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2024年2月29日木曜日

漢字「影と陰」はどう違うのか。目に見えるかげと目に見えないかげのどちらが怖い?


漢字「影と陰」はどう違うのか。

影と陰は訓読みをするといずれも「かげ」と読む。この違いは、以前にも、本ブログで取り上げたことがあるので、参照いただきたい。
 漢字「陰」の成り立ちと由来の意味するもの:陰と陽の弁証法と世界観
 ただこの時は「陰と陽」という相反する側面から取り上げた。
 今回は「影と陰」といういわば同義語の側面から迫ってみよう。

導入

毎日ことばで、「影と陰」が取り上げられていたので、後付けをしたい。

毎日ことば 第938回 見えるかどうか
 「影」と「陰」は目に見えるかどうかで 区別します。
  影は「光を遮ってできる黒い 部分」なので目に見えます(影法師など)。
  陰は「光が当たらないところ」なので目に見えません
   「経済発展のカゲで犠牲になる」などは見えない「陰」が適切です。

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押しかけ推薦・一度は読みたい名著  阿辻哲次著『漢字學

漢字學の原点である許慎の「説文解字」の世界に立ち返り、今日の漢字學を再構築した名著

前書き

目次




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漢字「影と陰」の今

漢字「影と陰」の解体新書


 
漢字「影と陰」の楷書で、常用漢字です。
 漢字「影」は構成要素である字素の「景」と「彡」からなる。
 景は説文解字では「光」なりと説明されている。
 さらに、詳しく、說文に「光なり」とし、京声とする。光景とは日の光をいう。(周礼、大司徒〕に「日景を正して、 以て地の中を求む」と日景測量のことをいい、地上千里にして日景に一寸の差があるという。
 もう一方の「彡」は字統によると、毛髪や彩色・光などを示すもので、象形というよりも、象意というべきものであろう。
 〔説文〕九上に「毛飾の畫文なり」とあり、文飾をいう。すべて色彩や形態の美を示し、怒・形・彩・彦・彫・彰・影・修などは その意と説明している。

 この二つの字素の会意で、日の光とそこに現る光線でうまく説明され、整合性が良くとれていると思う。
影・楷書陰・楷書


  
影・小篆
影・楷書
彡・楷書


 

  

「影と陰」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   エイ
  • 訓読み   かげ

意味
  • かげ: 光が物体にさまたげられた部分
  •  
  • 本物でないもの:人影、影武者

同じ部首を持つ漢字     影、景、杉、形、彫、彩
漢字「影」を持つ熟語    影、撮影、影響、


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漢字「影と陰」成立ちと由来


 漢字「影」の原字は「景」である。説文にも「影」の字は収められていない。


漢字「影と陰」の字統の解釈

 会意 景と彡とに従う。景は影の初文。
 のち光や音などを示す彡を加え、影の意に用いる。
 〔説文〕 にみえず、〔玉篇〕に至って収めている。諸経籍の影字はもと景であったらしく、〔顏氏家訓、書証〕 に、影字を作るものは晋の葛洪の〔字苑〕にはじま るとする説がみえている。
  また、白川博士は字統の中で、影の原字は「景」であるとする、形声 声符は京。說文に「光なり」とし、京声とする。光景とは日の光をいう。(周礼、大司徒〕に「日景を正して、 以て地の中を求む」と日景測量のことをいい、地上 千里にして日景に一寸の差があるという。


漢字「影と陰」の漢字源の解釈

会意兼形声文字 景は「日+音符 京」からなり 日光に照らされて明暗のついた像のこと。影は「彡(模様)+音符 景」で、光によって 明暗の境界がついたこと。特にその暗い部分。


漢字「影と陰」の変遷の史観

文字学上の解釈


古代人たちは、目に見えないものを恐れの対象と認識し、目に見える影は、改めて識別する必要がなかったのかも知れない。このことから考えると、古代人にとっては、目に見えるものがすべてであり、目に見えないものは、自分たちの認識を超えるもので、それが何者であるのか見当もつかなかったのではないだろうか。つまりそこには神の世界というか自分の認識を超えた畏怖すべき領域にしか映らなかったのではなかろうか。

漢字「影」は景と彡からなり、さらに景は「日+音符 京」からなり、 日光に照らされて明暗のついた像のを意味する。影は「彡(模様)+音符 景」で、光によって 明暗の境界がついたこと。特にその暗い部分。
 こうして漢字生成の過程を跡付ければ、漢字が実に論理的に構成されていることがわかる。





まとめ

   漢字「影と陰」の成立ちから人々の事物の認識の過程を跡付けてみた。もちろんこの仮定は、たわごとにしか過ぎない仮説であるかもしれないが、これが仮設でなくなる日も遠からずあると信じている。
  


