2012年2月14日火曜日

「朕」という言葉の重み

 我々日本人にとって「朕」という言葉が身近?になったのは、明治天皇による「教育勅語」からではないだろうか。昔の人間にとっては現代では思いも及ばない重みを持っていただろう。もう遠くなったと思われているこの言葉が、こっそりと息を吹き返す策動が動いているような気がする。

 朕は説文の解釈では「我」
 朕は説文の解釈では「我」である。古代の漢語の中で「朕」は第1人称で、「我、我の」の意味である。

「朕」という自称が皇帝のものとして確定されたのは
秦の始皇帝のときからである
秦の始皇帝の時代から皇帝の自称に用いられている。

甲骨文字の解釈
甲骨文字中の朕の字は「舟と舟の竿」からなる。両手で舟の竿を持っているような形。金文の朕は甲骨文字とよく似ている。只舟が右辺から左辺に移っただけである。小篆の朕の文字には変化があり、諸手で竿を持っていたのが火をささげる方に変化している。



 楷書は隷書への変化の過程でまた省かれて「朕」となった。一つ一つの形の変化で、朕の字の形も語義も暫時変化した。

 朕の本意は竿を持って舟を操ることである。舟を操るもの、舟の進退目標を掌握するもの、ひいては戦場の乗客の命運すら握るものである。上古の時代には個人はこの重大な任務を引き受けた時、常々「我来」と言っていたのがだんだんと朕を第一人称の仮借とするようになった。

《史記・秦始皇本紀》に記載されているのは「秦の始皇」から初めて、「天子みずから朕と曰く」。 

 これは大体秦の始皇帝が国家のかじ取りを握ったことを天下に誇示したことを意味する。


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2012年2月13日月曜日

漢字「身」起源と由来:身ごもった状態を表す象形文字

漢字「身」起源と由来:象形文字である。身ごもった状態が実に生き生きと表現されている
 民主主義とはある個人について見たとき、身分、性別などによってその人の処遇、行動などが制約を受けないでおられる状態にあるときと言うことができるかもしれない。 線引きが不可能なら、その社会の成熟度を民主主義の度合いのような尺度と考える必要があるのかもしれない。 さて、そこで身分、身の程知らず、身を切る、身内、身体などで使われている「身」とはいったい何ぞや? その起源に迫ってみたい。


「身」の原義は妊娠である。この意味から「孕」の字形が
引き出され、後には「体躯」という意味にもっぱら
用いられるようになった。
漢字「身」象形文字である。
 「身」は象形文字である。甲骨字は人の字の腹に一つの孤線を付け加え、突出した女の人の身ごもった有様に似ている。第二の身の字は中間に一つの点を加え、さらにまるで身ごもった様子である。

  金文の身の字は甲骨文字の同じ構造の形の下部に横棒を短く加えている。この事で女性が妊娠中は性交を行ってはならないことを示している。

  小篆の字形は金文の基礎の上にさらに美観を整え、明確になっているがこの字形は身と孕の字形への分化を示し、字の意味が身の本義から変換が引き出されて、身の意味が孕という意味に代わって来ている。

 これは人の身体をもっぱら指し、「身力強壮、身段、全身運動、獅子の身体で人面像等の言葉の身の字のように、みな人あるいは動物の体を示している。小篆はただ孕むという字に代わり赤ちゃんの為にもっぱら用いられるようになった。 

 体躯は人の肉体の根幹である。このため「身」の体躯の意味から自我の意味が引き出されてくる。"身先士卒、身体力行、以身作则"(「自分がまず兵士を率い、体が一生懸命行い、身を以て範を垂れる」の意味)この中で「身」は自分という意味である。自我の意味からは人の一生という意味も引き出されてくる。"献身、身后遗物"等である。又人の地位・品徳という意味も引き出される。"出身卑微、有失身份、身败名裂"等である。



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