2021年12月17日金曜日

漢字 金:昔から人々をとらえて離せないもの「金」それは羨望の果てに欲望がある


漢字「金」:今年の漢字に選ばれたには理由がある
 今年の漢字は「金」に決まった。 2000年、12年、16年に続き4回目。
 日本漢字能力検定協会は、応募者が「金」を選んだ理由の概要として、東京五輪で日本人選手が多数の「金」メダルを取ったことや、大谷翔平選手が大リーグでMVPを獲得、藤井聡太さんの最年少四冠達成など各界で「金」字塔を打ち立てたことなどを列挙。さらに給付「金」や新紙幣、新硬貨などお「金」にまつわる話も話題に上ったことを挙げている。
過去3回の「金」が選ばれた理由は、以下の通り

  1. 2000年・・・理解できない公的資金の使途、相次ぐ金融機関の破綻や再編成、品質管理を怠りその事実を隠してまで販売(金優先)を続けた大企業に憂いを感じたことなどから、“金に明け、金に暮れた年”“悲喜こもごもの一年”“嬉しい金と悲しい金”などという表現が多く見受けられました。

  2. 2012年・・・ 金環日食などの天体ショーが見られた、数々の金字塔が打ち立てられた。(東京スカイツリー、ロンドンオリンピックで史上最多のメダルなど等、政治で金の問題が表面化

  3. 2016年・・・リオオリンピックでの金メダルラッシュ、東京都知事選挙での選挙資金問題、イチロー選手の金字塔、スポーツ界に新たな金字塔、マイナス金利初導入、シンガーソングライターの金色衣装などにも注目が集まった。

  4.  こうしてみると世間の関心事は、実際の金そのものではなく、オリンピックでアスリートたちが勝ち取った栄冠の結果としての金メダルに集まり、片や自分たちの生活とはかけ離れた世界の金の流れに関心が集まるようである。
     漢字「金」とは、それを「キン」と呼ぼうが、「カネ」と呼ぼうが、そここから頭に浮かぶことは、自分の生活に関係のない物事を目に浮かべ、あこがれと蔑視を同時に感じるようである。

 


この記事は以前にアップしたものをリバイスしたものです。

漢字「金」の楷書で、常用漢字です。
 上部は「今」で、語義は、貴金属の金、貨幣の「かね」を表します。

 「金」という文字はやはり不思議な力を持つようで、片や多くの人々のあこがれであるし、方は底知れぬ力で、人々を支配するものです。

 しかしそういった力は「金」に最初からあったわけではなく、資本主義の世の中で、金本位体制が長く続き、金が資本として、世界を君臨してきたからでしょう。

 そして漸く資本主義の終焉が叫ばれてきてはいますが、さて「新しい資本主義」が岸田内閣のいうようにやすやす実現できる代物ではないことは、岸田首相やその他世の中のほとんどの人にはわかっている話ではないでしょうか。
金・楷書






  
金・甲骨文字
上部は銅液の流出を表し、下部は「火」を表し、全体として溶錬を示す
金・金文
下部は一つの書き方では土から出来ている。即ち土(鉱石のことを示しているが)の中から冶煉で出来たことを示している。
金・小篆
金文を受け継ぎ、「今」と「土」と二つの点から出来た会意文字


    
    


「金」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   キン・コン
  • 訓読み   かね・こがね

意味
     
  • 材質
  •  
  • 貨幣を表す
  •  
  • 反射光を持つ黄色 

同じ部首を持つ漢字     銅、鉄、
漢字「金」を持つ熟語    金色、金環、金字




引用:「汉字密码」(P774、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 金は古代にあっては銅のことを称していた。その後金属類の総称となり、最後にはやっと専ら黄金の名前となった。

 甲骨文字の「金」の字は上下部の繋がった構造となっている。下辺は「火」であり、火で熔煉を表した。「金」の字の本義は銅であり、青銅の銘文の中で「吉金、赤金、美金」などから分かる。この中の「金」は全て銅を指している。

 