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2024年1月25日木曜日

漢字・際の由来と成立ち:金輪際の「際」の意味するもの


漢字・際: 地の果てを意味する金輪際の「際」は何を意味するか。深堀してみた


毎日ことば 24.01.24では「金輪際」が取りあげられている。
ここでは、「際」の深堀りをする。

毎日ことば 第907回
「絶対に」という意味の「金輪際」。
 YOASOBIの大ヒット曲「アイドル」の 歌詞にも出てきますが、もとは仏教語です。
 大地を底で支える世界が金輪で、その底が 金輪際。この「際」は大地の果ての意味があり、「とことん」の意味になりました。

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導入

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前書き

目次




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漢字「際」の今

漢字「際」の解体新書

漢字「際」の楷書で、常用漢字である。
 字統では際は ここが神人相接する際会のところ、人の至りうる極限のところであるという。
際・楷書




「際」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み    サイ
  • 訓読み   きわ

意味
  • 辺縁
  •  
  • 限り(限界)、極み、極限
  •  
  • 交わる、出会い、交際

同じ部首を持つ漢字     祭、擦、蔡(小さな雑草)、瘵(病む;特に肺結核のこと)
漢字「際」を持つ熟語    際、国際、交際、際限、往生際


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漢字「際」成立ちと由来


漢字「際」の字統(P341)の解釈

会意文字: 阜と祭とに従う。
 阜 は捗降するときの神梯。その前に祭卓をおき、肉を供えて祭る。
 そこは神と人との相接す るところであり、天と人とが相感応するいわゆる天 人の際である。

〔説文〕一四上に「壁の會なり」とし、 祭声の字とするが、それでは際限・際会などの義は生れない。際は ここが神人相接する際会のところ、人の至りうる極 限のところであることを示す。仏教では、地下百六十万由旬(由旬は仏教でいう距離の単位、約三百八十四里)の金剛輪の下底を、金輪際という。大地の底の果てるところの意である。


漢字「際」の漢字源の解釈

 「阜+音符(祭)」で、壁と壁がこすりあうように、すれすれに接することを表す。察、擦などは同系。


漢字「際」の変遷の史観

文字学上の解釈

 「際」は「祭}+「阜」からなる。「祭」は甲骨文字が存在し、「肉」+「示」+「手」からなる会意文字で、いけにえの肉を祭壇に奉げることを表している。


 「阜」にも甲骨文字が存在し、神が降臨するときの、神梯を表している。

 際は「阜」+「祭」の会意文字である。 
 そしてその意味するところは、字統の言う通り、「そこは神と人との相接するところであり、天と人とが相感応するいわゆる天人の際である。」というのが、最も合理的な説明であるようだ。仏教の基本的な概念がここに生まれるという感じがしている。



まとめ

  「際」の字素である「阜」にも「祭」にも甲骨文字が存在するにもかかわらず、「際」には甲骨文字が存在しない。これが事実とすれば、際という概念は後世になって生まれたと考えられる。 「際」という言葉は、金輪際のように仏教用語であるようだが、仏教が中国に伝播して以降、生まれたとも考えられる。 只この神が降臨するという概念は、神道的な雰囲気を持っており、中国でこの概念が存在していたのか今のところは門外漢の私には分からない。

 
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2024年1月8日月曜日

竜と恐竜:毎日ことばの深読み、浅読み、斜め読み


漢字「竜」と恐竜:かつて地球に棲息した恐竜は現代に何を伝えたか

毎日ことば 24.01.04では恐竜の「竜」が取りあげられている。

つのりゅうるい 【角竜類】
—— 恐竜の一類型。草食で、角と襟飾りが特徴です。 亜紀のトリケラトプスが有名です。
 日本では兵庫県丹波篠山市などで化石が発見され ています。
 竜は空想の動物ですが、恐竜は 日本でも次々と見つかっています。

 ここでは、漢字の考古学ではなく、太古の昔に実際に生存した竜・恐竜について少し深堀をする。
 我々にとって「竜」という字から思い浮かぶのは、第一には中国の仮想的な生き物のである龍であるし、又現実の世界で思い浮かぶのは、「恐竜」であるし、もう一つのには「竜骨」ではないだろうか。  この竜骨は中国では,現代にいたるまで精神安定に効用のある漢方薬として古くから珍重されてきたし、わが国では正倉院の御物にも「竜骨」として納められている。そしてこの竜骨に刻まれていた文字こそが清朝末期の「甲骨文字」の発見の糸口となり漢字研究にとって、歴史的な大発見に繋がっていった。
 しかし、この竜骨が実際何物であったかは、近年になるまで明らかにはならなかった。それは象の骨であったり、鹿の骨であったり、いろいろのものが混在をしているといわれていたし、実際その通りであった。しかしながら考古学の発展により、これらの骨の中に数億年前の古代中国を闊歩していた恐竜の骨がそこそこ混ざっていることが明らかになった。かくして、竜骨こそが図らずも我々にとって知る由もなかった数億年前の恐竜を現代に蘇らせた立役者となった。




