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2025年3月26日水曜日

漢字の金の起源と現代社会での金:金(Gold)の高騰はいつまで続く?

漢字『金』の起源と現代社会への影響そして、金の価値は昇り続けるのか

 

漢字『金』の歴史とその社会的影響について詳しく解説します。

 紀元前3000年前に早くもゴールドラッシュが起きていた??

 これまでにも世界各地でゴールドラッシュが報告されており、非常に多くの人々が一攫千金を求めて、鵜の目たかの目で金鉱山を探し回っています。
 現在では金は貨幣や装飾品に留まらずICチップや集積回路などに広く使われその需要はますます高まっています。

 つい先ごろ「中国の 湖南省 地質院は21日、同省平江県で40本以上の金の鉱脈を発見したと発表した」というニュースが世界を駆け巡りました。 その一方で金の採掘選鉱のため水銀が使われていますが、その水銀汚染のためアマゾン流域はずいぶん汚染され、流域の原住民の人々は『水俣病』に侵され苦しんでいると聞きます。

 その一方でGoldの価格は高騰し続け、世界中がある種のGoldラッシュの真っ只中の中にあり、その騒ぎは留まるところを知りません。  


このページは当ブログのコンテンツ

2025年 2月版  「人間の欲が社会の中で突き進む姿を漢字から探る」
2021年12月版 「漢字「金」:今年の漢字に選ばれたには理由がある」

の2回のReviseを経て、より分かりやすく、より読者の方々の疑問に答えることができるようVersionUPしたものです。 


このページ「漢字『金』の起源と現代社会への影響]を通して分かること

このページから分かること

  • 「金」という漢字の由来と成立ちが分かる
  • 人間の社会と金のかかわり 金が人間社会にどう影響を与えてきたか
  • 社会の変化と漢字  「きん、かね」を通して見る
  • 社会の変化と価値観の係わり 価値観の変化は社会の変化
  • 現代社会の歴史的位置づけ いま社会は歴史的にどこに位置するか
  • 未来社会がどう動くかの予測

金と価値観を見る視点

 近年世界的に価値観の変化が起こっているとよく言われます。
 誰もがその言葉に納得し、そこである意味思考を停止してしまっている感があります。

価値観が変わるというとき、具体的にどの「価値」が変化しているのかは、社会や時代によって異なります。 また価値観の変化は、テクノロジーの進化、経済の変動、グローバル化などの影響を受けて生じます。
 どの価値が変わっているかを考えるときは、具体的な分野を見ていくとわかりやすいですね。
 ここは漢字のページですから、ここではその価値観を「金」(かね、きん)に絞った上で、漢字の「金」を通して見つめなおしたいと思います。しばらくお付き合いください。

目次




**********************
この記事は以前にアップした2021年版「漢字「金」:今年の漢字に選ばれたには理由がある」をリバイスしたものです。

漢字「金」は古代から現代までどのように変化したか

漢字「金」の楷書で、常用漢字です。
 上部は「今」で、語義は、貴金属の金、貨幣の「かね」を表します。

 「金」という文字はやはり不思議な力を持つようで、片や多くの人々のあこがれであるし、方は底知れぬ力で、人々を支配するものです。

 しかしそういった力は「金」に最初からあったわけではなく、資本主義の世の中で、金本位体制が長く続き、金が資本として、世界を君臨してきたからでしょう。

 そして漸く資本主義の終焉が叫ばれてきてはいますが、新しい世界は目の前に姿を現しません。共に新しい世界を探ろうではありませんか
金・楷書







漢字「金」のはどう変化したか


  
金・甲骨文字
上部は銅液の流出を表し、下部は「火」を表し、全体として溶錬を示す
金・金文
下部は一つの書き方では土から出来ている。即ち土(鉱石のことを示しているが)の中から冶煉で出来たことを示している。
金・小篆
金文を受け継ぎ、「今」と「土」と二つの点から出来た会意文字



    


    



「金」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   キン・コン
  • 訓読み   かね・こがね

意味 
  • 材質
  •  
  • 貨幣を表す
  •  
  • 反射光を持つ黄色 

同じ部首を持つ漢字     銅、鉄、
漢字「金」を持つ熟語    金色、金環、金字

漢字「金」成立ちと由来の解説

引用:「汉字密码」(P774、唐汉著,学林出版社)
漢字「金」の「漢字の暗号」の解釈
 金は古代にあっては銅のことを称していた。その後金属類の総称となり、最後にはやっと専ら黄金の名前となった。

 甲骨文字の「金」の字は上下部の繋がった構造となっている。下辺は「火」であり、火で熔煉を表した。「金」の字の本義は銅であり、青銅の銘文の中で「吉金、赤金、美金」などから分かる。この中の「金」は全て銅を指している。
 


漢字「金」の漢字源の解釈
 会意兼形声。今は「抑えた蓋+一」から成る会意文字で、何かを含んで抑えた形を表す。「金」は「点々のしるし+土+音符今」で土の中に点々と閉じこもって含まれた砂金を表す。


漢字「金」の字統の解釈
 象形文字:銅塊等鋳込んだ形。説文に「五色の金なり」とし、金の土中にある形に今声を加えた形とするが、字は今声に従うものではない。金文の字形は全形の左右に楕円形の小塊二を添えている。


金(きんとかね)と社会の変化

「金」以前の貨幣

人間の社会が形成されるまでの歴史を振り返る
旧石器時代(Paleolithic Age)時代区分:約250万年前~1万年前
今から約250万年前類人猿としてではなく人類としてこの地球上に現れて一万年前までの長い長い期間、打製石器(石を打ち砕いて作る石器)を用いて、狩猟・採集が中心(遊牧や農耕はまだない)にして、洞窟や簡易な小屋を利用しながら家族などの極めて小さなまとまりで狩猟採集を主体とした移動生活を送っていました。
 このころの世界はある意味平和で、人々は自然に対する闘いは熾烈を極めていたかもしれませんが、少なくとも、人間同士の戦いや争い、戦争もそれほど多くなかったのではないかと考えられます。

