2021年3月24日水曜日

漢字・厚の成り立ちの意味するもの:「厚」の原義は「深」って本当?


漢字の成り立ちと由来:誰が「厚」という漢字から「深」という意味を考えることができただろうか?
 このところ厚労省職員による23名の深夜宴会問題で、国民の怒りが沸騰している。
 もともと厚労省の前身は、厚生省という名前だったのだが、この名前は、「書経」の「正徳利用、厚生惟和(徳を正しくして用を利し、生を厚くしてこれ和す)」から厚生省と名付けられたということだ。
 しかし、昨今の役人の振る舞いからいうと、この名前は「厚かましく生きる」という解釈がピッタリではないのかと思われてくる。

 漢字「厚」の楷書で、常用漢字です。意味は、今では「厚さ」を表すものとされていますが、元々は、「深い」という意味で、元の字は「深」だったということです。
成り立ちまで遡らなければ、真実に迫れない!
まさに青天の霹靂で、なんで?という気持ちを禁じ得ません。いったい昔の人は、どうしてこのような考えに至ったのでしょう。今から探ってみましょう。
厚・楷書   




甲骨文字の「厚」金文小篆




 このように、甲骨文字から金文そして小篆までの文字の変化を跡付けしてみると人間の認識の発展が良く分かる。
 甲骨文字の「厂」(ガンダレという)の下部には高い建物の影がひっくり返っている様が見て取れる。
 金文はその塔のような像が明確になり、小篆では、太陽の日差しの下で実像の子供という意味で、子という字に変化している。





「厚」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   コウ
  • 訓読み   あつ(い)

意味
  • ぶあつい
  • ゆたかにする。
  • 心づかいがてあつい

使い方
  • 「ぶあつい」  分厚い本、厚かましい(面の皮がぶ厚いからきたという)
  • 「心づかい」・・手厚くもてなす
  • 「ずっしりしている」・・軽々しくない。ちょっとのことで動かない

熟語   厚紙 肉厚 厚着 厚手 厚遇 厚情 温厚 重厚 濃厚




引用:「汉字密码」(P744、唐汉著,学林出版社)

漢字「厚」の漢字源の解釈
会意文字。「厚」の原字は、高の字を逆さにした形。それに厂(がけ、つち)を加えたものが「厚」の字。土が分厚くたまった崖を表す。上にできたのを「高」といい、下に分厚くたまったものを「厚」という。



唐漢氏の解釈
 「厚」の字の甲骨文字は、「高」の字を逆さまにしたもので、上に見れば「高』の意味であるが、これを逆さまに書いているということは、「厚」の字は元々深いという意味を表していたのだと主張する。確かに市の主張するように、がけや渓谷に行って土地の厚さ(深さ)が分かるという説も頷ける。
 

まとめ
 「厂」の字の中に「高」を逆さまに書いて、これで「深」を表すとは、なんという発想の転換だろうか。このような逆転の発想ができる柔軟な思考方法を持っているとは驚きだ。実に素晴らしいと唸るより他はない。



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2021年3月22日月曜日

漢字の成り立ちの意味するもの:漢字「守」は守ること、保護すること、保持すること等を表現する


漢字の成り立ちの意味するもの:漢字「守」は宀(家・廟屋)+寸(手、肘)で、守ること、守備すること、保護すること、保持すること等を表現する
「守」甲骨文と金文の「守」の字は会意文字です。上部は家の形で、下部は「寸」で、肘を表示し、両形の会意で、腕とひじを使って、家の前をブロックする、つまりガードすることを表している。小篆と楷書はこの関係から守と書くが、基本形に変化はない。守の本義は守護、護衛という意味だ。

 「守る」の字義から発展拡張され、様々な意味を生み出している。「職務」、守護の意味はまた保持の意味。さらに、保守「従う」「・・に照らして」という意味になる。「待ち受ける」にもなり、離れない、傍らに寄り添うの意味にもなる。
守・楷書




  
宀・甲骨文字 家を表す「寸」・甲骨文字
手首から少し肘の上がったところを指す
守・甲骨文字
以上2文字の会意で、家を防護する意味を示す


    


「守」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   シュ  ス
  • 訓読み   まも(る) もり  かみ

意味
  • 守る、防御する、防衛する 
  • お守り  子守
  • 日本の昔の地方長官、地位

使い方
  • 防衛する  管理する
  • 世話をする   子守
  • 武士の位 摂津守

熟語   守備、専守、厳守、保守、 攻守、御守り、子守、肥後守、守護




引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)

漢字「引」の漢字源の解釈
会意文字。「宀(屋根)+寸(手)」で、手で屋根の下をかかえこんで守る様を示す。






まとめ
 会意文字であるようだが、甲骨文字にせよ、金文にせよ、まるで象形文字であるかのように生き生きとした人々の姿が描写されている。文字の形に簡略化し、無駄を省いたデッサンとなっており、実に素晴らしい記号化、抽象化がなされていると思う。



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