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漢字「竜」の今

竜は龍の簡体字である。そして旧字体の「龍」は今では、専ら名前のみで使われ、普通には使われない。

漢字「竜」の解体新書

漢字「竜」の楷書で、常用漢字でである。竜は龍の簡体字。
 あまり恐竜にも、竜にも関係がないが、「土竜」という生き物をご存じだろうか。これはもぐらという。
 その由来は、諸説あるが、モグラが掘る長いトンネルが「竜のようだから」という説や、もともと中国ではミミズが土竜と言われていたが、日本に伝わった際に(モグラがミミズを食べることから)誤用されたという説などがあるとのことである。いずれにせよ、この「土竜」という漢字は、日本だけで通用するもので、中国語では鼹鼠と書き、ともかくややこしいので、これ以上調べるのは阿保らしくなったので止めにする。
竜・楷書竜・楷書


 簡体字とは一見、中国の建国後の文字の整備の中で新たに作りだしたものと思われがちであるが、実際は甲骨文字や金文などから取り出したものも結構多い。この竜などはその典型であろう。ここに示す通り、竜から龍に至るまでの変化は一目瞭然である。
竜・甲骨文字
竜・金文
龍・小篆


 

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恐竜の出現から絶滅まで

 恐竜の時代
 2億4330万年から2億3323万年前の三畳紀中期に出現したものが起源とされている。
 恐竜は2億130万年前に発生した三畳紀〜ジュラ紀間における大量絶滅を生き延び、その後のジュラ紀と白亜紀を通して陸生脊椎動物の頂点に立ったが、白亜紀~新生代古第三紀間(6600年前) に鳥類を除くすべての種が絶滅した。

恐竜の世界的分布

 恐竜の化石は世界中で発見されているが、発見された恐竜の種類においては北米大陸が最も多くなっている。
  北米大陸以外では、アジアの中国、モンゴルなどで多くの恐竜の化石が発見されている。
また、南米のアルゼンチンはアルゼンチノサウルスをはじめとする巨大恐竜の化石が多く発見されている他、最大級の肉食恐竜であるギガノトサウルスの化石が発見されている。
 ヨーロッパで発見された恐竜の化石は比較的、古い時代の恐竜が多い事が特徴的で、三畳紀やジュラ紀など白亜紀よりも前の時代に繁栄した恐竜の化石が多く見つかっている。
 変わった所では南極で発見されたクリオロフォサウルスで、この恐竜の化石が最初に発見されたことを皮切りに、後の南極での化石発掘につながっている。
 近年では日本でも化石が発見されるようになり、様々な国で多くの新種の恐竜の化石が見つかっている事から、 世界的に広く分布していたと考えられ、当時の地勢状況を知る上でも参考になる・




まとめ

恐竜絶滅の原因は,6550万年前の隕石衝突にあるとする説が有力視されている。

 はるか宇宙の彼方からやって来た直径10 kmの巨大隕石が,現在のメキシコ・ユカタン半島沖に衝突し,未曾有の大異変が始まった。
これほどでないにしても、直径100mぐらいの隕石が落下したとしても、被害は、とてつもなくなる。
  1908年6月30日。直径100mほどの隕石が地球の大気圏に突入、シベリアのツングース上空で爆発した。「Yahoo知恵袋」によると、成分にもよるが、直径が120m以下だと、地上に衝突する前に空中爆発する。このときの爆発では、爆心地から20km以内は炎に包まれ、すべての森林を焼きつくした。直径100mの隕石だが、放出エネルギーはTNT火薬20メガトン、広島に投下された原子爆弾の1000倍にもなる。
 もし、隕石が気球上の原発に衝突したら、考えるだけでも身の毛がよだつ。火力発電所の場合には、隕石だけの被害でも恐ろしいが、原発の上に落下して、原発で臨界事故でも発展したら、もう地球は壊滅状態だろう。それでも不可抗力と言えるのだろうか。仮定の話をいえばキリがないとというお叱りを受けるかもしれないが、やはり心配だ。

  


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2024年1月3日水曜日

漢字「辰」の由来は? えとの「辰」は元々、ハマグリなどの二 枚貝が足を出して動く形から来ています。 (毎日新聞 「毎日ことば」より)


未来の辰年には何が起こるかは分からないが、幸せな出来事が期待できるか??