新石器時代(Neolithic Age)時代区分:約1万年前~紀元前3000年頃(地域によって異なる)

  1. 石器の進化:磨製石器(石を研磨して作る石器)を使用
  2. 土器の使用:食料の保存や調理のために土器が作られる
  3. 農耕・牧畜の開始:小麦・大麦の栽培、家畜の飼育(ヤギ、牛、羊など)
    農耕・牧畜が始まったことが今後のあらゆる面での大変革となりました。
  4. 農耕が発展し生活が安定したことにより、余剰が産出され、富の集積がはじまり、力の強いもの、大家族が独占的に富を集積するようになりました。
    このことは奴婢や奴隷を持ちその労働を収奪することで、いっそうの富の集積が可能となり、奴婢や奴隷の獲得を求めて、争いや侵略や略奪が起こるようになりました。

  5. 定住生活:農耕による食糧供給の安定により村落が形成される  

  6. 社会の変化:階層社会の形成、交易の発展
     農耕の始まりはそれまで続いてきた母系制社会の崩壊を意味し、妊娠や子育てに多くの労力をとられる女性に変わり、腕力が強い自由度の高い男性が次第に力を得るようになり、社会は父系制社会へと変貌することになります。それはその後も続き秦の始皇帝の時代で完成することとなります。
    旧石器時代は「狩猟採集を主体とした移動生活」、新石器時代は「農耕牧畜を伴う定住生活」

    この変化は氏族制度の始まりとほぼ一致します。
    • 始まり:紀元前8000年頃(新石器時代の初期、農耕開始とともに)
    • 発展:紀元前5000年頃〜3000年頃(部族の形成と階層化) 
    • 完成:紀元前3000年頃〜1000年頃(氏族社会が貴族支配の国家へ移行)

    つまり、氏族社会は新石器時代に始まり、青銅器時代〜鉄器時代にかけて階層化が進み、最終的には王権を中心とした国家形成へと移行 していきました。 この男性有利の社会は3000年後の今日まで依然として続き、近年ようやく変化が見え始めているといっていいでしょう。


  ここで改めて、「社会のあり方」に基づいて時代区分を整理すると、以下になります。
狩猟採集社会(平等・移動生活)旧石器時代、新石器時代 農耕牧畜社会(定住化・階層化の始まり)氏族社会、青銅器、鉄器時代
国家形成社会(都市・階級社会・文字の発明):(紀元前3000年ごろ~中世
封建社会(領主制・宗教支配・商業発展):(中世~近世、5世紀~18世紀)
産業社会(資本主義・民主主義・機械化):(18世紀~20世紀半ば)
情報社会(IT・グローバル化・知識経済):(20世紀半ば~現在)
ポスト情報社会(AI・自動化・未来の可能性):(未来予測)(21世紀後半以降、予測段階)


「金」貨幣及び金の価値の変遷

 以上のような歴史的変遷の中で、氏族社会が生まれ貧富の差が生じ、階層が生まれ富が蓄積されるようになっても、金や貨幣が実際に流通の中で用いられるようになるのは紀元前1000年あたりまで待たなければなりませんでした。

貝による貨幣
貝による貨幣(南海諸島にて購入)

 交易がおこなわれようになった最初のころは貨幣は貝殻でできたものでした。その貝も二枚貝で子安貝のような種類が多く使われたといいます。これは貝は手に入り易かったからでした。

 したがってこのころできた古代の漢字には「貝」が使われており、私達も現在「財、貨」などの多くの漢字にそれを見ることができます。

 さらに紀元前1500年前の殷や周の時代には漢字の「金」という字は既に使われていましたが、このころの「金」という文字は実際にはGoldの金ではなく、銅の合金である黄銅を指していたということで、今の「金」が実際に使われるようになったのは、もうしばらく後のことになります。



地図の中にある緑の旗印が古代都市「ウル」

 人類が最初に金を採掘したのはメソポタミアの北部や東部の山岳地帯にある金鉱脈で古代から金が採掘されていたのではないかと言われています。

 人類と金の係わりは古くメソポタニア文明の栄えた今から約6000年ほど前、シュメール人が現代のイラク南部に位置する古代都市「アッカド」や「ウル」の近郊で金の採掘をしていたという記録が残されています。



 中国における金の採掘は、少なくとも商王朝(紀元前1600年頃 - 紀元前1046年頃)の時代には始まっていたと考えられています。
 各地で金鉱山の開発が活発化しました。中国における主要な金産地は、山東省、河南省、江西省、雲南省などです。

 これらの金は王侯貴族の装飾品として用いられており、金が貨幣として用いられるようになるのは、春秋戦国時代になってからになります。それでも、金は流通貨幣というより、財貨として蓄財に重宝されたようです。



春秋戦国時代の刀銭

  貨幣が経済活動を支える重要な役割を果たすようになるのは、春秋戦国時代(紀元前771年 - 紀元前256年)に入ってからになります。
 銅貨の半両銭を貨幣重量の基準とした(しかし流通貨幣としては統一されなかった)等を経て、漢〜唐が銅貨の五銖銭が王朝を超えて発行されるようになってようやく貨幣が本格的に流通することになります。






価値観の変遷と社会の向かう先

金に対する価値観は、歴史的に大きく変化してきました。

  • 古代 金は、その希少性と美しさから、古代文明においてすでに特別な価値を持っていました。
    装飾品: 金は、その美しい輝きから、装飾品として珍重されました。
    貨幣: 金は、その高い価値と安定性から、貨幣としても使われました。
    権力の象徴: 金は、その希少性から、権力や富の象徴としても使われました。

  • 中世 中世ヨーロッパでは、金はキリスト教教会や王侯貴族の財産として重要視されました。
    中世は基本的に封建制を基盤とする仕組みで、経済は土地・荘園に基づく農業でした。
    教会の装飾: 金は、教会の装飾や祭具として使われました。
    王侯貴族の財産: 金は、王侯貴族の財産として蓄えられました。
    錬金術: 中世ヨーロッパでは、金を生成しようとする錬金術が盛んに行われました。

