2021年3月7日日曜日

漢字の成り立ちの意味するもの:漢字「教」は「爻(コウ)」と「子」と攴(ボク)からなる。神聖な建物で、子弟に氏族の規範を教える。


漢字の成り立ちと由来:漢字「教」は「爻(コウ)」と「子」と攴(ボク)からなる。神聖な建物で、子弟に氏族の規範を教えること
 孟子は、「暖かい服に満足し、教育を受けずに暮らしているのは、獣にちかいということだ。」と教育の重要性を訴えている。

 教育が行き渡ってきているといわれる現代社会においても、デマにたやすく踊らされたり、いかがわしい宗教にはまり込んで自分自身をなくす人々が後を絶たない風潮を見ていると教育のむつかしさを痛感せざるを得ない。

 ここで取り上げた漢字「教」には古代の人々が教育に如何に力を入れ、氏族の存立を計ってきたかを窺い知ることができる。


読み
  • 音読み: キョウ 
  • 訓読み: おし(える)、おそ(わる)

意味
  • 「おしえる」、「さとす」・・言って聞かせる、「導く」、「告げる」
  • 「おしえ」・・教義、「いましめ」・・・禁止的、「さとし」(例:宗教、布教) 
  • 「おおせ(命令)」、
  • 「言いつけ」(例:教令) 「おそわる」・・学習する、「おしえられる」 
漢字「教」の使い方
  教育 教員 教化 教戒 教学 教官 教訓 教護 教材 教師 教旨 教示 教室
  教授 教習 教職 教則


   
爻(コウ)甲骨文「子」攵(ボク)
   


引用:「汉字密码」(Page、唐漢著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「教」は会意兼形声文字です。甲骨文の「教」の字は、天と子と支からなり、木の棒取ることと計算に使う数字カードで、演算を示しています。「子」は児童の象形で、「支」は即ち手に鞭を持っている図です。三つの図形の会意で大人が手に鞭を持って子供たちに勉強や算数を教えている意味です。金文の「教」は甲骨を引き継いで、同じ構造で、上辺の3つの字が交錯しています。小篆は金文を受け継ぎ、楷書は隷書化の過程で、まさに爻の字が少しずつ変化し、「教」の字になりました。

 上古社会は生存環境は劣悪で、外に出れば、狼やトラ、豹などがおり、道の上でも沼沢にはまり込むこともあり、何時つかまって殺される可能性もありました。何が起こるかわからない、当時は経験と知識によって成人前の教育が必ず必要だったのです。文字の中の「爻」も八卦の記号でまた障害があれば、どんなこともすることができないという意味しています。)

 孟子は《滕文公上》の中で、「暖かい服に満足し、教育を受けずに暮らしているのは、獣にちかいということだ。」さらに、巷では、「子供を犬のように教えずに育て、女の子を豚のように教えず育てる」こともあるといっています。


字統の解釈
 会意文字: 旧字は教に作り、「爻(コウ)」と「子」と攴(ボク)とに従う。爻(コウは古代のメンズハウス的な神聖な形式を持つ建物で、ここに一定年齢の子弟を集めて氏族の教育を行った。指導者は氏族の長老たちで、氏族の伝統や生活の規範を教える。



結び
 上古の人々は、今とは教育のやり方はずいぶん異なるのでしょうが、子供たちを危険から守るために、彼らは彼らなりに一生懸命子供たちに教育を施していたことがこの漢字「教」からも窺い知ることができます。今よりも純粋だったのかも知れません。

 

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漢字の成り立ちの意味するもの:漢字「望」は月を背伸びして待ち望む風情が面白い


漢字の成り立ちの意味するもの:漢字「望」は月を背伸びして待ち望む風情が面白い
 漢字「望」の成り立ちを、甲骨文、金文、小篆のそれぞれの時代区分で、下記に列挙した。
「望」の本義は、「人が足をそばだてて遠く望む形」を表現したものですが、古代人が物事を特徴的に如何に捉え表現していたかのその巧みさに驚くばかりです。夫々に目を大きく見開いて(目をむいて)遠くを眺める様が実に闊達に表現されています。本当に3000年前に描かれたものだろうか。現代の漫画でも通用する抜群のセンス。

古代から今日まで、「希望」とは眼を大きく見開いて、前方をみつめること!


望・甲骨文字望・金文望・小篆




「望」の漢字データ
 

漢字の読み
  • 音読み   ボウ モウ
  • 訓読み   のぞ(む)・もち

意味  遠方を見渡す。,まちのぞむ。願う。のぞみ。,人々に期待されること。よい評判。名声。,満月。

成り立ち   背伸びをして遠くの月をのぞみ見ることを表す。

願い
  • 人気や評判という意味もあることから、人望のある人になるように願って。
  • ロマンに満ちて、努力して望みをかなえる強い意志を期待して。
  • 多くの可能性を力に、夢をかなえる人になるように。

熟語   望遠 望外 望郷 望月 望見 望日 望楼 一望 遠望 渇望 希望 願望 仰望 失望 志望 嘱望 所望


引用:「汉字密码」(Page、唐漢著,学林出版社)
唐漢氏の解釈
 「望」は甲骨文字は人が土の上に立って、眺めている状態です。金文では眼の目に変貌しています。小篆の「望」の字は望む対象として月が追加されています。明らかに人るのまるい月で、夜空にかかる時、人々は不自由なく月あかりを望んで頭を上げてゆくことができます。小篆には別の一款の「望」があります。ここで望の中の臣が亡に置換されたあと、形声字が作られました。説文は「望」を「出亡在外,望其还,从亡,望省声。」(出て居なくなって、かえって来るを望む:字統)としている。望の原本は旧暦の15日を指す。


字統の解釈
 形声。卜文は大きな目を上げて先方を仰ぎ見る人の形で、元象形。望の字はそれに声符として、亡を加えた形声字である。
 卜文の望は人が足をそばだてて遠く望む形の象形字。



結び
 古代から人間は希望に自分の将来を託してきた。

「希望」とは眼を大きく見開いて、将来に望みを託すこと!


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