 毎年一年も半ばになると、翌年の干支や年賀状が話題になる。十二支で来年は「タツ年」に当たる。現在では、中国で最も神聖な動物である「龍」を意味する。これは本来、「辰」という字に、大衆的にわかりやすいように「龍」という字を当てはめたもの。

中国の殷周の時代には既に地支を用いた暦が使われており、十干、十二支の組合せで60年を表していた。

 では「なぜ子丑寅なのか?」 これは諸説紛々として未だ定まらずという状態であるらしいが、我が唐漢先生は、「古人は天の動きを人間の生れてから成長の過程で表したもの」という。因みに辰年は「出生し、胎児と胎盤を分ける為、石の刀で臍の緒を分断する状態を示している」ことを指しているという。

 この唐漢氏の解釈は、突き詰めれば、天体の出来事を人間の世界の事柄で説明しようとするもので、基本的に無理がある。年賀のあいさつに使うぐらいならいいのだろうが、それ以上に拘泥するのはそろそろ脱却しなければならないだろう。

   ここでは、辰という漢字の成立ちと由来について調べてみた。



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来年の「辰」年は縁起がいいことが期待できるのか

 辰は、縁起の良い漢字としても知られている。そして辰年生まれの人は、人生が順調に進み、幸せに恵まれるといわれている。
 そこで、この迷信じみた伝聞の「辰年は縁起がいい」ことに信憑性があるのか息抜き程度に直近の100年の出来事を調べてみた。

漢字「辰年」の今

CHAT GPTに聞いてみた。

辰年(龍年)は、中国の干支(十二支)の一つで、一般的には12年の周期で繰り返されている。以下は、過去の辰年におきた大きな出来事の一部である。ただし、これは一般的な傾向であり、年ごとの具体的な出来事はさまざまだ。

  1.  1916年: 第一次世界大戦の最中に、ロシア革命が勃発し、ロマノフ王朝が崩壊。
  2.  1928年: ワーナー・ブラザースによって初のトーキー映画『The Jazz Singer』が公開され、映画産業が大きく変革。
  3.  1940年: 第二次世界大戦が勃発し、ヨーロッパや太平洋で激しい戦闘が繰り広げられた。
  4.  1952年: エリザベス2世がイギリス女王に即位。
  5.  1964年: 東京オリンピックが開催され、日本が国際的な注目を浴びる。
  6.  1976年: 文化大革命が終結し、中国が改革開放政策を導入。
  7.  1988年: ソウルオリンピックが開催され、韓国が経済的に成長し国際的な注目を浴びる。
  8.  2000年: インターネット・バブルが崩壊し、ドットコムブームが終息。 
  9.  2012年: ロンドンオリンピックが開催され、イギリスが国際的なスポーツイベントを成功裏に主催。
  10.  2024年: 未来の辰年には何が起こるかは分からないが、大きな出来事が期待される。
 このCHAT GPTの答えをどう見るかは、各人それぞれのお考えにお任せするしかない。辰年生まれの方は、いい運勢が期待できるのかもしれないが、しかし、一般論で、今年の出来事の連続性を考えると、来年はだいぶ悲観的になる。これについて論評すると、せっかく来年に期待を膨らまでている方々に冷や水をぶっかけることになりそうなので、これ以上は言わないことにする。Good Luck❣

 

タイトルにある、毎日ことばでは以下のように説明している。 「えとの「辰」は元々、ハマグリなどの二 枚貝が足を出して動く形から来ています。 後に十二支の竜に当たるとされ、一方で辰 は蜃の字に変化し大ハマグリを表すように なりました。蜃気楼はこの貝の息といわれ ましたが、蜃は竜の一種との説もあります。」(https://salon.mainichi-kotoba.jp)

2024年1月1日、2日と続けて 年明け早々とんでもない事件が発生。
   ●  能登半島北端で直下型大地震が発生。震度7以上。
     マグニチュード7.5の津波が発生
     7、80人がなくなっている。さらに被害者は増加するもよう。

   ●  1月2日 夕方4時過ぎ 
     札幌発の日本航空の旅客機が海上保安庁の飛行機と衝突。
     海上保安庁に搭乗していた5人が生じる死亡。
     日本航空側の乗員乗客330数名は奇跡的に脱出・全員無事


   干支や占いによる予測とは大体こんなものだ。可能性の一つとして、心の準備をする分には一向に差し支えない。


漢字「辰」の解体新書

漢字「辰」の楷書で、常用漢字です。
 右に「辰」の甲骨文字を示した。
 字統の説明によれば、字が蜃(オオハマグリ)の象形であることは、 ト文・金文の字形においては明らかなこととある。また漢字源によると、「辰」は二枚貝の象形だということである
辰・楷書辰・甲骨


  
辰・甲骨文字
辰・金文
辰・小篆


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「辰」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   シン
  • 訓読み   たつ

意味
  • たつ(十二支の第五位)