  • 近世 大航海時代以降、ヨーロッパ諸国は、金や銀を求めて世界各地に進出しました。
    マルコポーロの「東方見聞録」が書かれ、日本が黄金の国として世界に登場しました。
    世界は全体主義国家に大きく舵を切り、それまで行われていた「土地の囲い込み運動」は影を潜め、逆に囲いを取っ払い統合し新しい世界の構築が模索されるようになりました。
    ヨーロッパでは宗教改革が起こったのも、宗教の壁を取り除きより多くの利潤を求める人間のあくなき欲望の表れともいえるでしょう。
    アメリカ大陸が発見され、アフリカ大陸が植民地として蚕食され、悲惨な結果を招きました。
    重商主義: 重金主義金や銀の蓄積は、国家の富の象徴と考えられました。
    植民地支配: 金や銀を求めて、多くの国が植民地支配を行いました。



  • 現代社会と「金」

  • 現代現代社会では、金は投資対象としての価値が注目されています。
    中世と近世で人間は地理的に拡大しつくし、拡大の余地がなくなってしまいました。
    次に資本が目に付けたのは国境をなくし、手さらなる利益の増殖を図ることでした。
    結果として、グローバリズムが叫ばれ、企業が国境の壁(規制)を取り払ったり、緩和させたりしました。
    人間の欲望はそれに飽き足らず、リアルの世界とバーチャルの世界の壁を取り払い更なる増殖を図っています。
    ドルの金本位体制が崩壊した今日、金は基軸材として機能していますが、今や仮想通貨がリアルの通貨の流通量を上回っている現実があります
    仮想通貨を流通させるプラットフォームのヘゲモニーをどこが握るかの争いになっています。
    インフレヘッジ: 金は、インフレに対するヘッジとして、投資家によって買われます。
    安全資産: 金は、世界経済の不安定化時に、安全資産として買われることがあります。
    宝飾品: 金は、宝飾品としても人気があります。


  • 先日U-tubeで「令和の虎 Tiger Funding特別編【FULL】」という番組で、成田悠輔さんが出演され、「世界から「お金」はなくなる。稼ぐより踊れ!」とプレゼンテーションされていました。
    これは、成田悠輔さん新刊『22世紀の資本主義 やがてお金は絶滅する』(文春新書)を受けての番組でした。
     大雑把に言うと、近未来社会で資本主義の発達?終焉と情報化社会の出現でお金そのものがなくなると同時に選挙制度などもなくなるというものでした。

     これは少しニュアンスが異なりますが、マルクスが資本論で唱えていたことと非常に似通っていたように思いました。

     このように、近い将来社会が大変動を起こし、それこそ、価値観も激変するということが最近よく聞かれるようになりました。
       これに対する備えは別として、私たちはまさしく歴史的な社会変動の正に入り口にいることだけは、認識しておいた方がいいのかもしれません。


  • 金の価格は今後とも上昇し続ける!?

    金の価格変動


    金の価格変動
    近年世界経済が安定しないとか、為替リスクが高まってきた事や、ICチップの素材としての需要の高まりなどの要因により、金(Gold)の需要が逼迫しているようです。そのため金の価格が高騰して、この5年間でほぼ倍近くになってきています。各国とも生産に力を入れてきているようですが、この傾向はしばらく続きそうです。そこで、金(Gold)の価格の変動をグラフにしてみました。




    金の価格変動の統計指標の推移の統計上の予測と経済に与える影響について

    以下考えられる要因と予測とリスクヘッジ及び見通しを考えられる限り、AIと相談をしながらではありますが、無い知恵を絞って考えてみました。



    金の価格変動の主な要因

    • 世界経済の不確実性:
      経済危機、インフレ、デフレなどの経済状況は、投資家のリスク回避姿勢を強め、安全資産である金への需要を高めます。
    • 地政学的リスク:
    • 戦争、テロ、政治的緊張などの地政学的リスクは、金の価格を押し上げる要因となります。
    • 米ドルとの関係: 金は米ドル建てで取引されるため、米ドルの価値が下がると、相対的に金の価格が上昇します。
    • インフレヘッジ: インフレが進むと、現金の価値が下がるため、インフレヘッジとして金への需要が高まり、価格が上昇する傾向があります。
    • 中央銀行の政策: 各国中央銀行の金融政策、特に金利政策は、投資家のリスク選好に影響を与え、金の価格に影響を与えます。

    金の価格変動の統計上の予測

      金の価格は、これらの要因が複雑に絡み合い、予測が難しいとされています。
      しかし、長期的な視点では、世界経済の不安定化、地政学的リスクの高まり、インフレ懸念などから、金の価格は上昇傾向にあるという見方もあります。 近年では、各国中央銀行が金融準備資産として金の保有量を増やしていることも、金価格を押し上げる要因となっています。

    経済に与える影響

     

    リスクヘッジ

    • インフレヘッジ: 金はインフレヘッジとして機能し、インフレ時には資産価値を守る役割を果たします。
    • 安全資産としての役割: 経済や政治の不確実性が高まると、投資家は安全資産である金に資金を移し、金融市場の安定に貢献します。
    • 金融市場への影響: 金の価格変動は、他の金融市場、特に株式市場や債券市場に影響を与える可能性があります。
    • 各国の金融政策への影響: 金の価格高騰は、各国の金融政策に影響を与える可能性があります。例えば、金の価格高騰はインフレ懸念を高め、中央銀行が利上げなどの金融引き締め政策を実施する要因となることがあります。


    • 今後の見通し

      今後の金の価格は、世界経済の動向、地政学的リスク、米ドルの価値、インフレ率、各国中央銀行の政策など、多くの要因によって左右されると考えられます。 これらの要因を総合的に判断し、慎重に投資判断を行う必要があります。

      注意点 金の価格は常に変動しており、予測はあくまで参考情報です。 金への投資にはリスクが伴います。投資を行う際は、十分な情報収集とリスク管理が必要です。

           

