2013年9月22日日曜日

最も印象に残る矛盾:オリンピック誘致の際の安部首相の演説 「矛」という漢字の起源と由来

 最近フジテレビで「ほこXたて」という番組がホットになっている。これは相対立する機能を持つ商品を実際に再現して見せて、その優劣を競うというものだが、なかなか見ごたえがある。例えば「どんな金属でも穴を開けるというドリルの刃」X「絶対に穴が開かない金属」だとか、「いったん接着すると絶対にはがすことのできない接着剤」X「強力な引っ張り力で接着したものをはがして見せるダンプカー」という類のものである。

 それぞれの商品を開発する会社がその意地と面子をかけて対立し、商品力を挙げていく様は見ていて「よくやるな!」という感じを視聴者に与えている。
 このほこたて(矛盾)という言葉は中国の故事に由来するものであるが、これを紹介したのはかの有名な韓非子であるらしい。いわく

 韓非子の書物の中に矛と盾の故事に関する記述がある。楚の国に一人の兵器を売るものがいた。彼は盾を掲げて「私の盾はいかなる矛も刺すことができない。身を翻して今度は矛を掲げて、私の矛は硬くて鋭い。いかなる盾も貫いてしまうといった。傍らの人が言った。「この矛でこの盾をさしたらどうなる?」 武器商人はしばらく考えたが、どう答えていいかわからなかった。以後ひとびとは相互に抵触するものを指して「矛盾」といった。
 こうしてこの概念は中国哲学のひとつのカテゴリーとなった。毛沢東の有名な著作に「実践論・矛盾論」というのがある。

さて、この言葉の矛の部分についてそのルーツに当たってみよう。

引用 「汉字密码」(P585、唐汉,学林出版社)

「矛」は柄の長い兵器である。格闘したり、捕縛したりするときに、刺したり、切ったりするのに用いる。商代の早期、石や骨を多く用いていたが次第に冶金の青銅の硬度が向上するにつれ、銅矛が商代晩期には逐次流行し、「戈」に次ぐ格闘兵器となった。秦漢以後は鉄器が広く使用されるようになってからは矛は逐次「戈」の地位に取って代わり、古代戦争で使用期間では最長の兵器の一つとなった。
 
 金文の「矛」の字はすなわち「矛」の象形である。矛の頭は柳の葉の状態を呈し、筒の部は飾りあるいは縄を括り付けるように半円形の輪の形をしている。小篆の矛の字は金文を受け継ぎ、かえって象形の味わいを失っている。楷書の字形は小篆の形体の直線の整理からきている。矛は鋭い先と両刃を持っている。矛の柄竹を多く寄せ集めたもので構成され、すなわち直木で芯をこしらえ外周りに竹を付着させ、糸縄で緊縛し漆で上塗りをしている。長さは多くは3.2から3.8mの間で、もっとも長いものは4m以上で、戦車に適応させている。
「漢字の世界の起源と源流を探る」のホームページに戻ります。

2013年4月28日日曜日

「狂」:漢字の起源と由来

 最近、何かが狂い始めている。国の指導者も然り。本人は実に真面目に「一生懸命」である。だから余計に始末が悪い。
 
 諺に「亀の甲より年の功」といわれるが、最近特に感じることである。
 例えば戦争に行くことが、決していいことだと言わないが、すくなくとも戦争を経験したものは、二度と戦争をしたいとは思わない。しかし、戦争を経験していないものは、意識が抽象的になって、「戦争」を簡単なものに考えてしまうのではないだろうか。北朝鮮の指導者にしても、日本の首相や高級官僚などの国を指導する人々は、なぜあんなに戦うことを急ぐのか?
 「強いアメリカ」「強い日本」「強い中国」、いずれも民族主義を肩に担いで動こうとする。大衆の意向がそうといえばそうであるが、そもそも大衆の意向は何で決まるかといえば、その政治で決まる。つまり前の政権を引き継いだにせよ、指導者が自ら作り出してきた「潮」である。
 
 民族主義は非常に危険な思想だが、しかし自然発生的に出てくるものではなく、強力な権力が何らかの意図を持って、国外または国内で工作を仕掛け意識的に誘導して作り出されるものが、殆どではないかと思われる。そしてそれに易々とだまされるのが、概して貧困層であり、教育を受けていない被支配者階級(階層)なのだ。
 人類は結局、お互い闘い殺し合い、最後は死滅するのかもしれない。その時になって初めて、「人間とは何と愚かな生き物なんだ」と気付くのかもしれない。その時まで、この狂気の思想に取りつかれたまま、死に向かって行進するのかもしれない。

 世の中全体が、或いは自然までも狂い始めているように感じられる。だれが、世の中を狂わしているのか?


 「狂」という漢字の起源と由来に当たって見よう。この狂いを太古の人々はどのように認識していたのか。


引用 「汉字密码」(P35,唐汉,学林出版社)

甲骨文字の「狂」の字の右半分は犬の象形のデッサンである。

甲骨文字の「狂」の字の右半分は犬の象形のデッサンである。左半分の上部は足の足跡を表示し。下辺は「土」の字である。



「犬」の字は、犬が狂犬病を患った後で走り回る情景を表している

 両形は会意文字である。犬がその本性を失ってしまって、走り回ることを止められない。犬が狂犬病を患った後で走り回る情景を表している。小篆の「狂」の字は既に会意兼形声文字となっている。「犬と圭」。隷書から楷書まで一歩ずつ変化し、今日の狂の字がどのようにして一歩ずつ変化したか(訛り)を見るのは難しいことではない。楷書の「狂」の字は既に典型的な形声字となっている。犬という字と「王」の発声。


現代漢字中、「狂」の字は人の精神の常を失しているという意味である。

 現代漢字中、「狂」の字は人の精神の常を失しているという意味である。
 またこれから拡張され人の「狂妄、人が理知的な状態を失って、あるがままに放蕩し拘束を受けない状態を言う。心を失い、病に狂い・・。
 また拡張され、情勢が猛烈で広く大きい時、「狂風暴雨。狂暴不安」のように用いる。
「漢字の世界の起源と源流を探る」のホームページに戻ります。