  •   方位では東南東
       月では陰暦3月
       時刻では午前8時。また、それを中心とした2時間。
       
  • 動物では竜(たつ)
  •  
  • さそり座の首星アンタレス

同じ部首を持つ漢字     震、娠、晨、農
漢字「辰」を持つ熟語    辰、北辰、辰砂


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漢字「辰」成立ちと由来

引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)
[辰」出生をし胎児と胎盤を分ける為石の刀で
臍の緒を分断している状態

唐漢氏の民俗的解釈

  「辰」これは会意文字である。甲骨文字中の「辰」の字には2つの書き方がある。等しく上古の先民が刀を用いて臍の緒を断ち切るという実生活上のことから来ている。第一の上部の横一は切り開くということで、ここでは分離の意味である。下部は人の両手が石の刀を取っている象形を描いているという。

その少し下部の図形は両手を前に推した形である。字形を整え、図解してみると鋭利な石刀を用いて臍の緒を裁断しているのを表示して、胎児と胎盤を分離していると読み解かれるとされる。

 金文の「辰」の字は甲骨文字の一脈を継承している。小篆は字の形は美観で、筆順は均整がとれており、まさに字形は調整されているが、しかし却って象形の趣は失われてしまっている。

 楷書はこの流れで「辰」となった。

 このように天の変化を人間の出生に見立てて考える見方は「本当かな」と思う反面、最も身近な生れるという現象で天の動きを表現するのはある意味で直感的なことでやむを得ないのかなとも思う。しかし、少し厄介なことなのは、これがある種の宗教的な思想に結びついているということかも知れない。

字統では、古代信仰と農業との結びつきを説く

 象形 蜃(オオハマグリ)の象形。 蜃蚌など貝の類が、足を出して動いている形である。字が蜃の象形であることは、 ト文・金文の字形においては明らかなことであり、許慎のときにもその字形は篆文として存するものであった。
 蜃は古く草刈りの器として農耕に用いられ、農の字もその形に従う。 それで辰に対する古代的信仰というべきものがあって、実際にこれを祭祀に供している。星宿の説が行なわれるようになった。

 なお古代遺跡からは、農作物を刈り取ったり、耕したりするために、磨き上げられたり、細工されたムール貝が発掘され、大きな貝が農具として広く使用されていたことが分かっている。

漢字「辰」と干支:Chat GPTに聞いてみた

 「辰」は、中国の干支(えと)として使用される12の動物記号の1つです。
 「辰」は、干支の中で、ドラゴン(龍)を表す記号です。ドラゴンは、中国の伝統的な神話や文化において、強大な力や尊厳、幸運を象徴する存在とされている。そのため、「辰」が干支として使用される理由は、以下のような要因に由来します:

  •  文化的な意味: ドラゴンは、中国文化において非常に重要な存在であり、皇帝や王朝の象徴としても扱われた。そのため、「辰」を干支として使うことで、この文化的な価値観や象徴が反映されている
  •  象徴的な意味: ドラゴンは力強さや神秘性を持つ存在とされ、干支の中で特別な位置を占めている。他の動物と比べて非現実的で幻想的な存在としての特徴が、「辰」が持つ象徴的な意味に影響を与えている。
  •  陰陽五行説: 中国の伝統的な哲学や思想である「陰陽五行説」に基づいて、各干支や動物記号は五行(木、火、土、金、水)に対応している。ドラゴンは「陽」に属し、五行説の要素とも結びついている。
  •  運勢と縁起: 干支は、年や日、月の動物記号を表し、各年における運勢や縁起を象徴します。ドラゴンは幸運や成功を象徴するとされ、その意味から、「辰」が干支として選ばれることで、その年の運勢や縁起を表す要素となる。

  • これらの要因が組み合わさって、「辰」が干支として使われる理由が形成されている。中国の歴史や文化、哲学などが背後にある要因として挙げられる。

漢字「辰」の変遷の史観

文字学上の解釈

 左に、漢字「農」を参考のため示す。
 漢字「農」の甲骨文字から、金文、小篆までの発展の過程を見ると、ムール貝が農具として、如何に使われて来たかが実に見事に表されている。

 事実、古代遺跡からは、研磨されて農具として使われた形跡を残すムール貝が、数多く発掘されている。



大きな二枚貝は単に農機具だけに使われたのではない

 これは、多分二枚貝からつくられた櫛状の貨幣だと思う。
 著者が南太平洋を旅した時、ある土産物屋で買い求めたものだ。想像するに、このように貝は広く貨幣として用いられている。それが証拠に、漢字には「財、貯、販、貨」などのように貝を部首にもちいている漢字が多数存在する。



まとめ

  十二支の効用は、時の流れを一二年一括りで扱いやすいようにしたことぐらいだろうか。干支の「辰」ということから出発するのではなく、漢字の辰の発生そのものを人間の歴史の中から見直してみるのもいいのかも知れない。