      まとめ

       以上のように漢字「金」という一文字についても、その変化の背景には長い歴史的、社会的変化、変遷の過程があり、漢字の持つ奥深さがよく理解できると思います。
      金に対する価値観は、時代とともに変化してきました。古代から中世にかけては、装飾品や貨幣、権力の象徴として重要視され、近世には国家の富の象徴として注目されました。現代では、金に対する価値観の変化に留まらず、バーチャルな世界に対する骨肉の争いも問われている中で、アメリカではトランプ政権が「アメリカ第一主義」を唱えて、登場しましたが、「アメリカ唯一主義」ではないかと疑わせる主張で、世界に混乱を巻き起こしています。
       価値観の変化は社会の変動であり、私たちは今後世界はどちらに向かうのか目先の事柄に囚われることなく、しっかり監視しなければなりません。自らの生き残りをかけて!

        


      「漢字考古学の道」のホームページに戻ります。   

2025年2月15日土曜日

漢字「金」から読み解く豊かさの意味と欲望の未来


人間の欲が社会の中で突き進む姿を漢字から探る

 紀元前3000年前に早くもゴールドラッシュが起きていた??

 これまでにも世界各地でゴールドラッシュが報告されており、非常に多くの人々が一攫千金を求めて、鵜の目たかの目で金鉱山を探し回っています。
 現在では金は貨幣や装飾品に留まらずICチップや集積回路などに広く使われその需要はますます高まっています。

 つい先ごろ「中国の 湖南省 地質院は21日、同省平江県で40本以上の金の鉱脈を発見したと発表した」というニュースが世界を駆け巡りました。 その一方で金の採掘選鉱のため水銀が使われていますが、その水銀汚染のためアマゾン流域はずいぶん汚染され、流域の原住民の人々は『水俣病』に侵され苦しんでいると聞きます。  


 

導入

このページから分かること

  • 人間の社会と金のかかわり 金が人間社会にどう影響を与えてきたか
  • 社会の変化と漢字  「きん、かね」を通して見る
  • 社会の変化と価値観の係わり 価値観の変化は社会の変化
  • 現代社会の歴史的位置づけ いま社会は歴史的にどこに位置するか
  • 未来社会がどう動くかの予測

前書き

 近年世界的に価値観の変化が起こっているとよく言われます。
 誰もがその言葉に納得し、そこである意味思考を停止してしまっている感があります。

価値観が変わるというとき、具体的にどの「価値」が変化しているのかは、社会や時代によって異なります。近年でよく言われる価値観の変化には、例えば以下のようなものがあります。

  1. 働き方に関する価値観
    「終身雇用」→「転職やフリーランスの自由な働き方」
    「仕事中心の人生」→「ワークライフバランス重視」
    「年功序列」→「成果主義・実力主義」 

  2. 家族・結婚に関する価値観
    「結婚・出産が当たり前」→「結婚しない・子どもを持たない選択も尊重」
    「専業主婦が理想」→「共働き・家事のシェアが当たり前」
    「家族の形は一つ」→「多様な家族の形が認められる(同性婚、事実婚など)」 

  3. お金・消費に関する価値観
    「高級ブランド志向」→「ミニマリズム・サステナブル消費」
    「所有することが重要」→「シェアリングエコノミー(サブスク、カーシェアなど)」
    「貯蓄が大事」→「経験や自己投資にお金を使う」

  4. 性別・多様性に関する価値観
    「男らしさ・女らしさの固定観念」→「ジェンダーレスな生き方」  
    「マイノリティは隠すもの」→「多様性を尊重し、オープンに」

  5. 環境・社会意識に関する 「個人主義」→「共助・コミュニティ意識の高まり」
  価値観の変化は、テクノロジーの進化、経済の変動、グローバル化などの影響を受けて生じます。どの価値が変わっているかを考えるときは、具体的な分野を見ていくとわかりやすいですね。
 ここではその価値観を「金」(かね、きん)に絞った上で、ここは漢字のページですから、漢字の「金」を通して見つめなおしたいと思います。しばらくお付き合いください。

目次




**********************
この記事は以前にアップしたものをリバイスしたものです。

漢字「金」の今

漢字「金」の楷書で、常用漢字です。
 上部は「今」で、語義は、貴金属の金、貨幣の「かね」を表します。

 「金」という文字はやはり不思議な力を持つようで、片や多くの人々のあこがれであるし、方は底知れぬ力で、人々を支配するものです。

 しかしそういった力は「金」に最初からあったわけではなく、資本主義の世の中で、金本位体制が長く続き、金が資本として、世界を君臨してきたからでしょう。

 そして漸く資本主義の終焉が叫ばれてきてはいますが、新しい世界は目の前に姿を現しません。共に新しい世界を探ろうではありませんか
金・楷書







漢字「金」の解体新書


  
金・甲骨文字
上部は銅液の流出を表し、下部は「火」を表し、全体として溶錬を示す
金・金文
下部は一つの書き方では土から出来ている。即ち土(鉱石のことを示しているが)の中から冶煉で出来たことを示している。
金・小篆
金文を受け継ぎ、「今」と「土」と二つの点から出来た会意文字



    


    



「金」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   キン・コン
  • 訓読み   かね・こがね

意味 
  • 材質
  •  
  • 貨幣を表す
  •  
  • 反射光を持つ黄色 

同じ部首を持つ漢字     銅、鉄、
漢字「金」を持つ熟語    金色、金環、金字

漢字「金」成立ちと由来

引用:「汉字密码」(P774、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 金は古代にあっては銅のことを称していた。その後金属類の総称となり、最後にはやっと専ら黄金の名前となった。

 甲骨文字の「金」の字は上下部の繋がった構造となっている。下辺は「火」であり、火で熔煉を表した。「金」の字の本義は銅であり、青銅の銘文の中で「吉金、赤金、美金」などから分かる。この中の「金」は全て銅を指している。
 


