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2023年9月18日月曜日

漢字「政」の成立ちは、他国を支配することを正しい「正」とし、有無を言わせず征服する行為「攴」から成る。今も基本は昔と変わらない


 政は「正」と「攴」からなる。正は他邑(くに)を征服する意味を持つ。 他国の支配のために攴撃を加えることを政という。

本稿は2012年2月8日に発行の「漢字「政」の起源と由来」を全面加筆修正したものである。

 漢字「政」の基本字素は「攴」である。攴の意味するところは、こん棒で殴りつけることである。

  では、そもそもこの政治の「政」という字はいかなる意味を持っていたのか?
 そしてそれは、どのように使われたのか。
 この問いに最も端的にこたえる例がある。それは、秦の始皇帝ではないだろうか。始皇帝は自身は韓非子の教えを、自身の骨の髄まで叩き込み、成長してからは法家の後継者 商鞅・李斯を取り立て、法による支配を国是とする一大帝国を作り上げた。


 その始皇帝の諱名は「政」であった。これは彼の生前の名前でもあったが、「その意味するところは、他邑を攻撃征服することを示す字」であり、他をこん棒でもって殴り倒してでも他の国・邑を制覇することが、正義であるという考え方に基づき、生涯を全うした。

 まさに秦の始皇帝自身が「政」そのものであった。






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漢字「政」の今

漢字「政」の解体新書

漢字「政」の楷書で、常用漢字です。
 漢字「政」を決定づける基本字素は「攴」であり、この攴が付く漢字には、「改、救、攻、放、故」等数多くあるが、いずれも「力ずく」でものごとを行うという意味を暗示している。そのことを踏まえ、これらの漢字を吟味すると、今まで見落としていた漢字の味わいが見えるようになること請け合いだ。

 ここでいう基本字素とは、筆者が命名した造語であるが、旁や偏が、漢字の成立ちの構成要素であるのに対して、漢字の意味を「決定づける基本的な要素」と定義した。この見解を広く世間で主張するつもりはないが、少なくともこのブログでは、この定義に基づいた使い方をするつもりだ。
政・楷書


  
政・甲骨文字
政・金文
政・小篆


 

「政」の漢字データ

漢字の読み
  • 音読み   セイ
  • 訓読み   まつりごと

意味
  • 「まつりごと(国家の権力者が領土・人民を治める事)」(例:政治)
  •  
  • 物事を整え治める方法
  •  
  • おきて(決まり、法律)、政治を行う時の仕組み・制度

同じ部首を持つ漢字     改、救、攻、放
漢字「政」を持つ熟語    政、政治、政界


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漢字「政」成立ちと由来

引用:「汉字密码」(Page、唐汉著,学林出版社)

唐漢氏の解釈

 「政」この字は会意文字であり形声文字でもある。「説文」では「政は正なり」と解釈し、「支」と「正」から来て、発声は「正」を取ったとしている。金文の「政」の字の右辺は棍棒を手に持った形で、左辺の下部は「足跡」があり、歩みを表す。上部は一本の短い横棒で行動の目標を表す。明らかに政の字の構造の意味するところは、自ら棍棒を用いて他人を既定の目標に向かわせようとすることである。小篆は金文と相似であるが美観は一層整っている。  

漢字「政」の字統の解釈

  形声 声符は正。 正は他邑を攻撃征服することを示す字。 その支配のために攴撃を加えることを政という。
 正は征服、征は賦税、政が支配の形態を示す字である。〔説文〕に「正なり。 攴に從ひ正に従ふ。正は亦聲なり」とするが、正・征・政は一系 の字とみてよい。
  金文に征を征行・征伐に、政を政治的支配の意に用い、それぞれの字義がすでに分化 している。




漢字「政」の漢字源(P673)の解釈

 形声文字。正とは、止(あし)が目標の一印に向けてまっすぐ進むさまを示す会意文字。
征(まっすぐ進む)の原字。政は「攴+音符正」で、もと、まっすぐに整えること。



漢字「政」の変遷の史観

文字学上の解釈

漢字「政」は正に加え、攴(こん棒でなぐるを意味する)が加えられ、その意味がより一層明確になった。
 太古の昔は、暴力が支配し、それが正義とされた時代が確かに存在したということである。

 しかし、人間が増え、社会の交流が活発になるにつれ、「こん棒で殴り、言うことを聞かせる」方法だけでは立ち行かなくなった。人間は次第にお互いの意見を調整することを覚え、意見を調整する制度的仕組みを作り出す。太古の邑が国という仕組みを構築するためには、人口は100万人が必要であるといわれる所以はここにある。かくして、国家が登場する。この経過は、ヨーロッパで、中世に出現した夜警国家にも通ずる部分がある。



まとめ

   正は甲骨文字では「□+止」と書き、その意味するところは、他邑を攻撃征服することを示す字。漢字「政」は正に加え、攴(こん棒でなぐるを意味する)が加えられ、その意味がより一層明確になった。後に「まつりごと」などとカモフラージュさせた解釈がされるようになるが、いくら曖昧にしようとも、もともと古人が、「政」という漢字を作り出したその意図は、権力こそが正義としたことに他ならない。

 太古の昔は、暴力が支配し、それが正義とされた時代が確かに存在したということである。しかし、権力者のし好は時代が下っても変化はない。

  


「漢字考古学の道」のホームページに戻ります。   

2012年2月14日火曜日

「朕」という言葉の重み

 我々日本人にとって「朕」という言葉が身近?になったのは、明治天皇による「教育勅語」からではないだろうか。昔の人間にとっては現代では思いも及ばない重みを持っていただろう。もう遠くなったと思われているこの言葉が、こっそりと息を吹き返す策動が動いているような気がする。

 朕は説文の解釈では「我」
 朕は説文の解釈では「我」である。古代の漢語の中で「朕」は第1人称で、「我、我の」の意味である。

「朕」という自称が皇帝のものとして確定されたのは
秦の始皇帝のときからである
秦の始皇帝の時代から皇帝の自称に用いられている。

甲骨文字の解釈
甲骨文字中の朕の字は「舟と舟の竿」からなる。両手で舟の竿を持っているような形。金文の朕は甲骨文字とよく似ている。只舟が右辺から左辺に移っただけである。小篆の朕の文字には変化があり、諸手で竿を持っていたのが火をささげる方に変化している。



 楷書は隷書への変化の過程でまた省かれて「朕」となった。一つ一つの形の変化で、朕の字の形も語義も暫時変化した。

 朕の本意は竿を持って舟を操ることである。舟を操るもの、舟の進退目標を掌握するもの、ひいては戦場の乗客の命運すら握るものである。上古の時代には個人はこの重大な任務を引き受けた時、常々「我来」と言っていたのがだんだんと朕を第一人称の仮借とするようになった。

《史記・秦始皇本紀》に記載されているのは「秦の始皇」から初めて、「天子みずから朕と曰く」。 

 これは大体秦の始皇帝が国家のかじ取りを握ったことを天下に誇示したことを意味する。


「漢字の起源と成り立ち 「甲骨文字の秘密」」に戻ります。