の字は甲骨文字の一脈を継承している。小篆は字の形は美観で、筆順は均整がとれており、まさに字形は調整されているが、しかし却って象形の趣は失われてしまっている。

 楷書はこの流れで「辰」となった。

 このように天の変化を人間の出生に見立てて考える見方は「本当かな」と思う反面、最も身近な生れるという現象で天の動きを表現するのはある意味で直感的なことでやむを得ないのかなとも思う。しかし、少し厄介なことなのは、これがある種の宗教的な思想に結びついているということかも知れない。

字統では、古代信仰と農業との結びつきを説く

 象形 蜃(オオハマグリ)の象形。 蜃蚌など貝の類が、足を出して動いている形である。字が蜃の象形であることは、 ト文・金文の字形においては明らかなことであり、許慎のときにもその字形は篆文として存するものであった。
 蜃は古く草刈りの器として農耕に用いられ、農の字もその形に従う。 それで辰に対する古代的信仰というべきものがあって、実際にこれを祭祀に供している。星宿の説が行なわれるようになった。

 なお古代遺跡からは、農作物を刈り取ったり、耕したりするために、磨き上げられたり、細工されたムール貝が発掘され、大きな貝が農具として広く使用されていたことが分かっている。

漢字「辰」と干支:Chat GPTに聞いてみた

 「辰」は、中国の干支(えと)として使用される12の動物記号の1つです。
 「辰」は、干支の中で、ドラゴン(龍)を表す記号です。ドラゴンは、中国の伝統的な神話や文化において、強大な力や尊厳、幸運を象徴する存在とされている。そのため、「辰」が干支として使用される理由は、以下のような要因に由来します:

  •  文化的な意味: ドラゴンは、中国文化において非常に重要な存在であり、皇帝や王朝の象徴としても扱われた。そのため、「辰」を干支として使うことで、この文化的な価値観や象徴が反映されている
  •  象徴的な意味: ドラゴンは力強さや神秘性を持つ存在とされ、干支の中で特別な位置を占めている。他の動物と比べて非現実的で幻想的な存在としての特徴が、「辰」が持つ象徴的な意味に影響を与えている。
  •  陰陽五行説: 中国の伝統的な哲学や思想である「陰陽五行説」に基づいて、各干支や動物記号は五行(木、火、土、金、水)に対応している。ドラゴンは「陽」に属し、五行説の要素とも結びついている。
  •  運勢と縁起: 干支は、年や日、月の動物記号を表し、各年における運勢や縁起を象徴します。ドラゴンは幸運や成功を象徴するとされ、その意味から、「辰」が干支として選ばれることで、その年の運勢や縁起を表す要素となる。

  • これらの要因が組み合わさって、「辰」が干支として使われる理由が形成されている。中国の歴史や文化、哲学などが背後にある要因として挙げられる。

漢字「辰」の変遷の史観

文字学上の解釈

 左に、漢字「農」を参考のため示す。
 漢字「農」の甲骨文字から、金文、小篆までの発展の過程を見ると、ムール貝が農具として、如何に使われて来たかが実に見事に表されている。

 事実、古代遺跡からは、研磨されて農具として使われた形跡を残すムール貝が、数多く発掘されている。



大きな二枚貝は単に農機具だけに使われたのではない

 これは、多分二枚貝からつくられた櫛状の貨幣だと思う。
 著者が南太平洋を旅した時、ある土産物屋で買い求めたものだ。想像するに、このように貝は広く貨幣として用いられている。それが証拠に、漢字には「財、貯、販、貨」などのように貝を部首にもちいている漢字が多数存在する。



まとめ

  十二支の効用は、時の流れを一二年一括りで扱いやすいようにしたことぐらいだろうか。干支の「辰」ということから出発するのではなく、漢字の辰の発生そのものを人間の歴史の中から見直してみるのもいいのかも知れない。

古代農具として重宝されてきたムール貝が、農業の発展に伴い、神聖化され、さらなる農業の発展を願って、人々は龍の位置まで崇め奉るようになった。結果として、十二支の一角の地位を占めるようになった。

「漢字考古学の道」のホームページに戻ります。