漢字「金」の漢字源の解釈
 会意兼形声。今は「抑えた蓋+一」から成る会意文字で、何かを含んで抑えた形を表す。「金」は「点々のしるし+土+音符今」で土の中に点々と閉じこもって含まれた砂金を表す。


漢字「金」の字統の解釈
 象形文字:銅塊等鋳込んだ形。説文に「五色の金なり」とし、金の土中にある形に今声を加えた形とするが、字は今声に従うものではない。金文の字形は全形の左右に楕円形の小塊二を添えている。


漢字「金」の変遷と社会

「金」以前の貨幣

人間の社会が形成されるまでの歴史を振り返る
旧石器時代(Paleolithic Age)時代区分:約250万年前~1万年前
今から約250万年前類人猿としてではなく人類としてこの地球上に現れて一万年前までの長い長い期間、打製石器(石を打ち砕いて作る石器)を用いて、狩猟・採集が中心(遊牧や農耕はまだない)にして、洞窟や簡易な小屋を利用しながら家族などの極めて小さなまとまりで狩猟採集を主体とした移動生活を送っていました。
 このころの世界はある意味平和で、人々は自然に対する闘いは熾烈を極めていたかもしれませんが、少なくとも、人間同士の戦いや争い、戦争もそれほど多くなかったのではないかと考えられます。

新石器時代(Neolithic Age)時代区分:約1万年前~紀元前3000年頃(地域によって異なる)

  1. 石器の進化:磨製石器(石を研磨して作る石器)を使用
  2. 土器の使用:食料の保存や調理のために土器が作られる
  3. 農耕・牧畜の開始:小麦・大麦の栽培、家畜の飼育(ヤギ、牛、羊など)
    農耕・牧畜が始まったことが今後のあらゆる面での大変革となりました。
  4. 農耕が発展し生活が安定したことにより、余剰が産出され、富の集積がはじまり、力の強いもの、大家族が独占的に富を集積するようになりました。
    このことは奴婢や奴隷を持ちその労働を収奪することで、いっそうの富の集積が可能となり、奴婢や奴隷の獲得を求めて、争いや侵略や略奪が起こるようになりました。

  5. 定住生活:農耕による食糧供給の安定により村落が形成される  

  6. 社会の変化:階層社会の形成、交易の発展
     農耕の始まりはそれまで続いてきた母系制社会の崩壊を意味し、妊娠や子育てに多くの労力をとられる女性に変わり、腕力が強い自由度の高い男性が次第に力を得るようになり、社会は父系制社会へと変貌することになります。それはその後も続き秦の始皇帝の時代で完成することとなります。
    旧石器時代は「狩猟採集を主体とした移動生活」、新石器時代は「農耕牧畜を伴う定住生活」

    この変化は氏族制度の始まりとほぼ一致します。
    • 始まり:紀元前8000年頃(新石器時代の初期、農耕開始とともに)
    • 発展:紀元前5000年頃〜3000年頃(部族の形成と階層化) 
    • 完成:紀元前3000年頃〜1000年頃(氏族社会が貴族支配の国家へ移行)

    つまり、氏族社会は新石器時代に始まり、青銅器時代〜鉄器時代にかけて階層化が進み、最終的には王権を中心とした国家形成へと移行 していきました。 この男性有利の社会は3000年後の今日まで依然として続き、近年ようやく変化が見え始めているといっていいでしょう。


  ここで改めて、「社会のあり方」に基づいて時代区分を整理すると、以下になります。
狩猟採集社会(平等・移動生活)旧石器時代、新石器時代 農耕牧畜社会(定住化・階層化の始まり)氏族社会、青銅器、鉄器時代
国家形成社会(都市・階級社会・文字の発明):(紀元前3000年ごろ~中世
封建社会(領主制・宗教支配・商業発展):(中世~近世、5世紀~18世紀)
産業社会(資本主義・民主主義・機械化):(18世紀~20世紀半ば)
情報社会(IT・グローバル化・知識経済):(20世紀半ば~現在)
ポスト情報社会(AI・自動化・未来の可能性):(未来予測)(21世紀後半以降、予測段階)


「金」貨幣及び金の価値の変遷

 以上のような歴史的変遷の中で、氏族社会が生まれ貧富の差が生じ、階層が生まれ富が蓄積されるようになっても、金や貨幣が実際に流通の中で用いられるようになるのは紀元前1000年あたりまで待たなければなりませんでした。

貝による貨幣
貝による貨幣(南海諸島にて購入)

 交易がおこなわれようになった最初のころは貨幣は貝殻でできたものでした。その貝もも二枚貝で子安貝のような種類が多く使われたといいます。これは貝は手に入り易かったからでした。

したがってこのころできた古代の漢字には「貝」が使われており、私達も現在「財、貨」などの多くの漢字にそれを見ることができます。

 さらに紀元前1500年前の殷や周の時代には漢字の「金」という字は既に使われていましたが、このころの「金」という文字は実際にはGoldの金ではなく、銅の合金である黄銅を指していたということで、今の「金」が実際に使われるようになったのは、もうしばらく後のことになります。



地図の中にある緑の旗印が古代都市「ウル」

 人類が最初に金を採掘したのはメソポタミアの北部や東部の山岳地帯にある金鉱脈で古代から金が採掘されていたのではないかと言われています。

 人類と金の係わりは古くメソポタニア文明の栄えた今から約6000年ほど前、シュメール人が現代のイラク南部に位置する古代都市「アッカド」や「ウル」の近郊で金の採掘をしていたという記録が残されています。

中国における金の採掘は、少なくとも商王朝(紀元前1600年頃 - 紀元前1046年頃)の時代には始まっていたと考えられています。これらの金は王侯貴族の装飾品として用いられており、貨幣として用いられるようになるのはずいぶん時代が下ってからになります。

  経済活動を支える重要な役割を果たすようになるのは、春秋戦国時代(紀元前771年 - 紀元前256年)に入ってからになり、この時代には、金が貨幣としても流通し始め、各地で金鉱山の開発が活発化しました。中国で金の採掘がはじまったのは紀元前1600年程の商王朝に遡るといわれています。中国における主要な金産地は、山東省、河南省、江西省、雲南省などです。

