2020年8月1日土曜日

鯉:値打ちを吊り上げたのは唐の皇帝?



 昔から「鯉の滝上り」の諺にもあるように、鯉は縁起のいい魚として尊重されてきた。家の掛け軸にも錦鯉が跳ね上がっている絵柄を見たことも多い。しかし、その鯉の珍重習俗が、唐の時代に端を発しているとは驚きである。「へー」の2連発ぐらいは出そうな感じだ。



引用:「汉字密码」(P115、唐汉著,学林出版社)
魚偏に里と書いて「鯉」
鯉の名前は鱗の配列が美しかったから?
「鯉Li」は魚と里の声音から構成されている。 「里」はもともと明確な線と明確な線引された田を指します。つまり、魚の鱗がきれいに配置されていることを意味します

鯉異聞 その1
 春秋の末期、越国の大臣の范蠡は、呉国の一掃功成って以後、潔く身を退き、美人の西施を伴って太湖に隠居し、財を成した。著書「范蠡養魚術」これは人類最初の養魚の専門書となった。 書の中で曰く「鯉は共食いをせず、成長しやすく、高価。」鯉の繁殖産業は、戦国時代から秦漢時代にかけて大きく発展してきた。






鯉異聞 その2
 唐代になると、皇帝の姓は「李」で、読みは「Li」、「鯉」の同音異義語であったため、裁判所は人々が鯉を捕まえることを禁止する命令を発し、うっかり捕まえた者は直ちに放なければならず、販売したものは罰金と60回の板叩き、捕食者は死罪になった。
 これは日本の徳川時代の「生類憐みの令」と全く同じです。歴史は繰り返す!

 唐時代に何世紀にもわたって、鯉は段々に神格化され、皇族や王侯たちは鯉を幟にし、兵士を調達したり将官の兵符は鯉の形に変わりました。民俗では、鯉には美しさ、縁起の良さ、勇気という意味が追加され、中国人にとって最も重要な休日の春節には鯉の絵柄が、新年の絵と提灯に描かれ、吉祥をあらわすシンボルとして、鯉踊る龍の門而して龍の門になった。



鯉異聞 鯉のぼりのルーツ
 鯉を尊重し、鯉を育てる文化は日本に広まり、広く浸透していきました。毎年、こどもの日(実際は男の子の日)には、家の前にさまざまな鯉のぼりが舞います。市場では、観賞用の錦鯉の価格が数億円の高値に達しているといいます。これらはすべて、唐王朝の遺産が日本に広まったことの証拠です。

 ネットのニュースによれば、ニシキゴイオークションで紅白のメスの個体が2億300万円という破格の金額で落札されたという。落札者は台湾の方のようだ。

結び
 日本の鯉のぼりの風習が、中国の唐の時代に端を発していたこと。しかもその始まりが、皇帝の姓である李と鯉の読みが同じであるという何ともしょうもない偶然に端を発していることを知り、歴史の出来事も意外としょうもないことで決定付けられることもあるのだとよく分かった。



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2020年7月28日火曜日

漢字「立」:自立とは周りの関わりの中で自分の立ち位置を自分の頭で考えること



 独立、自立とよく言われますが、口で言うのはたやすいが、これがなかなか難しい。大の大人でも「この人、本当に自立しているのかなと思う人が特に最近は多い気がする。それは、何より自分の頭で考えない人が多くなったことによることが大きいだろう。自戒の意味を込めて振り返ってみよう。



引用:「汉字密码」(P366、唐汉著,学林出版社)
甲骨文字から小篆に至るまで変遷は一貫している
唐漢氏の解釈
「立」、会意文字です。 甲骨、金文、小篆から楷書への変化の過程は、一つの流れが受け継がれ、非常にはっきりと示され、文字の段階的な進化を明確に示していますが、それらは決して変わらないという原則を保っています。
 「立」の字形は、立っている「人」と人の下の横線で構成されます。 下部の水平線は地面を表しており、全体のグリフは両足を広げて大地のうえに佇立している人です。 したがって、「立」の本来の意味は佇立です。



字統の解釈
 白川博士の解釈も唐漢氏とほぼ同様。参照:字統 P875

立つという字は「大」と「一」に従う。一はその立つところの位置を示す。
それで金文には立つという動詞と位という名詞に用いる
 
成語に見る「立」
 成語の「天を頂きに立つ」、仏教古典の「地に立ち仏になる」とは、「立」という言葉はすべて佇立を意味します。 そこに立っている人は直立していることです。 したがって、「立」という言葉は、拡張され功績を建てることや、建てるという意味を表しています。成語「立竿见影」の中の「立」は竿を太陽の光の下で立てれば、直ちに竿の陰ができる。(効果てきめん)。論語にある「吾十有五而志于学、 三十而立」に示す意味は、「「三十(30才)にして立つ」(30才で学問で自立できるようになった)ということ。



結び
 「立つ」とは自分の二本足で立つという意味。太古の昔から言われていること



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