古代農具として重宝されてきたムール貝が、農業の発展に伴い、神聖化され、さらなる農業の発展を願って、人々は龍の位置まで崇め奉るようになった。結果として、十二支の一角の地位を占めるようになった。

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2023年11月29日水曜日

渇と乾はどう違うの: 甲骨文字の時代から二つのかわきは全く別の漢字であった


漢字「渇くと乾く」はどう違うの? 二つのかわきの漢字の成立ちと由来を探る

はじめに

 毎日ことば(2023年11月25日付毎日新聞)に掲載された記事「『二つのかわき』の解説」を取り上げ、その言葉の成立ちを深めてみたい。

二つの「かわき」について、毎日新聞では以下のように説明をしている
「かわく」には二つの意味がある。 水分のない状態を表す「乾く」と、
 満たされずに何かを切望する「渇く」である。

  • 「かわいた土地」「洗濯物をかわかす」などは 「乾く」、
  • 「愛情のかわき」「喉がかわく」 などは「渇く」を使うのが適切である。






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漢字「渇&乾」の今

漢字「渇&乾」の楷書で、常用漢字である。
 
渇・楷書


左は漢字「乾」の楷書で、常用漢字である。
 一方右の見慣れない漢字は、乾の原字で、「エン」と読み、旗竿につけた吹き流しを表している。これと乾とどう結びつくのか少し考え難いが、漢字源では「乾」と並列して説明している。  
乾・楷書





漢字「渇」の解体新書

漢字源の解釈では会意兼形声とする。
曷は「日+音符!(どなる、おとしめる)」の意。
会意兼形声文字で、本来は、はっとのどもとをかすれさせてどなることをあらわす。
 渴は「水+音符曷」で、水がかれて流 れがかすれること。また、水けがなくなってのどがかれることをあらわす。
 
渇・金文


「渇」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   カツ、カチ
  • 訓読み  かわく

意味
  • かわく、のどがかわく
  •  
  • かわき、のどのかわき、切実な要求
  •  
  • あわてて、がつがつして、
  •  
  • 動詞 かれる、みずがかれる

同じ部首を持つ漢字     渇、褐、葛、喝喝
漢字「渇」を持つ熟語    渇、渇望、枯渇、渇水


漢字「乾」の解体新書

漢字源によると2款があるようで、第一系列は旗が高くなびくさまを示す。
もう一つは太陽が旗の ように高くあがるさまを示した。高く明るくかわくの意を含む。  

乾第1款・金文
乾第2款・金文
乾・小篆


 

「乾」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   カン
  • 訓読み   かわく

意味
  • かわく、ほす
  •  
  • 血のつながりのない
  •  
  • 旗がひらめく
  •  
  • 高く、明るい、強い天

同じ部首を持つ漢字      幹、倝、韓
漢字「乾」を持つ熟語    乾、乾燥、乾児:血のつながりのない子、乾漆


**********************

漢字「渇&乾」成立ちと由来

漢字「渇」の解釈

字統P113参照

 会意兼形声文字で、本来は、はっと喉もとをかすれさせてどなることをあらわす。
` 渴は「水+音符曷」で、水がかれて流れがかすれること。また、水けがなくなって喉がかれることをあらわす。







漢字「渇&乾」の変遷の史観

文字学上の解釈

 漢字「乾」:会意 倝と乙とに従う。倝は旗竿の形、乙はそれにつけた吹き流し、すなわち偃游の形で、旗の高くひらめくさまをいう。同じ「かわく」といえ、「乾」は「渇」と違って、喉がかわくといった生理的な意味は文字の発生時からまったく持ち合わせていない。「乾」は、甲骨文字の時から、旗竿につけた吹き流しが、翩翻と風になびいて乾いているさまを示したものであることがよく理解できた。



まとめ

  

 現代では、漢字「渇く&乾く」は、発音が同じ発音でもあり、日本人には、その区別はし難いものである。しかしその由来にまで遡れば、違いは歴然としている。だからどうなんだという声も聞こえてきそうだが、だからこそ漢字の世界は奥が深いと教えてくれた漢字である。

  


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2023年11月1日水曜日

漢字「聖」の成立ちと意味するもの:人は只聞こえるレベルから聖人の話を拝聴するレベルに到達したのか?