価値観の変遷と社会の向かう先

金に対する価値観は、歴史的に大きく変化してきました。

  • 古代 金は、その希少性と美しさから、古代文明においてすでに特別な価値を持っていました。
    装飾品: 金は、その美しい輝きから、装飾品として珍重されました。
    貨幣: 金は、その高い価値と安定性から、貨幣としても使われました。
    権力の象徴: 金は、その希少性から、権力や富の象徴としても使われました。

  • 中世 中世ヨーロッパでは、金はキリスト教教会や王侯貴族の財産として重要視されました。
    中世は基本的に封建制を基盤とする仕組みで、経済は土地・荘園に基づく農業でした。
    教会の装飾: 金は、教会の装飾や祭具として使われました。
    王侯貴族の財産: 金は、王侯貴族の財産として蓄えられました。
    錬金術: 中世ヨーロッパでは、金を生成しようとする錬金術が盛んに行われました。

  • 近世 大航海時代以降、ヨーロッパ諸国は、金や銀を求めて世界各地に進出しました。
    マルコポーロの「東方見聞録」が書かれ、日本が黄金の国として世界に登場しました。
    世界は全体主義国家に大きく舵を切り、それまで行われていた「土地の囲い込み運動」は影を潜め、逆に囲いを取っ払い統合し新しい世界の構築が模索されるようになりました。
    ヨーロッパでは宗教改革が起こったのも、宗教の壁を取り除きより多くの利潤を求める人間のあくなき欲望の表れともいえるでしょう。
    アメリカ大陸が発見され、アフリカ大陸が植民地として蚕食され、悲惨な結果を招きました。
    重商主義: 獣金主義金や銀の蓄積は、国家の富の象徴と考えられました。
    植民地支配: 金や銀を求めて、多くの国が植民地支配を行いました。


  • 現代現代社会では、金は投資対象としての価値が注目されています。
      中世と近世で人間は地理的に拡大しつくし、拡大の余地がなくなってしまいました。
    次に資本が目に付けたのは国境をなくし、手さらなる利益の増殖を図ることでした。
    結果として、グローバリズムが叫ばれ、企業が国境の壁(規制)を取り払ったり、緩和させたりしました。
    人間の欲望はそれに飽き足らず、リアルの世界とバーチャルの世界の壁を取り払い更なる増殖を図っています。
    ドルの金本位体制が崩壊した今日、金は基軸材として機能していますが、今や仮想通貨がリアルの通貨の流通量を上回っている現実があります
    仮想通貨を流通させるプラットフォームのヘゲモニーをどこが握るかの争いになっています。
    インフレヘッジ: 金は、インフレに対するヘッジとして、投資家によって買われます。
    安全資産: 金は、世界経済の不安定化時に、安全資産として買われることがあります。
    宝飾品: 金は、宝飾品としても人気があります。


  • まとめ

     以上のように漢字「金」という一文字についても、その変化の背景には長い歴史的、社会的変化、変遷の過程があり、漢字の持つ奥深さがよく理解できると思います。
    金に対する価値観は、時代とともに変化してきました。古代から中世にかけては、装飾品や貨幣、権力の象徴として重要視され、近世には国家の富の象徴として注目されました。現代では、金に対する価値観の変化に留まらず、バーチャルな世界に対する骨肉の争いも問われている中で、アメリカではトランプ政権が「アメリカ第一主義」を唱えて、登場しましたが、「アメリカ唯一主義」ではないかと疑わせる主張で、世界に混乱を巻き起こしています。
     価値観の変化は社会の変動であり、私たちは今後世界はどちらに向かうのか目先の事柄に囚われることなく、しっかり監視しなければなりません。自らの生き残りをかけて!

      


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2023年6月18日日曜日

漢字「銅」の成立ちは何で、どこから来たのか。金文の「銅」に隠された秘密を探しあてた


漢字「銅」の成立ちは何で、どこから来たのか

導入

 漢字「銅」の成立ちは何で、どこから来たのか。私たちは同じ時期の製造過程を表す「鋳」という文字との対比の中で、その成り立ちと由来を探ってみたいと思います。

前書き

 中国における銅の歴史は非常に古く、青銅器の時代から始まっています。

  1.  青銅器の時代(紀元前2000年頃~紀元前771年頃): 中国における銅の利用は、青銅器の時代に始まります。青銅器は、銅と錫を合金化して作られた器具や武器で、中国の古代文明の発展に大きく貢献しました。青銅器は贵族や王侯の墓から多く発見され、その銅製品は儀式や礼器として使用されました。
  2. 銅の採掘と製錬技術の進歩(紀元前770年頃~紀元前221年頃): 紀元前8世紀から紀元前6世紀にかけて、中国では銅の採掘と製錬技術が発展しました。特に、戦国時代(紀元前475年頃~紀元前221年頃)には、銅の需要が高まり、技術的な進歩が見られました。銅は貴重な金属として扱われ、王朝間の貿易や軍事活動に重要な役割を果たしました。 
  3. 秦漢時代から中世(紀元前221年頃~14世紀): 秦漢時代(紀元前221年~220年)には、銅の需要が増え続けました。この時期には銅銭(通貨)の製造が行われ、銅の採掘と製錬技術はさらに進歩しました。しかし、中世に入ると銅の需要は一時的に低下し、鉄や陶器がより重要な素材となりました。
  4. 清代から現代(17世紀~現在): 清代(1644年~1912年)以降、中国における銅の需要は再び高まりました。銅は建築、工芸品、日用品などさまざまな分野で使用されました。
  5. また、現代に入ってからは、銅は電気伝導性の高い金属として重要な素材となり、電気工業や通信産業で広く利用されるようになりました。 中国の銅の歴史は、古代から現代まで続く長い歴史を持っています。銅は中国の文化の礎といっても過言ではないでしょう。

