2021年4月8日木曜日

漢字の成り立ちと由来:漢字「娄」は凛と高く結った女の髪形が誇らしげに佇立することに由来する。旧字は「婁」


漢字の成り立ちと由来から見えて来るもの:漢字「娄」は誇り高く結った女の髪形に由来する。旧字は「娄」
 「楼」は楼蘭や高楼などのようにある種の品格を持った響きを聞く者に与えます。それは単に漢字の持つ響きだけではなしに、漢字から受けるイメージが、周りの景色に染まってしまうことなく凛とそびえたつ風景を思い起こさせることからくるのかも知れません。

 このことは漢字「娄」そのものが、凛と高く結った女の髪形が誇らしげに佇立することを表していることに由来する。
「婁」は、漢字「娄」の原字で、高く結い上げた女性の髪形を表している。説文では「空」を表すとする。
 漢字「楼」は「木」+「娄」で、旁の「娄」の原字は「婁」で、女性が高く結った髪の形を表している。このことから「楼」は背の高い建物や建造物を表すようになった。
婁・繁体字娄・簡体字楼・楷書




  
婁_甲骨文字婁・小篆娄・簡体字
甲骨文字>小篆>簡体文字へ
人間の認識と共にどう変化するか見えて面白い
 


    


「娄」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ロウ
  • 訓読み   常用漢字の適用はなし

意味
  • 高い建物
  • 城郭などで、高い場所   賓客などもてなした

使い方
  •  たかどの(高くつくった建物) (例:高楼)
  • 「やぐら(城門や城壁の上につくった一段高い建物)」、「物見やぐら」
  • 「料理屋」「茶屋」 旅人などにお茶やお菓子を出して休息させる店
  • 「遊女屋(女を抱えて、客を遊ばせる家)」

要素を構成する漢字   瘻、 樓、 摟、
  

「楼」を含む熟語   玉楼、鼓楼、紅楼、高楼、鐘楼、水楼、妓楼




引用:「汉字密码」(P501、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 説文は娄を空なりとしている、母と中女に従う。ことから婁空の意味だとしている。このことは、女性が一人の女の子を出生し、腹の上の妊娠紋すでに至るところにあり、しかし男の子を出産できなかった、いわゆる「空」の「情景」だ。

 


漢字「婁」の漢字源の解釈
 会意文字である。「母+中 +女」で、母も女も女性であって、女性を捉えて、数珠つなぎにして引っ張る様である。


漢字「婁」の字統の解釈
 女の髪を高く巻き上げて重ねた形。 高く重ねる、すかすなどの意がある。 「節分」に「空なり 母に従い、中女に従う。 婁空の意なり」とするが、どうして婁空の象となるかを説くことがない。婁空とは、髪を巻き重ねて、軽くすかしている意である。


まとめ
 会意文字であるようだが、甲骨文字にせよ、金文にせよ、まるで象形文字であるかのように生き生きとした人々の姿が描写されている。文字の形に簡略化し、無駄を省いたデッサンとなっており、実に素晴らしい記号化、抽象化がなされていると思う。



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2021年3月28日日曜日

漢字の成り立ちの意味するもの:漢字「戸」と「門」から考える古代の家と村のセキリティー


漢字「戸と門」の成り立ちの意味するもの:漢字「戸と門」から考える古代の家と村の成り立ち
「戸」と「門」の甲骨文字を左に示しました。恐らく集落の入り口に、最初に立派な門ができ、それから時代がある程度下って、集落の中の倉庫の出入り口に片開きの扉ができ、各家族が住む家にが出入り口のような扉ができたのは、更に時代が下ってからのことではなかったかと思われます。
戸・甲骨文字門・甲骨文字  


  太古の時代には人々はおそらく同じ氏族が共同で生活していたでしょう。この時には、生産力が非常に低く、各家族には富の蓄積は殆どなかったと思われます。富の蓄積は、氏族全体で管理する食糧倉庫の類のものだったと思われます。

 従って、各家族が住む家はおそらく竪穴式の住居だったでしょうし、家には財産もなく、入り口には蓆をぶら下げる程度のもので充分だったと考えられます。

 しかし、その一方で、集落には食糧倉庫などが共同で管理されていたでしょうから、集落には恐らくきちんとした門があり、門にはしっかりした両扉が付けられていたことでしょう。集落の入り口に付けられた門と扉は甲骨文字にあるそのものではなかったかと思います。門の両脇の支柱に扉が付けられ、その支柱はきちんと固定するために横木でしっかりと結びつけられていたのではないでしょうか。


  
関・金文
 リングと無垢材の形をしたドアのような漢字であり、ラッチを挿入してドアを閉じる有様
「閉」・金文 
門の中に「出入り禁止を示す立て札「才」を示している
開・金文
門の中のかんぬきを手で開けることを示している


    


「戸」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   コ  
  • 訓読み と  へ

意味
  • と。とびら。出入り口。とぐち。「門戸」
  • 家。部屋。「戸主」 「戸建て」
  • 酒を飲む量を表す語。「下戸」

部首などにつかられている漢字
  • 所 扇 扉 扁 房 戻

熟語   戸籍、戸主、戸口、戸棚、戸板、下戸




引用:「汉字密码」(P734、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「戸」は象形文字である。甲骨文と金文の「戸」はちょうど片開の門の形状である。その本義は門扉を指す。即ち片開きの門のことである。小篆の戸の字は門扉の象形の持ち味を失っている。楷書はこの流れで「戸」と書く。戸の字の変化は、書く上での便利さと美観のため、それによって符号化に向かう発展の典型例です。

 「戸」は説文では、戸、保護と解釈する。片開きの戸である。このことは「戸」ないし、単扇のことです。

 

漢字「戸」の字統の解釈
 一扇のとをいう。両扉を門という。「説文」に「護」。半門を戸という」とある。


まとめ
 漢字はその時々の社会の認識、生活様式を反映したものになっている。漢字が生まれたころと今では大きく変化しているから、漢字の成り立ちだけで、今の社会を論じることは難しい。しかし、人間の基本的な認識を漢字を通して探ることは意義が深いと思う。



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