人は如何に「きこえる」レベルから神に近いレベルの発話者の話を傾聴する「聖」にまで到達したのか

 前回、漢字「聖」が聞や聴と同じ一つの系統に属することを知り、目からうろこの感じがしたのだが、今回はその「聖」に焦点を当て、聖の成り立ちや由来に迫ってみよう。


 話変わって、11月11日はキリスト教徒では特別の日で、【万聖節】というのだそうで、そのことが毎日新聞のコラムに掲載されていたので、引用する。

 第826回 「毎日ことば」 解説

きょうが特別な日
 ばんせいせつ【万聖節】 キリスト教 で聖人たちを記念する祝祭。この場合の万 は「全ての」、節は「特別な日」との意味 です。「諸聖人の祝日」などともいい、カトリックでは11月1日。
 ハロウィーンはその前夜祭ですが、日本ではそちらが有名に。
https://salon.mainichi-kotoba.jp




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漢字「聖」の今

漢字「聖」の解体新書


漢字「聖」の楷書で、常用漢字です。
 
聖・楷書


 
 「きく」ことを表す漢字であるが、只きこえることを表す漢字「聞」から出発し、拝聴するの「聴」を経由し、神に近いレベルにまで達した人間の話にききいる「聖」までの変化をよく見ていただきたい。 
聞・甲骨文字
聴・金文
聖・小篆


 

「聖」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   セイ、ショウ
  • 訓読み   ひじり

意味
  • 物事の筋道を立てて、偏ってなく、高潔である状態
  •  
  • 清らかな。汚(けが)れがない。美しい。濁った所がない。透き通っている (聖域)
  •  
  • 天子(国を治める最も地位の高い人)。また、天子に関する物事の上に付ける語」(例:聖断)。
  • 詩人・杜甫のことを詩聖と呼びます

異体字     琞、垩
同じ部首を持つ漢字     聞、聡、聲、職
漢字「聖」を持つ熟語    聖、聖断、聖域、聖人


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漢字「聖」成立ちと由来

引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)

唐漢氏の解釈

 甲骨文の形は、人が耳を立てて人の教えを注意深く聞いているようなもので(耳の下に「口」があります)、聞いたことをはっきりと話す、つまり「聞く」という意味とも取れます。わかりやすく、わかりやすく説明すること。 金文は甲骨文から引き継がれていますが、「耳」の下の人型がわずかに変更されています。
小篆書の形は、「耳から嘉文へ」という意味に進化しました。小篆書の全文。楷書の口は壬の音から来ています。「壬」はここでは口と耳の間を「通過する」という意味です。 そのため、楷書は「聖」と書かれ、現在は「圣」となっています。


漢字「聖」の字統の解釈

 会意 旧字は耳と王と口とに従う。耳と王とは耳 を強調した人の形。壬は呈(呈)・逞・望(望)の字の従うところで、人のつま先立ちする形。口は、サイ、祝禱を収める器である。
聖は祝稿して祈り、耳をすませて神の応答するところ、啓示するところを聴くこ とを示す字で、聽(聴)の従うところも聖と同じ。 聞の卜文も、人の上に耳をかく形である。祝祷し 神の啓示するところを聞く者はその神意にかなうものとされた。

漢字「聖」の漢字源の解釈

 会意兼形声。壬は、人が足をまっすぐのばしたさま。呈 は、それに口をそえて、まっすぐ述べる、まっすぐさし出すの意を示す。聖は「耳+音符呈」で、耳がまっすぐに通ること。わかりがよい、さといなどの意となる。



漢字「聖」の変遷の史観

文字学上の解釈

  字統の説明《聖は西周期の金文にみえ、〔班段〕「文王王の聖孫」、〔師望鼎〕「王、聖人の後を忘れず」、〔師詢段〕「乃の聖なる祖考」のように、その家系を尊んで特に聖の字を加えている。 また〔史牆盤〕「憲聖なる成王」と、その徳を讃して聖武・哲聖のようにもいう。本来は聖職者をいう 語であったものが、ひろくその徳性をいう語となり、 西周後期にはすでに多くの人に用いられる語であったらしい。(紀元前1100年頃 - 紀元前771年:筆者)
 〔詩、小雅、正月〕に「具予をば聖なりと謂ふも誰か鳥の雌雄を知らんや」の句がある。 人はみな、自ら聖と称してはばからなかったのであろう。》

 といっても始皇帝の中国統一に先立つこと500年まさに戦国時代の真っただ中、群雄が覇を争っていた時代である。群雄の覇者は自らのアイデンティティーを求めて苦労していたが、その一つに軍事的な力以外に拠り所の一つとなった概念であったのかもしれない。

 そしてついにこの概念を哲学的な体系の中に組み込んだのが孔子であった。ここまで考えると漢字「聖」という言葉一つにしても、それなりの歴史的背景を担っていたのだという感慨を受ける。


まとめ

 ただきこえることを表す漢字「聞」から出発し、拝聴するの「聴」を経由し、神に近いレベルにまで達した人間の話にききいる「聖」まで後付けてきた。聞くという行為だけでも、発話者の権威を高めることの背景に社会の階級分化が事が伺える。この間、約1000年の時間的経過を経ている。文字の変化が歴史的時間経過に必ずしも同期するものではないが、おおざっぱな歴史的経過をたどるには役に立つのかも知れない。
  


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2023年9月8日金曜日

漢字「伺」と「窺」ではどう違う


漢字「伺」と「窺」は使いかたを誤ると大喧嘩になることもあり要注意!