目次




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漢字「銅」の今

漢字「銅」の解体新書

漢字「銅」の楷書で、常用漢字です。
 左側は「金」で旁は、跪くひとを表すということです。
即・楷書



 
銅・金文
銅・説文解字
 

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「銅」の漢字データ


漢字の読み
  • 音読み   ドウ
  • 訓読み   あかがね

意味
     
  • 金属の一種
  •  
  • 銅のような輝きと光沢をもつ色
  •  
  • 銅でつくられた貨幣

同じ部首を持つ漢字     胴体、筒、桐、洞
漢字「銅」を持つ熟語    赤銅、銅線、銅鏡




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漢字「銅」成立ちと由来

引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)

漢字「銅」の字統(P657)の解釈

銅_字統
 銅 形声 声符は同。〔説文〕 に「赤金なり」と あり、周初の [麦鼎] や 〔彔毀] には、赤金を賜うことがしるされている。当時は一般には金と称した。

 銅は各地に産したが、南方淮域には殊に良質のもの を産するので、早くから注目され、周初の〔員鼎〕 には、南征して金を俘獲したことをしるしている。
 春秋期に入って、淮域への侵寇は一そう激しくなり、 [詩、魯頌、泮水〕 〔閟宮〕 や金文の [曾伯しつほ] などには、その作戦の成功をしるしている。[泮水] には淮夷が来って「大賂南金」を献ずることを歌い、 [曾伯しつほ]には「金道錫行」の語がある。

 その地の良質の銅は南金とよばれ、これを獲得するために 金道錫行が啓かれたことが知られる。のちに丹陽の銅といわれるもので、その質は金に類するといわれるほど、良質のものであった。晋の銅鞮、蜀の銅梁も、銅をもって名をえたところである。



漢字「銅」の漢字源(P1639)の解釈

 会意兼形声文字、 穴をあけて突き抜くこと。銅は[金+音符同]で穴をあけやすい柔らかい金属のこと


漢字「銅」の変遷

銅と鋳の生まれ

 漢字の金文の銅と鋳を比較した。この漢字の「銅」は金属の「銅」であり、鋳は鋳造技術の「鋳」である。全く概念が違うので、列挙することは少し問題であるが、古代の銅は鋳造して作られている。左の図を見て真っ先に感じられるのは、銅という文字はかなり文字化され抽象化されているということである。

 一方鋳の字は象形文字というか作業そのものを形に表しているということである。文字としてみれば、銅の方はより高度になっていると言えるともいえるが、逆に形象化することは困難である。

 その意味から漢字で表現する場合もっとも特徴的な事象を字で表すことが有効であると考える。銅を表現する場合に鋳造技術は発達していなかったであろうから、細かい技術を表現することはできなかったと考える。また金属の種類もそれほど多くはなかったと思われ、「銅を鋳造した、鉄を鋳造した」という区別は必要なかったであろう。

     しかし鋳造という技術が確立され、鋳という字は材質と切り離されることとなったため製造過程をそのまま形象して表すしかなかったのではなかろうか。ここに漢字の成り立ちがその土台たる生産過程に依拠するものであったと言えるのではなかろうか。


まとめ

 銅と鋳の1一つの漢字の成り立ちを見たが、私たちはここに漢字の生成の過程の本質をいうことができたように思う。これらの文字の生産過程は、物の生産過程そのものを忠実に反映しているということができるのではなかろうか。




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2021年12月17日金曜日

漢字 金:昔から人々をとらえて離せないもの「金」それは羨望の果てに欲望がある


漢字「金」:今年の漢字に選ばれたには理由がある
 今年の漢字は「金」に決まった。 2000年、12年、16年に続き4回目。
 日本漢字能力検定協会は、応募者が「金」を選んだ理由の概要として、東京五輪で日本人選手が多数の「金」メダルを取ったことや、大谷翔平選手が大リーグでMVPを獲得、藤井聡太さんの最年少四冠達成など各界で「金」字塔を打ち立てたことなどを列挙。さらに給付「金」や新紙幣、新硬貨などお「金」にまつわる話も話題に上ったことを挙げている。
過去3回の「金」が選ばれた理由は、以下の通り

  1. 2000年・・・理解できない公的資金の使途、相次ぐ金融機関の破綻や再編成、品質管理を怠りその事実を隠してまで販売(金優先)を続けた大企業に憂いを感じたことなどから、“金に明け、金に暮れた年”“悲喜こもごもの一年”“嬉しい金と悲しい金”などという表現が多く見受けられました。

  2. 2012年・・・ 金環日食などの天体ショーが見られた、数々の金字塔が打ち立てられた。(東京スカイツリー、ロンドンオリンピックで史上最多のメダルなど等、政治で金の問題が表面化

  3. 2016年・・・リオオリンピックでの金メダルラッシュ、東京都知事選挙での選挙資金問題、イチロー選手の金字塔、スポーツ界に新たな金字塔、マイナス金利初導入、シンガーソングライターの金色衣装などにも注目が集まった。

  4.  こうしてみると世間の関心事は、実際の金そのものではなく、オリンピックでアスリートたちが勝ち取った栄冠の結果としての金メダルに集まり、片や自分たちの生活とはかけ離れた世界の金の流れに関心が集まるようである。
     漢字「金」とは、それを「キン」と呼ぼうが、「カネ」と呼ぼうが、そここから頭に浮かぶことは、自分の生活に関係のない物事を目に浮かべ、あこがれと蔑視を同時に感じるようである。

 


この記事は以前にアップしたものをリバイスしたものです。

漢字「金」の楷書で、常用漢字です。
 上部は「今」で、語義は、貴金属の金、貨幣の「かね」を表します。

 「金」という文字はやはり不思議な力を持つようで、片や多くの人々のあこがれであるし、方は底知れぬ力で、人々を支配するものです。

 しかしそういった力は「金」に最初からあったわけではなく、資本主義の世の中で、金本位体制が長く続き、金が資本として、世界を君臨してきたからでしょう。

 そして漸く資本主義の終焉が叫ばれてきてはいますが、さて「新しい資本主義」が岸田内閣のいうようにやすやす実現できる代物ではないことは、岸田首相やその他世の中のほとんどの人にはわかっている話ではないでしょうか。
金・楷書






