2021年3月16日火曜日

漢字の成り立ちの意味するもの:漢字「即」食事を山盛りにした食器の前に坐る象形 


漢字「即」の成り立ちと由来:食事を山盛りにした食器の前に坐ること、節分の「節」を構成する要素になっている(修正版)
漢字「即」の楷書で、常用漢字です。左側は、飯を山盛りにした食器を表す記号で、単独の漢字はありません。ここで分かりやすく説明するだけのものです。
 右側は「卩」で語義は、跪くひとを表すということです。
即・楷書




  
甲骨文字でご飯を山盛りにした状態を表す文字。現在これに相当する漢字はない「卩」・甲骨文字
跪いた状態を表している漢字
即・甲骨文字
以上2文字の会意で、即ちとか直ちにを意味する


    


「学」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ソク
  • 訓読み   すなわ(ち)

意味
  • すなわち、ただちに 
  • つく   位につく。地位に就く。(例)即位

使い方
  • 「すなわち」  つまり、ただちに
  • 「つく」・・位につく

熟語   即位、即席、即座、即答




引用:「汉字密码」(P661、唐汉著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
  「即」は会意文字である。
 甲骨文字の「即」の左辺は食器で、右辺は一人の人が跪いている。まるでまさに頭を低くしてご馳走になろうとしているようである。金文の左辺は簡単化しているが、未だ食器を見出すことができていない様子だ。右辺の人は半腰で立っているようだ。小篆の「即」の字は、発生した変化を説明すると線状は滑らかになり、形は美しくなり、但し却って食事に入っていないように見える。楷書は小篆を継承し、身を乗り出して食べるというイメージはありません。

 「即」の本義は身をかがめて食事することである。食べたいのなら、食べ物の近くにいる必要があるので、「近づく」という意味に拡張されます。

 

漢字「即」の字統の解釈
 食事を山盛りにした器の前に坐ること。席に着くことをいう。


まとめ
 会意文字であるようだが、甲骨文字にせよ、金文にせよ、まるで象形文字であるかのように生き生きとした人々の姿が描写されている。文字の形に簡略化し、無駄を省いたデッサンとなっており、実に素晴らしい記号化、抽象化がなされていると思う。



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2021年3月7日日曜日

漢字の成り立ちの意味するもの:漢字「教」は「爻(コウ)」と「子」と攴(ボク)からなる。神聖な建物で、子弟に氏族の規範を教える。


漢字の成り立ちと由来:漢字「教」は「爻(コウ)」と「子」と攴(ボク)からなる。神聖な建物で、子弟に氏族の規範を教えること
 孟子は、「暖かい服に満足し、教育を受けずに暮らしているのは、獣にちかいということだ。」と教育の重要性を訴えている。

 教育が行き渡ってきているといわれる現代社会においても、デマにたやすく踊らされたり、いかがわしい宗教にはまり込んで自分自身をなくす人々が後を絶たない風潮を見ていると教育のむつかしさを痛感せざるを得ない。

 ここで取り上げた漢字「教」には古代の人々が教育に如何に力を入れ、氏族の存立を計ってきたかを窺い知ることができる。


読み
  • 音読み: キョウ 
  • 訓読み: おし(える)、おそ(わる)

意味
  • 「おしえる」、「さとす」・・言って聞かせる、「導く」、「告げる」
  • 「おしえ」・・教義、「いましめ」・・・禁止的、「さとし」(例:宗教、布教) 
  • 「おおせ(命令)」、
  • 「言いつけ」(例:教令) 「おそわる」・・学習する、「おしえられる」 
漢字「教」の使い方
  教育 教員 教化 教戒 教学 教官 教訓 教護 教材 教師 教旨 教示 教室
  教授 教習 教職 教則


   
爻(コウ)甲骨文「子」攵(ボク)
   


引用:「汉字密码」(Page、唐漢著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「教」は会意兼形声文字です。甲骨文の「教」の字は、天と子と支からなり、木の棒取ることと計算に使う数字カードで、演算を示しています。「子」は児童の象形で、「支」は即ち手に鞭を持っている図です。三つの図形の会意で大人が手に鞭を持って子供たちに勉強や算数を教えている意味です。金文の「教」は甲骨を引き継いで、同じ構造で、上辺の3つの字が交錯しています。小篆は金文を受け継ぎ、楷書は隷書化の過程で、まさに爻の字が少しずつ変化し、「教」の字になりました。

 上古社会は生存環境は劣悪で、外に出れば、狼やトラ、豹などがおり、道の上でも沼沢にはまり込むこともあり、何時つかまって殺される可能性もありました。何が起こるかわからない、当時は経験と知識によって成人前の教育が必ず必要だったのです。文字の中の「爻」も八卦の記号でまた障害があれば、どんなこともすることができないという意味しています。)

 孟子は《滕文公上》の中で、「暖かい服に満足し、教育を受けずに暮らしているのは、獣にちかいということだ。」さらに、巷では、「子供を犬のように教えずに育て、女の子を豚のように教えず育てる」こともあるといっています。


字統の解釈
 会意文字: 旧字は教に作り、「爻(コウ)」と「子」と攴(ボク)とに従う。爻(コウは古代のメンズハウス的な神聖な形式を持つ建物で、ここに一定年齢の子弟を集めて氏族の教育を行った。指導者は氏族の長老たちで、氏族の伝統や生活の規範を教える。



結び
 上古の人々は、今とは教育のやり方はずいぶん異なるのでしょうが、子供たちを危険から守るために、彼らは彼らなりに一生懸命子供たちに教育を施していたことがこの漢字「教」からも窺い知ることができます。今よりも純粋だったのかも知れません。

 

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