導入

前書き

 少し前に毎日新聞に、「伺と窺」についての短いコラムが掲載されていました。
その解説によると窺うと伺うは、どちらも「うかがう」と読みますが、そのニュアンスには微妙な違いがあり、

 
  • 伺うは、聞く、尋ねるという意味あいが強く、
  • 窺うには察する、推察するという意味合いがあります。 又窺うには陰に隠れてこそこそというニュアンスもあり、あまりいいようには使われていないようで、「スパイ」という訳まであります。

目次


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漢字「伺と窺」の今

漢字「伺と窺」の解体新書


 
漢字「伺と窺」の楷書で、常用漢字です。
 「伺」と「窺」は、ともに日本語の漢字で、「うかがう」と読むことができますが、微妙な違いがあります。
伺(うかがう):「伺う」は謙譲語であり、相手を敬うために使用されます。具体的には、尊敬や敬意を表す場面でよく使われます。例えば、目上の人に尋ねる際や、訪問する際に使われることが多いです。

窺(うかがう):「窺う」も「伺う」と同じく「うかがう」と読みますが、こちらは覗き見る、うかがい知るといった意味合いがあります。他人の行動や心情を探る際に使われることがあります。少し探りを入れるような意味合いがあるため、ややニュアンスが違います。「隙を窺う」

伺・楷書窺・楷書


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「伺と窺」の違い

司は祝疇の器を開らき見る意で、もと神意を伺う意がある。 〔説文新附〕「候望するなり」とするが、遠方を望む意ではなく、もと祝禱を啓いて神意を伺う意。

「窺」:「穴」+「規」からなる。規々に局・区々の意があり、小さなところでこせこせする意をもつ。

伺・小篆

窺・小篆


 

「伺と窺」の漢字データ

「伺」漢字の読み
  • 音読み   シ
  • 訓読み   うかがう

意味
  • 人の心をおしはかる(推測する)
  • 「注意を集中してよく聞こうとする」
  • 「世話をしたりするためにそば近くに控えている」
同じ部首を持つ漢字     祠、詞、
 漢字「伺」を持つ熟語    伺、伺候、伺察、


「窺」漢字の読み
  • 音読み   キ
  • 訓読み   うかがう

意味
  • うかがう・のぞく(目上の人の様子を見る
  • 「そっと見る」  (例:窺伺)
  •  みる(視)    (例:窺見)
同じ部首を持つ漢字     規、穴、
 漢字「伺」を持つ熟語    窺、窺伺、窺見、窺知

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漢字「伺と窺」成立ちと由来

「伺と窺」の双方の漢字共に甲骨文字は見つかりませんでした。つまりこの時代には、「伺と窺」の文化はまだ芽生えてなかったのかもしれません。このように謙譲の態度をとるとか、相手の対応して態度を変えるという文化はまだ発達してなかったのかも知れません。



漢字「伺と窺」の字統の解釈

伺: 形声 声符は司。司は祝疇の器を開らき見る意で、もと神意を伺う意がある。
〔説文新附〕「候望するなり」とするが、遠方を望む意ではなく、もと祝禱を啓いて神意を伺う意。

 のち候覗の意となり、〔史記、伍子胥伝」 「人をして微かに之を何はしむ」のように用いる。また 尊上に侍することを伺候という。魂と通用するが、魂を伺候の意に用いることはない。

 一方「窺」については、 形声 声符は規。〔説文〕 に「小しく見るなり」とあり、のぞき見る意。 [老子〕 第四十七章「戶を出ずして天下を知り、をはずして天道を知る」とみえる。規々に局・区々の意があり、小さなところでこせこせする意をもつ。窺はおそらくその声義を承ける字であろう。身分不相応のことを望むのを 窺爺といい、字はまた覬覦に作る。覬と通用する字である。


漢字「伺と窺」の説文解字の解釈

  1. 伺: 【人部】 编号:5183 伺,𠊱望也。从人司聲。自低已下六字,从人,皆後人所加。
  2. 窺: 【穴部】 编号:4637 窺,小視也。从穴規聲。



漢字「伺と窺」の変遷の史観

両者とも「うかがう」と読むが、その成り立ちはは全く異なり、
 伺はその旁に「司」(司は祝疇の器を開らき見る意)を持つのに対し、
 窺はその旁に穴を持ち、穴の中で規(小さなところでこせこせする意)を持つ。

まとめ

 伺う:神にお伺いを立てる
 窺う:様子を窺う

  


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