漢字「金」の漢字源の解釈
 会意兼形声。今は「抑えた蓋+一」から成る会意文字で、何かを含んで抑えた形を表す。「金」は「点々のしるし+土+音符今」で土の中に点々と閉じこもって含まれた砂金を表す。


漢字「金」の字統の解釈
 象形文字:銅塊等鋳込んだ形。説文に「五色の金なり」とし、金の土中にある形に今声を加えた形とするが、字は今声に従うものではない。金文の字形は全形の左右に楕円形の小塊二を添えている。


まとめ
 近頃の金の高騰を受け、メルカリには金塊が多く出品されているそうだが。その殆どのものは「銅」の合金である「黄銅」だそうで、悪徳業者が世にはびこる世の中だ。十分注意あれ。



「漢字の起源と成り立ち 『甲骨文字の秘密』」のホームページに戻ります。

2021年10月11日月曜日

漢字・好が生成された時代は社会が母系制にあった時代? 男社会からは「好」=好き・美くしいなどという発想は出て来ないのでは


漢字・好の成り立ちと由来:「女+子」から成り立つことに異論はない。しかしその漢字の生成過程は時代背景が母斑のように色濃く残されている!
婦好墓
河南省・安陽の殷墟跡に建つ
婦好像
 社会が母系制であったことの名残りか。母は子供を育て、母をアイデンティティーとして成り立っていた、社会が成立していた。近年、殷墟で「婦好墓」が発掘され、多数の遺品が出土している。殷は「子姓」の国とされ、好はその子姓を示す字と考えられている。殷自体は既に家父長制に移行して長い時間がたっていたであろう、この婦好墓は移り行く変遷の名残りかも知れない。

 この婦好遠い鵜女性は伝承によると、ジャンヌダルクのような女性で、多くの兵士を従え、遠征に出かけていたという」。


漢字「好」の楷書で、常用漢字です。
 右側は「卩」で語義は、跪くひとを表すということです。
好・楷書


  
好・甲骨文字
「女+子」
好・金文
女の字は変化し、手を前で合わせ、裾を抑えた様子をしめす
好・小篆
文字として形が整えられている。


    


「好」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   コウ
  • 訓読み   この(み)、す(き)

意味
     
  • よい(感じがいい、立派な
  •  
  • 好き・すく  ①人や物事に心が引きつけられる」、②魅力を感じる
  •  
  • 好む

漢字「好」を持つ熟語    美好、好色




引用:「汉字密码」(P553、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「好」、これは会意文字です。 甲骨と金文のスクリプトは、「女性と子」という2つの絵文字で構成されています。 ここで「女性」とは女性、「子」とは子供を意味します。
  古代の祖先の目には、子供を持つことができた女性は一族の人口を繁栄させ、母性の血統を代々伝えましたが、「優秀で美しい」女性でした。

 たとえば、甲骨文字の「婦好」という名前には、多産の意味が含まれており、特に優れた子供を出産した母親を指します。

 王権の家父長制が確立された後、「好」の意味は転移し美しさを指すことになった。「善」の意味が変わった。 《方言•卷二》は「自ずと西に関し、秦、晋まで、凡そ美しいことは好という」と書いてあります。
 漢楽府の《陌上桑》:"秦氏有好女,自名为罗敷。“その中の「好」は「美」と解釈されます。 好人好事,好事多磨の中の「好」は即ちこれ「美」の意味の拡張で、その中には「善」という意味を含んでいます。善人、善物、善物は「善」を意味し、これは「美」の意味を拡張したものであり、「善」の意味を含み、坏、歹とは対照的です。不识好歹,不知好坏(良いか悪いかわからない、良いか悪いかわからない)など。



漢字「好」の漢字源の解釈
 会意文字:「女+子」、女性が子供を大切にかばってかわいがる様を示す。大事にしてかわいがる意を含む。


漢字「好」の字統の解釈 290ページ
女と子との会意文字: 説文に「美なり」とあり 美好の意とする。卜文に女を母の形に作り、あるいは子を抱く形に作るものがあって 婦人がその子女を愛好することを示す字である。


まとめ
 「好」という字の持つ優しさ、美しさはいかにも女性的発想と考えるが、如何なものだろう



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