  
金・甲骨文字
上部は銅液の流出を表し、下部は「火」を表し、全体として溶錬を示す
金・金文
下部は一つの書き方では土から出来ている。即ち土(鉱石のことを示しているが)の中から冶煉で出来たことを示している。
金・小篆
金文を受け継ぎ、「今」と「土」と二つの点から出来た会意文字


    
    


「金」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   キン・コン
  • 訓読み   かね・こがね

意味
     
  • 材質
  •  
  • 貨幣を表す
  •  
  • 反射光を持つ黄色 

同じ部首を持つ漢字     銅、鉄、
漢字「金」を持つ熟語    金色、金環、金字




引用:「汉字密码」(P774、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 金は古代にあっては銅のことを称していた。その後金属類の総称となり、最後にはやっと専ら黄金の名前となった。

 甲骨文字の「金」の字は上下部の繋がった構造となっている。下辺は「火」であり、火で熔煉を表した。「金」の字の本義は銅であり、青銅の銘文の中で「吉金、赤金、美金」などから分かる。この中の「金」は全て銅を指している。

 


漢字「金」の漢字源の解釈
 会意兼形声。今は「抑えた蓋+一」から成る会意文字で、何かを含んで抑えた形を表す。「金」は「点々のしるし+土+音符今」で土の中に点々と閉じこもって含まれた砂金を表す。


漢字「金」の字統の解釈
 象形文字:銅塊等鋳込んだ形。説文に「五色の金なり」とし、金の土中にある形に今声を加えた形とするが、字は今声に従うものではない。金文の字形は全形の左右に楕円形の小塊二を添えている。


まとめ
 近頃の金の高騰を受け、メルカリには金塊が多く出品されているそうだが。その殆どのものは「銅」の合金である「黄銅」だそうで、悪徳業者が世にはびこる世の中だ。十分注意あれ。



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2019年1月8日火曜日

漢字「責」の成り立ち:甲骨の時代も責任は結局「金」の問題だったのか


漢字「責」の下部は「貝」(当時の金)だ。何を意味する?

引用:「汉字密码」(P790、唐汉著,学林出版社)

「責」の字の成り立ち」
 責は会意文字である。甲骨文字と金文の「責」はの構造はよく似ている。下部は両者とも「貝」であるし、上部は「刺す」の字である。原本はいばらの上のとげの描写である。ここでは針で突き通すことを表している。二つの形は串を用いて貝を朋となす。そして蓄積をあらわし、儲けるの意味もある。小篆の責は金文を受け継ぎ、楷書は隷書化の過程で上部の束が変形して責になった。

「責」の原義は貯蓄である
 責の本義は蓄積である。この言葉は後に作られた積の字に受け継がれている。責すなわちその意味が拡張され、すなわち蓄積、求めてとるという意味になった。


編集後記
 日本で責任の取り方として、「責任は俺がとる。腹を切ればいいだろう」というのがある。この責任の取り方は、どうも日本だけのようである。いかにも潔いようであるが、考えようによっては、責任は個人でとれるほど軽いものではない。たった一人の腹きりで何百人という将兵の命の責任をどうして取れるというのだろう。
 この言葉は昔から散々聞かされてきた。先の大戦の「インパール作戦」でも、こうして叫んだ将軍もいたようであるし、つい先の国会で、「責任は私がとります」といった首相がいたようであるが、私には、これらの言動は「責任逃れの最たるもの」のように思えてしまう。考え違いもいいところだ。
 トップの命など庶民にとっては何の役にも立たないことこの上ない。このことは漢字の「責」からも窺い知ることができる。



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2017年7月10日月曜日

漢字「金」の成立ちを甲骨文字に探る:上部は「今」と下部は熔煉の会意文字である

漢字「金」の起源と由来

金は古代にあっては銅のことを称していた
金は古代にあっては銅のことを称していた。その後金属類の総称となり、最後にはやっと専ら黄金の名前となった。
金は土(鉱石のこと)の中から冶煉で出来たことを示している

引用 「汉字密码」(P774,唐汉,学林出版社)
「金」の字の成り立ちは「今」と「火」
甲骨文字の「金」の字は上下部の繋がった構造となっている。下辺は「火」であり、火で熔煉を表した。上部の記号は古文の「今」の字で、男子の性行為の射精を表す。また銅液の流出を表し、また貴重だということを示している。金文の「金」には二つの書き方があり、一つは甲骨文を受け継ぎ、下部は火から出来ており、また別の書き方では土から出来ている。 金は即ち土(鉱石のことを示しているが)の中から冶煉で出来たことを示している。

「今」と「土」と二つの点から出来た会意文字である。

 旁の二つの小さい点は銅で出来た鍵盤のキー(即ち上古の「呂」)である。

この点に関し、白川氏はこの2つの小塊が元々金(銅塊)を表している。そして「金」という字は銅塊などを鋳込んだ形であると説明をしている。
 小篆はこの関係から、「今」と「土」と二つの点から出来た会意文字で、楷書では「金」と書く。金の字の構造は、本来上古時代の火煉鋼から来るものだ。もとより「金」の字の本義は「銅」であり、青銅の銘文の中で「吉金、赤金、美金」などから分かる。この中の「金」は全て銅を指している。

「金」は上古では「銅」を表していた 
 銅は上古の時期は金属の中で使用量が最も多く、その様とも広範囲にわたっていた。だから「金」は一般的に金属を示すのに用いられた。「悪金」の如く、一部鉄を指し、「錫金」は錫を指す。
 むろん鋼や黄金まで古代社会ではかつて貨幣に用いられた。だから「金」は貨幣のこととしても用いられた。現金、基金、奨金などである。黄金は金属中最も貴重なものである。
「金」は造字構造要件の中で「類符」(類を表す記号)となった。

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