2016年11月26日土曜日

漢字「隹」(フルトリと読む)の起源・由来を「甲骨文字」に探る


漢字「隹」の起源と由来

引用:「汉字密码」(P63、唐汉著,学林出版社)

 来年の干支は「酉」。鳥の語源を調べてみた。鳥を現すものには色々ある。「酉、鶏、鳥、禽、隹」など等

 「鳥」の字を除き、字の中で鳥の種類を現す象形文字は隹(「佳」ではない)。隹も又頭、羽、身、足の鳥の形の全体を具えている。この字はフルトリと読む。

 早期の甲骨文字中鳥と隹は元々同一の字である。
 即ち、鳥は隹で、隹は鳥である。鳥と隹は同じでないところから始まった。鳥は尾っぽの長い鳥を称し、"隹"は尾の短い小鳥を称している。

 「説文解字」の許慎の記述を細かく調べると、鳥は尾の長い鳥の総称であり、隹は尾の短い鳥の総称である。



 隹は現今の漢字の中では既に独立してない字になっており、編や旁になっている。およそ全ての「隹」を含む字は鳥類を現している。すべてずんぐりした隹の形態を有し、集合的な集まりの意味を持っている。これだから隹は小さい小鳥の群れを意味している。例えば高く盛られた土は「堆」と書き、いわゆる堆積である。即ち次第に集まって一箇所に集まり一団となったものである。農家の春の米の臼、即ち「碓」(石編に堆)を用いて細かい穀物を集めることを現す。
そのほか准、維などの字のごとく、全て細かいもの(水、糸)を集める意味をもっている。 鳥類の内、雁、雛、雀などは寄り集まるのを好み、群れなして暮らす鳥である。これによって、それらの名前もまた隹が造字の用件となっている。



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2016年11月25日金曜日

漢字「鶏」の成立ちを「甲骨文字」に探る:卵ではない!やっぱり鶏だった。


漢字「鶏」の起源

引用:「汉字密码」(P65、唐汉著,学林出版社)

 図に示すごとく、甲骨文と金文の「鸡」は頭、冠、くちばし、眼、身、はね、尾、足全部備わった鶏の横から見た形状にそっくりだ。甲骨文字の2款目の「鸡」の字は一本の縄で住宅につながれた鳥と見えないこともない。このことは殷商時期の先民は既に鳥を縄で繋ぐ方法で鶏を慣らし飼いしていたことの証拠である。小篆の鶏の字は既に変わっていて、形声と会意の字になっていた。


 現在中国の農村では家の庭に鶏を放し飼いにしていて、数千年来順化飼育し、鶏は飛べないようにして、同じ種の「雄鶏」も一様に少ししか飛べないようになっている。紐で住宅につながなくても、放し飼いが出来るようになっている。
まさに甲骨文字、金文のデッサンで示しているように、図中の鶏は全て時をならす雄鶏として描かれている。かえって母鶏の形がない。このことは時計のない上古社会では、ただ時を知らせるだけの雄鶏が、毎年一匹で数十匹のますの鶏を産み落とす母鶏の何倍もの実用価値を持っていたかもしれない。個人が鶏を飼育するのは、鶏の時を知らせる功能を重視したかもしれない。

 古代社会では雄鶏は人々に時を報せる神として尊称され、ひいては人類の祭祀すら享受した。原因は鶏が「通天神霊」であることにある。
 はっきりしない真夜中の時刻を知り、太陽が何時昇るかを知ることは、もっとも聡明な人でも行う方法がない。古人が見るに鶏(雄鶏)を飼うのは時間を知るためであり、暗闇の中の鬼や妖怪を駆除するためであり、母鶏を飼う目的は、ただ雄鳥を絶やさないようにするためだけだ。これが古文中で「鳴」が元来雄鶏示すためだけの字である原因である。


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